学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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アンケートを取った結果、王竜星武祭編もやることにしました。

つきましては王竜星武祭での対戦カードについてもアンケートを取りたいので、時間のある読者は活動報告を見て答えていただけたら幸いです。




比企谷八幡は銀河の動きを知る

暗闇の中、いきなり光を感じたので、光を感じると同時に俺は目を開けると普段俺が見ている天井が目に入る。自宅の自室の天井だ。

 

「んー……もう朝か」

 

 

俺は目を擦りながらゆっくりと身体を起こす。すると右腕に柔らかい感触を感じたので右を見ると……

 

「んっ……八幡っ……」

 

白髪の美しい少女ーーー俺の恋人の1人であるオーフェリアが一糸纏わぬ姿で俺の腕に抱きついたまま寝ていた。そして俺の腕に当たるオーフェリアの胸はグニュッと形を変えている。

 

そういや昨夜はオーフェリアともう1人の恋人のシルヴィに搾り取られたんだよな。

 

そう思いながら左を見るも……居ない。パジャマがベッドの上にあるからシルヴィは先に起きたようだ。

 

時計を見れば9時。いつもは8時前に起きてるから寝坊だろうが、今日は獅鷲星武祭は調整関係で休みだから問題ない。

 

「さて……俺も起きるか……」

 

言いながら俺はオーフェリアを起こさないようにゆっくりと腕を動かしてオーフェリアから離れる。するとオーフェリアが眠りながらも不満そうな表情を浮かべる。何度も見た顔だが、俺はこの顔を笑顔にする方法を知っているので、俺はオーフェリアの顔に近付き……

 

 

ちゅっ……

 

そっとキスをする。すると不満そうな表情を浮かべていたオーフェリアの口元がふにゃりと幸せそうな表情に変わる。実に最高だ。不満そうな表情から幸せそうな表情に変わるのを見るのは何十回見ても飽きる気がしないな。

 

「おはようオーフェリア。もう少し寝てな」

 

オーフェリアに朝の挨拶をした俺はクローゼットから下着と服を取り出す。てか秋に全裸は寒いな……

 

若干の寒気を感じながらも俺は服を着てリビングに向かう。向かう先から良い匂いがすることからシルヴィが朝食を作ってくれているのだろう。

 

そう思いながらリビングに入ると……

 

「……わかったよ。助けたい気持ちはあるけど、八幡君を止めるよ。うん、じゃあまた」

 

シルヴィが真剣な表情で誰かと電話をしていたようだ。通話を終了して端末をポケットに入れている。同時に俺に気付いたのか目を見開く。

 

「あ、八幡君……お、おはよう」

 

明らかに誤魔化そうとする雰囲気を感じる。普通なら無理に問い質すつもりはないが今回は妙に気になったので……

 

「おはようシルヴィ。早速だが、さっきの電話について聞いて良いか?」

 

俺がシルヴィに問い質すとシルヴィはあからさまに目を逸らす。

 

「な、何のことかな?」

 

「……そうか。お前が話したくないなら仕方ない。とりあえず1週間はお前とキスをしないでオーフェリアだけと「待って待って!話すからそれは止めて!」……冗談だ」

 

「馬鹿〜!八幡君の冗談は心臓に悪いよ!」

 

するとシルヴィは真っ赤になりながら俺の胸をポカポカ叩いてくる。若干涙目になりながら。これは悪い事をしたな……

 

内心反省した俺は未だに俺の胸を叩いているシルヴィを抱き寄せて……

 

ちゅっ……

 

そっとキスをする。

 

「んむっ?!……んっ……ちゅっ……」

 

するとシルヴィは一瞬だけ驚きを露わにするも、直ぐに俺の首に両腕を絡めてキスを返してくる。シルヴィは俺のキスに一生懸命応えようとしながらキスを続ける。

 

暫くキスを続けると息苦しくなったのでシルヴィの唇から離れると、シルヴィはトロンとした目で見てくる。

 

