学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は問題の解決に挑む

ディスティニーランド

 

それは夢の国で子供達に大人気の遊園地だ。しかし子供向けのアトラクションが多い中、大学生や大人からも人気を博している日本屈指の遊園地である。

 

しかしそんな夢と希望が集約された遊園地の中心では……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いオーフェリア!気持ちはわかるけど落ち着いて!」

 

「……無理よ。もう我慢出来ないわ」

 

「そこを何とか!」

 

「……諦めなさい。そして梅小路冬香、そこを退きなさい。貴女達界龍の人間には雪ノ下陽乃を除いて恨みはないから手を出すつもりはないわ」

 

「そういうわけにはいきまへんよ『孤毒の魔女』。うちらが退いたらあんさん後ろにいる人達を殺すやろ?というかあんさん陽乃と何があったん?」

 

「……そこの屑が昔文化祭で余計な事を言った所為で八幡が傷付いたのよ。その時点で殺す理由としては充分だわ」

 

「心外だなー。アレは比企谷君の自業自得でしょ?私の所為にするのは逆恨みなんじゃないかな?」

 

「良く言うわね。部外者の貴女が来なければそもそも問題は起こらなかった筈よ。それに今私は梅小路冬香と話しているの。私相手に何も出来ずに負けた雑魚の分際で口を挟まないでくれる?」

 

「……ふーん。言ってくれるね。いつまでもアスタリスク最強でいられると思わない方が良いよ?」

 

「……そんな台詞は一回でも私に傷を付けてから言いなさい。ちなみに貴女が間接的に貶めた八幡は出来たわよ?」

 

「いやいや、あんさん基準にしたら殆どの人が雑魚やからな?」

 

オーフェリアと界龍の女傑が星辰力を噴き出しながら睨み合っていて、夢の国から戦場に変わっていた。

 

怖い、マジで怖いんですけど?俺今直ぐ帰って良いか?

 

しかしそんな訳には行かない。今直ぐ回れ右したい気持ちをグッと堪えて両者の間に入ろうとする。

 

しかしその直前に……

 

「そこまでにして貰おうか」

 

平塚先生が全身に闘気のようなオーラを出して中間地点に入る。流石元界龍の序列3位だけあって凄まじい雰囲気だ。

 

「あ、静ちゃん久しぶり。何でここにいるの?もしかしてデート……あ、ごめん。そんな訳ないか」

 

「う、煩い!今は関係ないだろ!そ、それより今直ぐ戦闘態勢を解け。ここは公共の場だ。そんな風に星辰力を噴き出すと他の客に迷惑になるだろう」

 

「それはそっちの怪物に言って欲しいなー。私達は彼女が暴れてたからそれを止めようとしただけだし」

 

そう言って全員の視線はオーフェリアに向けられる。対するオーフェリアは殺気と圧倒的な星辰力を剥き出しにしたままだ。

 

「『弧毒の魔女』よ。今直ぐ星辰力を消してくれないか?」

 

「……なら退きなさい。そこにいる相模南とガラードワースの金髪の男と亜麻色の髪の女を殺したら直ぐに消してあげるわ」

 

オーフェリアがそう言って3人に対して殺意を向ける。すると……

 

「あ、あ、あ……!」

 

「「ひぃぃぃっ!!」」

 

3人は涙を零しながら失禁してしまう。しかしオーフェリアはそれを無視して一歩踏み出そうとするが、平塚先生が立ち塞がる。

 

「そうはさせない。彼等は私の元教え子達だ」

 

「だから?相模南は文化祭でした自分の愚行を棚に上げて八幡を悪と広める屑で、そっちの2人は理不尽な言い掛かりをしてくる屑よ?はっきり言って存在価値なんてないわ。それに……」

 

言うなりオーフェリアは右腕に更に莫大な星辰力を噴き出し、それによって右腕に瘴気が宿る。余りの禍々しさに平塚先生も一歩引いている。

 

