学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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番外編 ノエルの日記

 

 

10月◀︎日

 

獅鷲星武祭が終わってから1週間近く経過した。私はフェアクロフ先輩らチーム・ランスロットが引退したので新しく生徒会副会長に就任して、ある仕事の為に1人でアスタリスク中央区に向かった。1人は緊張したがお兄ちゃんは忙しいので仕方ない。

 

その帰りに凄いことが起こった。街を歩いていたら界龍の序列1位『万有天羅』范星露さんに話しかけられた。星露さんは壁を越えた人に勝ちたいなら自分の作った私塾に入れと言ってきた。

 

壁を越えた人とはフェアクロフ先輩や星導館の天霧さん、クインヴェールのシルヴィアさんなど桁違いの人だと理解した私は星露さんの作った私塾『魎山泊』に入ることを決めたのだった。

 

新しく会長になって苦労しているお兄ちゃんを助ける為にも。

 

 

10月◎日

 

今日は星露さんが言う魎山泊に初めて行く日だ。場所は再開発エリアと聞いて少し怖かったが、ある場所に踏み入れた途端不思議な空間にいた。万有天羅は何でもありと聞いたことがあるが本当のようだ。

 

魎山泊では星露さんとの実戦をやりながら自分の長所を伸ばす事をやるのを知った。両方共辛かったが、2、3時間やっただけで強くなった自覚があった。

 

 

 

11月◇日

 

いつものように魎山泊に行くと、星露さんか今日からはアシスタントも一緒だと言ってきた。誰かと思って待っていたら、私が来てから5分程後にレヴォルフの序列2位『影の魔術師』比企谷八幡さんがやってきた。

 

比企谷さんを見た私は驚きと嫌な感情が生まれてきた。私はこれまで彼と話した事はないが、先の獅鷲星武祭で私は彼が指導するチーム・赫夜に負けたし、お兄ちゃんの事を馬鹿にした事もあった事もあって苦手意識もあった。

 

この人とは上手くやっていける自信はない。そう思いながらも鍛錬を開始したが、そんな考えは直ぐに吹き飛んだ。

 

比企谷さんは私との実戦の中で私に何が足りないのか、能力者としての立ち回り方など様々な事を丁寧に優しく教えてくれて、鍛錬が終わる頃には苦手意識が殆ど無くなっていた。

 

鍛錬が終わってからの帰り道、比企谷さんと色々話したがその際にお兄ちゃんを馬鹿にした事も謝ってきたし、この人と上手くやっていけると思った。

 

しかし何故比企谷さんはレヴォルフの人間なのだろう?

 

 

11月❇︎日

 

今日街を歩いていたら偶然八幡さんに会った。八幡さんも暇だから街を歩いていたようなのでトレーニングに付き合ってくれと頼んだら了承して貰い、八幡さんと一緒に中央区にあるトレーニングジムに向かった。

 

今日こそ八幡さんに鎧を使わせるように頑張ったが届かなかった。やはり能力者としての八幡さんは強くて私の一枚も二枚も上手だ。

 

でも私も確実に強くなっているので頑張っていきたいと改めて思った。

 

その事を八幡さんに告げると、八幡さんは優しく笑って私の頭を撫でてきた。その後私が焦ると八幡さんは謝ってきたが、別に嫌ではなかった。お兄ちゃんの抱きしめるのとは別の意味で凄く気持ちが良かったのだから。

 

気分が向いたらまた撫でてくれと頼んだら、八幡さんは若干照れながらそっぽを向いて、私はそれが可愛いと思った。

 

 

 

 

 

12月×日。

 

夜、生徒会室に入るとお兄ちゃんとレティシア先輩が倒れていた。私は急いで保健委員を呼んで医務室に運んで貰った。

 

それから数時間して、お兄ちゃんが目が覚めたので何があったと聞いてみたら、銀翼騎士団候補生の葉山先輩がショッピングモールで八幡さんを殴り飛ばした事がニュースになったらしい。実際にネットを見てみたら八幡さんが殴られている動画があった。

 

お兄ちゃんは翌日に事情聴取をするようだが、八幡さんは悪い事をしていないと思う。八幡さんは他校の生徒、それもガラードワースと仲の悪いレヴォルフの生徒だけど凄く優しいのは知っているから。

 

 

 

 

12月◎日

 

今日、お兄ちゃんが昨日の事件の真相を知るべく、八幡さんを殴った葉山先輩とその時にいた面々を呼び出した。

 

夕方になる頃にニュース速報が出たので見ると葉山先輩の序列が剥奪されたニュースが流れていた。

 

生徒会室に入ってお兄ちゃんに事情を聞くと、昨日葉山先輩が八幡さんの妹にデマを吐いたりチーム・赫夜を侮辱したから、八幡さんが喧嘩を買ったら葉山先輩が殴ったらしい。

 

