とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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思い付いたら書かずにはいられない病+いちゃラブ成分不足による自給自足
多分原作でもセーフだったからこれもセーフのはずとか思ってたらなぜかそこまで行かなかったので2つに分けます
一応本編時空ですが、まあ気にしなくてもおっけいです


【閑話】ある夏の日【前編】

ある夏の日。

 

「嫁よ!聞いてくれ!」

 

そう言って、いつものように勢いよく駆け込んできたのは銀髪を揺らしたラウラ。最近は金属製の自動ドアも理不尽に勢いよく叩きつけられることもなくなり、金属製のドアも安心していることだろう。何回もやめなさいとラウラに言ってきた成果だな。うん。

 

「やあラウラ。いらっしゃい」

 

そして俺は今日も今日とて、ラウラの話を聞くのである。ただ、最近はどうも夏の暑さにやられたのか。はたまた整備の仕事がダルいのか。なんだか最近は疲れがとれないというか、どことなくダルい。やるせないというか。仕事がいつも同じような内容で、退屈だという面もある。

俺がそんな感じであることに気付いたのか。ラウラに聞かれた。

 

「…嫁よ。何かあったか?」

 

「…いや、別に何もないよ」

 

何も無さすぎて毎日が退屈なまである。まあ、学校に通うでもなくただ毎日仕事をして、土日には休むか寝るか、趣味に費やすか。そんな日々だからね。

 

「ふむ。よし、嫁よ。今度直近の休みで二日間以上休める日はいつだ」

 

「直近?」

 

「うむ」

 

直近の二日間以上の休みか。そうだなぁ。今度の土日あたりかなあ。

 

「今度の金曜日の仕事終わりから、金土日かな」

 

「…ふむ。ならば嫁よ、今度の土曜日に出かけるぞ。土曜日の午前9時頃に学園入口に来てくれ。ああ、一泊するから着替えは用意しておいてくれ」

 

「んー。わかった」

 

「うむ。ではな」

 

そう言ってラウラはさっさと出て行ってしまった。あら。本当にこんな、ほとんど話もせずに帰るのは珍しい。普段なら甘えたがりの子犬の如く構ってくるのに。

ともかくその日はそれで終わった。

そして後日気付く。あれ!?あの子(ラウラ)一泊って言ってた!?あっれえ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ラウラに言われて朝から起き、9時ちょっと前にIS学園入口にやって来た。そしたらそこには一台の見覚えのないオープンカー。そしてその運転席には見慣れた銀髪。そう。ラウラである。ラウラさんちっちゃいね。かわいいが、ちょっと不安になる絵だ。運転席にちょんと座ってステアリングを握るラウラ。…うん。

…これに乗れと。そういうことだろうか。あ、ラウラがこっちに気付いた。そしたら俺のいるところにピタリと助手席のドアをつけてきた。やあ。

 

「おはようだ、嫁よ。さあ乗るがいい」

 

じゃあお邪魔して。よいせっと。

ラウラの運転するこの車はvw。ツードアのオープンカーだが、これゴルフかな?多分ゴルフカブリオレだと思う。

それにしたって、隣に座るラウラの違和感がすごい。ちびっこが車を運転してる感じ。まあラウラは今年で16歳のはずなので、ちびっこが運転してる感じで間違ってないな。うん。

 

「おはようラウラ。ところでこれ、ゴルフか?」

 

「うむ。ああ、荷物は後ろにでも置いておけばいい。ベルトは締めたか?」

 

「よっ…と。よし。いいぞ」

 

「ふむ。では、出かけるぞ」

 

そう言ってアクセルを踏む。ゆっくりと、しかし力強く加速して走り出す。普段いる場所から離れ、どこか遠くへ行くというただそれだけで、退屈さと塞いでいた気持ちが少し軽くなる。楽しみだ。

車で走って市街を進むラウラに聞いた。

 

「ところで今日は何処へ行くんだ?」

 

「うむ。どうにも元気がないようだからな。気晴らしがてら、草津温泉にゆくぞ」

 

