学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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活動報告にて幾つかのご意見を頂きました。

とりあえず全員が票をいれた八幡VSヒルダはやる事にしました。その次に人気の八幡VS綾斗もやりたい所ですね。

しかしまだ組み合わせについては割と悩んでいるので時間のある方は是非活動報告を見てアンケートに答えていただけたら幸いです。

尚、選択肢にない組み合わせでも大歓迎なのでコメントお願いします。

自分では八幡ではなく小町が葉山をボコした方が良いんじゃね?、と思ってしまったり……




比企谷八幡は自分の出来る範囲で動く

「ふーむ……雨が降りそうだな。出来れば降ってくれたらありがたいんだが……」

 

 

「まあ雨が降れば探知が難しくなるからね」

 

自室にて俺は右にオーフェリア、左にシルヴィを置いてベッドの上に座りながら巨大な空間ウィンドウを見ている。空間ウィンドウには上空からのアスタリスクの映像が流れている。先程能力で影の鴉を生み出して、その鴉の足に付けたカメラが記録している映像だ。

 

俺は今エンフィールドの捜索をしている。見つけ次第天霧やリースフェルトに教えるつもりだ。本来なら干渉しない所だが、連中のやり方は気に入らない上に、天霧から助けを求められた以上何もしないってのは目覚めが悪過ぎる。

 

「……でも良いのかしら?バレたらシルヴィアのマネージャーに怒られるんじゃない?」

 

オーフェリアがそんな事を言ってくるが問題ない。何故なら……

 

「問題ないな。だってペトラさんはシルヴィに『俺とオーフェリア銀河の実働部隊と戦おうしたら止めろ』って言ったんだ。俺は単に次のデートに備えて能力を使って上空からあらゆる場所を下見しているだけだ。その時に偶々誰かが争っている光景を見てしまうのは、悪い事じゃないだろ?」

 

「……凄い屁理屈ね」

 

オーフェリアは呆れた表情を浮かべているが気にしない。

 

「屁理屈も立派な理屈だ。てかシルヴィが止めてない時点で問題ないだろ」

 

「まあ私としてもデートスポットの下見は重要だと思うな。その時に偶然クローディアが襲われている光景を見つけた場合、チームメイトの天霧君達に連絡を入れるのは当然だよね」

 

シルヴィもエンフィールドを見捨てるのは忍びないと思っているのか特に俺を止めようとしていない。

 

そんな事を話していると巨大な空間ウィンドウに星導館が映る。

 

「おっと、星導館が見えてきたな。良いデートスポットはあるか?」

 

「うーん。やっぱり人が少ない港湾ブロックとかが良いんじゃない?」

 

「え?シルヴィは野外プレイをしたいのか?」

 

「いやー……他の人に見られたら恥ずかしいし、自室が1番かな?港湾ブロックならキス程度にするよ」

 

「そっか。とりあえず下見をするか」

 

俺とシルヴィが詭弁を吐きまくりながらも空間ウィンドウを見ると、映像には既に星導館学園は見えなくなっており、学園部分と港湾ブロックの間にある巨大な運河のような水路を映している。

 

「……そういえば八幡。港湾ブロックって空を飛んだり泳いだりする以外にはどうやって行くの?」

 

「詳しくは知らんがアスタリスクの都市部と繋がっている車両ルートと、船を使った水上ルートと、学園内部から繋がる秘密のルートの3つがある」

 

「でも全て厳しくない?」

 

シルヴィの言う通りだ。車両ルートは都市部の許可が、水上ルートと銀河の許可が必要だ。秘密のルートは一般人が知る事は出来ないだろう。

 

都市部の許可は港湾ブロック関係者でない限り無理だろうし、銀河の許可は言わずもがなだろう。

 

「そうなると船を奪うか、リースフェルトの能力で空を飛ぶしかないな」

 

俺が居れば影の船や龍を作れるが、流石にそこまで協力したら俺や小町、ついでに最近アスタリスクに転勤した親父の身がヤバそうなので却下。一応天霧達には協力しているが、あくまで家から出ない範囲での協力だ。

 

え?お袋は身は心配しないのかって?お袋なら大丈夫だろう。寧ろ実働部隊を返り討ちにする光景しか見えない。お袋を殺したかったら星露クラスを連れてこないと無理だろうが、幾ら銀河の実働部隊でもあれクラスの実力者はいないだろう。

