早朝
朝の日差しを眩しく感じた俺はゆっくりと目を開ける。すると朝の光が部屋を薄く照らしていた。
時計を見ると時刻は6時。いつも起きる時間より30分早く起きてしまったようだ。
俺が身体を起こそうとすると重みを感じて起きれなかった。その原因は………
「……んっ……八幡、好き、大好き……」
「八幡君……優しく、お願い……」
最愛の彼女が一糸纏わぬ姿で俺に抱きついているからだろう。2人はまだ寝ているが幸せそうな表情をしながらまるで起きているかのように俺に甘えている。てかこいつらマジで起きてるんじゃね?
しかし時折寝息が聞こえてくるので寝ているのだろう。寝ている時も俺に甘えてくるなんて彼氏としてはこの上なく嬉しい気持ちになる。
だから俺は偶には良いかとばかりに自分の顔をオーフェリアの顔に近づけて……
「俺もお前が好きだぞ、オーフェリア」
ちゅっ……
そっとキスをする。するとオーフェリアはふにゃんと口を幸せそうに動かす。それを見ると俺も自身の口が緩むのを理解する。本当に可愛いなぁ……
そう思いながら俺は今度はシルヴィの方を向き……
「お前が望むなら優しくしてやるからな、シルヴィ」
そう言ってオーフェリアと同じようにそっとキスをする。普段は2人からキスをされると受け身だが、偶には俺からキスしてもバチが当たらないだろう。
するとシルヴィは……
「八幡君……大好き、大好きだよぉ……」
寝ながらも幸せそうな表情を浮かべながら俺の事を大好きと言ってくる。
「ありがとな。俺もお前らが大好きだ」
よく複数の女を持つ男は順位を付けるが俺は付けるつもりはない。強いて言うなら2人が1番である。
オーフェリアもシルヴィもそれぞれ別の長所があって本当に素晴らしい彼女だ。俺はそんな2人に対して優劣をつけるつもりはなく、2人を同じように愛するつもりだ。
さて、それはともかく……
「2人はまだ起きそうもないし、偶には俺が朝飯を作るか」
基本的に1番早く起きた人間が朝食を作るが、大抵オーフェリアが1番早く起きるし、シルヴィは仕事で家にいない時も結構あるので俺が作る事は余りない。精々月に2、3回くらいだろう。
しかし俺が朝飯を作ると2人は笑顔で美味いと言ってくれるので全力を尽くさないといけない。愛する2人に最高の朝食を作らないとな。
そう思った俺は未だに抱きついている2人を起こさないようにゆっくりと引き離してベッドから降りる。
そしてベッドの下に落ちているボクサーパンツを履いてクローゼットに向かって歩き出す。てか寒い……まだ4月の夜は寒い。2人を抱き終わったらちゃんと布団を掛けて寝よう。流石に布団を掛けないで裸で寝るのは風邪を引くわ。
今後の夜の営みに備えて対策を考えながらズボンを履こうと腰を屈めると……
「痛ぇ!」
腰に痛みが発生して思わず声を上げてしまう。やっぱり6回はやり過ぎた。入院していて欲求不満だからって無理をし過ぎたな……
「〜♩〜♪」
キッチンでシルヴィの歌を鼻で歌いながらベーコンと目玉焼きを焼く。後はトーストを焼いてインスタントのオニオンスープを作れば完成だ。
締めとしてお湯を沸かそうとした時だった。
「ふぁぁ〜、おはよう八幡君」
寝室からクインヴェールの制服を着たシルヴィが可愛らしく欠伸をしながらやってきた。
「おはようシルヴィ。もうちょっとで朝飯が出来るから待っててくれ」
「うん。八幡君が作る朝ご飯は久しぶりだから楽しみだよ」
「と言ってもお前やオーフェリアが作る物に比べたら劣ってるぞ?」
俺自身、2人と付き合う前は自炊をしていたからそれなりに自信はあるが2人に比べたら一歩劣っているのは紛れもない事実だ。
しかしシルヴィは首を横に振り……
「ううん。八幡君の料理には愛情があって凄く美味しいよ」
当たり前のようにそう言ってくる。すると自身の顔に熱が溜まるのを自覚する。シルヴィからしたらさりげない一言かもしれないが俺からしたら結構恥ずかしい。
「そ、そうか……」