「草津温泉?」

 

「群馬だ」

 

「グンマーか…」

 

未開の地、グンマー。断ったら不思議な力で死ぬ事になるという、謎多き場所である。陸路での進入が困難なため、群馬国際空港があったり、車と飛行機を乗り継いで埼玉から28時間かかるところに県庁があったり。

え?そっちじゃないって?知ってた。

 

「草津温泉行って何するんだ?」

 

「ふっ。言ったろう?気晴らしだ、と。まあ楽しみにしていろ。きっと後悔はさせんさ」

 

そう言うラウラの横顔は、いつにもましてイケメンだった。なるほど、これがおっぱいのついたイケメンというやつか…。まあラウラの場合、おっぱいというよりちっぱいだけど。おぱーいおぱーいちっさくたっていーちにんまえー。それコパン。

しっかしラウラさん、織斑教諭にますます似てきたね。今の不敵な笑い方とかそっくりよ?

 

「む?私が教官に、か。ふふん。それも悪くないな」

 

そう言うラウラたんたらご機嫌かわいい。さて、車は高速に乗ってひた走る。方角としては北西へ。つまり北だな!愛北者ですねわかりますん。儀式の人は素直に尊敬してる。あの人センスすげーよね。まさにBIG SARU。

さて、車で草津か。結構本気で距離あるよね。どれくらいだろうか。

 

「ラウラー。草津までってどれくらい?」

 

「そうだな。時間にして四時間程の予定だ。途中、サービスエリアで昼食をとろう」

 

「四時間かー。結構遠くまで行くんだな」

 

「ふふっ、嫁がどこか退屈そうだったしな。何か悩み事でもあるのかもしれんが、そういう時は少し気分転換するといい。なに、お前が教えてくれた通り、時間はたっぷりあるんだ。愛の逃避行と行こうじゃないか」

 

茶目っ気たっぷりに言うラウラさん。

やだ…。ラウラさんイケメン…!抱いて!

なるほど、ちっふーが女の子達からモテる理由の一端が垣間見えた気がする。今のラウラといい、普段のちっふーといい、こんなにもカリスマ溢れてたらそらモテるわな…。納得である。

それにしても、眼帯を外して両目が前を向くラウラの横顔が凛々しくてヤバい。多分あと二年遅かったら惚れてたレベルでカコイイ。ヤバい。ホントに。あ、まつげ長いね。銀色できらきらしててきれい。

 

そう言えばラウラさん。免許は?

 

「免許か。これでも私は軍属だからな。常にISが使える訳ではないし、他国での軍事行動をする時もある。それ故、国際ライセンスを所持しているから心配は不要だ」

 

ほへー。国際ライセンスか。たしか、日本はドイツとは個別に条約結んでたか何かで、日本はジュネーヴ、ドイツはウィーン条約だけど日本ードイツ間は大丈夫なんだよね。違うっけ?

 

「そうだ。しかし嫁よ、よく知っていたな」

 

「あー、国際ライセンスがあればどんな国や地域でも運転出来るじゃん!取らなきゃ!って一時期勘違いしてた時期があってね。その時調べて驚いた記憶があるんだ」

 

そうなのだ。小さな頃、日本の中だけの免許よりも国際運転免許証の方が便利じゃん!取ろう!って思ってました。そして中学高校と上がり、大学生になってから調べてびっくりした思ひ出。ああ、前世の話ね?今生は高専からIS学園に勤務してるから。

 

さて、車は高速に乗り、景色がけっこうな速さでびゅんびゅんと過ぎ去ってゆく。うーん、やはりこの風をきって走るってのは良いよなあ。本当に。

ラウラー、今何キロ出てる?

