学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡はシルヴィア・リューネハイムを見送る

 

 

「……という訳でルサールカの使う純星煌式武装『ライア=ポロス』は使い手が5人揃わないと起動出来ない代わりに非常に強力な能力を持っているわ」

 

アスタリスク市街地にあるカフェ『マコンド』にて、俺は今現在お菓子を食べながらフロックハートからルサールカの使う純星煌式武装についての説明を受けている。

 

オーフェリアの身体の治療に付き添いで治療院に行った帰り道、偶然アイドル活動を終えたフロックハートと鉢合わせしたので夕食がてらルサールカの対策について話し合う事になった。

 

にしてもデザートのスペシャルストロベリーパフェ美味いな。てか俺の隣でパフェを食べているオーフェリアが可愛過ぎる。今直ぐにでもハグしたい。つーか眼鏡のウェイトレスが意外そうな表情で俺達を見てるがフロックハートの知り合いか?

 

「へぇ、そんな珍しい純星煌式武装もあるんだな」

 

また純星煌式武装については謎が多いからな。そういった物もあるだろう。

 

「……『ライア=ポロス』は元々一つの純星煌式武装。だけどウルム=マナダイトの力が強過ぎたから扱える人がいなくて、五つに分割したのよ」

 

パフェを食べながら感心しているとオーフェリアがそう言ってくる。

 

「随分詳しいな」

 

「……昔彼が『ライア=ポロス』の製作者、ラディスラフ・バルトシークについて調べていたからそのツテで知ったのよ」

 

ディルクが?まだ随分と厄介事っぽいな。てか……

 

「ラディスラフ・バルトシークだと?どっかで聞いたような……」

 

「ラディスラフ・バルトシークは煌式武装や純星煌式武装に関する有名な科学者よ」

 

フロックハートが俺が悩んでいると教えてくれる。そうだ、昔テレビで論文が評価されたとかでニュースに出てたな。

 

俺が漸く記憶を掘り起こしているとオーフェリアが爆弾を投下してくる。

 

「そう、そして『翡翠の黄昏』を引き起こした犯行グループの思想的指導者「それ以上はダメよ」……っ」

 

フロックハートは珍しく慌てた表情をしてオーフェリアの口を手で塞ぐがしっかりと聞いてしまった。マジか?アスタリスク最大のテロ事件の思想的指導者って……こいつは予想以上の大物だな。

 

俺が驚く中、フロックハートはオーフェリアの口から手を離してオーフェリアを睨む。

 

「貴女ね……こんな公共の場であの事件の話を口にするのは止めなさい。壁に耳あり、よ」

 

「フロックハートに賛成だな。お前の力は知っているが万一のこともあるし次からは気をつけろ」

 

『翡翠の黄昏』は中学生以上なら誰でも知っているアスタリスクのタブーだ。なかった事にされてはいるが、その話題に触れる際は細心の注意が必要とされている。

 

「……ごめんなさい。次からは気をつけるわ」

 

オーフェリアはそう言ってペコリと頭を下げる。気をつけてくれよ。お前は色々な連中が欲しがっているんだし。万一のことがあったら嫌だ。

 

とりあえず『翡翠の黄昏』の話はそろそろ終わらせた方がいいだろう。

 

「まあ今はルサールカの『ライア=ポロス』の話をするぞ。フロックハート、そんでモニカとマフレナの使う純星煌式武装の固有能力は何だんだ?」

 

ミルシェとトゥーリアは破砕振動波を放つ技を持っていてパイヴィは音圧防壁を使うのは知っているがマフレナとモニカの使う純星煌式武装の固有能力は知らん。前回の獅鷲星武祭では特に変わった技は使ってなかったので2年で新しく身につけたのだろう。

 

「モニカ使う『ライアポロス=メルポーネ』は阻害弱体化……敵の身体能力の低下と星辰力の集中を妨害する力があって、マフレナの『ライアポロス=タレイア』の能力はその逆、味方の力を強化するものよ」

