学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は危険なイベントに参加する

学園祭3日目の午後……

 

いよいよ六学園最後の学園、アスタリスクにある六学園の内唯一の女子校であるクインヴェール女学園に入る事になる。

 

それは良いんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、マジで許してくれよ」

 

オーフェリアとシルヴィは未だに頬を膨らませている。そんな2人は凄く可愛いが怒っている2人にそんな事を馬鹿正直に言ったらどうなるかは簡単に予想がつくので口にしない。

 

「……別に怒ってないわよ」

 

「うん。話を聞く限り彼女の頭を撫でるのは私達と付き合う前からだったらしいしね」

 

だったら頬を膨らませるのは止めてくれよ……

 

「マジで悪かったから許してくれよ。何でも言う事を聞くからさ」

 

俺がそう言うと2人は膨れっ面を止めて俺の顔を見てくる。

 

「……本当?」

 

「ああ。俺に出来る事なら何でもしてやる」

 

オーフェリアの質問に俺が頷いた時だった。

 

「ふーん。何でも……ね?」

 

シルヴィが笑みを浮かべる。しかしその笑みは世界中の人々を虜にした明るい笑みでも、抱いた後に俺だけに浮かべる艶のある笑みでもなく、悪魔のような笑みだった。

 

……何だろう。物凄く嫌な予感しかしない。

 

しかし一度言った言葉を撤回する訳にはいかない。てかシルヴィが撤回を許してくれなそうだ。

 

「ち、ちなみにシルヴィは何を提案するんだ?」

 

俺がそう言ってシルヴィを見ると、シルヴィは悪魔の表情を浮かべながら空間ウィンドウを開く。チラッと見るとクインヴェールのホームページである事が理解できた。

 

シルヴィが暫くの間空間ウィンドウを操作していると、

 

「八幡君にはこれに出て貰います」

 

そう言って空間ウィンドウを俺に提示してくる。それを見た俺は絶句してしまう。

 

そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『煌めけ一輪の花!クインプリンセスショー!』

 

と表示されていた。

 

概要を見るとクインヴェールの公式序列戦で使われるアリーナで行われるコンテストのようだ。

 

参加者は六学園の生徒以外にも一般客からも募集されているようだが……

 

「つまり……女装をしろと?」

 

「うん」

 

いや、うんじゃねぇよ。良い笑顔で何言ってんのこの人は?

 

「いやいや!これ絶対に男子の参加は禁止だろ?!」

 

トップページにはシルヴィやルサールカなどクインヴェールの実力者が華やかな衣装を着て映っているが、普通に俺じゃダメだろ!!

 

「よく見なよ八幡君。概要の所には男子禁止なんて書いてないよ?」

 

いやそれは当たり前の事だから書いてないんだよ!明らかにわかって言ってるだろ!

 

「でも事前審査で却下されるだろうが!」

 

「私は生徒会長だよ?」

 

……つまり職権乱用かよ。こんな時に権力を使うな!

 

「いやでもな……普通にステージでバレるからな?」

 

いくら女装したとしても多分、いや絶対にバレるのが目に見えるわ!そうなったら恥をかくに決まっている。

 

俺がそう言うものの、シルヴィは諦める様子もなく……

 

「じゃあ私がコーディネートして、ステージが始まるまでに1回でも疑われたら棄権していいよ?その代わりもしも1回も疑われなかったら……」

 

出ろって事か……

 

本来なら却下したいが、一度何でも言う事を聞くと言った手前断りにくいな……

 

(いや、いくらシルヴィでも俺を女の子らしくするのは無理だろうな)

 

何せ顔が男っぽいし、身体にはそこそこ筋肉が付いているし男と判断されるだろう。疑われたら即座に走り去って逃げればいい話だ。

 

そう結論付けた俺は……

 

「……わかった」

 

嫌々シルヴィの提案を受ける事にした。ここで逆らうと更に恐ろしい要求をしてきそうな気がするし。

 

俺が了承するとシルヴィはそれはもう良い笑顔を見せてくる。お前本当に楽しそうだな……

 

「じゃあ八幡君。可愛くコーディネートしてあげるから付いてきて。オーフェリアはあそこの受付で八幡君のエントリーをしてくれない?名前は女の子らしい名前でね」

 

「……わかったわ」

 

「ありがとう。それが終わったらここに来て。通行証は今送るから」

 

そう言ってシルヴィはオーフェリアの端末にデータを送ると俺を見てくる。

 

「じゃあ行くよ」

 

シルヴィは俺の手を引っ張って歩き出した。ああ……どうやらマジで参加しないといけないようだ。頼むから事前に疑われますように……!