「……ゴメンなシルヴィ。予想以上に悲しむとは思わなかった」

 

「……本当だよ。もうあんな冗談は止めてね?」

 

言われるまでもねぇよ。シルヴィの涙を見たら胸が痛くなるし。

 

「わかってる。それよりシルヴィ、さっきの電話は何だったんだ?」

 

「あ、うん。実はさっきペトラさんから連絡があって、少し前に銀河の実働部隊がアスタリスクに入ったみたい」

 

シルヴィは真剣な表情になってそう言ってくる。銀河ーーー星導館の運営母体の統合企業財体。

 

その実働部隊がアスタリスクに入ったという事は……

 

「十中八九エンフィールドの殺害か……」

 

それ以外には考えにくい。最近星武祭以外で起こった問題と言えばエンフィールドの爆弾発言だし。

 

(しかし何故今なんだ?)

 

疑問なのはそこだ。確かにエンフィールドは記者会見でラディスラフ・バルトシークと『翡翠の黄昏』について暴露するなど銀河に喧嘩を売る行為をしたし、狙われるのは仕方ない。

 

しかし今はタイミングが悪過ぎる。エンフィールドは獅鷲星武祭に、それも優勝候補のチームに所属している。その上銀河以外の統合企業財体はエンフィールドの爆弾発言から銀河の弱みを握ろうと目を光らせている筈だ。

 

ここでエンフィールドを始末するのは銀河に損失が出る筈だ。少なくとも俺が銀河の人間なら星武祭が終わってから殺す。そうすればそこまで波風を立てずに処理出来るだろうから。

 

そんな簡単な事を銀河の最高幹部が理解出来ない筈がない。にもかかわらず強硬策を使うという事は……

 

(エンフィールドはあの記者会見以外でも銀河に喧嘩を売る行為をした)

 

それ以外考えにくいな。でなきゃこんな時期に実働部隊をアスタリスクに入れる筈はないし。マジであいつは自殺願望があるんじゃねぇのか?

 

まあいい。今はシルヴィの話だ。

 

「要するにW=Wは今回の件に対して静観をするから、ペトラさんからエンフィールドと手を組んでいる俺を止めろと言われたんだろ?」

 

「……うん。もしも八幡君とオーフェリアが銀河の実働部隊と戦おうと家から出ようとしたら止めろって」

 

シルヴィが嫌な表情を浮かべながら頷く。まあペトラさんの考えは間違っちゃいない。

 

銀河がエンフィールドを殺せば獅鷲星武祭の優勝候補チームが弱体化するだけでなく、銀河は事情はどうであれ自分の学園の生徒会長を殺した事実が生まれる。

 

もしも万が一エンフィールドが生き延び、優勝したら記者会見で言った事に関して銀河の弱みになる。

 

つまりペトラさんーーー銀河以外の統合企業財体の人間からしたらエンフィールドが死のうが生きようが旨味が手に入るという事だ。

 

そしてエンフィールドと協力関係を結んでいながら、クインヴェールの歌姫のシルヴィと交際したり、チーム・赫夜を鍛えている俺が動いたりしたら、何かしらのイレギュラーが生じる可能性があると判断したのだろう。統合企業財体のペトラさんからしたら不確定要素は出来るだけ排除したいのでシルヴィを使って俺を止める算段のようだ。

 

とりあえず……

 

「安心しろ……と言うのは不謹慎かもしれないが、俺は動くつもりはない」

 

リーゼルタニアに行った時に出会ったギュスターヴ・マルローみたいに銀河の幹部が雇った外部の人間なら倒しても構わないが、銀河の実働部隊が相手なら俺も動くつもりはない。

 

理由としては3つある。

 

1つは単に死にたくないから。銀河の実働部隊がどの位の実力かは知らないが間違いなく怪物がいる筈だ。レヴォルフの運営母体のソルネージュの実働部隊、黒猫機関最強の『無貌』は一度会ったが桁違いの怪物だ。アレ位の怪物が銀河の実働部隊にいるならぶっちゃけ関わりたくない。まして部隊なのだから精鋭が他にも何十人もいるし、死ぬ可能性が高いのは目に見える。