「……私に命令出来るのは私の所有権を持っている八幡だけよ。貴女の命令は聞く必要なんてないわ」

 

そう言って更に一歩踏み出す。これ以上はマズそうだな。

 

そう判断した俺は……

 

 

 

 

 

「なら俺が命じる。オーフェリア。命令だ、攻撃を止めろ」

 

俺がそう言うと全員の視線がオーフェリアから俺に向けられる。しかし俺は全ての視線を無視してオーフェリアに目を向ける。

 

対するオーフェリアは俺を見てハッとした表情を浮かべながら、

 

「……っ、八幡。ごめんなさい。また八幡に迷惑を……」

 

謝りながら星辰力と瘴気を解除した。それによって周囲に生じていた圧倒的なプレッシャーは漸く無くなった。

 

それを確認した俺はオーフェリアの元に歩いて、優しく抱き寄せる。

 

「……何があったかは想像がつく。俺の為に怒ったんだろ?だから俺はまだ誰も傷付けていないお前を咎めない」

 

「……ごめんなさい八幡。昨日の今日で……怒ってはダメだと解っていても……八幡を理不尽に貶める彼等に我慢が出来なくて……」

 

「良いから。お前は俺の為に怒ったんなら咎めるつもりはない。だから落ち着け」

 

そう言ってオーフェリアの背中に手を回し背中を摩ると、オーフェリアも同じように背中に回してくる。

 

「……ええ。本当にごめんなさい」

 

オーフェリアは謝りながらギュッとしてくる。もう暴れる気配はないようだ。

 

その事に安堵しながら俺はシルヴィに話しかける。

 

「で?大体予想はつくけど何があったか聞いて良いか?」

 

そう頼み込むとシルヴィは

 

「あ、うん。実はね……」

 

 

俺に対して説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡る事3分……

 

「じゃあオーフェリア、八幡君帰ってくるまでに頼む物決めようよ」

 

「……そうね」

 

手洗いに行って席を外している八幡を待つシルヴィアとオーフェリアは一足先にカフェに行き、席を確保しながらメニューを見始める。

 

「……どれも捨て難いわね」

 

オーフェリアは悩ましげにメニューのあちこちを見ている。少し前ーーー自由になる前のオーフェリアでは絶対に見せない表情だ。

 

それを見たシルヴィアは嬉しく思いながらオーフェリアと同じようにメニューを眺める。

 

「食べたい物が沢山あるなら3人で別々な物を頼んで少しずつ交換するのはどうかな?」

 

「……いいの?」

 

「勿論。私も食べたい物が沢山あるから賛成だよ。八幡君も賛成してくれると思うから」

 

それを聞いたオーフェリアは昨夜身体を重ねた最愛の恋人を思い出す。

 

(そうね……八幡なら賛成してくれるわね)

 

そう判断したオーフェリアはシルヴィアに頷く。

 

「……じゃあそうしましょう。私はこのサンドイッチとパフェにするわ」

 

「うーん。私はドリアとチーズケーキにしよっと。後は八幡君が来てから注文しようね?」

 

オーフェリアがシルヴィアの言葉に首肯しようとした時だった。

 

 

 

 

「あー、葉山先輩。このカフェにしましょうよ〜」

 

「うん。偶にはオープンカフェも良いかもね」

 

「あーし、隼人の隣に座るし」

 

「あ、じゃあ反対側はうちが……」

 

「反対側は私が座りますね〜」

 

聞き覚えのある声が聞こえた。2人が後ろを振り向くとそこには昨日連絡船で会った2人に加えて、その仲間と思わしき人が複数人いた。

 

瞬間、オーフェリアの胸中には殺意が、シルヴィアの胸中には不快な感情と恐怖が現れた。

 

(……折角八幡とシルヴィアの3人で楽しく過ごしてたのに)

 

