学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡が鍛えたチーム赫夜は締まらない空気の状態で試合を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

『比企谷八幡、校章破損』

 

『模擬戦終了、勝者、チーム赫夜』

 

機会音声が流れると同時に俺が息を吐く。

 

「やったー!」

 

するとたった今俺の校章を打ち砕いた若宮がナックル型煌式武装を高く掲げてチームメイトの4人の元に戻る。

 

そんな5人を見ていると肩を叩かれたので振り向くと、

 

「お疲れ様、八幡君」

 

「……レモンのはちみつ漬けよ。私とシルヴィアが作ったわ」

 

そこには最愛の恋人2人が満面の笑みでレモンを差し出してくる。可愛いなぁ……

 

そう思いながら俺が口を開けると、2人は俺の口の中にレモンを入れてくる。うん、美味い。

 

ただでさえ美味いのに2人に食べさせて貰ったからかより美味く感じる。

 

「ありがとな。凄く美味かった」

 

「……当然ね。私とシルヴィアが愛情を沢山込めて作ったのだから」

 

「八幡君は私達の愛情を感じたかな?」

 

可愛すぎだろ?料理には愛情と良く言われているが、実際そうだろう。2人の愛情はかけ替えのない調味料だ。これが含まれている料理は世界で最も美味なものであると確信がある。

 

「……ああ。2人の愛情をしっかり感じたよ」

 

「そっか、なら良かった」

 

「……嬉しいわ」

 

言うなり2人は抱きついてくる。ダメだ、この2人可愛すぎだろ?

 

 

「……あの、イチャイチャしないで総評をしてくれないかしら?」

 

そう言われたので振り向くとブロックハートが冷たい目をしてこちらを見てくる。お前はその目は止めろ。ゾクゾクして踏まれたくなるから。

 

「はいはい。んじゃ失礼っと」

 

そう言って抱擁を解くとシルヴィとオーフェリアは赫夜のメンバーにドリンクとかお菓子を差し出している。

 

初めはシルヴィに萎縮していたり、オーフェリアにビビったりしていた赫夜のメンバーも今ではスッカリ打ち解けている。俺としては出来るならこいつらもオーフェリアの友人になって欲しいものだ。

 

そう思いながらレモンのはちみつ漬けを口にしながら総評を口にする。

 

「と、言ってもなぁ……5人がかりならもう俺より強いしアドバイスする事なんてもうないぞ」

 

年が明けてから2週間経っていて、1日1回チーム・赫夜と模擬戦をしてるが結果は12戦2勝10敗と完全に負け越してるし。

 

影狼修羅鎧と影狼神槍を使っていないとはいえ、去年に比べてかなり力がついているだろう。

 

「まあ強いて言うなら若宮とアッヘンヴァルがテンパって凡ミスをしてたから、明日の本番では凡ミスなんてすんなよ?」

 

そう、明日はいよいよルサールカとの試合だ。負けたらチーム・赫夜は獅鷲星武祭に出場出来ないので、赫夜からしたら絶対に負けられない試合でもある。

 

俺がそう言うと全員が真剣な表情になって頷く。まあ凡ミスで負けましたじゃ笑えないからな。

 

「まあそこさえ気をつければなんとかなんだろ、多分」

 

「締まらないわね……」

 

「ほっとけ。とりあえず今日はここまでにする。明日に備えて早く寝るように……特に若宮。お前今日はもう自主練するなよ」

 

こいつの場合しょっちゅう居残りして自主練してるし。明日が本番ならオーバーワークをさせるつもりはない。

 

「は、はい……」

 

何かしょぼくれた表情をするが、今日ばかりは心を鬼にして自主練はさせない。

 

「わかってるならいい。んじゃ頑張れよ」

 

「八幡君、そんな気怠げな激励じゃなくて、もっと元気に言わないと」

 

「そうは言うがなシルヴィよ、もし俺が『いよいよ明日は本番だ!厳しい戦いになるだろうが大丈夫だ!お前らは今日まで死ぬ気で頑張ってきたんだ!今までやってきた事を実行すれば結果は自ずと付いてくる!』なんて言ったらどう思う?」

 

「うん。そんな八幡君は想像出来ないね」

 

「……寧ろその八幡は病気か記憶喪失のどちらかよ」

 

「やかましいわ」

 

イラっときたので恋人2人の頭にチョップをする。すると2人は頭を押さえながらジト目で俺を見上げてくるが知らん。

 