 

「140で流しているぞ」

 

ヒュウ!良いね!最高だね!やっぱりそれくらいは出したいよなあ。ま、オービスだけは注意な。

 

「む?何だそれは」

 

「オービスは要は自動速度違反取締機、かな。ああ、今あそこに標識があったろ。あれがもう1つ同じ標識がある。その後にオービスがあるから、その前には100くらいまでは落としてくれ」

 

「ふむ。よし、嫁よ。2つ目があったら教えてくれ」

 

「よかろう」

 

そんな話をしつつ、道中男女二人旅。うむ。ロマンのある響きだな。素晴らしい。やはり、常に同じ場所で同じようなことをして…というのは、人間を腐らせるな。少なくとも俺は駄目だ。やはり人生には刺激が欲しいのだ。俗に言うマンネリはごめんである。家庭とか持ったら死にそう。

 

「ほい二個目」

 

「わかった」

 

さて、しばらくすると多分皆が速度を落とし始めるはず…。ああ、やっぱり。皆よくわかってるね。うんうん。

 

「ラウラー」

 

「今100だ」

 

「おk」

 

うん。うむ。おっせえ。まあ実際は100キロ出てる訳だから遅いはずはないんだが、相対的に遅く感じるな。さっきよりも40キロ遅い訳だしね。

ま、こればっかりは感覚がマヒしてるから仕方ない。

 

「ふむ。嫁よ、次のパーキングエリアかサービスエリアで一度休憩にしよう」

 

「およ、もうそんなに時間経ってた?今何時よ?」

 

「今が10時26分だ。走り始めてからそろそろ一時間半だ。二時間に一度くらいは休憩を挟むつもりだから、そろそろ休憩だな」

 

「ええよー。ていうか、時間がすぎるの早いな…」

 

本当に。楽しい時間はあっという間に過ぎるっていうけどホントだよね。やはり俺は速さの中に生きているのか…。まあ常日頃からグループBの映像を視聴するくらいだし、車も速いのも好きだからね。うん。

俺もISに乗って、風をきって飛んでみたりしてみたいもんだよ。きっと、車でかっ飛ばすのとは違う楽しさがあるんだぜ。あー、空を自由に飛んでみたいよ。広々と大きく広がる、この蒼穹をさー。いいよなーIS持ち。

 

お、サービスエリア。ではでは一旦休憩ですな。

ラウラ、出発予定時刻は何時?

 

「そうだな…今が10時42分だ。1055(ヒトマルゴーゴー)でどうだ」

 

「良いよ。あ、ラウラ!たこ焼きあるよたこ焼き!一緒に食べない?」

 

「ふむ?後で時間があれば買ってもいいな」

 

「よっしゃあ!」

 

とりあえず二人ともトイレ休憩。ああ、意外にもけっこうな人がいるねえ?そうか、今夏休みの時期か。そりゃ親子連れとかもいるわな。

俺はラウラと二人きりでお出かけですけど。へへーん、美少女と二人きりやで!ええやろ!なお扱いは妹とか娘みたいな感じな模様。

でも今日はなんかこう、あれだ。イケメンな感じのラウラさんである。なんて言うんだろうね。自立した女性らしさ?みたいなものが溢れてるね。正直いつもの子犬ワンコなラウラも好きだけど、こんなイケメンなラウラも好き。いつものラウラはかわいい感じなんだが、今日のラウラは惚れ惚れするような格好よさがある。格好いい女の子の凛々しい感じって、正直きゅんきゅんこない?俺のハートにストレート過ぎてヤバい。悶え死ぬ。

これでラウラがもうちょこっとだけ背が伸びて、18歳くらいの凛々しさだったら真面目に惚れてた可能性があるね。それくらいばっちりキマってる。

さて、ラウラさんはまだ戻ってき…ああ、来た来た。

 

「ラウラ。たこ焼きどうする?」

 

「…ふむ、時間はあるし、慌てている訳でもない。…買いたいのだろう?」

 

ふふっ、とそう言ってニヤリと、それでいて優しく笑うラウラはやっぱり格好よくて。俺はラウラの差し出した手を握って、一緒にたこ焼きを買う列に並んだ。

 

「しかしこうやっていると、まさに夫婦だな」

 

「…ああ、若すぎる…というかラウラが幼い感じを残していることを除けばな」

 

ふふふっ、と嬉しそうに笑うラウラの顔を見ていると、いつものように否定する気すら起こらなかった。だって…だって…!

