学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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遂に100話達成しました!

目指せ150話!




比企谷八幡とオーフェリア・ランドルーフェンに狙われた人は不憫だ

「……え?泊まり、ですか?」

 

俺はそう呟く。

 

孤児院で遊んで、そろそろ帰る時間と思った時だった。

 

若いシスター達はオーフェリアに泊まりの誘いをして、俺達にも声をかけてきた。

 

どう返事をしたか悩んでいると、オーフェリアが口を開ける。

 

「……八幡も一緒なら」

 

オーフェリアがそう言うとシスター達はキャーキャー言い出す。

 

俺かよ?!ったく、オーフェリアの奴は……!

 

本来なら断る所だが、シスター達も久々にオーフェリアに会ったんだ。ここで断るのは申し訳がない。

 

だから……

 

「じゃあ……お願いします」

 

俺は誘いを受ける事にした。流石にここで断る程神経は太くない。

 

「おー、良かった良かった。じゃあユリス達はどうする?」

 

シスターは俺の後ろにいるリースフェルトと天霧にも声をかける。2人も悩んでいるようだが……

 

「お前らは止めとけ」

 

俺は2人にしか聞こえない声でそう言った。2人は疑問を浮かべた表情を浮かべたので、

 

「ギュスターヴ・マルロー」

 

再度小さい声でそう言うと、2人は納得したような顔に変わる。

 

そう、ギュスターヴ・マルローの狙いはエンフィールドと次の獅鷲星武祭に参加するリースフェルト達だ。

 

そんな2人が残りの2人、刀藤と沙々宮と離れ離れになるのは愚策だ。

 

まして2人がここにいる時にギュスターヴ・マルローが襲撃をしてきたら子供達が危ないし、孤児院を戦場にしない為にも2人は余り長くいるべきではない。

 

「……そうだな。申し訳ないが私と綾斗は遠慮しておく。用事もあるからな」

 

それらしい理由で断りを入れる

 

「えー!ひめさま行っちゃうのー?」

 

子供達からは不満の声が上がる事からリースフェルトの人気っぷりがよく分かる。気持ちはわかるがお前らの為でもあるので諦めてくれ。

 

「案ずるな。また明日来る。だから待っててくれ」

 

リースフェルトがそう言うと子供達は不満そうな表情を浮かべながらも頷く。

 

それを見たリースフェルトは1つ頷くと俺に耳打ちをしてくる。

 

「……もしかしたらギュスターヴ・マルローは私がこの孤児院に行った事を把握しているかもしれん」

 

「だから人質として狙ってくるかもしれないから気をつけろと?」

 

「ああ。お前とオーフェリアがテロリストごときに劣るとは微塵も思っていない。だから私達がいない間は子供達を頼む」

 

「言われるまでもねぇよ」

 

ここはオーフェリアにとって大切な場所だ。そこを狙う時点で生かす理由はない。容赦なく潰すだけだ。

 

「済まない」

 

リースフェルトは一度謝ってから俺から離れ、天霧と話す。

 

「では綾斗、時間も時間だし、私達はそろそろ帰ろう」

 

「あ、うん。じゃあ2人共、またね」

 

そう言いながら2人は去って行った。

 

とりあえずギュスターヴ・マルローがここを攻めてくる可能性もあるし、後で周囲に影兵を展開しておこう。

 

そう思いながらも俺はシスター・テレーゼに話しかける。

 

「では今日はよろしくお願いします」

 

そう言いながら頭を下げる。

 

「ええ。何もないところだけど、上がってちょうだい」

 

「後で食事の時にでもオーフェリアとの馴れ初めを聞かせてねー」

 

若いシスターはそう言ってくる。いやマジで勘弁してください。てか話せない内容もありますからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後……

 

俺は今厨房で夕食を作る手伝いをしている。隣では……

 

「八幡……魚を切ったから焼いて」

 

「了解」

 

オーフェリアが可愛らしいエプロンを付けて俺に指示を出してくる。その格好は正にお嫁さんと言ってもいいだろう。

 

それにしても可愛らしいエプロン姿も良いが、裸エプロンみたいなエロティックなオーフェリアも見たいな。シルヴィの裸エプロンは最高だったし、オーフェリアの裸エプロンも最高だろう。

 

「……八幡、今いやらしい事を考えていたわね」

 

ジト目で俺を見てくる。何で考えている事がわかるんだよ?