 

 

そう思いながら空間ウィンドウを見ると俺は驚きの感情が浮かぶ。鴉はいつの間にか港湾ブロックの上空に到着していて、空間ウィンドウには戦闘シーンが映されている。

 

それだけならまだ驚かない。エンフィールドが銀河の実働部隊と戦っているなら予想の範囲だから。

 

しかし今空間ウィンドウにエンフィールドは映っておらず……

 

「あらら……何で星導館の領地に『醒天大聖』がいるんだろう?」

 

界龍第七学院の元序列1位『醒天大聖』アレマ・セイヤーンが黒装束5人と戦闘をしている映像が流れている。まあ内1人は戦闘に参加してないが。

 

シルヴィも驚きを露わにしているが、俺には理由を理解した。

 

「多分星露が一枚噛んでるだろ。あのバトルジャンキーの事だから『万全なチーム・エンフィールドとチーム・黄龍の戦いが見たい』とか『星武祭だけじゃ刺激が足りないから適度なスパイスが欲しい』みたいな理由で動いてるんじゃね?」

 

俺は週に一度星露に鍛えて貰ってわかったことが2つある。

 

1つ、星露は間違いなく世界最強である事

 

2つ、星露は間違いなく世界で最も自己中である事

 

奴はとにかく楽しい事を探し求めていて、そこに一切の妥協や躊躇いは存在しない。

 

そして今回のセイヤーン派遣も間違いなく自分が楽しむ為だろう。実際俺の意見を聞いたシルヴィとオーフェリアも納得したように頷いている。

 

「かもね。それにしてもやっぱり彼女、強いね」

 

シルヴィが空間ウィンドウを見ながら感心する。空間ウィンドウではセイヤーンが黒装束の振るう刀を避けて、即座に違う黒装束の鳩尾に蹴りを入れてクレーンに叩きつける。そして飛んできた棒手裏剣をキャッチして投げ返し、避けた黒装束の顎に掌打を放ち気絶されると、そいつを掴んで違う黒装束に投げつける。

 

そうこうしている間に4人の黒装束は戦闘不能になり、セイヤーンと戦闘してない男だけとなる。その男は黒装束のメンバーの中で唯一頭部が露出している。上空からの映像なので詳しくは見えないが顔は老境に差し掛かっている事からかなりの歳だと思う。

 

しかし間違いなく断言出来る。あのジジイは間違いなく桁違いーーー俺やシルヴィ、暁彗に近い実力を持っているだろう。恐らくあのジジイが銀河の実働部隊の隊長だと思うが、マジでエンフィールドは危ないかもな……

 

「っと、それより連絡を入れないと」

 

無人化されている港湾ブロックであんな派手な戦闘をしているという事はエンフィールドが近くにいるのは間違いないだろう。

 

とりあえず俺はエンフィールドを除いたチーム・エンフィールドの4人に『星導館の港湾ブロックにて戦闘が行われている。多分エンフィールドもそこにいる』とメールを送る。

 

メールを送信すると同時に俺は鴉を操作してエンフィールドの捜索に移ろうとした。

 

しかし……

 

『さて……おぬしを片付ける前に、どこかの統合企業財体の鼠を片付けるとしようか』

 

そんな声が聞こえたかと思いきや、セイヤーンと対峙しているジジイが上を見上げて、空間ウィンドウに俺達を見ているような映像を見せてくる。あのジジイ……偵察を見破ってやがる……!

 

俺は同時に鴉を港湾ブロックから距離を取るように操作する。同時に黒い物体が飛んでくる。

 

辛うじて回避する事は出来たが、これ以上鴉を使ってエンフィールドの捜索をするのは無理そうだ。

 

そう判断した俺は鴉を操作してそのまま港湾ブロックから出る。さっきのジジイの言葉から察するに、鴉を操っているのが俺だとはバレてないようだが、もしも鴉を捕まえられたら足がつく可能性がある。

 

ここらが潮時だろう。俺は絶対に足がつかないよう念には念を入れて鴉にアスタリスクの外部を一周してから俺の影に戻るように指示を出して空間ウィンドウを閉じる。馬鹿正直に真っ直ぐ自宅に向かわせたら方向でバレるかもしれないからな。

