学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

110 / 324
飛行機の中にブリザードが吹き荒れる

寒い

 

俺比企谷八幡は素直にそう思った。

 

いや、まあ今は冬だし寒いのは仕方ない。でもさ……王室専用機のジェット機の中にいるのに寒いっておかしくない?

 

理由はわかっている。何せ原因となっている存在が俺の目の前にいるんだから。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……綾斗、お前は本当にクローディアの胸を揉んだのか?」

 

「……説明を要求する」

 

目の前でドス黒いオーラを撒き散らして天霧に詰め寄っているリースフェルトと沙々宮が原因だろう。リースフェルトにしろ沙々宮にしろ俺より大分弱いが……

 

(……ヤバい怖過ぎる……シルヴィやオーフェリアもそうだったが女の嫉妬は怖過ぎる)

 

 

今のリースフェルトと沙々宮は、俺が前にフェアクロフ先輩の胸を揉んだ時にそれを目撃したシルヴィとオーフェリアが出したオーラと同種のオーラを出しているからかメチャクチャ怖い。

 

今は刀藤が寝ていて良かった……もしも起きていたら刀藤もドス黒いオーラを撒き散らしそうだし。

 

現に天霧もメチャクチャビビっている。気持ちはわかる。俺も同種のオーラを見てチビりかけたし。

 

「あ、いや、俺は……」

 

「「綾斗?」」

 

2人は更に詰め寄ってくる。まるで天霧はフェアクロフ先輩の胸を揉んだ時の俺で、リースフェルトと沙々宮はシルヴィとオーフェリアみたいだ。

 

「も、揉んだんじゃなくてクローディアが半ば無理やり揉ませたというか……」

 

だろうな。天霧の性格はある程度知っているが自分から揉みに行く人間とは思えない。

 

そんな中、俺の心の底にいたずら心が生まれ始めた。そしてその気持ちは徐々に大きくなり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで天霧、エンフィールドの胸は柔らかかったか?」

 

以前シルヴィが俺にした質問をしてみた。

 

いきなり俺から質問されたのが予想外だったのか天霧は……

 

「え?柔らかかったけど……?」

 

つい馬鹿正直に答えてしまった。馬鹿か……そんな事を言ったら……

 

「……ほほう。どうやら相当楽しんだようだな」

 

「……綾斗」

 

リースフェルトと沙々宮は更にドス黒いオーラを出して天霧に詰め寄る。うん、詰んだな。

 

「あの、ちょっと……」

 

天霧がしどろもどろになっている中、俺は備え付けの冷蔵庫を開けてオレンジジュースのおかわりを取り出してグラスに注ぐ。

 

そしてグラスを口につけて一息に飲み始めると違和感を感じた。

 

 

 

「ん?……何かさっきより美味いな」

 

何故か一杯目のオレンジジュースより二杯目のそれの方が芳醇な香りがして凄く美味い。これは一体……

 

 

「あらあら……比企谷君も中々人が悪いですね」

 

疑問に思っていると向かいに座っているエンフィールドが苦笑しながらルビー色の飲み物を飲んでいた。……中身が何なのかは聞かないでおこう。

 

そんな事をノンビリ考えながら俺は天霧達の修羅場を対岸の火事のようにぼんやりと眺めていた。天霧よ、強く生きろ。

 

内心そう呟いて残ったオレンジジュースを一気飲みした。うん、やっぱり美味いからもう一杯頂くとしよう。

 

しかし何故同じ飲み物なのに味が変わったのだろうか?世の中不思議な事もあるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後……

 

 

「比企谷…….」

 

俺は今修羅場を乗り切った天霧からジト目で見られている。その表情は余りにも疲れ切っている。

 

あの後天霧はサイラスの事件に関する事と説明したら修羅2人は一応の納得を見せてドス黒いオーラを消したが……うん、少し調子に乗り過ぎたな。

 

「悪かったよ。っても、オーフェリアが爆弾を投下したからこうなっただけで……寝てるしこいつ」

 

いつの間にか寝てやがる。……本来なら起こす所だが見逃そう。刀藤も今さっきまで寝てたし、オーフェリアは昨日、正確には今日だが寝るのが遅かったからな。ゆっくり休ませよう。

 

そんな事をノンビリ考えているとエンフィールドが口を開ける。

 

「さて、お二人も落ち着いた事ですしこの場を借りて皆さんにご相談があるのですがよろしいでしょうか」

 

口調は穏やかだが真剣な響きがある。

 

「既に皆さんもおわかりだとは思いますが……相談というのは来年の星武祭についてです。ここにいる皆さんに、私のチームメンバーとして獅鷲星武祭に参加していただきたいのです。それと比企谷君には以前も言いましたがトレーニングの相手をして頂きたいのですが」

 

エンフィールドはそう言って俺を見てくる。まあ以前確かにシルヴィの誕生日プレゼントに関する相談を受けた時にそんな事を頼まれたな。しかし……

 

「悪いなエンフィールド。実は俺クインヴェールのあるチームの指導をやってるから多分無理だと思うぞ」

 

正直に話す事にした。するとエンフィールド以外は驚きの表情を見せてくるが予想の範疇だ。

 

「……鳳凰星武祭では星導館の生徒を鍛えて、獅鷲星武祭ではクインヴェールの生徒を鍛える……何を考えているんだ?」

 

リースフェルトが呆れた表情を浮かべながらそう尋ねてくるが、実際俺が協力したのなんて小町とシルヴィに頼まれたから引き受けただけで大層な考えを持っている訳ではない。

 

