学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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番外編:比企谷八幡のいない中、恋人2人は……(中編)

「到着っと、いやー久しぶりに来たけど大きいねぇ」

 

アスタリスク中央区にある巨大ショッピングモールの前にて、シルヴィア・リューネハイムは目の前にある巨大ショッピングモールを見ながら感嘆の声をあげる。

 

「……学園祭はもう終わったけど凄い活気ね」

 

その隣ではオーフェリア・ランドルーフェンが同じように感嘆の声をあげながらショッピングモールを見上げる。

 

2人の髪は栗色となっていて、2人の正体はシルヴィア・リューネハイムとオーフェリア・ランドルーフェンと見抜く人間はいないだろう。

 

「まあまだ一部では春休みだからね。アスタリスクの外から来た人は学園祭以外にも興味があるんでしょ。それよりいつまでもここにいても意味ないし入ろっか?」

 

そう言ってシルヴィアはオーフェリアの手を握って歩き出すので、オーフェリアは手を握り返しながらシルヴィアの後に続いた。

 

「……そうね。頑張って八幡が喜ぶ物を選びましょう」

 

シルヴィアとオーフェリアは互いに頷いてショッピングモールの中に入った。

 

ショッピングモールに入ると沢山の人がいて賑わっている。学園祭の時に勝るとも劣らないくらいの熱気があった。

 

「……先ずは何処に行くのかしら?私はこういうのに疎いからシルヴィアが案内して」

 

「任せて。とりあえず私が考えているのは服とかかな?八幡君あんまりオシャレに興味ないし」

 

八幡は基本的にレヴォルフの制服を着ていて、家ではアンダーシャツとラフな格好で私服を余り持っていない。休日に出掛ける時も制服を着る時もあるくるいでオシャレに興味がないのだ。

 

「なるほど……私が言えることじゃないけど確かに八幡は余り私服を持っていないわね」

 

オーフェリアも持っている私服は少ない。自由になる前は制服と寝巻き以外持っていなかった。

 

自由になってからは同じ八幡の恋人であるシルヴィアや幼馴染のリースフェルトに色々な服を勧められて買ったが数は余りない。

 

「だから服にしようかなって。他には普段使う物とかかな?」

 

「……そうなると手帳とか万年筆とか?」

 

「そうだね。とりあえず行こうか」

 

シルヴィアはそう言いながらマップを開いて近くの服屋を探し始めて、見つけると歩き出したのでオーフェリアもそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

入った服屋は様々な種類の服が売られていた。派手な物から地味な物と多種の服が揃えられている人気の服屋だった。見ると男女問わず沢山の人が店の中で溢れかえっていた。

 

「さて……頑張って八幡君の服を決めないとね。オーフェリアの意見も聞くからね?」

 

「……私の意見なんて参考になるとは思えないわ」

 

オーフェリアは首を横に振る。彼女は自分自身にセンスがないと思っている。だから役に立つとは思っていなかったのでシルヴィアの意見に戸惑ってしまった。

 

「難しく考える必要はないよ。ただ八幡君に似合うと思う服を言ってくれるだけで充分だよ」

 

「……それなら、まあ」

 

「決まり。それじゃあ選ぼっか」

 

「……ええ。あ、それとシルヴィア。それが終わってからで良いから隣の下着売り場に付き合って貰って良いかしら?」

 

「?別に良いけど先月も行ったから早くないかな?」

 

「そ、その……最近大きくなったみたいで少しキツいの」

 

オーフェリアはそう言って顔を赤くする。最近大きくなった事に対して恥ずかしい気持ちが出てくる。自由になる前は特に何とも思わなかったが、八幡と付き合うようになってからはそういった事に対して敏感に反応するようになったのだ。

 

「あ、そうなの?じゃあ仕方ないね。いいよ」

 

「……悪いわね」

 

「別に良いって。私自身もそろそろ八幡君が喜びそうな下着を新しく買おうかなって思ったしね」

 

「八幡の喜びそうな……やっぱり派手なもの?」

 

「そりゃそうでしょ?八幡君凄くエッチだし」

 

シルヴィアは躊躇いなくそう答えてオーフェリアもそれに頷く。自分達の彼氏がどのくらいエッチなのかはしっかりと把握している。その結果派手なものにするべきと判断した。

 

「……そうよね。じゃあ私もその類のものにするわ」

 

「そうしよ。それで退院したら入院していた分も愛してあげよう?」

 

「もちろん。まあその前に本来の目的の服を選びましょう」

 

「そうだね。えーっと……」

 

言うなりシルヴィアは近くにあった服を見渡し始めるのでオーフェリアもそれを真似るように辺りを見渡す。

 

「……八幡は基本的に黒い服のイメージがあるけど、違う色にするの?」

 

「うん。八幡君が黒が好きなのは知ってるけど、偶には違う色も良いかもね。まあだからと言って赤とか黄色とかは違うと思うけど」

 

「……そうね。八幡はそんな明るい色を好むとは思いにくいわ。そうなると青とかかしら?」

 

「そうだね。上着が青だったら、例えばこのシャツなら、下のズボンを黒にしても白にしても似合うからね」

 