この子めっちゃかわいいんだもん…!多分両手が空いてたら顔を隠したくなるくらい、今のラウラはかわいい。めっちゃかわいい。すごくかわいい。ああああ…!

ぽわぽわ幸せそうに俺の手を握るラウラに、もう俺の平常心は崩壊寸前です…!

 

「らっしゃい!おや、かわいいお連れさんで。デートですか?」

 

「いえ、ちが「そんなところだ」…ラウラー…」

 

「何だ嫁よ」

 

「お、お熱いねぇ!ご注文は」

 

「たこ焼き1つ下さい」

 

「はいよっ!あい、毎度あり!」

 

「ありがとうございます」

 

たこ焼き屋のおっちゃんに冷やかされつつたこ焼きを購入。8個入り600円。いやー、こういうところで食べるのって、なんだか美味しく感じるよね。ね!あれ何でなんだろうね。やっぱり特別感かしら。

喉が渇いたので、二人ともサービスエリア内で飲み物を購入。夏なのでやはり汗をかくからね。水分補給は大事大事。ちなみに俺は爽健美茶。ラウラはブラックコーヒー。渋い。

ちなみに今日のラウラは私服である。

上は黒のキャミソールに黄色地の半袖パーカー。パーカーはポケットや袖口、フード部分や腰回りの部分がオレンジ色になっていて、非常に可愛らしくてグッド!

下はデニムのホットパンツで、左脚の太ももに巻かれた待機状態のシュヴァルツェア・レーゲンの黒と太ももの健康的な肌の色が目に眩しい。靴は動きやすさを重視してか、黒のハイネックスニーカー。靴下も黒で、クルーソックスと言われるくらいの長さ。つまりスニーカーからちょっとだけ見えるくらい。

普段している眼帯は今日はしていない。持ってきてはいるらしいよ?

ちなみに帽子とかはしていない。ただ、後ろで髪を1つにまとめているので、普段とは違う赴きがある。うーん、クールな感じ。クール可愛い?そうね。そんなん。ナイス。

 

日陰になっていて、エアコンの風が当たるベンチテーブルの1つにラウラと一緒に並んで座る。いやー、今日も暑い。夏真っ盛りって感じである。それでも北に来ている分だけ少し暑さもマシなんだけどね。

…アイスクリームにすれば良かったかな。いや、アイスクリームだとお腹壊すな。俺が。

とりあえず食ーべよ。いただきます。ぷす。あ、つまようじ二本ある。ラウラ、はい。

 

あふっ、あふい!あっふ、おっふ。ふう、ふうう。あふあふ、あっ…ふむ、むぐ、もぐもぐ。うん、美味い。ちょっと熱いけど、こういうのって熱いうちに食べるのが一番美味しいよね。あっふ、うんめえ!むぐむぐ。ん?

ふと隣を見ると、つまようじに刺したたこ焼きをふーふーしてこちらに差し出そうとしているラウラが。あ、これはあーんするやつか。

え。マジで?

周りにけっこう人がいて恥ずかしいんだけど。

やるの?

 

「ほら。あーん」

 

「あっ、あーん…むぐ」

 

しました。はい。良いんや、どうせ周りに知り合いはいないし。うん。これくらいならセーフよセーフ。何がセーフなのかは知らんけど。あふあふ。ふまい。

ふふふ、だがしかし。やられっぱなしの鹿波さんと思うなよ?まだこちらには1つたこ焼きが残っている。これをあーん仕返してやーーーラウラさん、ちょっと待っあふあふ、あっふい、ふおっ、ほふほふ。むぐむぐ。んむ。んまい。

しかしこれでラウラは2つ食べて2つあーんしてきたから残弾は0。さあ、こっちのターンだ!