 

2つ目はシルヴィに迷惑をかけたくないから。シルヴィはペトラさんから俺を止めろと言われている。シルヴィはW=Wと契約している以上何としても俺を止めるだろうし、失敗したらW=Wに何をされるかわからない。エンフィールドに悪いが俺の中の優先順位はシルヴィ>エンフィールドだ。

 

最後。これが1番の理由だが、妹の小町を巻き込みたくないからだ。小町は星導館ーーー銀河が運営している学園の生徒だ。もしも俺が銀河の実働部隊と戦ったら、銀河は間違いなく小町を捕らえて人質にしてくるだろう。下手したら既に小町の近くに実働部隊の一部を派遣しているかもしれない。もし俺が来た場合に即座に人質にする為に。

 

以上3つの理由から俺は銀河と敵対する気にはならない。

 

「そうなの?」

 

「ああ。統合企業財体のやり方は虫が好かないし、エンフィールドには悪いが俺にも譲れないものがある」

 

エンフィールドは統合企業財体の意向で狙われて、他の統合企業財体がそれをさせまいと動いたと思ったら、状況が変わるや否や見殺しにする……俺の好きなやり方ではないのは事実だが、それに逆らうつもりはない。

 

「……そっか……」

 

シルヴィは何とも言えない表情を浮かべる。真面目なこいつからしたら統合企業財体のやり方は気に入らないのだろう。それでありながら逆らえないのだから苛々するのも当然だ。

 

 

「おはよう……2人ともどうしたの?」

 

シルヴィの気持ちを理解して俺自身も何とも言えない気持ちになっていると、後ろから声が聞こえたので振り向くと事情を把握していないオーフェリアがキョトンとした表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう。そんな事があったのね」

 

10分後、俺とオーフェリアはシルヴィの作った朝食を口にしている。その際にオーフェリアはシルヴィから事情を聞いた。

 

「……つまり私も動かない方が良い、と?」

 

「ペトラさん曰く、クインヴェールと繋がりがある2人が派手に動くとこちらにも被害が出るかもだって」

 

「……統合企業財体の人間からしたら当然の話ね。まあ良いわ、状況にもよるけど基本的に動かなければ良いのでしょう」

 

「ちなみにオーフェリアよ、状況にもよると言ったが、どんな状況になったら動くんだ?」

 

「八幡が動く場合」

 

オーフェリアは即答する。こいつの中では俺>統合企業財体の意向、と考えているようだ。気持ちは嬉しいが愛が重過ぎて応えられる自信がない。

 

そこまで考えている時だった。

 

 

pipipi……

 

テーブルの上にある俺の端末が鳴り出す。着信音からして電話だろう。

 

「オーフェリア、取ってくれ」

 

「わかったわ……八幡、天霧綾斗から電話が来てるわ」

 

天霧だと?じゃあ十中八九エンフィールド関係だろう。俺がエンフィールドと繋がっているのを知ってるし。

 

そう思いながらオーフェリアから端末を受け取り空間ウィンドウを開く。

 

「もしもし?」

 

『あ!もしもし比企谷?実は聞きたい事が「エンフィールドのことだな?」……わかってたの?』

 

「今さっき知った。状況はどうなってるんだ?」

 

『今は行方不明で、ユリスによるとクローディアの寮の部屋には戦った形跡があったみたい』

 

行方不明って事は寮で殺されてはいないのだろう。でなきゃ証拠隠滅をしている筈だ。

 

「てか今ユリスによるとって言ったが、別行動をしてるのか?」

 

『あ、うん。俺さっきまでガラードワースのブランシャールさんに呼ばれてね。今は星導館に戻ってユリス達と合流しようとしてるんだ』

 

「あのオカンに呼ばれた?」

 

何であのオカン……そういやあいつエンフィールドとは腐れ縁だしその関係か?