そう言ってシルヴィアは青いシャツをオーフェリアに見せる。ベストにも見えるそのシャツは控え目に見ても悪くないシャツである。

 

「なるほど……確かにそれなら八幡に似合うかもしれないわ。でもこれなら青いジーンズも合うんじゃないかしら?」

 

「あ、そうだね。上下共に青でも似合うかも。とりあえずこのシャツは買おっと。そうなると後はズボンだけど……」

 

「どの色にするべきかしら?」

 

シルヴィアの手には青と黒と白の三色のズボンがある。どれも買うつもりの青いシャツとは合いそうなズボンであるので悩んでしまう。

 

「うーん。オーフェリアは何色が良いと思う?」

 

シルヴィアにそう問われてオーフェリアは3つのズボンを見る。その中でオーフェリアが気に入ったのは……

 

 

「……青と黒かしら?」

 

「オーフェリアは青と黒かー。私は白と黒のどっちかかな?」

 

「……なら両者が一致している黒にしましょう」

 

「オッケー。じゃあレジに行こうか?」

 

「……ええ。今から八幡が着るのを楽しみだなぁ」

 

「そうだね」

 

2人はそう言うと同時にレジに並びながら自身の恋人が買う服を着ている場面を想像する。2人の脳内には八幡が買う予定の服を着ていて……

 

『好きだ。お前達を愛している』

 

真剣な表情で2人に告白している場面が映っていた。それを認識した瞬間、オーフェリアとシルヴィアは……

 

 

 

「ふふっ……」

 

「えへへ……」

 

至極幸せそうな声を出しながら満面の笑みを浮かべていた。その表情は誰から見ても幸せそうに見える。

 

すると……

 

 

 

 

 

 

「あのー、前に進んで貰えませんか?」

 

後ろから声をかけられた2人は妄想を止めて後ろを見ると、1人の女性が困ったような表情を浮かべていた。

 

それによって2人はレジに並びながら妄想をしていた事を認識したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

店員がそう言って商品を手渡してくるのでシルヴィアとオーフェリアはそれを受け取って、店の外に出る。

 

それと同時に……

 

 

「うぅぅぅ……私のバカバカ」

 

「恥ずかしいわ……」

 

2人は真っ赤になって俯く。理由は簡単、さっきレジに並びながら恋人に愛を囁かれる妄想をしていたら後ろに並んでいた他の客に前に進んでくれと言われたからだ。

 

「はぁ……私もうダメかも。次アスタリスクの外に行く時大丈夫かなぁ?」

 

既にシルヴィアの中で八幡とオーフェリアは無くてはならない存在となっている。その2人と仕事で離れ離れになるなんて想像するだけて寂しいと思っているくらいだ。

 

「……私には頑張れとしか言えないわね」

 

「オーフェリア冷たいよ。次は2人も付いてきてよ」

 

「……そうしたいのは山々だけど、シルヴィアと違って仕事をしてない私と八幡が長期休暇でもない時にアスタリスクの外に行くのは無理よ」

 

「それはそうだけど……」

 

シルヴィアは膨れっ面を見せてくる。それを見たオーフェリアは……

 

(ちょっと可愛いわね)

 

場違いな感想を抱く。しかし口にはしない。したらシルヴィアが抱きついて甘えてくる可能性が高いからだ。家の中ならともかく外で抱きつかれるのは余り慣れていないのだから。

 

そんな中シルヴィアはやがてため息を頷く。

 

「……そうだよね。ゴメンね無理言って」

 

「まあ気持ちはわかるわ。でも結婚したら毎日一緒なんだからそれまでの辛抱よ」

 

「うん。私何とか頑張るよ。と、それより約束通りオーフェリアの希望の店に付き合うよ」

 

そう言ってシルヴィアは先程彼氏の服を買った店の隣にあるランジェリーショップを指差した。

 

「わざわざ悪いわね」

 

「別にいいよ。さっきも言ったけど私も新しい下着が欲しいし」

 

「……そう。じゃあ行きましょう」

 

2人がランジェリーショップに入る。すると辺り一面に大量の下着が展示されていた。清楚なものから面積の小さい際どいものなど様々な種類があるが……

 

「やっぱり露出の激しいものだね」

 

「……そうね」

 

2人は迷うこと無く面積の小さい下着が売られているエリアに足を運ぶ。すると……

 

「こ、これは……凄いね」

 

「そ、そうね……」

 

シルヴィアとオーフェリアは頬を染める。そこには未だ2人が着けた事がないような際どい下着が揃っていた。予想以上に際どい下着が多くて戸惑っている時だった。

 

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

 

すると近くにいた若い女性店員が2人の近くにやって来た。2人は顔を見合わせて1つ頷く。そしてシルヴィアが口を開ける。

 

「そ、その……彼氏を喜ばせる下着を買いたいんですけど」

 

シルヴィアがそう口にすると店員は笑顔で頷く。

 

「あー、なるほど。つまり際どい下着で彼氏さんに迫りたいと?」

 

「は、はい」

 

「そうですね……当店ではこの2つがお勧めですね」

 

 

そう言って店員が用意した下着は……

 

「ええっ?!」

 

