学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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ネタが思い付かねー!!

って、訳で活動報告にてアンケートを取っていますので、暇な人はコメントをお願いします。

それと明日から大学が始まるので毎日投稿は厳しくなると思いますがよろしくお願いします


比企谷八幡は退院する。

「んじゃ……お世話になりました」

 

治療院のロビーにて俺比企谷八幡は治療院の院長であるヤン・コルベル院長に頭を下げて礼を言う。

 

「ふんっ……異変を感じたら全て来るのじゃぞ」

 

院長は鼻を鳴らしながらそう口にする。異変ね……

 

俺は左手を見ると斬り落とされた左手首の先には手があった。

 

しかしこれは義手である。端から見たら本物の手に見えると思うが義手である。第三者に不審がられないように機械の手に人工皮膚を纏わせているのだ。

 

しかもこの義手、凄く使いやすい。退院まで2週間くらいかかると思っていたが、義手が出来てから3日で退院する事になったし。

 

「わかりました。失礼します」

 

そう言って再度一礼してから治療院を出ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おかえり、八幡(君)」」

 

オーフェリアと変装しているシルヴィが優しい笑みを浮かべて俺の元へ駆け寄ってくる。ああ……退院出来た事で2人と一緒に居られる時間が増える。

 

そう考えると俺も笑いが止まらなくなる。

 

「ああ……ただいま」

 

俺は両手を広げてそのまま駆け寄ってくる2人を抱きしめた。

 

「……えっ?」

 

「……八幡?どうかしたの?」

 

いきなり抱きしめられた2人は驚きの表情を見せてくる。まあ俺が自発的に、それも治療院の前と人が多い場所で抱きつくのは普通じゃあり得ないからな。

 

しかし今の俺は何故か2人を抱きしめたかった。無性に2人の温もりを感じたかった。

 

「……悪い。ただ、少しだけこうしても良いか?」

 

一抹の不安を抱きながら2人に尋ねる。もしも断られたらどうしようか?

 

しかし2人は一瞬だけ顔を見合わせて……

 

「「もちろん」」

 

直ぐに笑顔を浮かべて了承してきた。良かった……拒絶されずに済んだぜ。

 

俺は安堵の息を吐きながら再度2人を強く抱きしめた。2人を絶対に手放さないかのように。

 

「……入院中は心配掛けたり世話して貰ったりと色々迷惑をかけたな」

 

「お世話をするのは気にしてないけど……心配したよ」

 

「……そうね。まさか学園祭の最中に腕を斬り落とされるなんて思わなかったわ」

 

それは俺も同感だ。つーかこんなもん予想出来る奴がいたら見てみたいわ。

 

「ああ、悪かったな」

 

「……別に八幡は悪くないわ。悪いのはあの男よ。見つけ次第この手で葬り去るわ」

 

「八幡君は処刑刀に借りを返したいと思っているだろうけど……絶対に1人で突っ走らないでね。八幡君が気絶しているのを見た時は凄く嫌な気持ちになったんだよ?」

 

「……済まん」

 

「別に怒ってないって。ただもしもまた彼らと相対したら1人で突っ走らないで私達を頼ってね。私達は八幡君の味方なんだから」

 

「……ああ。わかったよ」

 

口ではそう言うが本心では反対だ。俺にとって2人は何よりも大切な存在であるから危険な奴らには会わせたくないのが俺の本心だ。

 

しかしそれを口にしても間違いなく一蹴されるだろうから口にはしない。

 

すると2人はそんな俺を見て悲しそうな表情を浮かべてくる。多分俺の事を何でも知っている2人は俺の本心に気付いているのだろう。

 

だが俺は譲るつもりはない。極端な話、俺が死ななきゃ2人が死ぬような状態になったとしたら俺は一切の躊躇いなく死ねるだろう。2人が傷付く可能性がある選択は可能な限り潰すべきだ。

 

対する2人についても悲しそうな表情を見る限り向こうも譲る気は無いだろう。俺が処刑刀らと戦おうとしたら2人は絶対に介入しようとしてくるに決まっている。

 

結局は平行線だ。俺は2人を巻き込みたくない、2人は俺を1人で危険な目に遭わせたくない。この2つの考えが交わることはあり得ない。

 

つまり奴らと相対する時の状況にもよるって事だ。もしもまた奴らと相対する事になるなら俺が1人の時にして欲しい。

 