 

「いや、まあ……お前の裸エプロン姿が見たいと思っただけだ」

 

「……っ。八幡のエッチ」

 

うるせぇな。好きな女のエロい姿を見たいと思って何が悪いんだこんちくしょう。

 

そんな事を考えていると、

 

「……じゃあアスタリスクに戻ったらしてあげるわ」

 

頬を染めながらそう言ってくる。マジで?!よっしゃ!

 

俺は内心喜びながらシルヴィに『オーフェリアが旅行から帰ったら裸エプロンをしてくれる』とメールを送った。

 

すると30秒もしないでシルヴィから『写真よろしく』とメールが来た。うん、気持ちはよくわかる。

 

俺はオーフェリアからジト目で見られながら内心頷きつつ、魚を焼き始めた。

 

 

 

 

 

 

それから20分後……

 

夕食が出来たので料理をしなかった子供達が料理が乗った皿を持ってテーブルに運び出した。

 

俺とオーフェリアはシスターが食べる場所で食うので自分達の食べる分を専用のテーブルに運ぶ。

 

そこにはパンにサラダ、スープに魚のムニエル、そしてオーフェリアの十八番のグラタンがあった。

 

「いやー、久しぶりにオーフェリアのグラタンが食べれるよ」

 

シスター達も嬉しそうな表情を見せている。そういやオーフェリアのグラタンはこの孤児院で作れるようになったんだったな。

 

俺もシスターの意見に同感だ。オーフェリアのグラタンはマジで美味い。1週間に一度は食べないと気が済まないし。

 

「まあオーフェリアの作るグラタンは最高だからね」

 

「……別に」

 

オーフェリアはそっぽを向く。可愛すぎだろ?

 

「あー、もう!オーフェリア可愛い!」

 

するとシスターの1人がオーフェリアに抱きつく。こいつからはシルヴィと同じ匂いがする。何せオーフェリアに頬ずりをしてるし。まあオーフェリア可愛いし仕方ないけどさ。

 

「はいはい。ご飯が並んでいるのだし、余り暴れないように」

 

「はーい」

 

シスター・テレーゼがそう言ったのでオーフェリアは解放される。オーフェリアは安堵の息を吐く。こんなオーフェリア、俺がレヴォルフに来た頃は見た事ない。可能なら今後も色々なオーフェリアが見たいな。

 

今後オーフェリアがどんどん感情豊かになる未来に胸を馳せながら席に着く。全員が席に着くと、

 

 

『いただきます』

 

挨拶をして夕食を取り始めた。

 

 

 

俺は無言でテーブルにある夕食を食べている。オーフェリアのグラタンはクソ美味いし、他の料理も派手な料理はないがどれもちゃんと味があり美味い。孤児院の料理としては間違いなく最上級だろう。

 

しかし今の俺は料理の味を碌に理解できなかった。味があるので理解できるが、感じ取るのを難しく思っている。

 

何故なら……

 

 

 

 

 

「それでそれで、初めてのキスはどんな感じでしたの?」

 

「……初めてのキスは、鳳凰星武祭の最終日、私が自由になったと理解したと同時に八幡に告白しながらしたわ」

 

シスターがオーフェリアに馴れ初めを尋ね、オーフェリアは一切の躊躇なく答えているからだ。

 

それによって更に歓声が上がる。それを耳にした俺は耳を塞ぎたいという感情に苛まれる。もう嫌だ。何で過去の恥ずかしい話を聞かなくちゃいけないんだ?

 

しかしオーフェリアは恥ずかしがるどころか、誇らしげに話し続ける。

 

「……それに八幡って自分からキスするのは殆どないけど、八幡からキスするとそれはもう凄いの」

 

待てコラ。マジでお前は俺を悶死させたいのか?

