とあるIS学園の整備員さん   作:逸般ピーポー

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お待たせしました。

じわです。


水子の霊

「束様、お茶が入りました」

 

 

そう言って、盆に2セットのカップとソーサーを載せたクロエ・クロニクルが入ってきた。

 

 

俺の前のテーブルに1セット、そしてクソ兎の背中側にある作業机の上に1セット、それぞれ置いてどっか行った。

 

 

てか、俺の分もあるの?

意外。

 

 

淹れたばかりらしいその紅茶は、温かな湯気が立ち上っており、それと同時に微かな香りが俺の鼻腔を刺激する。

 

おー、いい香り。

 

 

俺は今まで、なんとかティーとつく飲み物はひたすら舌に合わず、飲んでは悲しみ、飲んでは悲嘆にくれていた。

 

 

さて、この紅茶らしき飲み物はいかに。

 

 

 

ちなみに毒やら睡眠薬が入っている可能性は当然ある。

が。

 

 

そんなもんは知ったこっちゃない。

 

 

こちとら死のうが死ぬよりツラい目に会おうが、そんなものは気にしないという姿勢で生きているのだ。

 

 

仮に死んだらそれまでよ。

 

 

そんなわけでいただくことに。

 

 

あっち。

 

 

俺は猫舌なので、フーフー冷ましてズズズとちびちび飲むしかないのだ。

隣で静かにカップを傾けて味わっているクソ兎など知ったことではないのだ。

 

 

 

 

 

嘘です。

 

 

やっぱりムカつきます。特にその憐れみの十全に表れてる顔が!このクソ兎…。

ぶっとばすぞこのやろう(粗暴)。

 

 

あ、美味い。

 

 

なんていうか、こう…。

 

 

スッと鼻を抜ける香り。

しつこくないあっさりとした風味に、これは美味いと思わせる舌触り。

 

 

んー、二度に渡る人生で、初めて美味しいと思える紅茶に出逢った。

 

 

 

美味いものは良いよ。

人の心を豊かにしてくれる。

 

 

うん、あのクロエとかいうのには優しくしよう。

 

 

 

しかしこれ、何茶だ?

 

 

 

「クロエークロエークロエちゃーん」

 

「はい」

 

 

呼んだら来た。

素直やなこの子。

 

 

「これ、何茶?」

 

「こちら、紅茶はダージリンティーです」

 

ほほう、この紅茶はダージリンティーというのか。

 

 

「美味い。ありがとう。あと今度、機会があればアッサムとかアールグレイとかも頼みたい」

 

「ありがとうございます。機会があれば」

 

 

そう言ってクロエちゃんは再びどこかへ行った。

 

 

クソ兎にはもったいないほどの良い子である。

 

 

もしクロエちゃんが困るような事があったら、全力で手助けしよう。

 

 

 

そんな一幕がありながら、この移動式ラボはドイツへ。

 

 

そうそう、俺が潜水艦だと思っていたのは移動式ラボであった。

 

 

ちなみに教えてくれたのはクロエちゃん。

その時にクロエちゃんはクロエと呼べばオーケーというお許しももらった。

 

 

途中で適当な花屋で花束を3セット購入し(ちゃんと地上に出た。不法停泊だったが)、ドイツのデザイナーベビー製作工場跡へ。

 

 

工場跡につくまで、クソ兎と俺の間に会話は一度たりとも存在しなかったことを明記しておく。


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