『……と、いう訳でテストはこれで終わりであるな。違和感はあるか、八幡よ』
レヴォルフ黒学院の装備局にあるトレーニングステージにモニタールームにいるアルルカントアカデミー『獅子派』のエースの材木座義輝の声が響く。
それに対してトレーニングステージにいる俺、比企谷八幡の答えは……
「問題ないな。特に違和感はない」
そう言って俺は左の義手を軽く振りながらそう答える。
現在俺は義手のテストを行っていた。
とは言っても義手そのものではなく義手の内部に仕込んだ武器のテストをしたのだ。
今回したのは『義手に武器を仕込んでも違和感がないか』と『義手に内蔵した武器』と『内蔵した武器を使用した後も義手に問題がないか』の3つのテストを行った。
3つのテストを行った結果、どれも問題なくクリアできた。機械に詳しくない俺でも今回のテストは上出来だったと思える。
俺がそう答えるとモニタールームの扉が開き、そこから白衣姿の材木座と最愛の恋人のオーフェリアがこちらに向かってきた。
「違和感がないなら今回のテストは終了である。あ、後帰りの際には武器の補充もしておくのだぞ」
「わかってる。それにしてもこんな小さい義手に4つの武器を仕込むなんてマジでやるなお前」
今回ばかりは材木座に偽りのない賞賛を口にする。材木座は俺が出した要望を全て応えてくれて、4つの武器を仕込んでくれた。
どの武器も優秀だが、その内2つはマジで凄いものだ。冗談抜きで他の学園の上位の冒頭の十二人にも通用するだろう。まあ内1つはオーフェリアの毒だから当然と言えば当然だけど、それを差し引いても凄いと思った。
「ぱぽん!当然である!我を誰だと思っている?!我は剣豪将軍、材木座義輝であるぞ!」
材木座はそう言って高笑いをする。うぜぇ……無闇に褒めるんじゃなかった。
内心後悔しているとオーフェリアは……
「……なのに何で小説は面白くないのかしら?」
「ひげぶうっ!」
ボソリとそう呟くと材木座は奇声をあげて崩れ落ちた。そして口からは白いものが出始める。まさかとは思うが魂じゃないよな?
「……お前容赦ないな」
「事実を言っただげよ。実際この前見たものなんて八幡が持っているライトノベルをそのまま真似ている箇所もあったし」
あー、まあ確かにな。てかパクリは駄目だろパクリは。つまらない上に丸々パクるのは駄目だろ。
とりあえず……
「おい起きろ」
口からは出た白いものを無理矢理戻して目を覚まさせる。こんな所で死なれたら困るからな。
「はっ!わ、我は何を……?」
どうやら余りのショックに前後の記憶がないようだ。だから俺は知らないふりをする。
「知らん。疲れてたんだろ?」
「う、うむ……確かに最近根を詰めていたからのう……」
「ああ、ゆっくり休め」
「うむ。今日は久しぶりに自宅に帰るとするか」
どうやら最近は自宅に帰らずに煌式武装の研究に時間を費やしていたようだ。凄い熱意だ。
それは本気で凄いと認めるが……マジで煌式武装の製作者になれよ。
若干呆れの感情を抱きながら俺はオーフェリアを連れてトレーニングステージを後にした。
「それで?義手の改造は出来たの?」
帰宅した俺とオーフェリアはシルヴィの作った夕食を食べながらそんな質問をする。
「まあな。中々凶悪なのが出来たぜ。まあ処刑刀とやり合う可能性がある以上物足りない気がするけど。それにしてもこのムニエル美味いな」
あの怪物を相手にする以上、徹底的に対策を講じないと駄目だろうしな。
「あ、今日のそれは自信があったんだ。口に合って良かったよ」
「ああ、本当に美味いよ。そういやお前は午後何をしてたんだ?」
「私?私はちょっと自分の方の学園に顔を出してたよ。ペトラさんに呼ばれたのと涼子さんの様子を見る為にね」
ああ、そういやお袋は昨日からクインヴェールで働き始めたんだったな。
「それで?お袋の事だから問題でも起こしたのか?」
「うーん。女子って耳が早いじゃん。だから涼子さんがクインヴェールで働くのを知って、腕に自信のある生徒が挑みに行って……」
「全員返り討ちにあった、と?」
簡単に予想がついた。アスタリスクで確実にお袋より強いのはオーフェリアと星露だけだろうし。
「まあね。50人近く、その上冒頭の十二人も9人挑んだけど全員倒しちゃったの。それでペトラさんが涼子さんに事務以外にも戦闘の方もやらないかって声をかけて、戦闘のコーチもやる事になったよ」
何やってんだお袋の奴。いくら生徒から挑んできたとはいえ就任初日から50人以上相手をするとは予想外過ぎだわ。
「ま、まあアレだ。赫夜に割く時間は減ったかもしれないが、クインヴェールの底上げに大きく貢献すると思うぞ?」
「あはは……まあね。それで八幡君はどうするの?明日から練習に戻れるの?」
「ああ、そのつもりだ。何時までも身体を動かさないと鈍るからな」
リハビリの意味でも赫夜のメンバーと戦うのも悪くないだろう。
そう思っているとシルヴィは急にジト目で俺を見てくる。何だその目は?俺は別に悪い事をしてないぞ?