 

これ以上はマズイと判断した俺は止めようとしたが、シスターが質問をする方が早かった。

 

「凄い?!凄いってどんな風に?!」

 

「……初めは触れるだけの優しいキスなんだけど、徐々に舌を「アウトだこの野郎」……痛いわ」

 

余計な事を言おうとしたオーフェリアの頭にチョップをかます。オーフェリアはジト目で俺を見てくるが、お前がはっきり言おうとしてくるのが悪いんだからな。

 

しかしシスター達は途中でもオーフェリアの言おうとした事を理解したようで、

 

「へ〜」

 

楽しそうに笑いながら俺を見てくる。その顔を見ると小町と被ってしまう。あいつも俺をからかう時に似た表情を見せてくるし。

 

ここは小町と同様にスルーしよう。

 

そう思いながら逃げるように食事を再開しようとするも……

 

 

「君ってば見かけによらず、大胆だねー」

 

「オーフェリア泣かせたら承知しないぞー」

 

小町の時と同様に逃げる事が出来ずに尋問タイムが始まった。これは長引きそうだな。

 

でもまあ……

 

「ああ。オーフェリアを泣かせないってのは承知している」

 

これは絶対に忘れない事だ。今の俺にとってオーフェリアとシルヴィが泣くのは絶対に許せない事だ。

 

2人を泣かせるつもりはないし、2人を泣かそうとする存在は容赦なく叩き潰すつもりだ。

 

「……八幡」

 

するとオーフェリアが俺にくっつきスリスリしてくる。可愛い、可愛いがオーフェリアよ、TPOを弁えてくれ。メチャクチャ恥ずかしいんですけど。

 

 

結局、美味い夕食は羞恥の所為で殆ど味を感じないまま終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食が終わると俺とオーフェリアは今日泊まる部屋に案内される。廊下を歩いていると先導するシスターが止まる。目の前にはドアがあるのでこの部屋だろう。

 

するとオーフェリアが若干反応する。

 

「ここって……」

 

「覚えてる?オーフェリアが昔使ってた部屋だよ。先日偶然空きが出来たんだよ」

 

言うなりシスターがドアを開ける。そこには簡易なベッドと机、本棚があった。

 

ベッドは1つ……って事は、

 

「じゃあ私はもう行くけど、ごゆっくり〜」

 

シスターはニヤニヤした顔で俺を見てから出て行ったが、一緒に寝ろって事だろう。

 

まあ別にオーフェリアとは毎日一緒に寝てるからいいけどさ。

 

とりあえず今日は色々疲れたし、風呂に入るまでベッドで休むか。

 

そう思いながらベッドに向かうとオーフェリアも俺に付いてきて話しかけてくる。

 

「……八幡、私も一緒に寝ていい?」

 

「それは構わないが、何で寝るってわかった?」

 

「八幡が一直線にベッドに向かったから」

 

「そうかい。まあ良いけどよ」

 

そう言ってベッドに腰掛けると、オーフェリアが俺に寄り添うように腰掛ける。オーフェリアの可愛らしい見た目や吐息、髪の毛が俺の理性を刺激してくる。

 

当の本人はそれに気付いた様子もなく、

 

「……まさかもう一度この部屋に、それも好きな人と入るとは思わなかったわ」

 

俺にスリスリしながらそう言ってくる。

 

「……まあそうだろうな。ところでオーフェリア、今日は楽しかったか?」

 

「そうね。……ただ」

 

「ただ?」

 

「この場所に、シルヴィアも一緒にいて欲しかったわ」

 

………そうだよな。シルヴィは世界の歌姫だから仕方ないっちゃ仕方ないが、出来ることなら一緒に居たかったのは同感だ。俺達は3人揃ってカップルなんだし。

 

それにしても……昔は他人に興味がなかったオーフェリアが、そんな風に欲を言ってくるのは嬉しい事だ。その事からオーフェリアもシルヴィの事を大事に思っている事が良く解る。

 

そういう意味じゃ鳳凰星武祭決勝で2人の告白を両方受け入れたのは間違いじゃなかっただろう。

 

「そうだな。俺もそう思う。だから……次にアスタリスクの外に行くときは3人で行こうな」

 

「……そうね。自由になった以上、色々な所に行きたいわ」

 

「だろうな。ちなみにリクエストはあるのか?」

 

「……ええ。八幡の家に海にディスティニーランドと沢山あるわ」

 

「俺の実家は春まで待て。つーかお前がディスティニーランドに行きたいと思っているとは予想外だわ」

 

「昔、孤児院にいた頃に本で読んだから」

 

「そうか。じゃあ今度実家に帰るついでに連れてってやるよ」

 

「……お願い。10年近く遊べなかったし、楽しみにしてるわ」

 

言うなり、オーフェリアは目を瞑って唇を寄せてくる。キスしろってか?