 

「ラウラ」

 

「ん?…んなっ…!」

 

「はい、あーん♪」

 

「えっ、あっ、あ、あーん………あふっ、」

 

ラウラのちっちゃなおくちにたこ焼きを押し込む。あらやだ、なんかちょっとイケないことしてるみたいで嗜虐心をそそる。…ドSへの目覚めだったりはしないよね?

頑張ってちっちゃなおくちでもぐもぐしてるラウラを目で見て愛でる。ああ、可愛いなぁ。お持ち帰りしたい。今から一泊二日のお泊まり旅行ですけどね!これはお持ち帰りというんだろうか。謎。

 

ラウラが最後のたこ焼きを食べ終わり、二人とも行く準備が整ったところで再び出発。時刻は11時。うーん、何時くらいに着きそうですかね。風を切って進む、オープンならではのこの感じが心地良い。

 

「ラウラー。昼飯どうするー?」

 

「そうだな。サービスエリアで取ろうと思っていたが、少々遅くなっても良いか?」

 

「良いよ?ていうか、たこ焼きはやっぱり粉ものだからか腹ふくれるよね。俺としては、お昼はちょっと遅いくらいの方が良いかなぁ」

 

「良し。ならば湯畑あたりでの昼を予定としておこう」

 

そして再びぐいぐい風を切ってゴルフは走る。うーん、良い風だ。

 

「そういえばラウラ。さっき一回下道降りなかった?」

 

「うむ。今回私たちがゆく草津は少々交通網が面倒でな。下道高速下道高速下道だ。今は既に二回目の高速だが、この後の下道もけっこうな距離がある」

 

「結局何キロくらいあるんだ?距離的には」

 

「およそ200キロだな」

 

「じゃあ往復400か。ホントに結構な距離だな」

 

「たまには良かろう?」

 

「ま、悪くないさ」

 

本当、悪くない。ただでさえ旅行というのは気分がうきうきするものだし、同行者は頼りになるラウラさん。しかも普段は煩わしいと感じる周囲の人も居ないし、誰かの面倒を見なきゃいけないってこともない。……アカン、本当にラウラとだと結婚後の様子が想像出来る。まあラウラはドイツの軍人だし俺は日本のしがない整備員である。結婚、なんてことはないだろう。歳も8つも違うしな。ただまあ、今この瞬間だけは役得として楽しむこととしよう。いえーい。うへへ。

 

「ところで嫁よ」

 

「ん?」

 

なんじゃらほい。

 

「その…来年も、こうして旅行したい…と言ったら、迷惑か?」

 

「うんにゃ?むしろ個人的には大歓迎だなー。ラウラが嫌じゃなければだけども」

 

「そうか。なら、来年も二人きりでどこかへ行けると良いな」

 

「そうだねえ。ラウラが軍の方に呼び戻されなければ、だけどさ」

 

「まあ、な。ただ、それに関してはクラリッサの奴がーーー。ああ、クラリッサというのは私の隊の副隊長でな。信頼出来る、隊のまとめ役だ。

そのクラリッサが言っていたぞ。何でも、『隊長は絶対にそちらで頑張ってください!上層部は私たちが黙らせますから!』とな。

だからまあ、私はおそらく三年間は軍に呼び戻されはしないだろう」

 

「…ずいぶん信頼してるんだな」

 

俺がそう言えば、打てば響くように答えてくれた。

 

「ふふ、私の隊の副隊長だぞ?当然信頼している。それにーーー」

 

そこまで言ってラウラが突然黙った。ははーん?

さては、何かしらいろいろ相談してるんだな?そうすると、続く言葉は『相談にも乗ってもらっているしな』、かな?

そして、誤った日本の文化を吹き込まれてるんだろう。多分。原作的に考えて。

 

「…まあ、いろいろと助けてもらってもいるしな」

 

そう続けたラウラだったが、誤魔化しました感でいっぱいである。ラウラって本当、うそついたり出来ないタイプだよな。俺としては、むしろそれがいい…!

まあ深くは突っ込まないでおこうか。かわいそうだし。

ーーーなんて考えていたら下道へ。ラウラ、ここどこ?