 

「さて……家の中でやれる事は全部やったし、後は天霧達がエンフィールドを助けることを祈るか」

 

「そうね……とりあえず八幡、お疲れ様」

 

隣に座るオーフェリアが俺の頭を愛おしそうに撫でてくる。同時に幸せな気分になる。

 

「ありがとなオーフェリア、愛してる」

 

「ええ……私も八幡を愛しているわ」

 

オーフェリアは初めて出会った頃には想像出来ない位可愛い笑顔を見せて再度頭を撫でてくる。

 

「むぅ……えいっ!」

 

するとシルヴィが不満そうな声を出したかと思いきや、いきなり抱きついてきた。予想外の衝撃に俺はシルヴィに押し倒される形となる。

 

「どうしたんだよ?」

 

「八幡君、私にも愛してるって言ってよ……オーフェリアばかりズルいよ」

 

頬を膨らませながらシルヴィはおねだりをしてくる。嫉妬とかマジでこの子可愛過ぎだろ?

 

「わかったよシルヴィ……愛してる」

 

俺が愛してるとシルヴィに言うと……

 

「えへへー、私も愛してるよ、八幡君」

 

不満そうな表情を消して幸せそうな表情を見せてくる。本当に2人は自慢の彼女だ。今直ぐ結婚したい。

 

そんなアホな事を考えていると携帯端末が鳴り出す。この時間から察するにチーム・エンフィールドの誰かだろう。

 

案の定端末を見ればリースフェルトからだった。それを確認した俺は空間ウィンドウを開いて通話ボタンを押す。

 

「もしもし?」

 

『どういう事だ?!何故クローディアの居場所をわかったのだ?!』

 

予想通りの質問だな。

 

「さっきまで影で作った鴉を飛ばしてたら星導館学園の港湾ブロックでセイヤーンが黒装束の連中と戦闘しているのが見つかったんだよ」

 

『『醒天大聖』がウチの学園で?』

 

「ああ。このタイミングで無人化されている港湾ブロックで派手な戦闘をするとしたらエンフィールド関係だろう」

 

『まあその可能性は高いな……ちなみにクローディアは見てないのか?』

 

「それが探そうとしたら向こうにバレそうになって鴉を星導館から撤退させたからわからん」

 

『なるほど……ん?これは……!』

 

すると空間ウィンドウに映るリースフェルトの顔が下を向きながら強張る。何か新しい情報を手に入れたのか?

 

「どうした?天霧からラブコールでも来たのか?」

 

『この状況で来るわけないだろう!そうではなく!綾斗から連絡が来た。クローディアは本当に港湾ブロックにいるようだ。行く為のルートも記載されている』

 

何だと?恐らくルートは秘密のルートだと思うが、誰が教えたんだ?

 

「(まあ今はその情報に感謝するべきだろう)……そうか。じゃあ急いで助けてこい」

 

『ん?お前は来てくれないのか?』

 

「悪いが無理だ。助けてやりたいのは山々だがクインヴェールの理事長から派手に動くなと言われてるし、俺が動いて小町が巻き添えを食らうのはゴメンだ」

 

『そうか……いや、そもそも今回の事件に無関係のお前に頼むのは筋違いだな。済まなかった』

 

「別に気にしてない。それよりさっさと天霧と合流して助けに行け」

 

一分一秒も無駄にしている時間はないだろう。場所がわかっても間に合わなかったら本末転倒だし。

 

『わかった。必ず助けてくる』

 

そう言ってリースフェルトは通話を切るので俺は端末をポケットにしまう。とりあえず俺が銀河に目を付けられないレベルでやれる事は全部やった。後は天に祈る事くらいしか出来ないだろう。

 

「さて……可能なら無事だと良いんだがな」

 

「それは私も同感だけど、無傷ではいられないだろうね」

 

それについては同感だ。さっき俺の鴉を撃ち落そうとしたジジイは別格だ。エンフィールドの実力ならある程度戦う事は出来ると思うが勝つのは無理だろう。

 

仮に生き延びたとしてもそれなりのダメージにはなり、明日の試合に悪影響が出ると思う。つくづく今シーズンの星導館は厄介な問題が起こってるな。前シーズンの星導館は特に特徴のない弱小校だったのに。