(……どうしよう。オーフェリアが爆発しそうで怖いよ。しかも八幡君は変装してないから戻ってきたら間違いなくトラブルになっちゃうよ……)

 

そう判断したシルヴィアは急いで携帯端末を取り出して自身の彼氏に『トラブルの種がカフェにあるから食べる場所を変えよう』とメールをしようとした。

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば葉山君、アスタリスクではどうなの〜?」

 

赤髪の女子が金髪の男ーーー葉山に話しかける。すると亜麻髪の少女が

 

「それがですね〜。レヴォルフの『影の魔術師』が『弧毒の魔女』を利用して葉山先輩に嫌がらせをしてくるんですよ〜。その所為で鳳凰星武祭も棄権する羽目になって最悪です〜」

 

明らかなデマを口にする。

 

それを聞いたシルヴィアは急いで目の前で無表情でドス黒いオーラを噴き出しながら立ち上がろうとするオーフェリアの肩を掴む。

 

(……離してシルヴィア。あの女、性懲りもなく八幡を貶める事を……)

 

(待ってオーフェリア。お願いだから落ち着いて!)

 

シルヴィアは必死になってオーフェリアを止めながら、これ以上余計な事を言うなと内心毒付く。

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

.

「うわヒキタニ本当に最悪じゃん。うちも文化祭でちゃんとやったのにちょっとミスしただけで凄い悪く言われたしー」

 

赤髪の女子が火に油どころか、火にニトログリセリンを入れるような発言をぶちかました。

 

それによってオーフェリアは更に目を細めながらドス黒いオーラを噴き起こす。

 

(お願いオーフェリア。気持ちはわかるけど落ち着いて!)

 

(……離しなさいシルヴィア……!貴女も一緒にゴミ掃除をするわよ。アレは人間じゃなくてゴミだから消しても問題ないわ)

 

(いやいや、一応人間だからね?!お願いだから落ち着いて!)

 

シルヴィアが懸命にオーフェリアを宥める中、当の本人らは……

 

「アレ?でも隼人君、鳳凰星武祭の時はこっちに非があるって学園側から発表があったべ?」

 

「いやいや戸部先輩、当事者の私達が言っているんですよ?こっちが正しいに決まってるじゃないですか〜」

 

「そうそう。どうせガラードワースが『弧毒の魔女』に恐れたから葉山君達を悪いって発表したんでしょ?」

 

「……うーん。そうは考えにくいけど」

 

「は?じゃあ海老名は隼人が悪いと思ってんの?」

 

「……私は実際に見てないから何とも言えないよ」

 

「いやいや葉山先輩は悪くないですから。しかも昨日なんてアスタリスクから帰省する際に連絡船でまた『影の魔術師』が『弧毒の魔女』に命令して私と葉山先輩に嫌がらせをしてきたんですよ。ね〜葉山先輩?」

 

(……離せシルヴィア。もう限界……!)

 

(駄目だって!というか口調が変わってるよ!)

 

まさかの命令口調にシルヴィは驚きながらもオーフェリアの肩を離さない。肩を離したらオーフェリアは躊躇いもなくあの場で八幡の悪口を言っている面々を殺すだろうから。

 

しかしシルヴィの必死の説得も……

 

 

 

 

 

 

 

「うわ、本当に最悪じゃん。ヒキタニなんて本当に死ねば良いのに。ねぇ葉山君?」

 

「え、あ……駄目だよ相模さん。ヒキタニ君だって魔が差しただけで本当はそこまで悪い人じゃないんだから」

 

「葉山先輩は優しいですね〜。あんな最低な人に対してそんな風に庇うなん「……最低はどっちかしら?」はい?」

 

虚しく失敗に終わった。オーフェリアはシルヴィアの腕を振り払って立ち上がり、連中の元に歩き出した。

 

(あぁ……ごめん八幡君!止めれなかったよ!)

