『AKは火星で使えるのか』という疑問から
ビショップの脳内に連想ゲームで
広がった新しい世界です。
メインではないので更新は
不定期となります。
負の歴史
俺は古い電子端末のくすんだ画面を
何度かタッチして録音データを再生した。
もう何度も聞いて内容は暗記しているが、
辛くなった時にこうして聞くと
父さんが側にいる気がして落ち着く。
椅子を動かす音や
古いライターに火を付ける音が聞こえて、
ため息とともに話は始まった。
『そうだな....まず向こうの話と
俺の身の上話をしようか。
俺が産まれたのは2035年、
そうさ、第三次世界大戦の真っ只中だ。
戦争は2050年に終わったが
紛争とかテロは俺が産まれる前から
減るどころか増えたらしい。
それであんたみたいな
難民の数も上昇の一途を辿った。
大戦で経済が疲弊した先進国は
次々と受け入れ拒否の政策に転換していく中、
彼らが目指した場所は日本だった。
あんたも来たんだろ?
俺か?俺はお袋が日本人だ。
親父はアメリカ人。
2人とも死んだけどな。
俺が育った日本は大戦の影響を受けなかったが
人口減少は昔っからの悩みの種らしい。
それで難民を受け容れてた。
だが彼らの希望の星はあっさりと
地獄に変わったよ。
日本政府は一定の労働者を受け入れると
それ以上は火星移住計画の実験体にしやがった。
無慈悲に火星へと送り込まれた彼らは
数十名の日本人宇宙飛行士とともに
月に送られ、巨大な宇宙船に詰め込まれると
氷漬けにされて火星に送り込まれた。
ん?お前は宇宙飛行士じゃ無いだろうって?
まあ落ち着けよ。今から話す。
親父と同じ軍人としての道を選んだ俺は
数年後の火星移民募集に自衛隊を辞めて応募した。
あ、そうか…自衛隊ってのは
日本の国防軍みたいなもんだと思ってくれ。
今となっちゃ頭がおかしいと思うよ。
ああ、笑ってもらっても構わない。
でもそん時の俺には失うものが無かったんだ。
親父は大戦で行方不明、
お袋は出張先で起きたテロで死んだ。
幸か不幸か、見事合格した俺は
難民たち同様に氷漬けにされてここに来た。
ここの第一印象か?
そうだな…最悪…かな。普通だろ?
でも人間誰でもそんなもんだと思うぜ。
そっからの人生はみての通りだ。
今じゃこうして傭兵生活だ。
ここには軍隊なんてねえから
なかなか儲かってるよ。
それじゃあもういいか?
この後は害虫駆除の依頼が入ってんだ。
すぐ戻る。』
どうして録音したのかはわからない。
でもこの端末は母さんが遺した唯一の形見で、
この録音データは父さんの生きた証。
他人から見ればただの骨董品だが
俺にとっては大切な宝物だ。
俺は録音が終わると同時に
AK-74の組み立てを終え、
マガジンを挿し込むと肩に下げ、
録音データの中の父さんと同じように
火星産の巨大昆虫の駆除に
向かうために家を出た。
次回
1「傭兵の日常 1」