「別に良いけど……絶対に美奈兎ちゃん達にラッキースケベはしないでね?」
シルヴィがそう言うとオーフェリアもシルヴィ同様にジト目で俺を見て居心地が悪くなる。
「あ、いや……それは……一応頑張る」
俺は2人のジト目にビビりながらしどろもどろにそう返すことしか出来なかった。
「約束だよ?それにしても何で八幡君はラッキースケベを起こすんだろ?私とオーフェリアにはしないのに……」
「したくてしてる訳じゃねぇよ。てかお前らにラッキースケベを起こせるならとっくにやってるわ」
「……八幡のエッチ」
「やかましい」
オーフェリアのツッコミに反応する。好きな女にラッキースケベをしたいと思って何が悪いんだ。
そう思いながら俺は食事を食べるのを再開した。
しかしこの時の俺はこの後にラッキースケベより凄いイベントがある事をまだ知らなかった。
それから2時間後……
「それにしても……久しぶりの我が家の風呂は最高だな」
湯船に浸かりながらそう考える。入院中に治療院の風呂にも入ったが、時間が決まっていたり手術直後は入れなかったりと余り自由がなかった。
対して今は時間は決まっていないし、義手も馴染んでいるので風呂に入る際に支障がない。
そして何より……
「治療院にはオーフェリアもシルヴィも居なかったからな。実に退屈な風呂だったよ」
「そうなんだ。でも大丈夫だよ。今日からまた3人で入ろうね?」
「……シルヴィアと2人で入るのも悪くはなかったけど……やっぱり3人で入るのが1番ね」
俺がそう言うと、俺と同じように湯船に浸かっているオーフェリアとシルヴィが笑顔を見せて俺の左右の腕に抱きついて甘えてくる。それによって2人の柔らかな胸が俺の腕に当たってフニュンと形を変える。
「全くだ。もう二度と入院はしたくない」
いくら面会時間に会えるとはいえ、夜1人で寝るのはガチで寂しかったからな。どうやら俺はオーフェリアとシルヴィの2人と付き合ってからかなりの寂しがりになったようだ。
「そうだよ。お願いだから1人で無茶をしないでね?もしも八幡君がまたあんな目に遭ったら嫌だよ?」
「もしも八幡が死んだら……って考えるだけで胸が痛くなるの。だからお願い、1人で立ち向かおうとしないで私達を頼って」
2人は悲しげな表情をしながら左右から抱きついてくる。2人に心配をかけるのは俺自身の胸が締め付けるように痛くなる。
しかしだからと言って2人を巻き込むのはそれはそれで胸が痛む。もしも2人が傷ついたら……と考えると2人に頼るのを躊躇ってしまう。
そんな俺の考えを読んだのか2人は更に強く抱きついてくる。
「八幡君、前にも言ったけど私達3人はずっと一緒って言ったよね?」
「……ここで1人で立ち向かうのは違うでしょ?」
「……それは」
その通りだ。俺達は3人でずっと一緒、隠し事などしないで一生を共にする関係だ。ここで俺が隠し事をしたり、2人を引き離したりするのはある意味2人に対する裏切りとも言えるだろう。
暫くの間、俺は悩み続けて……
「……わかった。もしも奴等と相対する事になったらお前らを頼る」
2人の意見を尊重する事にした。正直言って完全に納得はしていないが、2人が言っている事は正しいし、俺が拒否しても勝手に参加しそうだからな。
渋々ながら俺は了承の意を表明すると2人は一瞬だけ驚きの表情を見せるも直ぐに……