 

シルヴィが頭を抱えながら内心で八幡に謝る中、オーフェリアは連中が座っているテーブルの前に立ってヘッドフォンを外す。

 

すると……

 

「なっ……!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」

 

「お、お、お、オーフェリア・ランドルーフェン?!」

 

オーフェリアの髪が本来の色である白色に戻り、オーフェリアから圧倒的な星辰力が辺りに噴き荒れた。

 

すると葉山は今までの言動を思い出して真っ青になり、一色は昨日の出来事を思い出して椅子から転げ落ちて、相模は予想外の人物の出現に怯え出した。

 

周囲にいる人間も予想外の人物に驚き怯えながら距離を取る。本来なら葉山達も逃げ出したい気持ちで一杯だが、オーフェリアに睨まれて、蛇に睨まれた蛙よろしく一歩も動けなかった。

 

しかしオーフェリアはそれを無視して、最初に一色を睨む。

 

「……さっきから聞いていれば随分と八幡を悪人呼ばわりしてくれたわね?」

 

「え、あ、そ、その……」

 

「いつ八幡が私を利用したのかしら?それに八幡が貴女達に嫌がらせ?ふざけているのかしら?アレは全部そこの金髪の自業自得でしょう?八幡に罪を擦り付けるのは止めてくれない?」

 

「ひっ……!ぴあっ!」

 

オーフェリアは殺意を剥き出しにしながらそう口にすると一色は涙で顔をグシャグシャにしながら後退する。

 

すると葉山が……

 

「そ、その済まなかった!つ、つい魔が差してヒキタニ君の事を悪く言ってしまったんだ……!」

 

そう言って頭を下げるも……

 

「……ふざけてるの?ヒキタニ君だって魔が差しただけだと、明らかなデマを口走っておいて今更ね。大体貴方またヒキタニ呼びしているけど、懲りてないのかしら?」

 

余計にオーフェリアから星辰力が噴き出す。それと同時に腕からは瘴気が出始める。

 

(マズい……!オーフェリア昨日より遥かに怒っているよ!これは私が止めないと……!)

 

 

オーフェリアの怒りに呑まれかけていたシルヴィアは慌てて立ち上がろうとする。そしてオーフェリアは一色の隣にヘタレ込んだ葉山を見て、お前は後だとばかりに一暼してから相模に視線が向ける。その瞳は葉山や一色に向けていたそれよりも遥かに冷たいものだった。

 

「……一番気に入らないのは貴女よ、相模南。正直言って今直ぐ殺したいくらい貴女が憎いわ」

 

オーフェリアがそう言うと相模は怯え出す。

 

「な、何よ?!ウチは悪い事なんてしてないわよ!」

 

相模がそう口にするとオーフェリアは更に星辰力を噴き出す。制御していてこれである。

 

(うわぁ……私今までオーフェリアに対してリベンジを公言してたけど……ここまでとは思わなかったよ)

 

オーフェリアは3割の力で公式序列戦や星武祭で八幡やシルヴィアと戦った時より遥かに上回る力を噴き出している。

 

つまり本気のオーフェリアは八幡やシルヴィアと戦った時の実力と比べて、低く見積もっても3倍以上の力を持っている事になる。

 

そんな圧倒的な力の前で一般人の相模が抗えるはずもない。涙で顔をグシャグシャにしながら失禁してしまっている。

 

しかしオーフェリアはそんな相模を見ても特に表情を変えずに

 

「……ウチは悪くない?実行委員長の癖にクラスの方に出ても良いなんて戯言を言った貴女の何処が悪くないのかしら?」

 

「それは皆がクラスの方も楽しめるようにって思ったから……!」

 

「……そう。じゃあそれについては百歩譲って良いとするわ。じゃあ次、何で閉会式の時に逃げ出したのかしら?」

 

「そ、それは……」

 

相模は口を開こうとするが出来なかった。そんな相模を見てオーフェリアはため息を吐く。

 