「気まぐれだよ気まぐれ。まあ、それはともかく……既に他のチームの指導をしている以上、他のチームの指導をするのはやりにくいんだが」

 

他のチームにも指導をしたら間違いなく面倒な事は目に見えている。エンフィールドには悪いが断らせて貰おう。

 

「そうですか……比企谷君にはユリスに指導をして貰いたかったのですが……」

 

「私に指導?」

 

「ええ。比企谷君の多彩な能力を見たらユリスの能力も更に多彩になるでしょうから」

 

「むう……確かにこいつの能力には見習う所があるからな……」

 

まあ俺の仕事と言ったら似た能力を持ったリースフェルトの指導だろう……ん?待てよ。

 

「待てエンフィールド。リースフェルトの指導だけなら条件次第で受けてもいいぞ」

 

「あら?急にやる気を出すとは思いませんでした。ちなみに条件というのは?」

 

「簡単な話だ。俺がリースフェルトに指導をする間、天霧が俺が今指導をしているチームメンバーの1人の練習に付き合ってくれるなら構わない」

 

「……俺?」

 

いきなり名前を出された天霧はキョトンとした表情を見せてくる。

 

「……綾斗を?ちなみにその綾斗と練習をさせようとする人の名前は?」

 

「ソフィア・フェアクロフさん」

 

「あら……」

 

「何だと……?」

 

「それは……」

 

俺が名前を口にするとエンフィールドとリースフェルト、刀藤は表情を変える。まあフェアクロフさんはかなり有名だしな。知っていてもおかしくないだろう。

 

「フェアクロフ?それってガラードワースの……」

 

「それで合ってるぞ天霧。ソフィア・フェアクロフはガラードワースの会長の実の妹だ。単純な剣才なら兄や刀藤に匹敵する実力者だ」

 

「ソフィア・フェアクロフはてっきり王竜星武祭に出るかと思いましたが……これは予想外ですね」

 

 

 

 

「まあフェアクロフ先輩にも心境の変化があったんだよ。それより話を戻すが……リースフェルトの指導をするのは構わないがその代わりに天霧は俺がリースフェルトの指導をしている間、フェアクロフ先輩の練習に付き合って欲しいんだが」

 

以前訓練をしていたらフェアクロフ先輩は同格以上の剣士と練習をしたいと言っていた。

 

赫夜は割と癖の強いメンバーが多いので基礎練は兎も角、応用練習などは俺1人では限界がある。出来る事なら良い練習相手が欲しいという赫夜の願いは叶えたい。

 

その為、出来るなら天霧の力は借りたい。タダでさえ練習相手が不足している以上逃したくない。

 

 

「俺は構わないけど……」

 

そう言って天霧はエンフィールドをちらっと見る。まあチームを結成するエンフィールドの意見が最重要だろう。

 

「そうですね……一週間に一回くらいなら良いでしょう」

 

まあ妥当な所だ。それ以上の訓練は『チームの練習に支障が出るかもしれない』と、お互いに損が出る可能性もあるからな。

 

「そうか……じゃあ頼んでもいいか?」

 

「はい。ところで、そのチームのメンバーについてですがソフィア・フェアクロフ以外のメンバーを教えて貰ってもいいでしょうか?」

 

まあ知りたくなるよな。余り話したくはないが……話さない事で天霧という極上の訓練相手を失ったりするよりはマシか。

 

そう判断した俺は話す事にした。

 

「わかった。チーム名はチーム赫夜で、フェアクロフ先輩以外のメンバーは序列35位の若宮美奈兎、47位のニーナ・アッヘンヴァル、序列外でクロエ・フロックハートに蓮城寺柚陽だ」

 

「えっ?!柚陽ちゃんがいるんだ?!」

 

俺がそう説明すると天霧が驚きの声を出してくる。天霧から返しが来るとは思わなかったが……

 

「まあな。てかお前の知り合いとは予想外だったが彼女なのか?」

 

エンフィールドに基本的なプロフィールデータを渡そうと端末を弄りながら天霧に適当に返事をしていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほう。まさかお前にクインヴェールの生徒の知り合いがいるとは思わなかったぞ」

 

「……全く油断も隙もない」

 

「それで?結局その蓮城寺さんは綾斗の彼女なのでしょうか?」

 

再びブリザードが起こり出した。リースフェルトと沙々宮はジト目で、エンフィールドは表面上はニコニコした表情で天霧に詰め寄っていた。

 

しまった。端末を弄っていたから適当に返事をしてしまった。天霧マジで済まん。

 

俺は目で天霧に謝罪をしながら現実逃避をする為、オーフェリアの頭を撫で始める。

 

「んっ……八幡……好き」

 

オーフェリアは寝言を呟いてくる。ああ、もう……本当に可愛いなぁ……

 

「……ありがとな。俺もお前が好きだ」

 

俺はオーフェリアの寝言に癒されながらオーフェリアの耳に顔を寄せて返事を返して、頭を撫でるのを再開する。

 

オーフェリアの可愛さで寒さが無くなってきた。何か前からは叫び声が聞こえてくるが気のせいだろう。

 

結論、オーフェリアマジで可愛い




突然ですが報告です。

まことに申し訳ないですが、自分はこれからインターンシップの授業や大量の中間レポートに集中しないといけないので勝手ではございますが中間レポートの最後の締め切りである6月4日まで執筆をお休みさせていただきます。

この作品を読んでくださるお客様には私事でお休みする事をここで謝罪申し上げます。

そして復活した際にはまた読んでいただけるとありがたいです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。