 

『オカン?』

 

見れば天霧がキョトンとした表情を浮かべる。しまった、今はブランシャールのオカンネタは関係ないな。

 

「何でもないから気にするな。それで?俺に電話したって事はエンフィールドの居場所を知ってると思ったのか?」

 

『うん。もしかしたら前にフローラちゃんを助けた時みたいにクローディアに発信機を付けてたらって思ってね』

 

「そういう事か……悪いが付けてないからわからん。俺は銀河は星武祭が終わってから動くと踏んではいたからな」

 

加えてエンフィールドからは距離を置くように言われて、あれ以降連絡を取ってないし。

 

『そっか……わかった。無理言ってゴメン』

 

「あ、待て。居場所は知らないが居そうな場所には心当たりがある」

 

『え?!本当?!』

 

天霧が頼んでくる。候補地点なら教えても大丈夫だろう。俺が他の統合企業財体から聞かされた情報を天霧に話すのは黒だが、俺の考えを話すならグレーだろう。

 

シルヴィとオーフェリアを見ると軽く目を見開いているが、止める気配はないので問題ないと判断したのだろう。

 

「あくまで候補地点だ。それでも良いな?ミスっても文句を言うなよ?」

 

『頼む!教えてくれ!』

 

「わかったよ。俺の考えではエンフィールドがいるのは星導館の敷地内……そうだな、港湾ブロックあたりだな」

 

港湾ブロックは各学園を取り巻くようにして広がっている倉庫街のような場所で、銀河本部は言うまでもないだろう。

 

『港湾ブロック?その根拠は?』

 

「良いか?連中からしたら都市部に逃げられるのは最悪だ。都市部でエンフィールドをぶっ殺したら証拠隠滅が難しいからな。間違いなく大顰蹙を買うだろう」

 

そんな事をしたら外部から来た客からも心証が悪くなって銀河そのものが他の統合企業財体に屑と文句を言われて潰れるだろう。

 

『だから人の少ない港湾ブロック?』

 

「少ないというか学園の港湾ブロックは無人化が徹底されてるんだよ。監視カメラはあるが星導館が所有するカメラだから掌握もしてるだろう。向こうからしたら最高の狩場だ」

 

俺は偶に影の龍に乗って空の散歩をするが、港湾ブロックを何度か見た事がある。あそこは作業用擬形体がいるだけで人は居ないのが特徴の場所だ。

 

『港湾ブロック……確かにそこならあり得そうだね』

 

「まあ絶対とは言わないがな。ただあそこに行く場合……ん?」

 

「どうしたの八幡君?」

 

「……通信不能になった」

 

いきなり空間ウィンドウから天霧の顔が消えて、通信不能のマークが出てくる。どうしたんだ?端末を見る限り壊れている訳ではない。

 

「シルヴィ、ちょっと今から空メールを送るぞ」

 

言いながら試しにシルヴィの端末に空メールを送ってみると……

 

pipipi……

 

シルヴィの端末が鳴り出す。って事は問題なのは俺の端末でなく天霧の端末だ。壊れたか、圏外の場所にいるかだな。

 

「ちっ……つくづく面倒な事件が起こってるな……ご馳走様」

 

「あっ、お粗末様でした」

 

言いながら俺はシルヴィの作った朝食を全て食べてから立ち上がる。本来なら一切干渉しないつもりだったが、気が変わった。

 

(少しばかり助けてやるとするか……)

 

無論、俺が手助けしてるとバレないレベルでな。そう思いながら俺は自室に戻って自身の影に星辰力を込め……

 

「羽ばたけ、影鴉」

 

影から1匹の影で出来た鴉を生み出す。そして机から小型カメラを取り出して鴉の足に付け、自室の窓を開けて……

 

「とりあえずあいつらの目と耳になってやるか」

 

そのまま大空へと羽ばたかせた。


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