目指せ4000!
って訳で今後もよろしくお願いします
「なあオーフェリア、機嫌直せって」
廊下を歩き星露達がいる場所に向かう中、俺は右隣にいる恋人ーーーオーフェリアに話しかける。彼女の顔には不満が見て取れる。普通の人から見たらいつもの変わらないと思うかもしれないが、俺からしたらバレバレだ。
「……別に機嫌は悪くないわ」
「嘘つけ。バレバレだからな」
「……悪くないわよ」
あくまで素直にならないか。だったら……
「そうか……素直にならないなら今後キスはなしな」
「ごめんなさい八幡。機嫌が悪いのは認めるからそれだけは止めて」
掌返し早過ぎだろ?!余りの早さにかなりビビったぞ!
まあそれはともかく……
「冗談だよ。素直にならないから少しからかっただけだ。つーかお前とキス出来ないのは俺が嫌だ」
オーフェリアとシルヴィとキス出来なくなるなんて絶対に嫌だ。間違いなく発狂死する自信がある。てか最近マジで2人の所為でダメになってきてるな。
するとオーフェリアはジト目で俺を見上げながら胸板をポカポカ叩いてくる。
「……八幡のバカ」
え?何この子?マジで可愛過ぎるんですけど?今直ぐ押し倒してるをですけど?
「悪かったって。それはそうと悪いな。嫌がってるのに俺が解毒するように命令して」
そう。俺はオーフェリアに、雪ノ下陽乃の中に入ってある星脈世代の人を普通の人にする毒を解毒するように頼んだ。
しかしオーフェリアは俺が貶められる原因を間接的に作り上げた雪ノ下陽乃を憎んでいるから不満タラタラなのだ。
俺がそう言って軽く謝るとオーフェリアはジト目を消して首を横に振る。
「……別に良いわよ。私自身が嫌なのは事実だけど八幡の命令に背くつもりはないから安心して」
「そうか」
「……ええ。でも八幡、何で八幡は取引をしたの?八幡はあの女が憎くないの?」
オーフェリアにそう問われたので少し考える。その結果思い浮かんだ理由は2つだった。
1つは雪ノ下陽乃を普通の人にするより自由を奪う方が良いと思ったからだ。自分の意志が含まれる行動は一切許されず、とにかく母親の言いなりとして人生を送る方が奴にとって罰になると判断したからだ。
そしてもう1つは……
「まあ憎いっちゃ憎いがそれには理由がある。オーフェリア、もしも解毒を拒否して序列3位のあの女から力を奪ったら統合企業財体の界龍はどうすると思う?」
「……それは、私達ひいてはレヴォルフに文句を言ってくる?」
「ああ」
その通りだ。優秀な学生の力を他所の学園の人間が奪ったりしたら、星武祭の順位にも関わるので、間違いなく界龍はレヴォルフに文句を言ってくるだろう。
もしかしたらレヴォルフは俺達に罰を与えてくるかもしれないし、その際に解毒を要求するかもしれない。そうなったら遅かれ早かれだ。
それに……
「よく考えてみろオーフェリア。もしもレヴォルフひいてはソルネージュに睨まれたら俺達は平和にイチャイチャ出来なくなる可能性も出るぞ」
他校の優秀な学生の力を奪うなどの問題を起こし、その上でオーフェリアとシルヴィの2人付き合っている事がバレたりなんかしたら間違いなく今の生活は出来ないだろう。
可能性は低いが0ではない。0ではない以上一切の油断は出来ない。
俺にとって最優先なのは3人で幸せになる事だ。もしも雪ノ下陽乃の解毒をしない事で問題となり、その幸せに綻びが出るかもしれないなら喜んで解毒するように命令を出してやる。
それを聞いたオーフェリアはハッとした表情を浮かべて頷く。
「……そうね。そんな生活は嫌ね。私は死ぬまで八幡とイチャイチャしたいし、邪魔される可能性があるなら解毒するのもやむを得ないわ」
「だろ?それに俺にとってはあの女から自由を奪う方が罰になるからな」
あの女に自由を与えるのは危険過ぎる。そのくせ優秀なのだから人形のように自由を与えない方が都合が良いだろう。実際秋乃さんもさっき俺の要求に対して旨味があると認めてたし。
