魔性のゲーム
青い月が輝く空の下、かなり昔の貴族のような精緻な服を着て海賊のような羽飾りの乗っている帽子をつけた一人の男が大きな鎌を持って異形と戦っていた、その異形は男の約三倍ほどの大きさで手が八つあり内六本は鎌を持っている。
背中からは羽が生えており、沢山の腕で交互に連続攻撃を叩き込んできている。
異形が鎌を振るう動きを察して男は颯爽と躱し、その勢いを殺さずに鎌で切りつけた、切った時にバチバチバチッという音とともに異形の体を紫電が駆け巡る。
どうやら男の鎌は特殊な仕掛けを用いているらしく、攻撃がヒットすれば紫色の雷光が迸り異形に追加ダメージを与えている。
負けじと異形は辺り一面を黒い霧で覆い隠した、その間に男は骨のようなものを取り出し右手でぎゅっと握った後骨をしまった、そして霧に紛れて忍び寄り怒涛の連続攻撃を仕掛けるが男は目にもとまらぬ速さで回避しその場には煙のようなものが漂っているだけだった。
男はその後攻めに転じ、多少の攻撃を受けても気にせず、縦横無尽に敵を切り刻んだ。受けたはずのダメージは敵の返り血を浴びて速攻で治癒されてき、暫くすれば異形のHPを削り切り異形は霞のように消滅した、その際に風が吹き荒れ男の左半分しかないマントが翻った。
薄暗い部屋の中、一人の青年が非常に集中した面構えでコントローラーを操作していた。
「やっぱ、三週目にもなると堅いし二三発食らうと即お陀仏だな、流石メルゴーの乳母、実質ストーリー上のラスボスは手強いなぁ」
青年はボヤキながらも的確に正確に自身の分身ともいえる画面の中のキャラクターを操り、着々と敵を追い詰めていく。
「そろそろカタを付けるか……」
そう呟くとより一層集中してボスの一挙手一投足見逃さぬように瞬きすることすら忘れ画面を食い入るように見つめている、画面の中ではボスの攻撃を食らいながらも相手の血を浴びて傷を癒しどんどんとHPバーを削っていく様子が映し出されている。
「これでとどめじゃ!」
男はそう吠えるとボスのHPバーの赤い部分が完全に消え去り、ボスは消滅していったのだ。
「よっし、これで漸く四種目に突入できるぞ!」
青年は心底嬉しそうに、まるでずっと欲しかった玩具を与えられた少年のように、顔面に花を咲かせていた。
【獣狩りの夜が始まる】
とある一部のコアゲーマーに非常に熱い支持を持つゲームのお馴染みの文章だ、アクション系のゲームは苦手だったけど、他にはないダークファンタジーな世界観に惹かれてつい購入してしまった。
やり込めばやりこむほど深みに嵌ってしまう魔性のゲームだが、初心者には全く優しくなくチュートリアルで心折れる人も多数出るほどの所謂鬼畜ゲ―だ。
だからこそ、ある程度慣れた人は新規ユーザーになにかと世話を焼いてしまうものだ。私もその一人で何十人、何百人もの人の協力をし、勝利へと導いてきた。
一応このゲームはレベル制で、最初に選ぶ過去によって初期ステータスが変わる。
過去は九種類もあり、初心者は選択を間違うと悲惨な目に合うことは確実だ。
特筆なし
君の過去は平凡で、故に幸せだった。すべての能力値が平均的。
村の生き残り
君は、滅びた村の生き残りだった。 生きる力、生命力が高い。
悲惨な幼年期
君は、悲惨な幼年期を送った。 それは耐える力を育てた。
暴力的過去
君には暴力的な過去がある 愚かだったが、力はついた
プロフェッショナル
君は何らかの専門家である 探偵、教授など、技術が高い
従軍経験
君には従軍経験がある 力も技術も、鍛えられた
一族の末裔
君は古い一族の末裔である そう信じ、血統を誇っている
過酷な運命
君の過去は過酷な試練が続いた それには意味があったはずだ
生まれるべきではなかった
君には何もない、低能力者だ。 生まれるべきではなかった。
この九つで初心者は一族の末裔、過酷な運命、生まれるべきではなかったを選んでしまって心折れていく人が多い、かっこよさを重視するのもいいが、それはよほどの忍耐力がない限り二キャラ目以降で選ぶのが良い。
因みに私は最初のキャラが過酷な運命、二キャラ目が一族の末裔と生まれるべきではなかったでかなり苦戦した経験がある、一応メインキャラはつい先ほどメルゴーの乳母を倒したため四週目に突入することが可能となっている。
このゲームは私の中ではもし二次元にいけるならいきたくないゲームナンバーワンだ、このゲームはNPCイベントのほとんどが救いなどなく、PLのリアルSAN値をゴリゴリと削っていくのに加え全体的にホラーチックに作られ敵の造形も恐怖を感じるものばかりだからだ。もしこんな所でゲームクリアまで進まないと帰れないといわれたら確実に気が狂うことだろう……。