とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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スティンガーさんみたいだなーとか思って書いてた部分に気付いた人がいてびっくりした。フロム脳め…!


療養、そして準備期間

療養一日目。

うむ。暇だ。やること…というか、出来ることがねえ。暇だ。こうも暇だと本当につまらん。誰かそばにいれば話くらい出来るのだが。まあ仕方ない。今午前中だし。

うーん、せめて紙とペン、あと定規があればIZ(アイゼロ)の設計図が書けるんだけどなぁ…。

こういう時、束なら頭の中で完璧な設計図を作り上げられるであろうことを考えると、いかに頭が良くなってもこの身は凡人であることを実感する。ちょっとだけ羨ましい。

そうは思うけどなぁ…。天才は天才で苦労しそうなんだよなぁ…。

なんだっけ。1+1が2になることが当たり前なことを、周りは理解出来ないような感覚だっけ。そんな感じの喩えを聞いたことある気がする。やべーよね。俺ならきっと発狂しちゃうわ。多分。いや知らんけど。

それにしても暇だ。やることない。暇である。

あー…。退屈だぁ…。キミ、パソコンかスマホを寄越したまへ。情報収集したひ。ああ、電話でもいいかも。マドカちゃんに電話するとか、暇潰しには最適やん?

まあ、亡国機業に俺の存在が知られてたらマドカちゃんどんな対応するかわからんけど。だがそれがいい。

アンサートーカー先生に聞けば多分わかっちゃうからね。壮大なネタバレ感。あれだよ、犯人はヤスを知ってるままでゲームスタートする感じ。もしくは、FF7を初めてやってる時にエアリスが死ぬことをバラされたような。あれは許さないわ。マジで。

ていうか、本当に全ての答えが分かるってつまらないぞ?俺の場合は自分で知りたくない情報は知らないで済むけど、強制的に全知とかになってみ?もしそうなったとしたら、未知への探求とかロマンというものが全くないんだぜ?

絶対超退屈になる。でも人というものは面白いもので、知らない!とか分からない!という状態になると、今度は知りたい理解したいとやっきになるんだ。ままならんなあ。本当に。

ままならんといれば。結婚相手とかもそうだよね。でも俺の前世とか知っても、特に面白いこともないしね。まあどうでもいいよね。うん。話題終了。

 

あ、そういえば差し入れというかお見舞いあったな。い、今思い出した訳じゃないよ?本当だよ?

ただ単に、ふと辺りを見回したら視界に入っただけです。だめじゃねーか。

 

さて、見舞品には何があるかな、何があるかなっと。えーと、バナナ。梨。りんご。みかん。ふむ、フルーツはええね。特に梨とみかん。好き。いや、フルーツは基本的に好きですけどね?ああ、昔はいちじく食べられなかったなあ…。前世のばあちゃんが大好きでね。よくすすめられたけど、小学生まで無理だった。高校の時にえいやっ!と食べてみたら、あ!いけるやん!となったんだよなぁ。懐かしいね。かにみそもそうだな。ちっさい頃は無理だった。あー、前世のばあちゃんに会いたい。前世の終わりというか、死に際には当然のように父親やらばあちゃんに会いに行くことになるとばかり思っていたもんだが。まあ、事実は小説より奇なりって言うしねえ。俺の人生も小説化しようぜ!まあ与太話扱いされるのが落ちやね。簡単に想像つくわ。間違いない。

お、これは…。ビジネス書のマンガ版。マンガで身につくかもしれないPDCAじゃん。誰だか知らんがナイス。あとは、あ!よしたにさん!お久しぶりです!あなたこの世界でもマンガ描いてるんですね!理系の人々もぼくオタオタリーマンも大好きです!よっしゃ。読も。

 

~鹿波読書中~

 

いやー、やっぱり本は良いよね。うん。マンガだけど。活字もマンガも、どちらにも長所があるからな。どちらが偉いとか、そんな馬鹿なこと考える暇があるなら一つでもいいから何か自分の糧にしてろよって話。いや、うん、ぶっちゃけ僕の迷惑にさえならないなら好きにしてくれればそれで良いんですけどね?マジで。一体俺は何を言ってるんだ。

まあ、それはともかく。他人なんてどうでも良いとか嘯いてる俺だけど、頑張っている人の邪魔ばっかりする人にはムカついたりするな。一生懸命頑張ってる人には感情移入しちゃうタイプ。がんばれー、とかこっそり思ってたりする。思うだけですけど。人の善意を食い物にするクズも世の中にはいるからね。なるだけ手助けはしない。親切にしようとしたら駅でセクハラとか訴えられたりするらしいからね今世。仕方ないね。

 

うん?誰か来たようだ。ドアがノックされてる。誰だろ。

 

「どーぞー」

 

「邪魔するわね」

 

そう言って入って来たのは鈴ちゃん。あれっ!?俺この子と接点ないねんけど。どしたの。

 

「…えーっと。(ファン)さん…で、良かったかな」

 

「鈴でいいわ、面倒だし」

 

「じゃあ鈴ちゃん」

 

「だから鈴で良いってば」

 

うわ、なんだこの子。ぐいぐい来るな。んで、鈴ちゃん何用?

 

「…別に。ただ、一夏の奴がやたら心配してたから、ちょっと見に来ただけよ。気にしないで」

 

さいで。て言うかさ。正直「ご無礼」って言いたい。いや、はっきり言おうか。

 

うぜぇ…。

 

「そうか」

 

はよ帰れ。そんな思いで視線を外す。でも帰らない鈴ちゃん。だから何やねん。

 

「…一夏の奴、相当あんたのこと心配してたのよ?後で一言謝っておきなさいよ」

 

「断る」

 

だって俺謝らなきゃいけないようなことしてないし。

 

そう思ってたら鈴ちゃんにギヌロと睨み付けられた。おうっ、怖いな。肩がビクッとしちゃったよ。でも視線は逸らさない。だって俺何も悪くないし。

ちなみに後でお礼はみんなに言います。お礼と謝罪は別物。

 

「…あんた、人に心配かけといて謝らない気?」

 

「少なくとも、それを部外者の君に何か言われる筋合いはない。帰れ」

 

正直不愉快である。せっかくのんびりしてたのに、一気に気分は急降下。はあ。憂鬱也。帰れ。

 

「…あんた、友達無くすわよ」

 

「帰れ、と言ったはずだが。聞こえなかったのか、それとも理解出来ない程度の頭しかないのかね?」

 

「なっ…!ふん!言われなくても出てってやるわよ!」

 

そう言ってドアを力いっぱいバン!と閉めて鈴ちゃんは出て行った。べーだ。

…ふん。分かるまい。前世で中学から、ずっと仲良くしていた親友と死に別れた時の辛さも、心の底から信頼し、共に歩んできたビジネスパートナーが事故にあった時の心の冷え込みも。それらを全てなんとか乗り越えて終わった前世が、実は未だ終わらぬ人生の区切りでしかなかった絶望も、何もかも。

友達のいる心強さも。友達を失う悲しみも。もうとっくに味わってきたというのに。

 

…なんだかやっていられないな。今日はなんか、もういいや。

俺はベッドにゆっくりと背を預け、目を閉じた。


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