 

神に祈りながら俺はシルヴィに引き摺られてクインヴェールの本校舎に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくらシルヴィでも俺を女の子らしくコーディネートするのは無理だろう。だから俺は事前に疑われて参加しないで済む。

 

そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………10分前までは

 

「さあ!次に行きましょう!エントリーナンバー10番!一般客から参加した比企谷八重さんです!」

 

司会を担当するルサールカのマフレナがそう言ったので黒いドレスを着た俺が一歩前に出ると観客席から歓声が上がる。

 

はい、結論を言うとステージが始まるまでに誰にも疑われませんでした。

 

シルヴィのコーディネートはマジで神がかっていた。露出の少ない大きなドレスで身体の筋肉が見えにくくして、頭にはカツラを、顔には薄い化粧を、目にはカラーコンタクトを付けたら自分でも男子には見えないと思ったくらいだ。

 

その上、始まる直前にシルヴィが自分の能力を使って俺の声も変えて女の子らしい声にしたので余程の事がない限りバレないだろう。

 

しかしだからと言って恥ずかしさが消える訳ではない。

 

理由としては色々ある。

 

1つは審査員席にいる面子だ。ルールとしては点数制で審査員が10人いて持ち点は1人10点で最高点は100点って感じだ。

 

それについては問題はないが問題は審査員席にいる面々だ。10人いる審査員の内顔見知りが4人いる。

 

クインヴェールの理事長にして元トップアイドル兼トップモデルのペトラさん。

 

クインヴェールで2番目に人気アイドルグループルサールカのリーダー、序列3位のミルシェ

 

今シーズンの鳳凰星武祭で数年ぶりにクインヴェールからベスト4入りしたクインヴェールの雪ノ下と由比ヶ浜

 

以上の4人が審査員席にいるのだ。

 

ペトラさんに対しては事前にシルヴィが話したらしく、呆れた表情を俺に向けている。

 

しかしそれ以外の3人、ミルシェと雪ノ下と由比ヶ浜はマジマジと俺を見ている。これはおそらく比企谷という苗字だからだろう。

 

実際観客席からも『比企谷ってあの比企谷?』とか『レヴォルフNo.2の妹か?』って声が聞こえてくるし。

 

(オーフェリアの馬鹿野郎……馬鹿正直に比企谷って記入してんじゃねぇよ!)

 

内心毒づきながら最前席にいるオーフェリアを睨むと、シルヴィとオーフェリアが可愛らしく手を振ってくる。ああ、やっぱり可愛いな……って、そうじゃねぇよ!

 

てかバレたらマジでヤバい。バレたら社会的に死ぬ。そうなった場合、学園祭が終わると同時に退学届を出してアスタリスクから出てテレビやネットも繋がらないくらい辺境の地で暮らすつもりだ。

 

そう強く決心している中、司会のマフレナが近寄って話しかけてくる。

 

「はい。では比企谷さん。こんにちは」

 

「は、はいこんにちは」

 

若干噛んだが仕方ないだろう。許して欲しい。幸いマフレナは緊張していると判断したのか苦笑して話しかけてくる。

 

「こんにちは。比企谷さんは学園祭楽しんでいますか?」

 

「そ、そうですね。自分としては六学園全制覇を目標としていて、この学園が最後ですね」

 

「へぇ、六学園全制覇ですか!私は仕事で忙しかったので羨ましいですよ」

 

「まあルサールカは人気ですから仕方ないですよ」

 

シリウスドームでもライブをやってたしな。シルヴィも休みを取るのに相当無理したみたいだし。

 

「そう言って貰えると嬉しいです。では質問に入りたいですが……比企谷さんはレヴォルフ黒学院序列2位の比企谷八幡さんや星導館学園序列8位の比企谷小町さんとは兄妹なのですか?」

 

……やっぱりその質問が来たか。審査員席の由比ヶ浜なんて身を乗り出して聞く構えを見せているし。

 

しかし俺は対策を考えてあるから問題ない。

 

「いえ。自分はあの2人とは無関係ですね。比企谷って苗字は珍しいですからそう思われても仕方ないですけど」

 

俺がそう口にすると……

 

「あ、そうなんですか。まあ比企谷って苗字は珍しいですから」

 

マフレナは簡単に信じてくれた。……よかった。ここで疑われたら何かの弾みでバレていたかもしれん。この調子で審査員達や観客に『比企谷八重は比企谷八幡や比企谷小町とは無関係』と擦り込ませるべきだろう。