「……わかったわ。それなら私は文句を言わないわ」
「サンキューな。……っと、そろそろ着くっぽいぞ。シルヴィは変装しておけ」
「うん、わかった」
言うなりシルヴィはヘッドフォンを装着して髪の色を栗色に変える。
見ると目の前には真っ赤な巨大な門があった。他の扉とは明らかに雰囲気が違う扉だ。おそらくこの中に……
そう思う中、先頭を歩く秋乃さんが扉に触れると、厳しい音を立てながらゆっくりと開いた。
そこには……
「おお、待ち侘びたぞ!」
星露が楽しそうな表情をしながら玉座に座っていた。そしてその左右には武暁彗、梅小路冬香、セシリー・ウォン、趙虎峰など界龍の実力者達が控えるように並んでいた。
そしてその中には雪ノ下陽乃もいる。しかしいつもの仮面は付けておらず、怯えるような表情でオーフェリアを見ていた。完全にトラウマになってやがる。
見ると他の連中も差はあれどオーフェリアの事を恐れた表情で見ている。当のオーフェリアは全く気にしていない素振りだけど。
そう思いながら俺達が玉座に近寄ると、星露が玉座から降りトテトテと俺の方に向かってきて、手を握ってきた。瞬間、オーフェリアとシルヴィがジト目で俺を見てくるが俺は悪くないからな。
内心そう突っ込む中、星露はキラキラとした表情で話しかけてくる。
「先の暁彗との戦い、実に見事であったぞ。ここまで儂を滾らせたのは本当に久しぶりじゃった。それとこれが賞品じゃ」
そう言って星露はチケットを渡してくるので見ると、界龍の出し物は全て無料になると書かれたチケットだった。
「サンキュー」
「うむ。それにしても儂の目に狂いはなかった。やはり今からでもお主を儂の弟子にしたいのう……」
「いや、だから俺は界龍の生徒じゃないからな?諦めろ」
いくら自由きままな万有天羅でも他所の学園の人間を正式な弟子にするのは問題だろう。今星露が俺や若宮達チーム・赫夜にやっている私闘という名の訓練も普通に問題だし。
すると星露がとんでもない事を口にした。
「それについてじゃが……儂は決めた。今回の獅鷲星武祭で儂が出すチームが優勝した場合、お主を界龍に転入させる事にした」
……ファ?!ま、マジで?!
予想外の発言に呆気に取られてしまう。アスタリスク内での転校移籍は星武憲章違反だ。
しかし星武祭で優勝したならば話は別だ。星武祭優勝で叶えて貰える願いは全ての統合企業財体が協力して叶えなければならない絶対のものだ。
(確かにそれなら星武憲章違反として咎められる事はないだろう。でも普通他所の学園の人間を転入させようとするか?!)
俺が戦慄する中、星露は楽しそうに笑う。
「さすれば儂はお主と毎日戦えるからのぉ。今から楽しみでしょうがない」
ダメだこいつ……マジで頭の中には戦闘しかないようだ。後ろを見ると趙虎峰は額に手を置いてため息を吐いていた。あいつは間違いなく苦労人だろう。
まあそれはともかく……星露が出すチームが優勝したら本当に界龍に転入する事になるだろう。それ自体は別に構わない。俺自身愛校心ないし。
ただ……
「別に構わないが、そん時はオーフェリアも界龍に転入させてくれ」
恋人と離れ離れになるのは嫌だしな。どうせならシルヴィも界龍に転入させたいが、それやったらペトラさんが煩そうだから諦めよう。
まあシルヴィは元々別の学校だから俺達がレヴォルフから界龍に転入してもそこまで今の生活が変わる訳ではないし問題ないだろう。
俺がそう口にすると、
「ひいっ!」
雪ノ下陽乃の悲鳴を皮切りに星露の門下生からは騒めきが生まれる。まあ当然だろう。レヴォルフの2トップが自身らの通う学園に来るかもしれないのだから。てか雪ノ下陽乃が悲鳴を出すのは予想外だった。どんだけオーフェリアにトラウマを持ってんだよ?