 

「まあこれから先は俺がどうこう言っても仕方ないし、俺は俺の仕事ーーーチーム・ランスロット対策を練りますか」

 

エンフィールドの件について俺が出来る事はもう無い。だからここから先はチーム・エンフィールドに任せて、俺は明日の準備をしよう。

 

「じゃあ私とオーフェリアも手伝うよ。チーム・ランスロットの記録を見直して弱点になり得そうなものを探してみる」

 

「助かる。じゃあ俺はフロックハートと連絡を取って明日の試合のシミュレーションをするわ」

 

「……わかったわ。それと八幡」

 

「何だオーフェリア?」

 

「ラッキースケベはしないでね?」

 

「しねぇよ!」

 

てかシミュレーションは通信でやるのにどうやってラッキースケベをやれってんだよ?!普通に無理だからな!それともアレか?!俺のラッキースケベ能力なら空間ウィンドウ越しでも出来ると思っているのか?!

 

「……八幡なら、或いは」

 

「出来そうだよね……」

 

うわぁ……予想はしていたがどんだけ信用無いんだよ俺。てか当然の様に人の心を読むのを止めてくれませんかね?

 

 

 

 

 

 

それから2時間後……

 

「ダメか……」

 

『ダメね……はぁ……』

 

自室にて俺は空間ウィンドウに映るフロックハートと一緒にため息を吐く。

 

明日の試合に備えてチーム・ランスロット戦のシミュレーションをやっているのだが全くマトモな案が出てこない。既に50種類以上の攻めるパターンを提示したが……

 

「1番マトモな作戦が正面突破って……」

 

『予想はしていたけど、いざチーム・ランスロットと戦うと理解してからシミュレーションすると頭が痛くなるわ』

 

「『はぁ……』」

 

再度一緒にため息を吐く。チーム・ランスロットはチーム戦に特化した獅鷲星武祭の中で究極なチームだ。チームメンバー5人を統合して融合させたチーム。

 

対抗するには下手な小細工をするよりチームとしてぶつかるのがベストだ。浮いた駒は速攻で食われるのがオチだ。

 

『……もう正面突破にしない?今から他の案を出しても碌な案は出ないでしょうし、どう正面突破するかを考えた方が効率が良いわ』

 

だろうな。どう正面突破ーーーその中でどうやってフェアクロフさんに『ダークリパルサー』を当てるか、それが勝敗を分けるだろう。

 

俺が了解の返事をしようとした時だった。

 

pipipi……

 

メールの着信音が鳴り響く。送り主は……天霧?

 

「すまん、ちょっとメールが来た」

 

フロックハートに一言断ってメールを開く。十中八九エンフィールド関係だとは思うが……

 

メールを開くと……

 

 

 

 

『とりあえず救出完了して、丁度今治療院の特別治療室に入ったところ』

 

そんな一文が表記されていた。メールの内容を理解すると同時に俺は安堵の息を吐いて椅子にへたり込む。どうやら予想以上に緊張していたようだ。

結局俺はフロックハートが話しかけてくるまで、安心していてフロックハートの存在を失念していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……じゃあ、この作戦で行くわね』

 

「だな。とはいえ最高の作戦で勝率が2.6%……もう絶望的過ぎて逆に笑っちまうな」

 

『……そうかもね』

 

空間ウィンドウに映るフロックハートはやつれた笑みを浮かべる。

 

自室にて、俺はフロックハートと一緒に対チーム・ランスロット戦のシミュレーションを6時間以上やって、丁度今目処がついた所だ。ちなみに恋人のシルヴィとオーフェリアは途中まで参加していたが、夕食が作る為に抜けている。

 

『ただ……もし仮に明日の試合でチーム・ランスロットを倒せて明後日「今はそれを考えるな」……そうね』

 

フロックハートの言いたい事は理解出来る。仮に明日チーム・ランスロットを倒せても優勝ではない。優勝するにはチーム・エンフィールドかチーム・黄龍のどちらかを倒さないといけないのだ。

 

そして俺の見立てじゃ勝ち上がってくるのはチーム・黄龍。チーム・エンフィールドは今日のアクシデントーーーエンフィールドが銀河の実働部隊に狙われるアクシデントに巻き込まれたのだ。先程天霧に聞いた所、エンフィールドは今も特別治療室にて寝ていて、他のメンバーも銀河の実働部隊や影星との戦いで消耗しているらしい。その状況で暁彗を倒すのは結構厳しいだろう。