 

「ええ。実際に自分と初めて会う人は大抵聞いてきますね。一応自分は星脈世代ですけどあの2人のように強くありませんよ」

 

俺がそう口にすると観客席から拍子抜けしたような空気が流れる。これが俺の望んでいた空気だ。

 

審査員席を見ると似たような空気が流れている。雪ノ下は未だに猜疑の目を向けてくるがミルシェと由比ヶ浜の疑いは解けたように見える。

 

ペトラさんの呆れた表情はこの際気にしない事にしておこう。

 

「そうですか。では次の質問ですけど、この黒いドレスはご自分で選んだのですか?」

 

いえ、お宅の学園の序列1位が選びました。……何て言える訳ないだろうが!言ったら間違いなく騒ぎになり、その際にバレるかもしれない。

 

だから俺は……

 

「い、いえ……自分で決めましたね」

 

あたかも自分で選んだ事にした。

 

「そうですか。ちなみにこのドレスを選んだ決め手は何でしょうか?」

 

男である事をバレないよう体つきを隠すためです。勿論そんな事を言うつもりはない。言ったら社会的に死ぬ。

 

「そ、そうですね。黒色が好きなのと……一度ドレスを着てみたかったらですね」

 

糞がぁぁぁぁっ!今直ぐに首を吊りたい!嘘とはいえドレスを着てみたかったなんて言っちまったし。

 

マジで死にたい……観客席にいるシルヴィなんて震えていて爆笑寸前だし。マジで腹立つな……良し決めた。今日から1週間シルヴィにはキスをしない事にしよう。

 

そう思っているとシルヴィが急に震えを止めて俺を見てくる。顔を見ると青ざめていて……

 

(ゴメン八幡君!謝るからそれだけは止めて!)

 

目でそう語ってくる。少しキツいお仕置きのようだ……

 

(わかったよ。止めるからそんな悲しそうな顔は止めろ)

 

俺がそうアイコンタクトをするとシルヴィはホッと息を吐いた。その表情は安堵に満ちている。

 

え?何で通じるかだって?好きな女となら言葉を交わさなくても通じるだろ?

 

まあそれはともかく誰が服を選んだとか服を選んだ理由などは聞かれた以上、殆ど終わりだろう。

 

とりあえずバレる事は無さそうで良かった。まあ俺からしたら黒歴史だが、バレなければ恋人2人の印象に残ったという事で我慢も出来るしな。

 

俺が内心安堵の息を吐いていると……

 

「では次の質問です。比企谷さんは恋愛関係を持っていますか?差し支えなければ答えてくれませんか?」

 

マフレナがそんな質問をしてくる。それに対して俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。彼女が2人います」

 

もう直ぐ終わりと油断して、つい誤魔化すことなく正直に話してしまった。

 

瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇ?!』

 

ステージに驚愕の声が響き渡った。

 

………やっちまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ柚陽ちゃん。あの比企谷八重って……」

 

「多分彼ですよね?彼女が2人いると言っていましたし」

 

「ええ。さっきシルヴィアから聞いたけど、シルヴィアが悪戯半分で女装させて参加させたみたい」

 

「え?本当に比企谷さんですの?!てっきり女子かと思いましたわ!」

 

「わからなかったよ。それにしても……可哀想」

 

「そう?私はいい気味だと思うけど」

 

「もしかしてクロエ、この前の模擬戦でスカートの中に頭を埋められた事、まだ怒ってるの?」

 

「当たり前じゃない……寧ろ美奈兎こそ押し倒された際に抱き合ったりしたのに怒ってないの?」

 

「え?だって訓練中の事故じゃん」

 

「そうですね。私の時も比企谷さんからは悪気を感じませんし」

 

「寧ろその後に比企谷さんがシルヴィアとオーフェリアに半殺しにされる事を考えたら申し訳ない気持ちがありますわね」

 

「……うん、毎回半殺しにされているのを見てるけど、アレはちょっと……」

 

「……お人好し過ぎるわよ貴方達」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ!マジかあの馬鹿息子!ナイスだ!写真撮っとこう!」

 

「何やってんのさお兄ちゃん……昨日はプリキュア姿のオーフェリアさんとシルヴィアさんを抱いて、今日は女装って……」

 

「いやー、マジで最高だ。終わったらからかってやろう」

 

「はぁ……お兄ちゃんがどんどん遠くに行っているみたいだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……八幡、馬鹿なの?」

 

「八幡君……自爆しないでよ。というかこれ収拾つくの?」

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