そんな光景を見て赫夜のメンバーはキョトンとしてから、直ぐに笑い出したのが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでシルヴィ、明日は何処で試合をするんだ?フロックハートの能力は人目を避けたいだろうし、アリーナを借りる訳ないよな?」

 

赫夜との訓練を済ませた俺達は帰宅して風呂に入っている。俺は一番早く身体を洗ったので湯船に浸かりながら、シルヴィがオーフェリアの身体を洗っているのを眺めている。

 

「うーん。多分ツインホールの地下にある特別訓練用ステージだと思うな。というか八幡君、視線がいやらしいよ?」

 

シルヴィにそう言われて思わず視線を逸らしてしまう。

 

今現在、シルヴィの白魚のような綺麗な指がオーフェリアの傷一つない美しい背中に触れているのを見ているが、物凄く興奮していた。

 

しかしシルヴィに指摘された途端、恥ずかしくなってしまい目を逸らしてしまう。

 

「わ、悪い」

 

「別に怒ってる訳じゃないよ?ただ八幡君ってエッチだなーって改めて思っただけだよ」

 

「何だその言い方は?多少エロいのは否定しないが、そこまでではないからな?」

 

「そうなの?別に見たかったら見ていいのに」

 

「え?マジで?」

 

「即答してる」

 

シルヴィはからかうように笑ってくる。

 

ぐっ……仕方ないだろうが!お前らが身体を洗いっこしているならそれを見たいと思うのが男だ。まあ2人の裸を他の男に見せるつもりなんて毛頭ないけどな。

 

「……別に見たかったら見ていいわよ。今まで何度も見られているし、八幡がいやらしい事は知っているわ」

 

シルヴィに身体を洗われているオーフェリアがそう言ってくる。そうかよ、俺はエロいですか。

 

しかし見ていいと言われたら見づらいな……

 

結局、横を向いて2人の洗いっこを見ないでいると、

 

「お邪魔しまーす」

 

「……お待たせ」

 

シルヴィが視線の先に、オーフェリアが背後に来て湯船に入ってくる。

 

湯船のお湯の高さが増えると同時に、シルヴィとオーフェリアが前後から抱きついてくる。それによって俺の胸板と背中には柔らかい膨らみの感触を感じる。毎日裸で抱きつかれているが未だに慣れないな……

 

「ふふっ……八幡君の身体、温かいね?」

 

「そうね、抱きつくと幸せな気分になるわ」

 

そして抱きつくと同時にそのような事を言うのは止めてください。好きな人達にそんな事を言われたらマジで恥ずかしいですからね?

 

「なあお前ら、マジで胸を押し付けるのは止めてくれ。俺の中の獣が暴れ出しそうだ」

 

てか今まで2人に襲い掛かるのを止めた俺の理性凄すぎだろ?まあ何度か理性が崩れかけた事はあるけど。

 

「いっそ暴れてもいいのに」

 

「おいアイドル」

 

何て事を言ってんだこいつは?世界の歌姫を抱いてみろ。世界中のファンに命を狙われるし、W&Wも強引に別れさせようとしてくるからな?

 

「……私は別にアイドルじゃないから、メチャクチャにしていいわよ?……はむっ」

 

「っ!お、オーフェリア!」

 

すると背中に抱きついているオーフェリアが更に強く胸を押し付けながら俺の耳を甘噛みしてくる。いきなり何て事をしてくんだよ?!つい変な声が出ちまったじゃねぇか!

 

しかし……オーフェリアをメチャクチャに、か……

 

背中に抱きついている美しい少女を欲望のままにメチャクチャにする。自分の思うようにオーフェリアを貪り尽くす……

 

(ヤバい、想像しただけで……!)

 

その時だった

 

「八幡君」

 

「な、何だ?」

 

「鼻血出てるよ?」

 

「………」

 

「……八幡のエッチ」

 

それを言うな。

 

結局、俺は寝るまでオーフェリアとシルヴィにエッチとからかわれまくったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日……

 

昨夜鼻血を出して恋人2人にからかわれまくった俺は現在エレベーターに乗って、クインヴェールのツインホールの地下にある特別訓練用ステージに向かっている。左右ではオーフェリアとシルヴィが腕に抱きついて柔らかな膨らみを押し付けている。

 

舌を噛みながら素数を数えているとエレベーターは止まり、ドアが開いた。

 

すると

 

「へぇ……結構広いな」

 

そこには広大なステージが広がっていた。見る限り各学園で最も広い総合アリーナと比べても勝るとも劣らない規模のステージだった。違いがあるとしたら観客席がないくらいだろう。

 

その中心には、

 

「あー、シルヴィアさんに比企谷君にオーフェリアちゃん!応援に来てくれたの?!」

 

元気良く手を振ってくる若宮が所属するチーム・赫夜と、

 

「げっ!バカップル3人組!」

 

呆気に取られたような表情を浮かべるミルシェ率いるルサールカが向かい合っていた。

 

しかし……

 

「誰がバカップルだ。俺達は清らかな交際をしてるからな?」

 

俺が否定すると、

 

「嘘ー!どうせもう手を出したんじゃないの?!」

 

即座に異議を唱えられる。どんだけ信用されてないんだよ?

