学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡はお袋に秘密を暴露された後、イチャイチャして悶死する

チーム・赫夜のメンバーと別れた俺達はクインヴェールの専用観戦室に向かった。あそこなら基本的に静かに観戦出来るし、悪くない選択だが……

 

「暇だな」

 

「暇だね」

 

「暇ね」

 

俺と恋人2人は思わずそう呟きながらステージを見る。試合はまだ始まっておらず、現在はこれまでの試合を振り返っているが、どれも有力候補同士の知り合いで俺達は全部見た試合だ。観客は盛り上がっているが、俺達からしたら退屈極まりない。

 

試合前だから邪魔にならないように早めに若宮達と別れて観戦室に来たが、試合まで後1時間半ぐらいある為、観戦室には試合を見る予定のお袋やペトラさん、ルサールカの面々もまだ来ていない。これならもう少し若宮達と居ても良かったか?

 

「(まあ過ぎた事を言っても仕方ないか……)悪い、ちょっと手洗いに行ってくる。ついでに早めに昼飯を買っておくつもりだが、何か食いたい物はあるか?」

 

「「八幡(君)と同じで」」

 

2人は同時に即答する。さいですか……まあ、2人がそれを望むならどうこう言わないが。とりあえず俺と同じものを望むなら脂っこい弁当は止めておこう。

 

「はいよ、じゃあちょっと行ってくるわ」

 

2人にそう言った俺は観戦室のドアを開けて、売店のある階に行くべくエレベーターまで人にぶつからない程度の速さで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず……俺とシルヴィとオーフェリアはサンドイッチ、ルサールカは前と同じで大丈夫だろう。ペトラさんはサッパリした物、お袋は……肉だろうな」

 

俺は売店で自分と恋人2人、ついでに一緒に観戦する面々の分の弁当も選んでいる。お袋はとにかく肉好きだから肉が多い弁当にしよう。どうせ幾ら食べても学校で生徒相手に暴れまくっていて直ぐにカロリーを消費するだろうし。

 

そんな事を考えながら売店を出ると……

 

『あっ』

 

チーム・エンフィールドの5人と鉢合わせする。なんて偶然だよ?

 

「あら比企谷君。昨日はご迷惑をおかけしました。改めてお詫びします」

 

先頭を歩くエンフィールドがぺこりと頭を下げてくる。大して協力していない俺にも頭を下げるなんて律儀な奴だ。

 

「気にしなくていい。それより今日の試合は大丈夫なのか?」

 

5人全員から疲労が見える。特にエンフィールドと天霧とリースフェルトは結構ヤバそうだ。

 

「万全ではないですね。まあ私達の試合は夕方からでるから、それまでには比較的マシになるでしょう。それよりそちらこそ大丈夫なのですか?」

 

まあそんな風に質問するのも仕方ない。若宮達の相手は獅鷲星武祭を二連覇しているチーム・ランスロットだし。

 

「一応万全だな。とはいえ厳しい戦いにはなるのは変わらないが」

 

「でしょうね。まあ私としては大金星が生まれることを祈っていますよ」

 

「それは決勝で闘う相手がチーム・赫夜の方が与し易いと受け取って良いんだな?」

 

「ええ。仮に勝てたとしてもボロボロになっているでしょうから」

 

「そうか。じゃあ俺はお前らがチーム・黄龍と潰し合うことを祈ってるな」

 

言いながら俺とエンフィールドは互いに笑い合う。しかしエンフィールドの目は一切笑ってないが、多分俺の目も笑ってないだろう。やはりこいつは腹黒いな。

 

「こ、怖いですね……」

 

チーム・エンフィールドの面々はドン引きしていて、刀藤に至っては怯えているが、俺からしたら剣を持ったお前の方が怖いからな。タイマンでやったら負けはないが結構梃子摺るのは確実だろう。

 

「まあ良い。それよりお前ら、随分と来るのが早いな」

 

チーム・エンフィールドとチーム・黄龍の試合は夕方で5時間近くある。俺はてっきり3時くらいにシリウスドームに入ると思っていた。

 

「第一試合を見ておきたいですし、落ち着いて作戦会議をするなら控え室が1番ですから」

 

