はーい学級閉鎖ぁー、ヒマー。
俺は端末にクレジットをチャージし、
アーガスの酒場に向かった。
店の傍にバギーを停め店に入ろうとしたとき、
突然ボロボロのドアが大男とともに吹き飛び、
中から歓声が聞こえる。
「なっ…」
思わず驚きの声を漏らした俺は
赤茶色の砂が積もる道路に頭から突っ伏して
動かなくなった大男を覗き込む。
見覚えのある顔だ。
「…ベン?大丈夫か?」
今店の中から吹っ飛んで来た
このベンと言う大男は、
アメリカが作ったエリア02からやって来た
傭兵部隊の長だ。
生きているのか怪しいベンの上を
乗り越えて俺は店に入る。
まず目に入ったのは
頭を抱えるアーガス。
そして男だらけの酒場とは思えないほどの
黄色い声援をあげる変態ども。
そして最後に俺を睨みつける
サングラスをした女の傭兵だ。
「アンタ、アイツの仲間?」
「いや、違う。」
「あっそう…。」
俺がいつも使っている席は
ベンを吹き飛ばしたと思われるおっかない女が
座ったため、少し離れた席に着く。
「アーガス、何があった?」
「店の修理代がバカなアメ公と
そこのおっかない女のせいで増えた。」
やっぱりか。
「聞こえてるわよ。」
「聞こえるように言ってんのさ。」
どんなにやばそうな客でも
恐れないこの親友は、
その女にも例外なく言い返す。
「とりあえず…悪いな。
こんなに野郎ばっか集めて。」
「おまけにただ1人の美人さんが
相当おっかないときた。
まあ、そう思ってくれてるうちはまだいいさ。
とりあえずこれ、返しとく。
異常はなかったぞ。」
俺は差し出された自宅の鍵と
警報装置の端末を受け取ると
総督府へ連絡してくれた礼を言い、
乾いた喉を潤そうとウィスキーを注文する。
何口か飲み、
俺は集まった傭兵たちに報酬を
支払う用意を整える。
「アーガス、ステージ借りるぞ。」
「ああ、いいよ。」
ステージと言っても
床から一段上がっただけだが、
少なくとも注目を集めるくらいはできる。
俺はステージに登って咳払いをすると、
サングラスをしたまま挨拶をした。
「エリア01防衛戦に参加してくれた傭兵諸君、
今日はありがとう。
クライアントのタカシだ。
提出してあった請求書を元に
これから報酬の支払いを行う。
名前を呼ばれた順に来てくれ。
まずは…ヘルキャット傭兵事務所。
次に…」
未だに店の外に伸びているベンの
領収書を除いて全ての報酬を支払った
俺はベンの領収書をポケットに突っ込んで
視線をあげた。
するとさっきのおっかない女が
目の前に立っていた。
「うぉっ!?」
「失礼ね、人の顔見て驚くなんて。」
「ああ、すまん。どうした?
お前がボコった大男以外の支払いは
全部終わったぞ?」
「それとは違うわ。
アンタ、今日の観測任務を受けてたんでしょ?」
「ああ、それがどうした?」
「2人っきりで話したいの。
明日の0時半にこの住所まで来て。」
「は?」
何を言いだすかと思えば、
突然のお誘いである。
俺は困惑するが、それを察したのか、
女は真剣な表情で
俺の端末に位置情報を転送してくる。
「真面目な話。
今日の峡谷での爆発についてよ。
別に来なくてもいいけどそこは任せるわ。
それじゃあ、また今度。」
俺は峡谷の爆発と聞いた瞬間、
なんとなく身の危険を感じた。
誰かにスコープの中心に
捉えられているような感覚だ。
「待て。」
「何?」
「名前を聞いてない。」
金髪のポニーテールにサングラスのその女は
忘れてたという表情を浮かべる。
「私の名前はナタリー。苗字は無いわ。」
ナタリーはそのまま店を出て行った。
ナタリーが店を出たことで
空いた俺のいつもの席に付くと、
早速アーガスに質問される。
「あの女、なんて言ったんだ?」
俺は身の危険を感じていたため、
親友を巻き込まないように嘘を付く。
「デートのお誘いだ。
全く金持ちは辛いぜ。」
「そんなら店の修理代に
何ドルか落としてってくれよ。」
軽口を叩いてうまくごまかすと、
俺は店を出た。
次回
5「濡れ衣」