 

「ここらは渋川になるな」

 

渋川…。知らない名前だ。当たり前か、普段来たりしないし。初めて来た場所だし。しかしのどかだねえ。こういうの、ちょっといいな。

 

「ここから草津までは下道だっけ?」

 

「そうだな。そして昼は湯畑あたりで、だな。その後は先に旅館へ向かうぞ。湯畑からとなればすぐそばだ」

 

「予約は?」

 

「当然済んでいる。何、今回は私に任せておけ」

 

ふふんとドヤ顔してるとこ悪いんですがラウラさん。下道で80はちょっと出しすぎやないかな?

 

「なに?あっ」

 

気付いた。高速降りてすぐは速度感覚麻痺してるからね。気をつけてね?

 

「うむ。そうだな」

 

そして道ゆくことしばらく。

 

「…ねえラウラ」

 

「うむ。後ろにいるな」

 

ーーー警察が。あ、信号が赤になって停まっていたら後ろから警察が出てきた。あれ、普通最初に呼び掛けとかしないの?

 

「はい、すいませんね。運転免許証を見せてもらえますか」

 

「これだ」

 

そう言って懐から免許と日本の翻訳証明…か?それらを取り出して見せるラウラ。うん、見せるだけで渡さないあたりはさすが。見せるだけでいいもんね。

一方の警察官は固まっている。そらそうよな。えっ?なにこれ。本物?みたいな顔してるけど。多分それ本物よ。

 

「…すいません、これは…ええと」

 

そう言って言葉を詰まらせる警察官。あ、信号青になったよラウラ。

 

「む?そうだな。もういいか?信号も青に変わったし、私は免許証を見せた。後ろに車も来ている。行かせてもらうぞ」

 

「あっ、はい」

 

返事を聞くか聞かないかのタイミングでアクセルを踏み込み、車は加速して行く。対応雑だねえ。

 

「ふん、実際問題無視したところで問題になどならんのだ。むしろ誠意ある対応だろう」

 

「まーね」

 

だってこの子、ドイツの軍人でIS操縦者だからね。多分何も違反していない訳だから問題になんてならんでしょ。…年齢以外は。ドイツの免許なんて詳しく知らん。

ただ、年齢については最低でも17歳、しかもある程度条件つきで同乗者が必要だったと記憶しているんだけど。違ったっけ?

 

「まあ、そこは軍属の特権、というやつだ。むしろ、軍の部隊長が車の1つも運転出来んという方が本国が困るらしいからな。一般の話であれば嫁の言う通り17歳からだ」

 

「へえ」

 

特例、という訳だな。

あ、そろそろいくつか温泉見えてきたね。もうだいぶ近いんやないの?

 

「距離としてはあと少しだが、まだしばらくかかるぞ?このあたりには温泉は多いみたいだしな」

 

そうなん?あ、川中温泉だって。松の湯ってところもある!

 

「ふふ、温泉はまた後でのお楽しみだ。それにしても嫁よ、ずいぶんと楽しそうだな?」

 

いやー、そりゃ普段来ないところ来てるんだぜ?テンション上がるってもんでしょ!あ、川原湯だって!

 

「ふむ?そうすると、そろそろ昇龍岩があるぞ。川原湯は駅名にもなっていたな」

 

…なんかラウラ、詳しいね?調べたん?

 

「ふっ、嫁を旅行に誘ったのは私だぞ?当然、必要な知識は調べてあるとも」

 

ーーーラウラ一人で?

 

「…いや、シャルロットにも少しだけ手伝ってもらった」

 

あー…。なるほどね。

うん?

それ、シャルロットは今回の旅行のこと知ってるの?

 

「ああ。…あの笑顔には逆らえなかった」

 

一体何があったんだ。軍人のラウラが逆らえなかっただと…!シャルロットさん強すぎない?どういうことかな?とか聞かれたんだろうか。

 

「初めはどこか良い旅行先を聞いただけなんだ。そしたら何故旅行に行くのかと聞かれてな…。その、なんだ。…すまない」

 

あー、うん、まあシャルロットなら悪いようにはせんやろうし。ええよええよ。かまへんかまへん。

それにしたって道がくねくねしてきたね。そろそろ?