「なるほどな……まあお前らを見る限り少し前のめりになっているように見えるし妥当な判断だな」

 

「はい。ですから少し落ち着いて第一試合を見て、作戦会議をする流れですね」

 

まあ昨日は色々あり過ぎたから気を張るのも仕方ないが。

 

「ならば、クローディアに聞いておきたい事がある」

 

するとエンフィールドの後ろにいた沙々宮が急に口を開けて手を挙げて……

 

「クローディアは綾斗に告白したのだろう?その結果を知りたい」

 

無表情でありながら爆弾を投下した。

 

「ぶふっ?!」

 

「ええっ?!」

 

その爆弾に天霧とエンフィールドが真っ赤になって噴き出す。まあ気持ちはわからんでもないが……もしかして昨日エンフィールドの雰囲気が変わったのはそれが原因か?

 

「い、いきなり何を言い出すのですか……!」

 

エンフィールドは真っ赤になって反論するが、妙に可愛くてドキドキしてしま『pipipi……』……メールだ。このタイミングで来るということは……

 

内心ビクビクしながらもメールを見ると……

 

『fromオーフェリア 八幡、今女子にデレデレしたわね。今夜搾り取るから』

 

『fromシルヴィ 八幡君さ、今私とオーフェリアさん以外の女の子にデレデレしたでしょ。今夜搾り取るから』

 

予想していたメールが来る。毎回思うが何でわかるんだよこいつらは……?まあいつものことだから気にしない。諦めて今夜は搾り取られよう。

 

そんな事を考えながら端末をしまい前を見ると、沙々宮がエンフィールドに詰め寄っていた。対するエンフィールドは真っ赤になってごにょごにょ呟いて、天霧も同じように真っ赤になっていて、リースフェルトと刀藤はハラハラしたように3人を見ている。今更だが、売店の前で何をやってんだ俺達は?

 

呆れる中、エンフィールドは一度深呼吸してから胸に手を当てて……

 

「その件に関しては、昨日の事件のどさくさに紛れて伝わったので私自身は良しとしません。ですからいつか自分から綾斗に気持ちを伝えるつもりです。以上っ!」

 

「……なるほど。つまりまだ私のアドバンテージは生きているということ。安心した」

 

沙々宮は安心したようにウンウン頷いているが、それはつまりこいつも天霧に告白したのだろう。女子2人に告白されるとか……リア充爆発しろ」

 

「いや!比企谷だけには言われなくないからね!」

 

天霧がツッコミを入れてくるが口に出していたのか?

 

「全くだ。オーフェリアとシルヴィア・リューネハイムの2人と付き合っているお前だけには言われたくないだろうな」

 

リースフェルトは呆れながら俺にツッコミを入れてくる。そうだ、いつも一緒に居て当たり前だと思っていたが、俺の理論じゃ俺もリア充じゃん。

 

「まあそりゃそうか。で、天霧はどうすんだよ?」

 

「どうすんだって……何を?」

 

「いやなに、1人の告白を受け入れるか、俺みたいに2人ーーー複数の告白を受け入れるかだよ」

 

「ええっ?!」

 

「……私としては綾斗を独り占めしたい」

 

「わ、私は綾斗の横に立てるならどちらでも……!」

 

「紗夜?!クローディア?!」

 

「何を言っているんだお前らは?!そ、それで綾斗!お前はどう考えているんだ!」

 

「あわわ……!わ、私は綾斗先輩の好きにしたら良いと思います!」

 

なるほどな、沙々宮は独り占めしたくて、エンフィールドは天霧と付き合うこと最優先。リースフェルトと刀藤はまだ告白してないようだが、今後どうなるかは天霧の対応次第だが……天霧は俺と違ってクソ真面目だろうし、1人の女子としか付き合わないだろう。

 

まあリースフェルトと付き合ってリーゼルタニアの王族の養子になったら、愛人云々でエンフィールド達とも付き合う可能性はあると思うが。

 

とりあえず……

 

「悪いが俺はこれで失礼する。互いに頑張ろうぜ」

 

言いながらチーム・エンフィールドの面々から背を向ける。弁当を買ったし、売店がこれ以上混雑する前に早めにクインヴェールの専用観戦室に戻るべきだろう。

 

「いやいや!引っ掻き回すだけ引っ掻き回していなくならないでよ!」

 

後ろから天霧の悲痛な叫び声が聞こえてくるが気にしない。同時に何故かワインが飲みたくなったが、未成年だから我慢しよう。

 

しかし何故俺は今、ワインを飲みたくなったんだ?