そう思いながら俺は2人をギュッと抱きしめる。少しでも長く平和な一時を味わうかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……済まんな。もう大丈夫だ」

 

そう言って抱擁を解くも2人は未だに物言いたそうな表情の浮かべている。

 

だから俺は2人が何かを言う前に口を開ける。

 

「さて……そろそろ帰ろうか」

 

俺が先手を打つと2人はハッとしたような表情を浮かべ、やがてため息を吐いてから儚い笑顔を浮かべて頷く。

 

「そうだね。とりあえず帰ろっか」

 

「……そうね」

 

言うなり2人は手を差し出してくるので俺は2人の手を握る。義手にもかかわらず触れているオーフェリアの手の感触をしっかり感じる事が出来て良かった。

 

そう思いながら俺達は手を繋いで我が家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

(絶対に2人を危険な目に遭わせてたまるか)

 

(絶対に八幡君を支えてみせる)

 

(シルヴィアと一緒に何としても八幡を守ってみせるわ)

 

それぞれの胸中にある考えを表に出さないようにしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

俺がそう言ってドアを開けると、懐かしい気分で一杯となった。我が家ーーーお袋曰く俺とオーフェリアとシルヴィの愛の巣に帰宅した俺は久々に帰った喜びに満ちながら靴を脱いでリビングに向かってソファーに座る。

 

それと同時に左右から2人が同じソファーに座って腕に抱きついてくる。

 

「おかえり。漸く帰ってこれたね」

 

「……2人だと大変だったわ。八幡の事を思い出して寂しい気持ちになったり、シルヴィアがしょっちゅう抱きついてきたりして……」

 

「えー、だってオーフェリアが可愛いんだもん」

 

「え、何それ見たいんですけど」

 

 

シルヴィがオーフェリアを抱きつきまくっただと?何だその百合百合しい話は?マジで見たいんですけど。

 

「……八幡、変な事を言わないで」

 

「ははっ、悪い悪い」

 

「まあまあ。そんなに見たいなら今日の夜にでも見せてあげるよ」

 

シルヴィは笑いながらそんな事を言ってくる。マジで?!

 

「是非お願いします」

 

「……八幡」

 

オーフェリアがジト目で俺を睨んでから頭をポカポカ叩いてくるが、全然怖くない。てか寧ろ可愛いからもっとやれ。

 

「いいよいいよ。どうせなら八幡君も一緒に可愛がろうよ。……入院生活で色々溜まってるでしょ?」

 

「おい、アイドルがそんな事を言うな」

 

アイドルが溜まってる云々言うな。溜まってるのは事実だけどよ。

 

俺は呆れながらシルヴィを見ると、シルヴィは蠱惑的な表情を見せてから俺の耳に顔を寄せて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいじゃん。今の私はアイドルのシルヴィア・リューネハイムじゃなくて、八幡君の女であるシルヴィア・リューネハイムなんだから」

 

吐息と共にそんな事を言ってきた。

 

瞬間、顔に熱が溜まり理性の壁が一気に壊れかけた。何つー事を言いやがるんだこいつは?!破壊力がヤバ過ぎる……!

 

今直ぐシルヴィを押し倒してメチャクチャにしたい。そう思っていると………

 

 

pipipi……

 

キッチンの方から炊飯器の音が聞こえてきて、

 

「あ、お米炊けたみたいだし昼ご飯にしよっか。八幡君を迎えに行く前に炊いといて良かった」

 

シルヴィがソファーから立ち上がって、それによって俺はソファーに頭を倒してしまう。押し倒そうとしたからこうなったのだろう。

 

「……シルヴィ」

 

不貞腐れ気味にシルヴィを見ると楽しそうに笑っている。

 

「ごめんごめん。まあ夜に一杯付き合ってあげるからそれまで我慢ね」

 

「……今夜は寝かせないわよ」

 

退院初日から寝かせられないとはな……まあ悪くないかもな。

 

俺は息を1つ吐いてオーフェリアと一緒に立ち上がり食器の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうそう。昼飯食ったら俺、復学届を出しにちょっとレヴォルフに行ってくるわ」

 

俺はシルヴィの焼いたステーキを食いながら2人に話す。にしてもステーキマジで美味い。病院の飯は2人のあーんがあったとはいえ割と味気なかったからな……

 