「………」

Tバックの黒い下着と秘部以外の箇所の色が薄く丸見えの紫色の下着だった。

 

2人は一目見たたけで確信した。店員が見せてきた下着はこの店で売られている下着全ての中で際どさがトップ5に入るという事を。

 

真っ赤になりながら下着を見る中店員が話を続ける。

 

「当店ではよく彼氏に迫る時どういう下着を買うべきか尋ねられますが、我々は必ずこの2つを勧めていますね。これらを着て彼氏に迫れば彼氏もその気になると自信を持って言えます」

 

店員の言葉からは絶対の自信が見て取れた。それほどまでにこの下着に自信を持っているのだろう。

 

そう思いながら2人は下着をジッと見て自分が着ている姿を想像する。

 

それによって2人の顔に熱が生じるが、2人をそれを無視して自身らの彼氏である八幡の事も想像する。

 

2人の想像の中では2人が下着姿のまま八幡に迫り抱きついた。すると八幡は2人をベッドに押し倒して荒々しいキスをしながら2人の胸を下着越しに揉み始め、終いには2人のショーツに手を掛け2人の聖域を………

 

 

 

 

 

 

 

「これ買います!私は黒の方でお願いします!」

 

「……私は紫の方を買うわ」

 

そこまで想像した2人は即座に店員に買う事を口にした。すると店員は……

 

「ありがとうございます。お客様のサイズに合ったものが見つかりましたらお声掛け下さい」

 

笑顔でそう言ってから2人に手渡して去って行った。店員が見えなくなると同時にシルヴィアが口を開ける。

 

「……オーフェリア」

 

「……何かしらシルヴィア?」

 

「八幡君が退院した日にはこれで迫ろうね」

 

「そのつもりよ。八幡は入院生活で退屈しているだろうから一杯愛しましょう?」

 

「当然」

 

2人は顔を向き合わせながら固い握手を交わして、互いに適したサイズの下着を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

それから2時間後……

 

「あー、良い買い物したー」

 

ショッピングモールの中にある喫茶店に来たシルヴィアとオーフェリアは一息を吐く。

 

下着を買った2人はその後、自身らの服や料理やお洒落の本などを買って休憩として喫茶店に入ったのだ。

 

「そうね。午後は何処に行くの?」

 

コーヒーを口にしながらオーフェリアはそう尋ねる。

 

「うーん。買いたい物は大分買ったし……甘い物巡りでもしない?」

 

それを聞いたオーフェリアは考える素振りを見せる。学園祭で甘い物は散々食べたが、アレは良いものだったのでまた食べたいと思ったくらいだ。

 

だからオーフェリアは是の返事をしようと口を開いた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで〜、『影の魔術師』がうちの会長を騙したから私と葉山先輩は怒られたんですよ〜」

 

聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえてきた。瞬間、オーフェリアとシルヴィアは顔を見合わせて声が聞こえてきた方向を見ると、そこには見覚えのある亜麻色の髪のした女子と彼女と同じガラードワースの制服を着た複数の女子がいた。

 

(あの女……どれだけ八幡を貶せば気が済むのかしら?)

 

オーフェリアの胸中に怒りの感情がフツフツと生まれる中、会話は続く。

 

「おかげで学園祭初日は最悪でしたよ」

 

「そうなんだ……いろはちゃん可哀想……」

 

「本当にレヴォルフの生徒は……!」

 

「最低ね……」

 

他のガラードワースの女性とは亜麻色の髪の女子の話を信じているようだ。次々にレヴォルフの悪口を言う。

 

それを聞いて苛立つオーフェリアを他所に……

 

「学園祭2日目の『覇軍星君』との戦いもズルしたに決まってます〜。本当に最低なんだから……」

 

亜麻色の髪の女子は八幡を悪く言う。

 

もう限界だ、オーフェリアがそう思って立ち上がろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、八幡君を悪く言うのは止めてくれないかな?」

 

その前にシルヴィアが立ち上がってガラードワースの女子達がいる席の前に立つ。顔には不機嫌な色が混じっていた。

 

「は?どちら様ですか?」

 

亜麻色の髪の女子は訝しげにシルヴィアに話しかける。それに対してシルヴィアは……

 

「私?私は八幡君のライバルだよ」

 

「ライバル〜?あんな卑怯な人の?」

 

「その卑怯って言うの止めてくれないかな?八幡君は口も悪いし素直じゃないけど戦いでズルはしないし基本的に不当に人を貶めるような事はしないよ」

 

それを聞いたオーフェリアは少しだが落ち着きを取り戻した。誰よりも誠実であるシルヴィアがそう口にすると不思議と安堵感が生まれたからだ。

 

しかし……

 

「随分とあの人を庇うようですけど普通に考えてレヴォルフの彼が卑怯なのは正しいと思いますが?てかそれ以前に貴女誰ですか?」

 

亜麻色の髪の女子が訝しげな表情でそう口にする。

 

それに対してシルヴィアはため息を吐き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はシルヴィア・リューネハイム。八幡君の1番のライバルだよ」

 

ヘッドフォンを外し紫色の髪を露わにしながら自身の名を名乗った。


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