 

「(まあ仮にチーム・エンフィールドが勝ち上がっても厳しいがな)……とりあえず決勝の事は明日の準決勝が終わってから考えよう。お前も6時間以上シミュレーションやって疲れてるだろうから今日は休め」

 

俺はともかくフロックハートは選手ーーーそれもチームの指揮官だ。万全な状態でないと勝てるものも勝てなくなっちまう。

 

『ええ。そうさせて貰うわ。じゃあまた明日』

 

そう言ってフロックハートは通話を切るので俺も空間ウィンドウを閉じてベッドに横になる。予想以上に疲れたな……まさか6時間以上も付き合うとは思わなかった。どうやら俺の中ではあいつらの存在が予想以上に大きくなっているようだ。

 

(是非とも優勝させたいもんだ……)

 

総武中が嫌だからアスタリスクに来た俺だが、来た時には想像出来ないくらい他人と関わりを持つようになった。そしてその関わりはどれも心地良い関わりばかりだ。

 

やっぱりアスタリスクに来て正解だ。総武中に居たんじゃ居心地の悪い詰まらない学園生活を送っていただろうが、今は大切な恋人2人を始めとした様々な人間によって楽しい生活を送れているし。

 

そんな事をぼんやりと考えている時だった。

 

「八幡、ご飯が出来たわよ。作戦会議は……終わってるみたいね」

 

恋人の1人であるオーフェリアがエプロン姿で自室に入ってきてそう言ってくる。

 

「丁度今終わった所だ。直ぐに行く」

 

そう返した俺はベッドから起きてオーフェリアの元に歩き出す。するとオーフェリアが俺の手を引っ張り歩き出すのでそれに続く。エプロン姿のオーフェリアに手を引っ張られるのは何となくドキドキするな。

 

手を繋ぐなんて日常茶飯事だが、違う見た目だとそれはそれで破壊力がヤバい。

 

そんな事を考えながらリビングに行くと、もう1人の恋人のシルヴィがオーフェリアと同じようにエプロンをつけながら料理をテーブルに置いていた。そして俺に気付くと見る者全てを魅了する笑みを浮かべてくる。

 

「お疲れ様八幡。八幡君の好物を一杯作ったから、ね?」

 

「……しっかり食べて疲れを取ってね」

 

マジで最高だ。2人と恋人になってから1年ちょい。2人は毎日俺の為に美味い飯を作ってくれている。

 

「ありがとなシルヴィ、オーフェリア」

 

改めて礼を言うと2人はキョトンとした表情を浮かべるも、それも一瞬で……

 

「「どういたしまして」」

 

俺にだけ向けてくれる優しい笑顔を見せてくる。それを見る度にここが俺の居場所だと思えてしまう。可能ならこの幸せが永遠に続いて欲しいものだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで八幡君。結局作戦はどうなったの?」

 

「基本的には正面突破だな。そこにチームメンバーが突出しない程度で作戦を織り交ぜていく」

 

「……まあチーム・ランスロットが相手なら間違ってはいないわね」

 

夕食の席にて俺は恋人2人にさっきまでフロックハートと話していた内容を説明する。夕食に話す話題としてはアレかもしれないが、オーフェリアとシルヴィもエンフィールドが一命をとりとめた事は知ってるから、話す内容は明日の試合の事しかない。

 

「細かい作戦は明日の朝説明する事になってるから、明日は早めに起きてシリウスドームの控え室に行くぞ」

 

「了解。それと八幡君、わかってるけど思うけどラッキースケベはダメだからね?」

 

言われて俺は昨日のやり取りを思い出してしまう。チーム・トリスタン戦が終わった後に差し入れをするべくチーム・赫夜の控え室に行ったら全員がシャワーを浴びてバスタオル姿だったんだよなぁ……

 

「いや待て。アレは事故だし昨夜搾り取って許してくれたんじゃないのか?」

 

「もちろん昨日の事は許してるよ。ただ明日はしないでねって言ったんだよ」

 

「……了解した。最善の注意を払って行動する」

 