「あ、そっか。それもそうだね。じゃあオーフェリアは八幡君の護衛をお願いね。八幡君1人をディルク・エーベルヴァインの元に行かすのは危ないし」

 

「……勿論よ。任せなさい」

 

シルヴィはオーフェリアにそう言ってオーフェリアは力強く頷く。

 

「いやいや、流石に校舎で白昼堂々襲うのはないだろ?」

 

「却下。八幡君は私達を危ない目に遭わせたくないのかもしれないのかもしれないけど、私達も同じように八幡君を危ない目に遭わせたくないの。だから絶対に1人にさせないから」

 

そう言ってシルヴィは強い目で俺を見てくる。俺同様絶対に譲るつもりがないのが見て取れる。

 

「……シルヴィアの言う通りね。絶対に付いていくから」

 

オーフェリアは真剣な表情をしながらそう言ってくるが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ステーキ齧りながら言っても可愛いだけだぞ?」

 

何か小動物が餌を食べているみたいで可愛過ぎるんですけど?

 

「……っ、バカ……」

 

オーフェリアは頬を染めながらそっぽを向く。うん、やっぱり可愛いな、おい。見るとシルヴィも笑いながらオーフェリアを見る。

 

結局、真剣な話をしていたのにオーフェリアの可愛さの所為で穏やかなまま食事が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後……

 

「邪魔すんぞー」

 

「ひぃっ!」

 

そう言いながら俺はドアに蹴りを入れて中に入ると、中から悲鳴が聞こえたので見ると部屋には部屋の主はおらず、主の秘書がいて怯えていた。こりゃ悪い事をしたな。

 

「悪い、驚かせちまったな樫丸。ちょっと邪魔すんぞ?」

 

レヴォルフ黒学院の生徒会室に入った俺とオーフェリアは秘書の樫丸に軽く謝罪をする。ディルクはいないようで樫丸は近くで書類の整理をしていた。

 

「あ、比企谷さんでしたか。驚きましたー。それで何か用ですか?会長なら出かけていて今はいないですよ?」

 

何だよ、あのデブいないのかよ?

 

まあ居ないなら仕方ない。いたらいたで面倒だし。復学届程度ならディルクに拘らず樫丸でも受理出来るだろうし。

 

「ああ、これの申請頼むわ」

 

そう言って復学届を樫丸に提出する。

 

「復学届ですね。わかりました。後で会長に渡しておきます」

 

「頼むわ。んじゃぁな」

 

そう言って樫丸から背を向けて生徒会室のドアを開けると……

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

目の前には生徒会室の主であるディルクがいた。

 

「……ちっ、何でてめぇがいやがる」

 

向こうも俺に気付いて舌打ちしながら睨みつけてくる。目からは明らかに怒りと殺意が混じっている。相変わらず態度が悪いな。まあこいつがマトモな態度を取る所なんて見た事ないけどよ。

 

「随分な挨拶だな。つーかよ、もうちょっと痩せた方が良いぜ。でないとドアを通れなくなるぞ」

 

ディルクの身体の太さをドアの幅と比べると結構ギリギリだ。ディルクが瘦せるかドアをもう少し広くした方が良いと思う。

 

「余計な御世話だ。何でてめぇがここにいるかって聞いてんだよ?」

 

「相変わらず、口が悪いな。俺は復学届を出しに来たんだよ。てめぇの仲間に腕を斬り落とされて入院したからな」

 

軽く皮肉を言うもディルクは大袈裟に肩をすくめ……

 

「何の事だかさっぱりだな」

 

とぼける。まあそれが普通の反応だろう。俺自身もそう返すとわかりきっていたので何とも思わない。

 

しかし……

 

「……ふざけないで。よくもそんな……!」

 

後ろにいるオーフェリアは納得いかない表情のままディルクに詰め寄ろうとするので手で制する。

 

「落ち着けオーフェリア。証拠が無い以上手を出すな」

 

「でも……!」

 

「……命令だ。従え」

 

少し口調を強くしてそう言うとオーフェリアはハッとした表情を浮かべてから悔しそうに口を噤む。

 

悪いなオーフェリア、証拠が無い以上普通の人間である奴に手を出すのは厳禁だ。

 

オーフェリアが大人しくなったのを確認してからディルクと向き合う。

 

「オーフェリアが迷惑をかけたな。俺達はこれで失礼するが……」

 

