Red Planet   作:Bishop1911

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あー、過去の俺が決めた設定が
今の俺の首を締めていく〜


6「プロジェクト2056」

ホテルのロビーを出た俺は周囲に

憲兵が居ないことをさっと確認し、

途中の売店で売られていた雑誌を買うと

そのままカフェに向かう。

ナタリーの後ろにある椅子に座り、

お互いに背を向けあった状態で話を始めた。

 

「早かったわね。」

 

「人のことは言えないだろ。

それより目立ち過ぎだ、場所を変えよう。」

 

「アンタが見つけやすいように

目立ってたのよ。

奥のVIPルームに来て。

店員に『2035』と言えば入れるわ。」

 

そう言い残すとナタリーは

気配を感じさせずにいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

俺は指示通りに店の奥に行くと、

まるで執事のような服装の店員が立っていた。

その店員に例の数字を告げると店員は

無言で俺を通した。

 

奥の方に進み、俺が入った部屋は

あまり広くなかったが、

大人2人が話し合うには十分な広さだった。

俺はナタリーと向かい合って座ると、

サングラスを外した。

 

「それじゃあ聞かせてもらおうか。

今日、いや昨日の峡谷爆破の件から

俺が憲兵隊に消されかけてる理由までな。」

 

「そうね。

でも最初に私が

言わないといけない事があるわ。」

 

そういうとナタリーはサングラスをとり、

左目にかかった髪をかきあげた。

 

「なっ........」

 

「人の顔を見て驚くなんて失礼ね。」

 

いや、驚かない方がおかしいだろう。

出会うことはそうそう無いだろうと

思っていたオッドアイの火星人と

出会ったんだから。

 

驚きのあまり絶句する俺をよそに

ナタリーは話始める。

 

「その....峡谷ではアンタのおかげで

助かったわ。

アンタがいなかったら私は今頃

アリの胃袋の中だった。」

 

「話が見えないんだが....

峡谷でお前と会った覚えは無いぞ?」

 

「手を振ったら

振り返してくれたじゃない、忘れたの?」

 

俺の中で1つの謎が解けた。

俺はナタリーの胸ぐらを掴むと

壁に押し付けて怒鳴った。

 

「お前かッ!!

お前がアリの巣を吹っ飛ばしたんだろ!」

 

「私じゃ無いわよ!」

 

「じゃああそこで何をしてた!?」

 

「それを話すために読んだのよ。」

 

俺はゆっくりとナタリーを下ろすと

席に座った。

 

「まずは私の身分を教えるわ。

国連軍火星支部のナタリー曹長よ。

出身はイスラエル。」

 

「奇遇だな。

俺の母さんと同じだ。」

 

「いいえ、奇遇なんかじゃ無いわ。

私の母の名前はナオミ・ダヴィード。」

 

「なんだと....」

 

俺は頭の中が真っ白になった。

ナオミ・ダヴィードは俺の母さんの名前だ。

 

「もうわかったでしょ、タカシ。」

 

「ね....姉さん?」

 

「そうなるわね。父親は違うけど....」

 

「ありえねえッ!

いや、仮にそうだったとして

お前は地球産まれだろ?

それに峡谷の爆破にどう関係してくる!?」

 

「なぜかはわからないけど

火星支部で目覚めたらこうなってたわ。

身体能力も上がって外見も中身も

オッドアイになった。

私が峡谷に行った理由は2つあるの。

まず1つ目はエリア01で計画されていた

プロジェクト2056の阻止。

2つ目はアンタを助けること。」

 

「2つ目はどうでもいい、

プロジェクト2056ってなんなんだ?」

 

ナタリーが一瞬悲しそうな表情を

浮かべたように見えたが、

今の俺にはそんなことを気にする余裕はない。

 

「普通の人間や火星人よりも

遥かに高い身体能力を

持つオッドアイを捕らえること。

それ以上は情報が無いわ。」

 

「だがオッドアイは数が少ないだろ?

俺が知ってるオッドアイは

今のとこ俺とお前だけだ。」

 

「日本の火星移住計画は知ってるわよね?

あの計画で最初に人類が

火星に降り立ったのは2052年。

そして目の赤い、いわゆる火星人が

産まれ始めたのが2053年よ。

そして2056年。

記録上初めてのオッドアイが確認されたわ。

しばらくして

オッドアイを持って産まれた子は

確実に高い身体能力を

持つ事がわかってきたの。

でもそれからはオッドアイの事例は

ぱったり消えた。」

 

「どういう事だ?」

 

「噂はたくさん。

エリア01が隔離しているとか

オッドアイは一時的に発生した

病気だったとかね。」

 

もしどちらかの噂の通りだとしたら、

俺やナタリーがこうしていられる状況は

明らかに矛盾していた。

 

「でもそれだと俺がここにいるのは

おかしいだろ。」

 

「そうよ。

エリア01は何か隠してる。

プロジェクト2056は

今に始まったことじゃない。」

 

俺はこれまでの話を思い返しながら

少し考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の仮説だが....いいか?」

 

「ええ、お願い。」

 

「プロジェクト2056は

人体実験か何かだと思う。」

 

「根拠は?」

 

ナタリーはまるで子どものように

身を乗り出す。

 

「おそらく最初は被験体集めだろう。

それで十分集まったから

俺たちはモルモットになってないんだ。」

 

「それだとアンタを

狙う理由にならないわよ?」

 

「最後まで聞けよ。

多分集めた被験体に何かあったんだろう。

峡谷の爆破はエリア01が仕組んだ演技で、

峡谷の任務の依頼が俺に来たのは

俺を爆破犯の疑いをかけて

ついでにお前を消すためだ。

でもお前は生き延び、俺はアリを撃退。

第一段階が失敗したから今度は俺を狙って

家に来たわけだ。

俺が死んだとしても憲兵隊は俺を拘束して

自白させたとかなんとか言えば、

オッドアイをテロリストに

仕立て上げて堂々と被験体を集めれる。」

 

「筋は通ってるわね。

私はその線でもう少し調べてみる。

連絡先は渡すから

何かあったら連絡して。」

 

そう言うとナタリーはVIPルームを

出て行き、

数十秒開けて俺も外に出た。

 

 

 

 

 

その直後、俺がさっきまで居たカフェが爆発し、

俺は地面に叩き付けられた。

店内から黒煙が溢れ出て、

うめき声や泣き叫ぶ女の声が

耳鳴りの合間に聞こえる。

 

クソッ....俺を殺すのが狙いじゃないな....

 

俺は朦朧としながらもホテルに戻り、

ドアマンから荷物とライフルを

ひったくる。

俺はエリア01を脱出すべく、

宇宙港の外へ走った。




次回
7「大脱出」
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