 

「ああ、もうしばらくすると、だ。今一時か。なら、あと三十分もしないうちに着くだろう」

 

おk。いやー、それにしてもけっこう遠くまで来ましたねー。

 

「来たなー」

 

なんかラウラが語尾伸ばすと、変。

 

「さりげなく失礼なことを言ってないか、嫁よ」

 

「ごめん」

 

「あとであーんの刑だな」

 

「へいへい」

 

なんてぐだぐだ感。あー、でもこういうのええなぁ。ていうかうどんとかだったらあーんも何もないような気はする。

お、あれがラウラの言ってた草津の入り口。多分。道の駅なんとか運動公園。

 

「さて、そろそろだ。まずは食事といこう」

 

「はいよ」

 

たしかにそろそろお腹は空いてきたな。時刻は一時半過ぎ。で、どこ行くん?

 

「嫁よ。和洋中。どれが良い?」

 

「とりあえず肉」

 

「よし」

 

そう言うとラウラは目的地が決まったのか、国道292号線を北上。駐車場に車を停める。あ、着いた?

ふーん、ここですか。お、食事処か。ええねえ。

ラウラがルーフをかけて車から出るのに合わせて俺も外へ。うーん。IS学園とはまた違う空気!この遠出しました感。素晴らしい!

既に一時四十分を過ぎたというのに店内はまだまだ賑わっており、少し待つ必要がありそうかな?

と思ってたら運よくすんなり空いた。やったね。

ちなみにここは一階だけでなく二階もあるみたい。でも二階はなんかけっこう狭そうな感じかな?一階の座敷席の端に通されたが、この長机を使っていた隣の団体さんはちょうど出ていくタイミングだった。そろそろ空きはじめる頃合いなんかな。

 

さてさてなーににしようっかな。お!しょうが焼きとな!俺これで。ラウラは?

 

「私は…そうだな。天ぷらうどんで」

 

おけ。決まり。…きっとラウラはあーんのことなんて忘れてるはず。だから言わない。にっしっし。

 

おー来たね…ってでっけえ。なにこれ。トンカツ?いや、しょうが焼きですか。そうですか。

もぐもぐうん美味い。柔らかいし肉厚。しかしてくどいということもなく優しい味付け。これはなかなか…。ご飯が進む!ラウラがいるから孤独じゃないグルメだな。うめえ。もぐもぐ。

ラウラはラウラで天ぷらうどんを一心不乱に食べ進めている。しかしけっこうなボリュームのしょうが焼き。うんまい。腹が減ってるとばくばく入るね。もぐもぐ。

 

ふう。ごちそうさまでした。お味噌汁で口の中がベタつく、ということもなくなったし、いやはや満足である。ラウラはまだふうふうしながらつゆを飲んでた。…先にお会計しとこ。あとトイレ。さてさて、いやー美味しかったね。余は満足じゃ!

 

伝票を持ってお会計。そしてトイレに行って戻って来たらラウラにジト目でにらまれたでござる。何故に。

 

「嫁よ。気持ちは嬉しいが、私が出すつもりだったぞ」

 

「いやまあほら、こっちとしては全部ラウラ任せで支払いまで頼むとなると心苦しい訳よ。人助けと思って、ここは支払わせてくれよ」

 

「まったく…。今回はまあ、既に過ぎたことだし嫁の言うこともわからない訳ではない。

だか!しかし!これ以後に関しては先に言ってくれ。いいな」

 

「はいよ」

 

だか!しかし!と来たので、まるで全然!かと思ったのに違った。悔しいでしょうねぇ…!ってか。悔しい。

という訳で、多分これ以後俺のお財布からお金が出ていくタイミングは無さそうです。なんかこうね?ラウラたん俺にお金出させるつもり微塵もないみたいなんだよね。全部自分が出す気満々というか。一体どうしたというのか…。

 

さて、車に戻りいざ宿へ。ここからすぐだっけ?