まあ気を付けてアレなんだけどな。それを馬鹿正直に言ったら3日連続で搾り取られそうだから絶対に言わないけど。

 

「……なら良いわ。さあ、食べましょう」

 

オーフェリアがそう言ったので食べるのを再開する。とりあえず今は疲れた頭を回復させる事に集中しないとな。飯を食った後も対策を練らなきゃいけないんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食から6時間後……

 

夕食を済ませた俺は予定通りチーム・ランスロットの対策を講じるべく、今回の獅鷲星武祭でのチーム・ランスロットの試合と、チーム・ランスロットのメンバー全員の今年度の公式序列戦の記録を全て見直した。

 

オーフェリアとシルヴィは途中まで一緒に対策を講じていたが、日が変わる直前に先に寝かせている。

 

昨夜俺達はお楽しみをしたので碌に寝てない。流石に3日連続夜更かしは美容に良くないと半ば強引に2人を寝かせた。2人は猛反対したが、俺が「じゃあ1週間はキス無しな」と言ったら大人しく寝てくれた。

 

閑話休題……

 

一応フロックハートとやったシミュレーションでは浮かばなかった新しい策も出てきたので有意義な時間だと思えるが……

 

「頭が痛え……」

 

6時間ぶっ続けで記録を見ていたから頭が痛い。あいつらが勝つ為なら安い犠牲だが、痛いものは痛い。

 

「マジで負けんじゃねぇぞ……」

 

思わず独り言を呟く。ここまで来たんだし優勝はして貰わないとな。

 

そこまで考えている時だった。不意に端末が鳴り出したので見てみる。すると画面にはクローディア・エンフィールドと表記されていた。

 

同時に俺が通話ボタンを押すと見知った金髪美女が映る。見ればあらゆる場所に治療の痕跡はあり控え目に言ってもボロボロだ。

 

「よう、とりあえず生きてるようだな」

 

『ええ、おかげさまで』

 

「礼を言われる事はしてないと思うぞ」

 

『あら?綾斗から聞きましたが、私の捜索に協力してくれたらしいじゃないですか?』

 

「気まぐれだよ気まぐれ。それより大丈夫なのか?今回は生き延びたみたいだが、次はヤバいんじゃね?」

 

統合企業財体の人間が一度失敗した位で諦める筈はない。直ぐに次の刺客を派遣するだろう。

 

『その件ですが大丈夫です。お母様にある情報を売りつけて暫くの間は狙われないでしょう』

 

その口調からは強い自信があるので、銀河にとって相当有益な情報を売りつけたのだろう。統合企業財体の最高幹部は利益を最優先とするからな。

 

「まあそれならそれで良いが……お前今回の件で何かあったのか?」

 

今までのエンフィールドは大人びた表情の仮面を被っているイメージだが、今のエンフィールドは年相応の可愛らしい表情を浮かべている。逃げてる間に何かしら心境の変化があったと思える。

 

『そうですね……未来には何があるかわからなくて、可能性を考える楽しさを知りましたね』

 

「何だそりゃ?」

 

『ふふっ……もう夜遅いので詳しい説明は後日にしますが、綾斗達にお説教を受けて色々と思うことが出来たのですよ』

 

「よくわからんが、お前が楽しそうなら良いんじゃね?それより明日は試合なんだし出来るだけ回復しとけよ」

 

チーム・エンフィールドが明日戦うのはチーム・黄龍。優勝候補のチームだが、今日銀河の実働部隊とやり合ったチーム・エンフィールドにはかなりキツい相手だろう。

 

『ここで私に回復しとけよと言うことは、明日までに比較的マシなコンディションになり、チーム・黄龍と潰し合えと思ってますね?』

 

「否定はしない」

 

仮に俺が応援しているチーム・赫夜がチーム・ランスロットに勝てたとしてもかなりボロボロになるだろう。

 

そうなったチーム・赫夜が優勝するには、決勝で戦うチーム・エンフィールドかチーム・黄龍がどれだけボロボロになっているかにかかっているからな。

 

仮にチーム・エンフィールドが明日までにマシなコンディションにならなかったらチーム・黄龍が殆ど無傷で圧勝するだろう。そうなったらチーム・赫夜が優勝するのは不可能。

 

