マシュの姉が逝く【完結】   作:VISP

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本当はお正月にやる予定だったけど、サービス業に祝日は存在しないから仕方ないネ。


マシュ姉特別篇 カルデア学園 その1

 何やかんやあってこの時空は平和である!

 

 何やかんやあってこの時空では死んでも次の日には生き返る!

 

 何やかんやあってこの時空は学園ハートフル(ぼっこ)ストーリーである!

 

 以上の悪乗りでもおKという方のみお読みください。

 

 

 

 ……………

 

 

 

 「Zzz……。」

 

 藤丸立香の朝は遅い。

 今時の男子高校生らしく夜更かし上等で、その上朝は寝汚いからだ。

 そんな彼の部屋に、ノックの音が響く。

 

 「先輩、先輩。起きてますか?」

 

 故に、彼を起こすのはこの愛らしい後輩の務めだ。

 とは言っても、年齢は同じで、あくまで人生の師として尊敬しているだけだが。

 学園の制服に身を包んだマシュが立香の部屋へと入ってきた。

 

 「先輩、先輩、藤丸先輩。起きてください、もう朝ですよ。」

 「う~~ん…。」

 

 ゆさゆさと揺さぶられ、唸り声を漏らす立香。

 しかし、未だ覚醒には至らない。

 今日は平日であり、このままでは遅刻してしまうし、何より彼女の大事な姉の朝食が冷え切ってしまうだろう。

 

 「先輩、起きてください。先輩、起きないと…」

 

 ガラリと部屋の窓を開け、布団をべりっと引き剥がし、感情を抑えた声ではっきりと告げる。

 

 「朝ご飯、お向かいのアルトリアさん達にあげちゃいますよ。」

 「それはダメーッ!?」

 

 ガバ!と起き上がる立香。

 あのエンゲル係数を垂直上昇させる暴食の化身×8体の前にあっては立香の朝食などそれこそ朝飯前で消えてしまうだろう。

 そうなれば、お昼までずっと飯抜きという男子高校生には地獄の様な午前中になってしまう。

 

 「起きましたね。おはようございます先輩。」

 「おはよ、マシュ。すぐ行くから僕の分も取っておいてね。」

 「ふふ、大丈夫ですよ。ちょっとした円卓ジョークですから。」

 

 慌てた立香に、マシュはくすくすと微笑みながら部屋から出ていく。

 

 「では早く着替えてくださいね。私も姉さんも下で待ってますから。」

 「は~い。」

 

 欠伸を噛み殺しながら、のそのそとベッドから降りて着替え始める。

 寝起きの弱い立香と言えど、同級生と後輩の美人姉妹の朝食を逃すなど有り得ない。

 3分とかからず着替えて階段を下り、リビングへと入る。

 

 「おはようございます先輩。今日は7時11分と、いつもより少しだけ遅くなってしまいましたね。」

 「うん、改めておはようマシュ。」

 

 テーブルの上に箸やコップ、茶碗等を配膳していたマシュ。

 制服の上からエプロンをかけてなお分かるご立派な胸部装甲、そして可愛らしい薄黄色のひよこのエプロンに毎度ながらほんわかする。

 

 「…立香、おはよう。」

 「おはよう、サドゥ。」

 

 そしてもう一人、この家の住人が姿を現す。

 リビングの隣のキッチンから、皿に盛られた朝食を手に現れたのはマシュの姉にして立香の幼馴染であるサドゥだった。

 マシュ以上に病的な白い肌と痩せぎすな肢体を持った彼女は、しかし間違いなく姉妹であると言える程にマシュと似通った美少女だ。

 そんな彼女が薄紅色のエプロンをつけて己に微笑んでくれる。

 見慣れたとは言え、その光景を目にした立香は朝から心が温かくなった。

 

 「今日は和食だよ。遅刻しないように直ぐ食べよう。」

 「うん、待たせてごめんね。」

 「ううん、今盛り付け終わった所だから。」

 

 そう言って控えめにほほ笑む彼女を見て、何故か立香は泣きたくなった。

 

 

 ……………

 

 

 私立カルデア学園

 

 この学校は将来を担う超一流の人材の育成を目指しており、実際そういった人材を輩出してきた小中高大一貫校だ。

 中途編入や卒業も可能で歴史こそ20年にも満たない浅いものだが、卒業していった人材は誰しもがその分野にて一流とされる者達であり、有名人だらけだ。

 そんな高校に立香達が入学できたのは、偏にマシュとサドゥの父親であるランスロットがこの学園で教師をしているからだ。

 加えて、仕事は忙しく、滅多に早く家に帰る事は出来ない。

 そのため、家には子供のマシュとサドゥしかいない。

 それを心配したお隣の藤丸一家が何くれとマシュとサドゥの面倒を見たため、立香と彼女ら姉妹の関係は物心ついた頃から始まった。

 そのため、マシュの気持ちを知り、教育者として一廉の人物たるランスロットは三人の進学先としてカルデア学園を紹介した。

 無論、コネや裏口ではなくちゃんと受験させてではあるが。

 高校受験でカルデアに入学した三人は、そのまま仲良く同じクラスへと入学を果たしたのだった。

 

 「おーうお前ら!相変わらず朝っぱらからイチャイチャしてんな!」

 「モーさんおはよー。」

 

 朝、教室へとやってくると、真っ先に声をかけてきたのはモードレットだった。

 女子なのに男子制服を着て、指摘されると「オレを女と言うんじゃねぇ!」と逆切れしたり、しょっちゅう悪戯して問題を起こす構って系困ったちゃんであるが、根は良い人なので、入学時からの知り合いという事もあり、三人とは特に仲の良いクラスメイトの一人だった。