 

「うむ。ではゆくぞ」

 

「はいなー」

 

という訳でゴルフをコロコロ転がして10分。駐車場に車を止め、持ってきた荷物を持って旅館の中へ。

旅館はいかにも和風な老舗という雰囲気を漂わせており、なかなかに落ち着いた佇まいである。ほー、いいっすねえ。

中へ入ったラウラが何やら確認している。ああ、予約してたんだっけ?そう言えば言ってたね。

 

「うむ、嫁よ。確認が取れたぞ。先に荷物だけ預けてしまおう」

 

「ほいさー」

 

ということでフロントというか帳場ていう方がしっくりくるところに荷物を預けて再び車へ。

さあ、観光じゃー!ところでラウラさん?

 

「ん?」

 

さっき、湯畑へは徒歩でどうぞ。とか書いてあったけど。湯畑へ行くんじゃないの?

 

「それは後からでも充分だ。明日帰る前に寄ってもいいしな。それよりも、今から嫗仙(おうせん)の滝へ行こう」

 

おうせんの滝?なんじゃそら。

 

「なに、行けばわかるさ。私自身、楽しみゆえに少々浮かれている」

 

そう言うラウラはたしかにちょっと落ち着きがない。どこかそわそわしているというか。まあ、とりあえずは行ってみましょう!レッツゴー!

 

ということで車でしばらく。駐車場に車を停め、嫗仙の滝へ。おお、緑に溢れた遊歩道。山の自然や明るい森のような雰囲気が非常にゆったりと落ち着いた感じを醸し出している。ああ、こういうの良いねえ…。ね、ラウラ。

 

「ふっ。嫁よ、何だか子どものようになっているぞ?」

 

うるせいやい。にやにやしながら言うな。最近こういうゆったりした自然の中でってことが無かったんだい。ええやんけ。

て言うか人いなくね?

 

「まあ、ここはどちらかというと温泉街からは少し離れているからな。戻る時には他の観光客にも会うと思うぞ」

 

なるほど。隠れた名所的な?

 

「隠れた名所的な」

 

頷きを返された。

良いねえ良いねえ!期待が高まるねえ!

あ、見えてきたね。あら、これは…。

 

「ほう…」

 

嫗仙の滝は、どちらかというと迫力のある滝では無かった。ただ、木々の緑の中に赤い岩がこちらに向かって広がってきており、その赤く見える岩にいくつもの水流の白い線を書き起こしたかのような、幻想的で面妖な雰囲気の滝だった。

何というか…これ、写真で見たらきっと不気味な絵になるんだろうな。ただ、目の前のひんやりとした空気を運ぶ静かな滝は、ただひたすらに異世界に迷い混んだような、そんな不可思議な魅力があった。

 

俺もラウラもしばらく無言でじっと嫗仙の滝を見つめていた。ふとラウラと手が触れる。ラウラを見ると、同じようなタイミングでラウラも俺の顔を見ていた。…あれ、ラウラ。なんか顔赤い…よ?

あの、ラウラさん。なんで目を閉じてるんですかね。

あとちょっとだけ唇つきだして、んっ!とかちょっとどういうことですかってちょっと待ってホントあかんってあああ手をそんな風にいわゆる恋人繋ぎとかされると本当にーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕方ない。覚悟を決めよう。そう思ってラウラと右手を繋いだまま、左手をそっとラウラの頬に寄せる。

ラウラは俺の左手が触れたことにぴくっと反応し、しかし目を閉じたまま。

カラカラに喉が渇く。心臓がドクンドクンと暴れるほどうるさく感じる。俺のすぐ前には、いつもは純真に話かけてくれる銀髪の美少女(ラウラ)の緊張した顔がある。

そして俺は、そのままラウラの桃色の唇にゆっくりと顔を近付けて。

そのままそっと、その唇にキスをした。




壁|ω・)…
壁|・ω・)ピョコ
壁|・ω・)ラウラさん描いてみたので置いておきますね?

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