「……全く、八幡も何でこんな屑の為に泥を被ったのかしら?無視すれば良かったのに……」

 

そうぶつぶつ呟く。しかし殺気は微塵も衰えていない故に余計に恐怖を感じてしまう。

 

八幡を侮辱した連中が怯える中、オーフェリアは遂に……

 

「……覚悟は出来たかしら?」

 

瘴気を纏った腕を葉山達に向ける。明らかに殺す気満々だ。そんな中シルヴィアがオーフェリアを止めようと彼女の腕に掴もうとした時だった。

 

 

「はいはい。そこまでにしときなはれ『弧毒の魔女』」

 

そんな声が聞こえながらオーフェリアと葉山達の間にスッと爽やかな風が吹くと同時に1人の女性が舞い降りてきた。そこには……

 

「……梅小路冬香。邪魔よ、退きなさい」

 

界龍第七学院序列4位『神呪の魔女』梅小路冬香が膨大な万応素を辺りに渦巻かせながらオーフェリアの前に立ち塞がっていた。

 

「いやいや、それは無理さかい」

 

おっとりとした口調ながら断固として譲る気がなく、高速で印を結んで臨戦態勢を取る。

 

するとその直後……

 

「……まさかこんな所で予想外の人物と会うとはねー」

 

「いやー、陽姉に帰省する際にディスティニーランドに行こうって誘われた時はこんな場面に遭遇するとは思わなかったよ」

 

「……いやいやウォン師姉、正直言って私、今直ぐ帰りたいんですけど」

 

冬香の横に序列3位『魔王』雪ノ下陽乃、序列5位『雷戟千花』セシリー・ウォン、序列11位『幻映創起』黎沈華と界龍の『冒頭の十二人』の女子3人が並びオーフェリアと向き合った。

 

雪ノ下陽乃を鋭い視線をオーフェリアにぶつけ、セシリーは冷や汗をかいて、沈華は今直ぐ帰りたいとばかりにげんなりとした表情を浮かべていて、それでありながら全員オーフェリアの前に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って、感じかな」

 

「ああ。大体予想はついてたが、完全に予想通りだった」

 

恐ろしいくらいピタリと当たった。もしかして予知能力に目覚めたのか?

 

色々言いたい事はあるが、とりあえず先ずは……

 

「オーフェリア」

 

先ずは俺と抱き合っている恋人に話がある。

 

「……何?」

 

「俺の為に怒ってくれるのは嬉しいが……とりあえず暴力で物事を解決しようとするのは止めろ」

 

先ずはそれが言いたい。今のオーフェリアはバックにディルクがいないので犯罪を犯した場合、揉み消しが出来ない。だから暴力を振るったら即アウトになってしまうだろう。

 

「それは……」

 

微妙に納得仕切れていないオーフェリア。仕方ない……

 

「これは命令だ。従え」

 

少し口調を強くして命令をする。するとオーフェリアはハッとした表情を浮かべてから……

 

「……わかったわ」

 

コクンと頷いた。良し、オーフェリアはなんだかんだ素直だから多分大丈夫だろう。次は……

 

そう思いながら俺は俺自身をdisっていた連中に視線を向ける。

 

「おい、俺をいくらdisるのは構わないが、オーフェリアを怒らせてんじゃねぇよ。オーフェリアがてめぇらの埃より軽い命を奪ってムショ行きになったら、たまったもんじゃねぇんだよ?」

 

別にこいつらは死んでも良いが、オーフェリアが殺した場合オーフェリアは罪に問われるだろう。こいつら程度の命を奪ってムショ行きだなんて馬鹿げているからな。

 

俺がそう口にすると相模が涙目でなりながらも睨んでくる。

 

「何よっ……!そもそもあんたが悪いのに何でうちらが悪く言われなきゃいけないのよ?!まぐれで王竜星武祭ベスト4になれたからって上から目線で言ってんじゃないわよ!」

 

