学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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こうして3人は再会する

ギュスターヴ・マルローによるリーゼルタニアの貧民街の襲撃。

 

その事件の顛末について説明しよう。

 

結論を言うとギュスターヴ・マルローは逮捕された。

 

俺とオーフェリアはヒュドラを倒して1時間ディープキスをした後、俺達はリースフェルト達と合流した。

 

するとそこには丸焼けになっていたギュスターヴ・マルローが地面に転がっていて、リースフェルトがスッキリした顔を浮かべ、天霧が若干引きながら苦笑を浮かべているなどカオスな空気となっていた。

 

一応気絶しているとはいえ逃げる可能性があるので影で拘束した後に、警察に突き出した。

 

本当ならオーフェリアとのキスを邪魔した要因を作った奴だから俺がトドメを刺そうとしたら天霧の『黒炉の魔剣』で止められた。解せぬ

 

まあそれはともかく、俺達は王宮に向かって事情を説明して今回の事件は幕を閉じた。

 

 

それから数日後……

 

 

「じゃあオーフェリア、元気でね」

 

「……ええ」

 

「比企谷君はオーフェリアの事をお願いね」

 

「もちろんだ」

 

いよいよ帰国の日、俺は今オーフェリアと2人で孤児院に行き、別れの挨拶をしている。

 

若いシスターと挨拶をしていると、奥からシスター・テレーゼが現れて、オーフェリアの前に立つ。

 

「オーフェリア、今回貴女と会えて本当に良かったわ。貴女さえ良ければいつでも来てね」

 

「……ええ。また来るわ」

 

「ありがとう。それから比企谷さん」

 

「はい」

 

「オーフェリアともう一度会うきっかけを作ってくれた貴方には感謝しかありません。……オーフェリアを幸せにしてあげてくださいね」

 

「もちろんです。絶対に幸せにします」

 

俺にとってオーフェリアとシルヴィの幸せが最優先事項だ。絶対に2人を幸せにしてみせる。

 

「では俺達はもう直ぐ集合時間なのでこれで失礼します。色々とお世話になりました」

 

「……また今度」

 

「ええ。帰りも気をつけて」

 

「じゃあねー!」

 

俺達は軽く会釈をして、見送りの言葉を背に受けながら孤児院を後にした。

 

 

 

 

 

 

「ねえ八幡」

 

孤児院を後にした俺達は影竜に乗って湖の上を飛んでいる。目指すは集合場所の王宮だ。

 

「何だよ?」

 

「……さっき八幡は私を幸せにするっと言ったわよね?」

 

「ああ。それがどうした?」

 

「……ええ。その事なんだけど、別に無理に行動しなくていいわ。だって……」

 

言うなりオーフェリアは俺に抱きつき、

 

 

 

 

「私にとって一番の幸せは……八幡とシルヴィアの3人で一緒に過ごす事だから」

 

俺は初めてオーフェリアの満面の笑みを見た。それは今まで見たオーフェリアの顔の中で一番の魅力を醸し出していた。シルヴィが見たら発狂してオーフェリアに抱きついているだろう。

 

 

 

 

 

 

「……はっ!今何か凄いものを見逃した気が!」

 

「……いきなりどうしたのシルヴィア?それより次の会場に移動するわよ」

 

 

 

 

 

 

 

……何か今、シルヴィが地団駄を踏んでいる姿が脳裏に浮かんだが、何だったんだ今のは?

 

閑話休題……

 

それにしてもオーフェリアの満面の笑みはマジで可愛い。余りに可愛過ぎるので、つい目を逸らしてしまう。

 

「そ、そうか」

 

「……ええ。だから八幡。これからもよろしくね」

 

そう言ってオーフェリアは自身の指を俺の指に絡めてくる。白魚のような綺麗な指が俺の指に絡みついている。

 

その事は幸せな事なんだと、強く実感しながら、影竜に乗った俺達は一直線に王宮に向かった。

 

 

 

 

王宮の入口に到着するとリースフェルトと沙々宮と刀藤が車の前にいた。向こうも俺達に気がついたようで、こちらに近寄ってくる。

 

「話は終わったのか?」

 

「まあな。また行くことになった。ところでエンフィールドは?」

 

今この場には天霧とエンフィールドがいない。

 

天霧については先日、ギュスターヴ・マルローを捕まえた翌日に姉が見つかったと星猟警備隊警備隊長のヘルガ・リンドヴァルから連絡があって一足早くアスタリスクに帰ったのは知っているが……何でエンフィールドもいないんだ?