「「ええ(うん)!」」
優しい笑顔を浮かべて俺に向けてくる。そんな2人に対して俺は2人を抱き寄せて強く抱きしめる。
2人と悪に立ち向かう以上、もっと強くならないといけない。誰よりも、どんな手段を使ってもだ。2人と一緒に幸せに過ごす為なら何でもやってやる。
そう思いながら俺は暫くの間2人を抱きしめ続けた。
風呂で2人の為に強くなると改めて決心した俺は風呂から出て寝巻きを着てベッドの上で寝転がる。いつもなら3人一緒に風呂から出て、ベッドの上で寝るまでイチャイチャするのが基本だが今日は違って今寝室にいるのは俺1人だけだ。
何故かと言うと風呂から上がろうとした時にオーフェリアとシルヴィが……
「「今日は私達は後から出るから八幡(君)は先に寝室に行って」」
同時にそう言ってきたからだ。理由を尋ねても後でわかると一点張りで教えてくれなかったので、仕方なく言われた通り先に風呂から上がって寝室で待っているが……
(マジで何をやってんだ?あそこまで頑なに教えないって事は悪戯でも仕掛けるのか?)
悪戯だとしたら変な悪戯じゃないと良いんだが……
そう思いながら俺は暇潰しの為にネットでも見ようとベッドの端にある端末を取ろうとした時だった。
「「お、お待たせ……」」
背後からガチャリとドアが開く音と2人の声が聞こえた。それを聞いた俺は端末を置いて振り向くとそこには……
「え?」
そこには物凄いエロい下着を着けているオーフェリアとシルヴィがいた。
予想外の光景に呆然としていると……
「ど、どうかしら?」
「は、八幡君の為に買ったんだけど……」
2人は恥ずかしそうに身を捩っていた。対して俺は2人から目を逸らすことが出来なかった。
シルヴィは露出の多いTバックの黒い下着を、オーフェリアは秘部以外の箇所の色が薄く丸見えの紫色の下着を着けていた。
その上2人の恥じらいが余計にエロさを引き出している。
ハッキリ言おう。裸よりエロい。
予想外の2人の艶姿に呆然としていると……
「うおっ?!」
いきなり衝撃が走ったかて思い意識を戻すと2人が俺をベッドに押し倒していた。
てか近い近い!!普段イチャイチャしている俺でもここまでエロい下着を着けている2人に迫られたらガチでヤバい。てか冗談抜きでエロ過ぎる!何処で買ったんだよ?!この下着を作った奴は神か?!
頭に熱が溜まる中、2人は更に顔を寄せて……
「「んっ……」」
同時に俺の唇にキスを落としてくる。エロい姿によってキスをされる事で更に熱が溜まるのを理解する中、2人は艶のある表情を浮かべながら俺の左右の耳に顔を寄せ……
「……八幡、今日は久しぶりに沢山愛してあげるから」
「入院している時は面会時間という邪魔があったけど今日は邪魔が入らないから朝までたっぷり愛し合おうね?」
生温かい吐息と共にそう言いながら俺の寝巻きを剥がして下着一枚の姿にする。
しかし俺はそれを理解するのが難しかった。余りに2人が魅力的過ぎてそれ以外の事が考えられない故だろう。
余りに幻想的な2人に気を取られている中、2人は自身の下着を外して一糸纏わぬ姿になり俺の下着に手を掛けて……
「「八幡(君)……大好き」」
そう言って再度唇にキスを落としながら下着を剥ぎ取った。
その後に起こった事は今までで1番激しい一時であり、一生忘れない確信があったのは言うまでもないだろう。