「そ、そうですよ!元はと言えば先輩が『弧毒の魔女』の手綱を握ってないのが悪いんじゃないですか……!」

 

すると一色も便乗してくる。こいつらオーフェリアが相手じゃないと強気だな。

 

「なっ!君さぁ……!」

 

「……不愉快ね」

 

それに対して前に出ようとしたオーフェリアとシルヴィを手で制する。大方星脈世代じゃない相模は星脈世代の俺じゃ攻撃出来ないと判断して強気なのだろう。

 

確かに星脈世代が非星脈世代に対して手を出したら重罪だ。その事を盾にするのは良い選択だろう。

 

だが、俺はオーフェリアと違って真っ向から叩き潰すスタイルよりじわじわ削るスタイルの方が好きなんでな。

 

そう思いながら俺はポケットから端末を取り出してオーフェリアにビビって失禁した相模達の痴態を写真に収めた。

 

すると向こうも俺のした事を理解したようで青ざめる。

 

「ちょ、ちょっと!何してるんですか〜!?」

 

「あん?お前らが小便を漏らした痴態を写真に収めただけだから気にすんな」

 

「ふ、ふざけんじゃないわよヒキタニ!今直ぐ消しなさいよ!」

 

「嫌だね。次オーフェリアを怒らせたらネットにUPするからそのつもりで」

 

俺は適当にあしらいながら未だに喚いている馬鹿共を無視して界龍の面々の方を向く。

 

そして先頭に立っている梅小路冬香に対して頭を下げる。

 

「うちのオーフェリアが迷惑をかけたな『神呪の魔女』。彼氏として謝罪させて貰う」

 

話を聞く限りもしもこの女が間に入らなかったらシルヴィだけじゃオーフェリアは止め切れずに、葉山達が殺されてオーフェリアが犯罪者になっていたかもしれない。

 

「いやいや、頭を上げてかましまへんえ?実際怪我人は出てへんし、うちはそこまで怒ってへんよ?」

 

そう言われたので頭を上げる。

 

「……済まないな。それとオーフェリア、犯罪者になりかけたお前を止めてくれたんだ。謝罪はしとけ」

 

俺がそう言うと、オーフェリアは小さく頷いてから梅小路冬香に頭を小さく下げる。

 

「……ごめんなさい」

 

「だから頭は下げんでええよ?」

 

彼女は苦笑しながら手を振っていた。梅小路冬香……直で見るのは初めてだが、星露とは違った意味で掴めない人間だな。

 

そして理由はないが危険な匂いがする。公式序列戦の記録を見る限り俺の敵ではない。しかし妙に気になる。俺的には界龍じゃ星露の次に危険、序列で上回っている武暁彗や雪ノ下陽乃より危険な気がするんだよなぁ……

 

「ただ、あんさん。実際ここは公共の場やから、その辺気ぃ遣って貰わんとなぁ」

 

「……そうするわ」

 

そりゃそうだ。怪我人は出なかったが一歩間違えなら怪我人は出ただろうし。

 

「本当に済まなかった。謝罪の品について必要なら言ってくれ」

 

「うーん。うちは特にあらへん……あ、じゃあ1つ聞きたいことがあるんやけど」

 

「聞きたいこと?何だよ?」

 

俺がそう尋ねると彼女は俺の方に近寄って、

 

「(鍛錬中にお師匠さんから聞いたんやけど、八幡、お師匠さんの教えを受けとるのはほんまかい?)」

 

小声でそう聞いてくる。

 

……おい星露。てめぇ、何で自分の門下生に暴露してんだよ?万が一公になったら面倒だろうが。

 

「(あー、まあ一応週に一度受けてるな。ちなみにこの事は界龍じゃ有名なのか?)」

 