「うん。だから今日もたっぷり愛情を入れてね?」
「……そのつもりだ」
俺がオーフェリアやシルヴィに何かする時は必ず全力を尽くし愛情を注いでいる。それが2人の彼氏としての責務だと俺は思っている。
「そっか。じゃあ楽しみにしてるね」
「ああ。とりあえずもう直ぐ出来るから座っててくれ」
「あ、その前に八幡君、おはようのキスを頂戴」
シルヴィは可愛らしくおねだりをしてくる。そういやおはようのキスをされた事はよくあるが俺からした事は少ないな……
まあそれはともかく……
「はいはい。シルヴィは甘えん坊だな」
そう言いながらコンロの火を止めてシルヴィの両肩を掴む。するとシルヴィは微かに頬を染めて笑顔を見せてくる。
「……八幡君が甘えん坊にしたんだよ?……まあ八幡君に甘えるの幸せだから良いけど」
そう言ってシルヴィは唇を出してくるので俺はゆっくりと顔を近づけて……
ちゅっ……
「「んっ……」」
シルヴィと唇を重ねる。柔らかい感触を唇に感じで幸せな気分になる。シルヴィも幸せそうな表情を浮かべて俺の首に腕を絡めてキスを返してくる。
俺自身もっとシルヴィとキスをしたいが……
「はい終了。これ以上は歯止めがきかないから却下な」
そう言いながらシルヴィから離れて焼けたベーコンと目玉焼きを皿に盛りつける。
「む〜、もうちょっとだけお願い」
横ではシルヴィが膨れっ面を俺に向けてくる。そんなシルヴィを見るとキスをしてやりたくなるが……
「ダメだ。以前俺がお前とオーフェリアにおはようのキスをした時に30分くらいやって遅刻しかけただろうが」
ここは心を鬼にして却下する。以前はおねだりをされて受けたが今回はダメだ。
「は〜い」
シルヴィは不満たらたらの表情をしながら席に座る。ヤバい……罪悪感が……
とはいえ今キスをしたら間違いなく歯止めがきかなくなるから……
「……夜に好きなだけして良いから、な?」
落とし所を作り出す。つくづく俺はオーフェリアとシルヴィには甘いな……
そう思っているとシルヴィはキョトンとした表情を浮かべるも直ぐに……
「うん、お願いね」
可愛らしい笑みを浮かべてくる。1時間はシルヴィとのキスで埋まるだろうな。まあ良いんだけどさ……
帰ってから起こる未来を簡単に想像出来る事に対して苦笑をしていると……
「……おはよう」
寝室からレヴォルフの制服を着たオーフェリアが眠そうにやってきた。
「おはようオーフェリア」
「……今日は八幡が作ったのね。楽しみにしているわ」
「いや普通にお前らが作る物には劣ってるぞ?」
「いいえ違うわ。八幡の愛情が入っているから美味しいわよ」
シルヴィと同じ事を言ってるし。料理は愛情と言われているが、俺の愛情で喜んでくれるとは嬉しいものだ。
「そう思っているなら嬉しいもんだ。ちょうど今出来たから座ってろ」
「……ええ。あ、八幡、その前におはようのキスをお願い」
「はいはい、甘えん坊め」
俺はおねだりをするオーフェリアに対して苦笑しながら、オーフェリアの肩を掴んで顔を引き寄せる。対するオーフェリアは目を瞑って俺の方に近付き……
ちゅっ……
「「んっ……」」
そっと唇を重ねる。それによって更に幸せな気分になる。今日も1日頑張れそうだ。
その後俺が直ぐに唇を離して朝食を運び出すとオーフェリアはシルヴィ同様不満そうな表情を浮かべてもっとしろと要求してきたので、夜に好きなだけしてやると言った満足そうな表情を浮かべたのだった。
それによって俺の夜の時間は少なく見積もっても2時間は2人とのキスで埋まる事が決定したのだった。
「じゃあまた放課後にね」
変装したシルヴィはそう言ってくる。
朝食を済ませた俺達は靴を履いて玄関にいる。俺達の家はレヴォルフとクインヴェールの丁度真ん中にある。よって俺とオーフェリアは家を出たら右に、シルヴィは左に向かうので一旦ここでお別れだ。
「ああ、授業が終わったらクインヴェールの方に向かうわ」
「うん。じゃあまたね」
「……ええ」