 

「ああ。クローディアは朝早く用事が出来たとエンフィールドの家があるロンドンに向かった」

 

ロンドン……なるほどな。つまり今回ギュスターヴ・マルローを依頼したと思える自分の父親に話をしに行ったのだろう。

 

奴の腹黒さからして遅れを取るとは思わないが油断は禁物だ。何せあいつ銀河と敵対しかけている自殺願望者だし。

 

まあその辺りについては部外者の俺がどうこう口を出す問題じゃない。てか銀河となんか関わりたくないし。

 

「……比企谷、お前何か知っているのか?」

 

「あん?いきなりどうした?」

 

「いや、クローディアに何でロンドンに行くのか聞いたがはぐらかされてな」

 

そりゃまそうだ。怪しいとはいえ、エンフィールドの父親がギュスターヴ・マルローの依頼人とは限らない。確証がない事を口にするのは面倒な事にしかならない。

 

「思い出してみれば、夜会があった翌日にお前はクローディアと話していたから何か知っているのかと思ったんだ」

 

「……察しは良いな。まあ一応知っている。だが確証がないからおいそれと話すわけにはいかない。それについてはエンフィールドが帰国してから聞け」

 

「……わかった。ならそうさせて貰おうか」

 

リースフェルトは納得したように頷いてから車に向かって歩くので俺もそれに続いた。

 

全員が乗り込んだのを確認するとメイドのフローラが

 

「では出発します!」

 

その言葉と共にリムジンはゆっくりと動き出した。車は徐々にスピードを上げて国境を出ようとする。

 

街中では来た時と同じように沢山の市民がいて、こちらに歓声を上げている。これでエンフィールドのチームが獅鷲星武祭で優勝したらとんでもない事になるだろうな。

 

「ねぇ八幡」

 

そんな事を考えているとオーフェリアが俺の服を引っ張ってきた。

 

「どうした?」

 

「……八幡は今回の旅行は楽しかった?」

 

そう問われた。問われた俺は今回の旅行について一から振り返ってみる。

 

「……そうだな。途中で邪魔が入ったのはイラついたが……まあ良かったよ」

 

かつてオーフェリアが住んでいた場所に足を運べた時点で俺は大分満足をしている。ギュスターヴ・マルローについてもリースフェルトが丸焼きにした時点で大分胸がスカッとしたしな。

 

「……そう。じゃあまた行きましょうね。この国は重婚が認められているから、永住する可能性もあるし」

 

……ああ。そういやそうだったな。

 

考えてみたらリーゼルタニアは自然豊かな美しい国だ。そんな場所でオーフェリアとシルヴィの3人で慎ましい暮らしをするのも悪くない。いや!かなり良い!寧ろ推奨だわ!

 

「……わかったよ。オーフェリア、アスタリスクを卒業したら3人でリーゼルタニアで暮らそうな?」

 

多分シルヴィならこの国に文句はないと思うし。

 

すると……

 

「……ええ。それと八幡、私とシルヴィアは1人ずつ子供を産みたいから」

 

オーフェリアは爆弾を投下した。

 

「なっ……!」

 

「はぅぅ……!」

 

「ほほう……!」

 

瞬間、リースフェルトと刀藤は真っ赤になって固まり、沙々宮は感心しながら頷いている。

 

当の本人は爆弾を投下した自覚がないようだが。

 

「そ、そうか……」

 

俺はそう答える事しか出来なかった。

 

こりゃ頑張らないといけないな。子作り的な意味でも、子育て的な意味でもな。

 

「……ええ。大好きよ、八幡」

 

そう言ってオーフェリアは俺の肩に頭を乗せて甘え始めた。本当にこいつは……元々可愛い所はあったが、自由になってから一段と可愛くなってるな、おい。

 

俺は苦笑しながらオーフェリアの頭を撫で続けた。

 

