俺はアパッチを追い払うと、
追い立てられていた道では無い方の道を
走っていた。
まあやつらのことだ。
この先に待ち伏せしてるか
後ろから追っかけて来てるか。
そしてその両方か。
まあ諦めてくれたなんてことはないだろう。
火星において貴重な航空機、
もっと言えば虎の子のアパッチロングボウを
一機ポシャってもう一機は大破させられたのだ。
向こうの指揮官はお顔真っ赤だろう。
相手の指揮官の顔を想像して
思わずにやけていた俺は、
サイドミラーにピンク色に塗装された車が
映り込んだのを見逃さなかった。
ハンヴィーにも見えるその車は、
日本の自衛隊が採用する高機動車だ。
屋根の幌は外され、
MINIMI軽機関銃が載っている。
5.56×45mmNATO弾が
1分間に725発飛んでくることになると
知っている俺は、背筋に寒気を感じた。
俺の車は防弾加工されていない。
向こうが撃ち始めたらこの車と俺は蜂の巣だ。
高機動車の上でなにかが光って見えた瞬間、
俺はブレーキを踏んだ。
急激に減速した俺のバギーを
数発の5.56×45mmNATO弾が貫き、
車内で跳弾する。
続けて後ろから突き飛ばされるような
感覚が俺を襲い、
俺のバギーはバランスを崩すが、
俺はすかさずハンドルを切った。
俺のバギーが高機動車と反対向きで
横付け状態になる。
助手席側の窓を通して見えた運転手の
驚いた顔に俺は
助手席に乗せていたAK-74の銃口を向ける。
だが俺のAK-74が火を吹くことは無かった。
やべ……セーフティー…
高機動車はそのまま通り過ぎ、
俺はそのまま取り残される。
「しくっタァぁぁ!
クッソ、HK45使えば良かったッ!!」
俺はその場に停車したついでにAK-74の
セーフティーを解除してフルオートの位置で
止めると、
再び助手席に乗せて
車のアクセルを八つ当たりするように
思いっきり踏み込んだ。
バギーは尻を振るように180度回転すると、
俺に車体の腹を見せて
停車したままの高機動車めがけて
スピードを上げる。
MINIMIがこちらを向くが、
俺は体を助手席側に倒して隠れる。
バギーは止まることなく高機動車に衝突した。
エアバッグが膨らむが、
このバギーの設計者は俺のように
伏せて衝突させるドライバーがいることなど
考えるはずもない。
エアバッグの保護を受けられなかった俺は
思いっきり体を打ち付けた。
「ぐがっ…はぁ」
肺の空気を一気に吐き出した俺は
痛みに顔を歪めるが、
それを耐えてブレーキを踏む。
バギーは止まったが、
何かが崖を転がり落ちる音が
聞こえてくる。
よし…うまくいった…。
俺は体を起こし、
居るはずなのに居ないドライバーを
必死に守ろうとしているエアバッグを
ナイフで切り裂き、
さっきまで高機動車が映っていた
フロントガラスを覗き込む。
もちろんそこにはヒビが入っているだけで、
高機動車などいない。
俺はAK-74を片手にバギーを降りると、
崖の下を見下ろした。
高機動車は崖を10m近く転がり落ちて
止まっていた。
さすがはハンヴィーを基にしただけあって
車体はガラスを貼り替えれば
まだ使えそうだったが、
乗っていた防衛軍兵士たちにとっては
その頑丈なボディーが凶器となったようだ。
車外に投げ出された機銃手は
腕がありえない方向に曲がっており、
運転手は頭から血を流して動かない。
俺はバギーに戻ると
ヒビの入ったフロントガラスをぶち破り、
峡谷の出口へ急いだ。
次回
10「砂漠の海兵たち」