話が事実なら八幡さんの葉山さんの方が悪いからお兄ちゃんの判断は間違っていないと思った。ただ帰り道、高等部の校舎にて八幡さんの悪口が沢山聞こえたからこのまま平和に終わる事はないとも思った。

 

 

 

 

 

 

1月☆日

 

新年初の魎山泊。八幡さんと模擬戦をしたら遂に八幡さんに影狼修羅鎧を使わせる事が出来た。しかしそこからは一方的となって何も出来なかった。これが壁を越えた人間の強さかと私は戦慄してしまった。王竜星武祭まで後一年少し。それまでに影狼修羅鎧を使った八幡さんから一本取りたいと思った。

 

トレーニングの後に私は八幡さんに警告をした。警告の内容は最近ガラードワースで八幡さんの否定運動が起こっている事について。ガラードワースにいるし闇討ちはしないと思うが念には念を入れて欲しかったので警告をした。

 

 

 

2月14日

 

今日はバレンタインデー。いつもはお兄ちゃんとクラスの皆にチョコをあげるが、今年はそれに加えて八幡さんにも渡した。

 

その時にレティシア先輩も一緒だったが、長いガラードワースの歴史の中でも、レヴォルフの生徒に渡したのは私とレティシア先輩だけだと思う。

 

ちなみに八幡さんのバッグに大量のチョコが入っているのが見えた。八幡さんが女性に慕われるのは予想出来ていたが何となく面白くなかった。

 

 

 

3月14日

 

今日はホワイトデー。私とレティシア先輩は八幡さんに呼び出されてお返しのクッキーを貰った。1つ食べてみたら凄く美味しかった。戦闘力に加えて家庭力も高い八幡さんが羨ましく思った。

 

しかしガラードワースに戻ると問題が生じた。どうやら八幡さんからクッキーを貰っているのを見られたようで沢山の人が私に話しかけてくた。

 

魎山泊の事を知られたくない私は、以前ナンパされていた所を助けて貰ってバレンタインにチョコを渡したから今日お返しを貰ったと嘘を吐いた。

 

それを話すと皆は八幡さんの事を屑呼ばわりして関わらない方が良いとか助けたのも私を利用する為だ、なんて酷い事を沢山言ってきた。

 

私はそれを聞いて凄く嫌な気分となった。チーム・ランスロットを倒したチーム・赫夜と繋がりを持つ八幡さんの事を悪く思うのは仕方ないかもしれないが、屑呼ばわりするのは絶対に間違っていると断言出来る。

 

私は嫌な気分になったので寮に帰ってから八幡さんのクッキーを食べてストレスを発散した。

 

 

 

 

4月♡日

 

今日から学園祭が始まる。私達ガラードワースは基本的に毎日仕事で一杯だが、私は界龍のイベントに出たかったのでお兄ちゃんに頼んだ結果初日の3時間だけ自由時間を作ってくれた。

 

初日の午後に界龍に行くと恋人2人を連れて歩く八幡さんと鉢合わせした。話すと八幡さんも体術を鍛えるために例のイベントに参加するようだった。

 

エントリーを済ませて控え室に向かうと、クインヴェールの序列35位のヴァイオレット・ワインバーグさんと鉢合わせした。八幡さんによると彼女も魎山泊で八幡さんの指導を受けているようで、控え室にて私と八幡さんは、セシリー・ウォンさんに惜敗したワインバーグさんの愚痴に付き合った。

 

暫くワインバーグさんの愚痴に付き合っていると八幡さんと虎峰さんの試合が始まった。八幡さんは能力抜きで戦っていたので終始虎峰さんに押されていたが不屈の闘志で耐え抜いて、それどころか虎峰さんの体術を学び利用して引き分けに持ち込んだ。私も強くなったがまだ足りない。八幡さんのように壁を越えた人も努力しているのだから、もっと鍛錬の時間を増やす事を決めたのだった。

 

そして私の試合となった。序盤は私が押していたがセシリーさんが雷の虎を出すと私の呼び出した茨を次々に破壊して巻き返してきた。

 

このままだと負けると判断した私は八幡さんの影狼修羅鎧をモデルとした聖狼修羅鎧を纏って反撃に出た。それによってセシリーさんの雷は無効化したがセシリーさんに攻撃を当てる事が出来ずに引き分けに終わった。

 

試合の後に八幡さんが技の名前は口に出さないようにしろと注意を受けたので、私は了承してから八幡さんと別れてガラードワースに戻った。すると八幡さんの予想通りガラードワースの人達は色々聞いてきた。

 

その際に八幡さんの事を散々悪く言ってきたので私は我慢出来ずに怒鳴ってしまった。淑女としては失格かもしれないが構わないと思った。八幡さんは凄く優しい人なのを知っているので、八幡さんの事を何も知らないのに悪く言う人を許せなかった。

 

もしもまた理由もなく八幡さんの事を侮辱するのを聞いたら生徒会で取り締まろうと本気で考えた。お兄ちゃんもその件によって胃を痛めているので了承してくれるだろうから。


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