 

一応ドアの方に意識を向けるが、ドアの向こう側からは人の気配を感じない。これならキスしても大丈夫だろう。

 

そう判断した俺はオーフェリアの唇にキスをしようと顔を近づける。

 

その時だった。

 

pipipi……

 

いきなりポケットの携帯端末が鳴り出して、反射的にオーフェリアと距離を取ってしまう。誰だよこんな時に!

 

半ば苛立ちながらポケットから携帯端末を取り出すとそこには『クロエ・フロックハート』と表示されていた。

 

それを確認した俺は空間ウィンドウを表示する。すると常磐色の髪を持つ少女の顔が映った。

 

「……もしもし。何か用か?」

 

『ええ。ちょっとお願いがあるんだけど……怒ってるの?』

 

当たり前だ。オーフェリアとキスしようとした瞬間に電話がかかってきたんだぞ?悪気がないとはいえイラッとしてしまう。

 

しかしそこでキレる程ガキではない。だから俺は一度息を吐いてフロックハートに話しかける。

 

「……いや、何でもない。それより要件は?」

 

『あ、そうね。実は例のダークリパルサーなんだけど、もう一振り用意して貰えないかしら?』

 

「あん?壊れたのか?」

 

『そうじゃないわ。美奈兎に持たせるのよ』

 

「……すまん。意味がわからん。何で格闘タイプのあいつに剣を持たせんだ?」

 

今から剣を習ってもルサールカには勝てないだろう。勝負を投げたのか?

 

『その件について詳しく説明するわ。私の能力を覚えているかしら?』

 

フロックハートの能力?確か……

 

「自分の考えを他人に発信したり、自分に向けられた思考を読み取ったりする能力だよな?」

 

『そう。でもそれはあくまで第一段階に過ぎないわ』

 

「つまり、お前の能力には先があると?」

 

『ええ。私の能力の本質は伝達。つまりーーー』

 

フロックハートは自身の能力の本質を俺に伝えた。

 

全てを聞いた俺は息を吐き、

 

「……なるほどな。話はわかった。とりあえず製作者には話を通しておく」

 

『お願い。私の話は以上。旅行中にわざわざ電話してごめんなさいね』

 

いや、旅行中に電話する事については文句はない。オーフェリアとキスをしようとした時に電話をするのは止めて欲しいんだ。

 

しかし事情を知らないフロックハートにそれを言っても仕方ない。

 

「気にすんな。じゃあまたな」

 

『ええ。また』

 

挨拶を交わして空間ウィンドウを閉じる。一息を吐いてからオーフェリアを見ると、

 

「………」

 

膨れっ面をしながらこっちを見てきた。可愛過ぎだろ?

 

すると

 

「……八幡、キスして」

 

膨れっ面のままハッキリと要求をしてきた。そして無言でプレッシャーをかけてくる。うん、これは断れないな……

 

仕方ない。するか……

 

俺は覚悟を決めつつ、オーフェリアの両肩を掴む。するとオーフェリアは艶のある表情を見せてくる。

 

俺はその表情に見惚れながらもゆっくりと唇を近づける。オーフェリアは目を瞑り待ちの体勢を取る。

 

そして………

 

 

pipipi……

 

再度ポケットから携帯端末が鳴り出した。

 

それによって俺とオーフェリアの頭の中でブチリと何かが切れる音が聞こえてきた。

 

俺はその正体を察しながらも端末を取り出すとそこには『クローディア・エンフィールド』と表示されていた。

 

「……もしもし」

 

苛立ちながら空間ウィンドウを開くとエンフィールドの顔が映り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大変です。ギュスターヴ・マルローが動きました』

 

そう言ってきた。

 

瞬間、俺とオーフェリアの怒りの矛先を向ける相手が決定した。

 

 

 

 


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