そう思う中、界龍の大将である星露は……
「構わんぞい?儂としても是非戦ってみたい」
……結局そこかよ。やっぱりバトルジャンキーだなこいつ。てかオーフェリアと星露が戦うって……界龍そのものが吹っ飛びそうだな。とりあえず2人が戦う時は界龍の外にいよう。
「ま、まあ、オーフェリアも連れて来るなら俺は構わない。オーフェリアは?」
「……八幡と一緒なら構わないわ。それより本題に入りましょう」
言うなりオーフェリアは星露の横を通り過ぎて雪ノ下陽乃の元に向かう。
そして怯える彼女に特に反応を示す事なく、彼女の上制服を掴み捲り上げる。するとそこには試合中に見た真っ白な腹は見る影もなく、臍を中心に不気味な紫色の紋様が浮かんでいた。その紋様は尾が9本ある狐を封印している紋様そっくりだった。
俺がそれを認識すると同時に……
「………」
オーフェリアが右手を雪ノ下陽乃の臍に当てる。すると当てた箇所から緑色の魔方陣が現れて、それと同時に紫色の紋様がオーフェリアの手に吸い込まれるかのように小さくなり始める。
それが30秒くらい続くと……
「……命令通り解毒したわ。八幡、これでいいかしら?」
オーフェリアは臍から手を離してこちらに寄ってくる。見ると臍にあった不気味な紋様は影も形も無くなっていた。
「ああ。ご苦労だったな。では秋乃さん、約束は守ってくださいね」
「ええ……陽乃、彼から文化祭の件は聞きました。その事から貴女を自由にすると碌な事にならないのを理解したので今後は学園生活も卒業後の進路も私が決めますので」
それを聞いた彼女は目を見開き、やがて悔しそうな顔をしながら歯軋りをする。オーフェリアに仮面を壊されたからかさっきから素の状態の彼女を見てばかりだ。
しかし彼女自身頭が良いから、俺が秋乃さんとした取引内容について概ね理解したのだろう。悔しそうに歯軋りをしながらも遂に……
「……はい」
頷いた。まあ妥当な判断だ。ここで断ったら再度オーフェリアの毒を受ける事になるのは明白なのだから。
「……よろしい。これで宜しいですね?」
「ああ。問題ないな。んじゃ星露、俺達はこのチケットを使って遊びに行くから失礼する」
何だかんだ色々あったが、俺達はデート中なんだ。折角無料券を手に入れて遊ばない手はないからな。
「うむ。では八幡よ。4日後にいつもの場所でお主と戦うのを楽しみにしているぞ」
……ああ。確か4日後に週一の星露との私闘という名の訓練があったな。
俺が了解と言おうとした時だった。
「……ちょっと待ってください!師父!」
星露の後ろにいた趙虎峰が口を開ける。
「ん?何じゃ虎峰?」
「今何と言いましたか?!僕の聞き違いでなければ4日後にいつもの場所で戦うのを楽しみにしてると言ってませんでしたか?!」
あ、ヤベ。何自爆してんのこのチビは?
内心焦っている中星露は……
「む……失言じゃったのう。まあ良い……実を言うと儂は週に一度、そこにいる八幡に稽古をつけているのじゃよ」
馬鹿正直に暴露した。
次の瞬間………
『えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!』
星露の門下生の殆どが驚きの声を上げて、謁見の間に響き渡った。
マジで面倒な予感しかしねぇ……本当にこのチビ、トラブルメーカーだな!
俺はため息を吐きながら叫び声に対して耳を塞いだ。