 

その後、オーフェリアはリムジンに乗っている間も、アスタリスクに向かう飛行機に乗っている間もとにかく甘えまくって俺を悶えさせまくった。

 

 

 

結果、今回の旅行について俺が一番感じた事は『オーフェリア可愛い』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1ヶ月後……

 

「……八幡、そわそわし過ぎよ」

 

「お前こそ玄関をチラチラ見てるじゃねぇか」

 

俺とオーフェリアは挙動不審になりながらリビングから玄関をチラチラと見ている。

 

年が明けて1週間くらい過ぎた。リーゼルタニアから帰国してからの日常はとても濃かった。

 

帰国して直ぐに材木座から新しいダークリパルサーを渡されたり、年内最後の公式序列戦で大暴れしたし、クリスマスにはオーフェリアとイチャイチャしたり、チーム赫夜との訓練中に事故が起こって再びフェアクロフ先輩の胸にダイブしたりアッヘンヴァルを押し倒した事でオーフェリアに半殺しにされたり、大晦日にハメを外して酒を飲んで酔いつぶれたり、正月には二日酔いの所為で寝正月になったりと、色々と濃い日常を過ごしていた。

 

しかしそんな日常を過ごす中、俺とオーフェリアは今日という日を待ち望んでいた。

 

それは何故かと言うと……

 

 

ガチャ……

 

いきなり玄関の方から音がしたので俺とオーフェリアは互いに視線を交わすと直ぐに立ち上がり、玄関に早足で向かった。

 

玄関に着くと、鍵が開き……

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま!」

 

俺のもう1人の恋人であるシルヴィア・リューネハイムが満面の笑みを浮かべながら家に入ってきた。

 

アジア横断ツアーが終わったシルヴィの可愛い笑みを確認した俺とオーフェリアはシルヴィに近寄り抱きしめる。

 

「おかえりシルヴィ」

 

「……お仕事、お疲れ様」

 

「うん……ただいま。2人に会うのを楽しみにしてたよ」

 

シルヴィも目尻に涙を浮かばせながら抱き返してくる。自宅の玄関で俺達は離すまいとばかりにお互いを強く抱きしめ合った。

 

シルヴィが無事に帰ってきた、それだけで俺にとっては幸せな事だ。俺はもうオーフェリアとシルヴィが居なかったら生きていけないだろう。

 

「……そうね。私も八幡と2人で過ごす日常も良かったけど貴女がいない事で寂しい気持ちもあったわ」

 

「そっか……私ね、仕事中2人に会いたくて仕方なかったよ。夢にも2人が出てきたし」

 

「……そうか。それは俺もだ。とりあえずお疲れ。腹減ってるだろ?飯は俺達が作ったから食べようぜ」

 

今は昼時で俺もオーフェリアも腹が減っているが、それもシルヴィも同様だろう。今は久しぶりに3人で食事を取りたい気持ちが強い。

 

「ありがとう。じゃあリビングに行こっか?」

 

「……そうね。荷物は持つわよ」

 

オーフェリアはそう言ってシルヴィの荷物を持ってリビングに向かったので俺とシルヴィもそれに続いた。

 

やっと揃った。シルヴィが帰ってきて3人が揃った以上、これからはもっともっと楽しい日常が待っているのだろうな。

 

そう思いながらリビングに入ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで八幡君、ツアー中にオーフェリアさんから連絡があったんだけど、フェアクロフ先輩の胸に顔を埋めたり、ニーナちゃんを押し倒した事について説明してね?」

 

シルヴィが満面の笑み(ただし目は笑っていない)を浮かばせながら俺にプレッシャーをかけてきた。

 

oh……

 

 

 

 

 

結局、全部説明したが案の定シルヴィは頬を膨らませて機嫌を悪くした。

 

その後、俺はシルヴィに何度も謝罪した結果、3時間キスをする事で許すと言ってきたので俺は仕方なくシルヴィの要求を呑んだ。

 

 

その後3時間、計24531回のキス(シルヴィが回数を数えた)をして、唇が唾液まみれになるとシルヴィは満足したように許してから抱きついてきた。

 

 

結論、やっぱりシルヴィはキス魔である。

 


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