そう挨拶を交わして俺達は互いの学校に向かって歩き出した。横ではオーフェリアが俺の腕に抱きついて甘えている。通学の時間さえも俺を幸せにしてくれるオーフェリアはマジで半端ない。
「ふふっ……八幡と一緒に登校するのも久しぶりだわ」
「そうだな」
「ただこうやって歩くだけでも幸せなんて……大好きよ、八幡」
「そいつは良かった。強いて言えばシルヴィも居れば問題ないんだがな……」
学校が反対方向にあるから仕方ないっちゃ仕方ないが出来るなら3人一緒に登校したいという気持ちもある。
「……そうね。八幡が入院している時はシルヴィアと2人で過ごしたけど、彼女の大切さを改めて知った私からしても寂しい気持ちがあるわね」
オーフェリアは少しだけ寂しそうな表情を見せてくる。オーフェリアが他人に対してそんな気持ちを持つようになったと思うと嬉しくなってくる。このままもっともっと色々なオーフェリアを見てみたいものだ。
「そいつは良かった……って、着いたか。じゃあまた昼休みに……っ!」
校門をくぐった瞬間に殺気を感じたのでオーフェリアを抱いて横に跳ぶ。するとさっきまで俺がいた場所に光弾がぶちこまれて地面に穴が開いていた。
俺が光弾が来た方向を見ると複数のチンピラらしき人間が校舎の中に逃げていった。今から捕まえるのは無理だろう。
「ちっ……おいオーフェリア、怪我はないか?」
「……ええ。でもいきなり襲われるとは思わなかったわ」
「多分アレだ。俺が腕を斬り落とされたから戦闘力が低下したと思った馬鹿共が闇討ちをしてきたんだろ?」
俺自身レヴォルフでは割と恨まれている方だ。昔はそれなりに闇討ちをされていたが全員返り討ちにして、最終的に序列2位になって闇討ちがなくなった。
しかし今回の件で俺が腕を失って弱体化したと思ったのだろう。恨みを晴らそうと闇討ちをしてきたとしか思えない。
「……八幡、見つけ出して殺す?」
オーフェリアは殺意を剥き出しにしながらそう聞いてくるが……
「いやいい。お前の手を煩わせる訳にはいかねぇよ。それに腕1つ失ったくらいじゃ俺の戦闘力は落ちないしな」
俺別に両手で扱う武器なんて使わないしぶっちゃけ戦闘に支障はないし。次に接近戦を仕掛けてきた奴を適当に半殺しにして一目のつく所に磔にすれば直ぐに闇討ちしてくる奴はいなくなるだろうし。
「……そう。八幡がそう言うならしないけど……もしも怪我したら言ってね。それだけは絶対に許されない事だから……!」
「はいよ。心配してくれてありがとな」
「んっ……」
そう言ってオーフェリアの頭を撫でるとくすぐったそうに目を細める。可愛いなぁ……
俺はオーフェリアの頭を撫で続けながら辺りを見渡すと何人かの生徒が意味深な目を向けてくる。
おそらく闇討ちを考えている人間だろう。こいつら程度に遅れを取るとは考えにくいが油断はしない方が良いだろう。
そう思いながら俺はオーフェリアの手を引っ張りながら昇降口に入った。
靴を履き替えてオーフェリアと向き合う。
「じゃあオーフェリア、昼休みにまたな」
「……ええ。八幡も気をつけてね……んっ」
オーフェリアが警告をしてからそっとキスをしてくる。
「んっ……はいよ。ヤバくなったら逃げに徹するよ」
そう言いながら俺はキスを返してオーフェリアに了承の意を表明する。それを聞いたオーフェリアは納得したようにコクリと頷いて自分の所属する教室に向かって歩き出した。
俺は軽く手を振りながらオーフェリアが見えなくなるまで見送り……
「気配で丸分かりだ三下」
後ろから闇討ちを仕掛けてきたチンピラの一撃を横に跳んで回避して、返す刀の如くナイフ型煌式武装を持つチンピラの右腕をへし折りそれと同時に星辰力の籠った蹴りをチンピラの腹に叩き込む。
「があっ……!」
チンピラは呻き声と共に壁に吹き飛ぶ。当たった壁にはヒビが入りチンピラはそのままズルズルと床に倒れこんだ。
やれやれ、これが後何回続くんだか……
面倒な未来が容易に想像出来る事にため息を吐きながら教室に向かって歩き出した。