 

 「よう、マシュにサドゥ。あんまこいつを甘やかすなよ。その内刑部の奴みたく引きこもりになっちまうぞ。」

 「いやー、流石にああはならないよ。」

 「流石にそうなったら心を鬼にする。」

 「あはは…先輩ならそんな事にはならないですよ。」

 

 刑部とは刑部姫という二年の先輩だ。

 ゲーム愛好会(会員数4名)の零細愛好会だが、コアなメンツが集まっており、立香も一応幽霊会員として所属している。

 

 「おっと、そろそろチャイムか。んじゃまたなー。」

 「はい、モードレットさんもまた後で。」

 「…また。」

 「うん、またね。」

 

 こうして、三人のカルデア学園の一日が始まった。

 

 

 ……………

 

 

 一限目は現国、ケイローン先生。

 人格・体力共に申し分無しのカルデア学園きっての名教師だ。

 時折、男子生徒を見る目が怖い・部活では熱血で体罰上等・乗馬部を複雑な目で見ている等の問題もあるが、基本的に超良い人だ。

 

 二限目は数学、バベッジ先生。

 何故か自作の蒸気機関式パワードスーツに身を包んだ老教師だが、その数学に関する知識は本物だ。

 でも夏場のスチーム噴出はマジで止めてほしいと切に願われてる人でもある。

 

 三限目は歴史、エレナ先生。

 外見はどう見ても小学生なのだが、これでもバツイチの合法ロリ人妻である。

 その小さな体にたくさんの知識を詰め込んでいるが、頑張って授業しても微笑ましく見られるだけである。

 熱烈なファンクラブが存在し、常に見守られている。

 

 四限目は体育、スカサハ先生。

 このお方の授業はマジで死ぬので気合いを入れなければならない。

 何故高校の体育で軍事教練同然の訓練を受けねばならないのか、コレガワカラナイ。

 時折非常勤のクー・フーリン先生こと通称五次ニキが代役を務める時もあるが、その時ばかりは極普通の体育でサッカーやソフトボール等になるのだが、迂闊に歓声を上げるとどこからともなく槍が降ってくるので注意。

 

 お昼休みは45分間。

 食堂と購買はアルトリア一家を中心に毎日熾烈な生存競争が発生するので、弁当組は一切近寄る事はない。

 下手に行くと欠食児童達に弁当を奪われかねないからだ。

 

 五限目は化学、パラケルスス先生。

 時折、「良かれと思って…」と言って生徒に新薬を盛っては大問題を起こしたりするが、それ以外はとても良識的な先生である。

 が、一部の生徒や先生から安請け合いして怪しい薬を作るので、やっぱり変人ではあるのだろう。

 

 六限目は保健体育、ロマニ先生。

 ゆるふわ系お兄ちゃんなこの先生、実はガチガチのエリートなお医者様だったらしいのだが、何故か学園で教師なんかやってる不思議ちゃんである。

 生徒達の多くから大人気なのだが、先生の多くや一部生徒からは何故か蛇蝎の如く嫌われている人物だ。

 

 

 「まぁ高校の保健体育なんて、極論すれば『学生の内は子供作んな!健康に気を付けろ!』の二点なんだけどね。」

 「オブラートぉぉぉぉぉ!!!」

 

 現在六限目、開始早々に大暴投してきたロマン先生に、立香は全力で突っ込んだ。

 

 「ドクター最低です。」

 「…ドクターェ…。」

 

 病弱で、幼い頃は家のかかりつけ医であったドクターと仲の良い二人は、呆れた目を向けている。

 

 「こ、子供って…オレは別にそんな…。」

 「まぁまぁ!では子供を作らず健康に気を付けてさえいれば、その先もOKという事ですね!」

 「ドクターロマン!たとえ真実であろうと言ってはいけないものがあります!今日という今日は許しません!そこに直りなさい!」

 

 こうして、今日もまたカルデア学園のカオスな日常は過ぎていくのだった。

 

 

 ……………

 

 

 夕暮れの下、長い影がアスファルトへと伸びている。

 生徒達の殆どが下校し、誰もいなくなった校庭。

 

 そこに、人ではないナニカがいた。

 

 「ふん、よもや真相がこれとはな。」

 

 黒いコートにポークパイハットを纏った、色白の青年。

 そして全身から稲妻に似た禍々しい魔力を放出し、周囲の全てを威圧していた。

 

 「ははははははははははははは!!!まさかまさかまさか!こんなお粗末なものが願いか!」

 

 青年は笑う、嗤う、哂う。

 しかして、その実彼は一切の愉悦を感じていない。

 寧ろ、怒りが振り切れて笑う事しか出来なくなっているのだ。

 それらは全て、いつの間にか校庭中の影から這い出てきた、影の獣達へと向けられていた。

 

 「ならば良い、良いだろう。オレはお前達の願いを阻もう!この理不尽へと反旗を翻そう!それこそが我が怒り、我が憎悪、我が恩讐!我が黒炎は、請われようとも救いを求めず!我が怨念は、地上の誰にも赦しを与えず!」

 

 轟轟と、黒炎が燃え上がる。

 何時しか獣達の数は百を超えていた。

 それでもなお、黒衣の青年の戦意…否、恩讐は聊かも減じていなかった。

 

 「我が行くは恩讐の彼方……『虎よ、煌々と燃え盛れ/アンフェル・シャトー・ディフ』ッ!!」

 

 こうして、誰も知らないまま、誰も覚えない戦いが、誰も分からないまま始まった。 

 

 

 

 

 

 




アンリマユと言ったらホロウだからね、この展開も是非も無いよネ。
一応三話で終了予定です。
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