 

「うわ面倒臭いな。ちなみにその能力の効果はどの程度なんだ?」

 

「ルサールカはチームとしての試合は獅鷲星武祭以降してないからモニカの弱体化については知らないわ。ただ普段のトレーニングの記録を見せて貰った際にマフレナの能力は大方把握してるけど、強化されたミルシェの実力は……そうね、鎧抜きの貴方と互角より少し上といった所ね」

 

マジか?鎧抜き俺と互角かそれ以上って……。今の赫夜は鎧抜きの俺と戦った場合勝率は5割くらいと殆ど互角だ。それに加えてモニカの弱体化も使われたら100%負けるだろう。

 

「マジか……ルサールカがシルヴィの取引に応じてくれて良かったな」

 

「そうね。シルヴィアには感謝してるわ。それで作戦なんだけどチームの練度が劣っている以上初めに乱戦に持ち込むわ」

 

だろうな。そうすりゃ連携もないし、思考伝達が出来るフロックハートがいる赫夜に分がある。

 

「そんで防御能力の高いパイヴィを真っ先に潰すって訳だな」

 

「ええ。その後にトゥーリアを倒してミルシェを叩きに行くのが理想的だわ。問題はどうやってそこまで持ち込むかだけど……」

 

フロックハートはそう言って思考に耽る。確かにマフレナとモニカの固有能力がない以上それがベストな選択だが……

 

 

 

 

「いや、パイヴィを倒した後はトゥーリアじゃくてモニカを叩くべきだと思う」

 

俺がそう返すとフロックハートは意外そうな表情を見せてくる。

 

「理由は?モニカの純星煌式武装の固有能力が使われない以上トゥーリアの方が厄介だと思うけど?」

 

「確かにな。だが本当に固有能力を使わないかわからないだろ?」

 

「……え?」

 

「だから、もしルサールカの連中がシルヴィの曲より勝ちを優先したら間違いなく使ってくるぞ。だったら向こうが舐めている内にモニカかマフレナは潰しておきたい」

 

向こうはシルヴィとの交渉に応じた事から間違いなく赫夜のメンバーを舐めているだろう。しかしもしも負けそうになったら使ってくるかもしれん。マフレナは最後尾で指揮をする人間だから倒すのは厳しいが舐めている時のモニカなら倒せない相手じゃないし潰しておいた方がいいだろう。

 

「……そうね。所詮は口約束、シルヴィアの曲より勝ちを優先してくるならモニカを倒した方が良いわね」

 

フロックハートが納得した表情を浮かべているとフロックハートの端末が鳴り出した。

 

「ごめんなさい。今から仕事が追加されたからもう行くわ。貴方の案は参考にさせて貰うわ」

 

フロックハートはそう言って金を置いてカフェから出て行った。さて、俺達もそろそろ帰るか。

 

しかしその前に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまんオーフェリア。パフェを食べているお前の写真を撮っていいか?」

 

可愛過ぎる。今直ぐ写真に撮りたい。

 

オーフェリアは了承したので最高の一枚を撮る事が出来て満足だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

後に俺とシルヴィの端末の待ち受け画像になった事は言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3時間後……

 

 

「んっ……ちゅっ……んんっ、んあっ……」

 

現在、俺は風呂場にて湯船に浸かりながらシルヴィと舌を絡めている。シルヴィの舌を舐めているとシルヴィの唾液が俺の口に注がれる。

 

シルヴィがアスタリスクの外に出て仕事をする時は、前日にシルヴィのしたい事をさせてあげると決めている。

 

この時はオーフェリアは一切干渉してこない。俺もシルヴィもオーフェリアが一緒にいても問題ないが『シルヴィアはいつも忙しいから前日くらい構わないわ』と却下している。マジでいい子過ぎる。オーフェリアマジで天使。