だから俺としてはチーム・エンフィールドが明日までに出来るだけ万全に近い状態となりチーム・黄龍と潰し合って欲しい。

 

『貴方のそういう馬鹿正直な所は嫌いじゃないですよ。ですが1つだけ……優勝するのは私達です』

 

エンフィールドは空間ウィンドウ越しに不敵な笑みを浮かべている。どうやらこいつは本気でチーム・黄龍に勝つ気のようだ。

 

なら俺が言う言葉は決まっている。

 

「いや、優勝するのは若宮達チーム・赫夜だ」

 

もちろん準決勝まで残った4チームで1番弱いのはチーム・赫夜だ。しかし俺はあいつらに賭けてみたいと思っている。

 

『そうですか。では決勝で彼女らと戦うのを楽しみにしてますよ』

 

「ああ……それよりもう遅いから切るぞ」

 

明日に備えて早く寝たいし、それは向こうもだろう。

 

『ええ。ご迷惑をおかけしました』

 

「俺は気にしてないから天霧達にはもう一回謝っとけ。それと星武祭が終わったら今回の件について教えて貰うぞ」

 

今は星武祭に集中したいが、事件の顛末については知っておきたいし。

 

『わかりました。ではまた』

 

その言葉を最後にエンフィールドの顔が空間ウィンドウから消えたので俺は通話を切って端末を机に置いて息を吐く。色々あったが、とりあえず平和に終わったみたいだ。

 

(とりあえず俺も寝るか……)

 

そう思いながら俺はリビングの電気を消して寝室に向かう。寝室のドアを開けると既に真っ暗になっていたので窓からさす月明かりを頼りにベッドに向かう。そして俺がいつものようにオーフェリアとシルヴィの間に入ろうとすると……

 

「っ……!」

 

いきなりベッドから2本の手が伸びて俺のパジャマを掴み、そのままベッドに引き込んでくる。身体がベッドに叩きつけられると、間髪入れずに左右から柔らかい感触が伝わってくる。

 

「やっと来たね、八幡君」

 

「……ずっとずっと待っていたのよ」

 

左右から恋人2人の待ち望んでいたような声が聞こえてきた。そして2人は離すまいと強く抱きしめてくる。

 

「お前ら……寝てたんじゃないのかよ?」

 

「八幡君の言う通りベッドには向かったよ」

 

「でも、八幡が居なくて寂しくて眠れなかったのよ、ねえシルヴィア」

 

「うん。ライブとかで離れ離れの場合は一緒に寝れないってわかってるから割り切れたけど、同じ家にいるのに私だけ先に寝るのは無理だよ……」

 

シルヴィの寂しそうな顔が月明かりによって照らされる。それを認識すると胸に罪悪感が湧き上がる。

 

「ごめんなシルヴィ……よく考えたら俺も早く寝て朝に記録を見れば良かった」

 

オーフェリアはまだしも、シルヴィは1年の内、4割近くは離れ離れになっているのだ。一緒にいる間は寂しい思いはさせないようにしないとな。

 

「別に怒ってる訳じゃないよ。八幡君が美奈兎ちゃん達の為に一生懸命なのは嬉しいし……」

 

シルヴィは儚い笑みを浮かべるが、悪いのは俺だ。

 

「いや、お前らが気にする事はない。今後は気を付ける」

 

「「……ありがとう」」

 

2人はそう言って更に強く抱きついてくるので俺は2人の抱擁を受け止める。俺の行動は彼氏としてあるまじき行動だ。次からは気を付けないとな……

 

そう思いながら俺は一度ベッドから身体を起こして、ベッドの上にいる2人の方を向き……

 

「「「んっ……」」」

 

2人を抱き寄せて3人でキスをする。詫びの気持ちを伝えるべく強く押しつけるように。

 

唇を離すと2人は幸せそうな笑みを浮かべて俺を見てくる。

 

「……ありがとう八幡君。凄く気持ち良かったよ」

 

「……もう寂しい気持ちは吹き飛んだわ」

 

「なら良かった……お休み」

 

俺がそう言うと2人は頷き……

 

「「お休み、八幡(君)」」

 

ちゅっ……

 

俺に近付き再度キスをしてくるので俺は2人のキスを受け止めて幸せな気分になりながら、襲ってくる睡魔に身を任せた。

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