「(いんや、知っとるのはうちだけやと思うわ。まあお師匠さんの一番弟子の暁彗は知っとるかもしれんけど。それにしてもまさかほんまとはねぇ……いずれ手合わせしたいわぁ)」

 

「(そんなにしたいなら今回の件の侘びとしてお前らんとこの学園祭のイベントで闘ってやるぞ?)」

 

俺個人としてはチーム・赫夜の為にデータ収集目的として暁彗とやる予定だが、梅小路が今回の件の侘びとして闘いを求めるなら受けるつもりだ。

 

しかし、

 

「(あー、それは無理さかい。うち、お師匠さんから出るなって命じられてるんや。だから闘るとしたら王竜星武祭やな)」

 

なるほど。暁彗を獅鷲星武祭に、梅小路を王竜星武祭に出すつもりなのか。これはいい情報を手に入れられたな。

 

「(それに八幡は暁彗とやるとお師匠さんから聞いとるで?うちとの二連戦なんてしたら二戦目は負けるで?)」

 

だろうな。暁彗にしろ梅小路にしろ簡単に倒せる相手ではないだろう。仮に1戦目に勝ち星を挙げても、2戦目はボロ負けだろう。

 

 

 

 

 

 

「(わかった。じゃあお前との戦いは王竜星武祭までとっておく)」

 

「(そやね。当たるのを楽しみやわぁ)」

 

そう言ってから梅小路は俺から離れる。まあ出来ることなら当たりたくないけどな。どうもこいつからは危ない匂いがするし。

 

「じゃあとりあえず今回の件については以上で良いか?」

 

「かましまへんえ。それにしても恋人が2人も連れるとは中々色男やなぁ」

 

梅小路は小袖の裾で口元を隠しながら笑ってくる。何というか……妙な笑い方だな。

 

すると、

 

「えー。比企谷君、雪乃ちゃんがいるのに浮気?」

 

雪ノ下陽乃がそんな事を言ってくる。

 

「いや、浮気も何も雪ノ下とはそんな関係じゃないですからね?」

 

「またまた、照れちゃって〜」

 

そう言いながら俺の脇腹をつついてくる。ウゼェ……

 

内心辟易していると……

 

「……行くわよ八幡」

 

「そうだね。早くデートの続きをしないとね」

 

いきなり後ろから引っ張られたと思ったらオーフェリアとシルヴィがジト目を向けながら俺の腕に抱きついてくる。お前ら可愛過ぎか?

 

「あ、お、おい!」

 

俺が焦る中、オーフェリアとシルヴィはそれを無視して歩き出した。

 

「あ、ちょっと待ちなさいよヒキタニ!」

 

「そうですよ!写真を消してくださいよ!」

 

こいつらどんだけ上から目線なんだよ?

 

「……黙りなさい」

 

「「ひぃっ!」」

 

オーフェリアが一言そう言うと悲鳴を上げて黙る。オーフェリアはそんな2人を無視して雪ノ下陽乃と向き合う。

 

「……雪ノ下陽乃」

 

「私に何か用かな?」

 

「……学園祭で貴女達の出し物で貴女に挑むから」

 

「へぇ……私に対して眼中にないと何度も言っていた貴女が?」

 

「ええ。決闘なら合法的に貴女を潰せるから。そこで八幡を間接的に貶めた貴女の罪を裁くから首を洗って待っていなさい」

 

言うなりオーフェリアは首を掻っ切るようなジェスチャーをしながら冷笑を浮かべる。

 

怖い!オーフェリアさんマジで怖いから!シルヴィもドン引きしてるし。

 

オーフェリアはジェスチャーを終えると仕事を成し遂げたいような表情を浮かべてから俺を引っ張るのを再開した。

 

その際、途中で再起動したシルヴィも俺を引っ張り、次のアトラクションまで引っ張られ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は特に面倒事に遭遇する事はなく、オーフェリアの人生初のディスティニーランドはまあまあ及第点という形で幕を閉じた。


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