 

って訳で、俺は今シルヴィとお互い一糸纏わぬ姿で身体を絡ませながら舌を舐めている。……既に何十回も経験しているがシルヴィのファンにバレたら殺されそうだな……

 

「んっ……ちゅっ……八幡君、明日から寂しくなっちゃうよ……」

 

キスをしながらシルヴィは寂しそうな表情をしてそう言ってくる。止めてくれ、前日でこれなら明日の空港で泣きそうだ。

 

「仕事だから仕方ないだろ?今日は好きなだけ甘えていいからそんな悲しそうな顔はすんな」

 

一緒に付いて行きたいのは山々だがそれは結構厳しい。もしもレヴォルフを卒業してもシルヴィがアイドルを止めなかったら俺とオーフェリアはシルヴィのボディガードの仕事をしてでも付いて行くんだが……学生の今は結構厳しい。

 

そう思いながらシルヴィを優しく抱きしめる。全裸で抱き合ってもそこまで動揺しなくなった俺は末期かもしれん。

 

「……うん。だから今日は思い切り甘えさせて……んっ」

 

「はいはい。シルヴィは本当に甘えん坊だな」

 

「こんな姿を見せるのは八幡君だけだよ……」

 

シルヴィが再度唇を重ねてくるので俺は舌を出しながらシルヴィのキスを受け入れた。はぁ……早く卒業してずっと一緒にいたいものだ。

 

俺はそう思いながらシルヴィが満足するまでキスを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日……

 

「じゃあ2人とも、そろそろ時間だから行くね」

 

北関東多重クレーター湖上のフロートエアポートの特別ラウンジにて俺とオーフェリアが学校をサボってシルヴィア見送りに来ている。

 

「ああ、頑張れよ」

 

「……気をつけて」

 

「ありがとう。最後に2人に一言ずつ」

 

そう言ってシルヴィは最初にオーフェリアに抱きつく。

 

「万が一私にもしもの事があったら八幡君をよろしくね」

 

「……縁起でもない事を言わないで。八幡には貴女が必要よ。絶対に帰ってきなさい」

 

「もちろんそのつもりだよ。ありがとうね」

 

「……別に」

 

オーフェリアは頬を染めて目を逸らす。最近になってオーフェリアはドンドン感情が豊かになっているから俺としては嬉しいものだ。

 

「あ、後八幡君が他の女の子にデレデレしないように監視もよろしくね」

 

「待てコラ。それは「安心して。他の女子にデレデレしないようにしっかり見張っておくわ」……ひでぇ」

 

確かに何回か前科はあるけどさ、てかオーフェリアも即答するなよ

 

内心ため息を吐いているとシルヴィは納得したように頷いてからオーフェリアから離れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきます、貴方」

 

ちゅっ……

 

俺に触れるだけのキスをしてくる。一瞬だけだったが俺の胸の内を瞬時に幸せで一杯にしてくれる至高のキスだった。

 

「ああ。気をつけて行ってこい」

 

シルヴィの頭を撫でながら激励をするとシルヴィは笑顔を見せながらウィンクをして搭乗ゲートに歩いて行った。これで1ヶ月は会えないだろう。わかってはいたが寂しいものだな……

 

「……大丈夫よ。直ぐに会えるわ」

 

俺の心の内を理解したようにオーフェリアは俺の手を優しく握ってくる。すると寂しさが薄れた気がする。

 

「……ありがとなオーフェリア」

 

「どういたしまして」

 

 

俺とオーフェリアはお互いに笑顔を交わす。

 

それから15分、俺とオーフェリアはシルヴィが乗った飛行機が見えなくなるまで手を繋いだままその場所から一歩も動かなかった。

 

飛行機が完全に見えなくなるとお互いに頷いて帰路についた。

 

頑張れよ、シルヴィ……




次回からリーゼルタニア編に入りますのでよろしくお願いします

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