 

「出してねーよ。キスはしたがCはしてねーし、Bもそんな激しいのはしてないからな?」

 

せいぜい胸を揉むくらいで、明らかにヤバいのはしていない。てかしたらそのままゴールインしてしまいそうだし。

 

すると……

 

「え?B?C?何言ってんの?」

 

ミルシェがポカンとした表情でそう言ってくる。え?マジで?!

 

「比企谷君、私もわからないから教えてくれないかな?」

 

すると若宮も聞いてくる。こいつもわからないのかよ?!

 

周りを見ると赫夜のメンバーは全員若宮と同じように首を傾げていて、ルサールカのメンバーはミルシェとトゥーリアはポカンとした表情を浮かべていて、パイヴィとモニカ、マフレナは意味を理解しているようだ。

 

どうやら女子校はその様な言葉に疎いのだろう。実際シルヴィも昔は知らなかったし。知った時のシルヴィは真っ赤にして可愛かった。

 

 

 

 

 

 

 

まあその後に『私、八幡君にならBもCもされてもいいよ……』って言われた時は呆気に取られたけど。

 

閑話休題……

 

それにしてもこいつらにはどう説明しよう。シルヴィの時は彼氏彼女の関係だったから馬鹿正直に話す事が出来たが、こいつら相手に馬鹿正直に話したらドン引きされそうだし。

 

どうするべきか悩んでいると、

 

「……何やら騒がしいと思ったらあなた達が来ているとは」

 

後ろから鋭い声が聞こえたので振り向くと、そこにはバイザー型のグラスを付けたスーツ姿の女性がいた。

 

俺はその女性を知っている。

 

「どうもっす。ペトラさん」

 

ペトラ・キヴィレット。クインヴェールの理事長で、クインヴェール運営母体である統合企業財体W&Wの幹部でもあり、シルヴィやルサールカのプロデューサーでもある、俺から見てもかなり出来る女である。

 

「……本来なら他学園の生徒が入れる場所でないのですが……シルヴィア、貴女の仕業ですね?」

 

そう言ってペトラさんはシルヴィをバイザー越しに睨むとシルヴィは悪戯がバレたような表情を浮かべてペロリと舌を出す。可愛すぎだろ?

 

「まあまあ。貴女も俺が赫夜の訓練に付き合っているのは知ってるでしょう?もしも不満があるなら……」

 

俺は一つ区切ってからペトラさんに顔を近づけて、

 

「観戦料としてソルネージュ以外の統合企業財体の機密情報盗んであげましょうか?」

 

俺の影に入る能力があれば朝飯前だし。流石に俺が所属する学園のバックにいるソルネージュとは敵対したくないけど。

 

俺がこっそり耳打ちするとペトラさんは一瞬だけ眉を動かしてから考える素振りを見せる。

 

それが10秒くらい続くと、

 

「……良いでしょう。貴方とオーフェリア・ランドルーフェンの観戦を許可しましょう」

 

ため息混じりに了承してくる。統合企業財体の人間は利益を最優先にするからな。利益を出せる案を持っているなら交渉し易い。

 

「そいつはどうも。んじゃチーム・赫夜、頑張れよ」

 

「面白い試合を見せてね」

 

「……頑張って」

 

オーフェリアがそっぽを向きながら赫夜のメンバーに応援した時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「キャー!オーフェリアさん可愛い!」

 

シルヴィが満面の笑みでオーフェリアに抱きつく。いかん、シルヴィの悪い癖が出始めた。この場にいる俺とシルヴィとオーフェリア以外の面々呆気に取られているし。

 

「っ!ちょっとシルヴィア……くすぐったいわ」

 

「まあまあオーフェリアさん。ふふっ……」

 

そしてシルヴィはオーフェリアの頬に自分の頬を当ててスリスリし始めた。良いぞもっとやれ。

 

 

 

 

 

結局シルヴィは5分間くらいオーフェリアに抱きついて、抱擁が終わると何とも言えない空気となっていた。

 

そしてその空気のまま試合が始まった。


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