そう言ってディルクの耳に顔を寄せて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いずれ処刑刀にしろヴァルダにしろお前にしろ全員屠るから首を洗って待ってな」

 

一言、そう言ってからオーフェリアの手を引っ張りながら生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本校舎を後にした俺達は装備局に向かう。装備局にいる材木座に会って義手の改造をして貰わないといけないからな。

 

「オーフェリア、少しは機嫌を直せ」

 

地下にある装備局に繋がるエレベーターに乗りながら、隣で不満そうな表情を浮かべるオーフェリアに話しかける。

 

「……だって、あの男は八幡の腕を斬り落とした奴の仲間なのに……」

 

「気持ちはわかるが落ち着け。奴は普通の人間だから星脈世代の俺達が力任せに手を出すのは厳禁だ。それに前にも言ったがお前は人を殺そうとするな」

 

オーフェリアが過去に非合法な行為をした事は知っているが、それはディルクの所有物だった頃の話なので咎めるつもりはない。

 

しかし自由になった以上俺はオーフェリアに対して非合法な行為をさせるつもりはない。オーフェリアをもう一度汚れた世界に戻す訳にはいかないからな。

 

そう思いながらオーフェリアを後ろからそっと抱きしめる。

 

「……お前が俺を想ってくれるの嬉しいがその気持ちだけで充分だからな。お前は復讐なんて考えないで今後どう幸せに過ごすかだけを考えろ」

 

「……八幡」

 

オーフェリアはピクンと跳ねてから大人しく抱かれる。漸く自由になって周囲に瘴気を撒かなくて済んだんだ。出来るなら今後はずっと平和に過ごして欲しい。

 

そう思いながら抱きしめているとチンと機械音が聞こえた。どうやら目的の階に着いたようだ。

 

俺がオーフェリアから離れると同時にエレベーターのドアが開いたのでエレベーターから出ると沢山の職員が忙しそうに動いている。

 

そんな中俺は中央でレヴォルフとアルルカントの職員に指示を出しているデブーーー材木座に話しかける。

 

「材木座」

 

「ん?八幡か……ひぃぃぃぃぃぃ!」

 

材木座は俺に気付くと同時にメチャクチャ驚きながら後ずさり、自分の足に躓いて転んだ。

 

ビビった理由はアレだろう。こいつ俺の入院中に俺とオーフェリアがキスしようとした所を目撃してオーフェリアにシバかれたからだろう。

 

「落ち着け材木座。既にオーフェリアは説得したから問題ない」

 

「そ、そうであるのか?この前みたいに殺気丸出しとは死ぬぞ我」

 

「……貴方が私と八幡のキスに水を差しからでしょう?」

 

「そ、それは少々理不尽かと思いまちゅ」

 

噛んでるぞ。よく噛んでいる俺が言うのもアレだが野郎のお前が噛んでも可愛くないぞ?

 

「……ま、まあそれは後で良いだろ。それより……」

 

そう言ってから俺は人口皮膚を取って機械の腕を露わにする。するとさっきまでオーフェリアにビビりまくっていた材木座の瞳に真剣な色が現れる。

 

「うむ。武器を仕込む話であろう。どんな武器を望むのであるのか?」

 

「そうだな。とりあえず小型煌式武装とか毒ガスだな」

 

「ふむ……ちなみにノートの切れ端を仕込むスペースは?」

 

「それは腕時計にやってくれ。それより煌式武装とか毒ガスは出来るか?」

 

俺が尋ねると材木座は俺の義手に触れながら幾つもの空間ウィンドウを開いて計測を始めていた。何をやっているかはわからんが凄い事なのは間違いない。

 

(マジで小説家の夢を捨てて技術者になれよ)

 

材木座の小説は今でも読んでいるが全然面白くないし。偶にオーフェリアとシルヴィも読んでいるが感想が面白くない以外言ってこないし。

 

そんな事を考えていると材木座は空間ウィンドウを閉じて話しかける。

 

「毒ガスは収納可能であるな。ただ小型煌式武装は構造上凄く小さい物に限るな」

 

「うーん。じゃあとりあえず毒ガスだけ仕込んでくれ」

 

俺がそう言った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なら私の毒を使うのはどうかしら?」

 

この後、俺の義手にはとんでもない機能が2つ仕込まれる事になった。


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