 

 

 

 

 

 

「それで綾斗?私は綾斗がハーレムを作るというなら受け入れますよ?」

 

「い、いやそれは……!比企谷……恨むよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで八幡、誰にデレデレしたのかしら?」

 

「エンフィールドにです、はい」

 

所変わってクインヴェールの専用観戦室にて、俺は今正座をしている。目の前にはドス黒いオーラを出したオーフェリアとシルヴィが仁王立ちしている。

 

2人の後ろでは一緒に試合を見るお袋やルサールカやペトラさんが野次馬精神を発揮している。しかし全員助けてくれる気配はない。

 

「ふーん。でも何でクローディアに?」

 

「えっと、実は昨日エンフィールドが天霧に告白したらしく、その話を沙々宮が暴露して、その時のエンフィールドの反応が可愛らしく思いました」

 

ここで嘘を言ったら間違いなく地獄を見るから正直に話す。しかし……

 

「ふーん……」

 

これほど平坦な声は聞いた事がない。マジで怖過ぎるわ。

 

「いや、その……済まん。ぶっちゃけ見惚れたのは事実だが、手を出すなんてことは考えてないからな?」

 

「当然よ……そんな事をしたら……」

 

オーフェリアはそう言うと一区切りして口を閉じる。ちょっと?!したらなにをするつもりなんだ?!

 

聞きたいのは山々だが、ここで聞いたら後戻りが出来なそうなので止めておく。

 

「まあまあ、その辺にしてやってあげなよ。馬鹿息子は他の女子にデレデレする事はあっても、愛してるのはシルヴィアちゃんとオーフェリアちゃんの2人だけなんだから」

 

内心ビクビクしているとお袋が仲介をしてくる。しかし俺は全く安心出来ない。何故ならお袋はニヤニヤ笑っているのだから。

 

「お義母さん……」

 

「本当だよ。だって……」

 

お袋はニヤニヤ笑いながら一つ区切り……

 

 

 

 

 

 

 

「八幡って私に将来2人の子供に名前を付ける時にどうしたら良いかって助言を求めてるくらいなんだから」

 

そのまま俺の秘密を暴露してきた。するとさっきまで膨れっ面を浮かべいたシルヴィとオーフェリアは一瞬だけキョトンとした表情になるも……

 

「え?!ええっ?!」

 

「……本当?」

 

顔を真っ赤にしながらお袋に詰め寄ってくる。ヤバい、これ以上は……!

 

慌てて俺がお袋の口を塞ごうとするが……

 

「痛ぇっ!」

 

俺の伸ばした腕は回避されてそのまま関節を極められる。明らかに話すのを止めるつもりがないのが丸分かりだ。

 

「本当だよー、他にも私や私の旦那に結婚指輪の渡す場所や新婚旅行の場所の決め方とか色々相談してるぞー」

 

「ちょっ?!お袋!それ以上はむぐっ?!」

 

今度は口を塞がれる。マジで容赦ないな。実の息子が悶えるのを見て楽しいか?!

 

俺は必死に振り解こうとするも、お袋に抑え込まれていて不可能だ。

そして……

 

「あ、後偶に、自分はシルヴィアちゃんやオーフェリアちゃんを幸せにしたいけど出来るか不安って私に愚痴る時もあるな」

 

遂に俺が1番悩んでいる悩みも暴露する。もう嫌だ……

 

「へ、へぇ……そうなんだ」

 

「……嬉しいわ」

 

シルヴィとオーフェリアは既に怒りの色を消して優しい表情で俺を見てくるが、マジで止めろ!!2人にそんな目で見られたら死ぬわ!

 

内心悶えまくっているとお袋は関節技を止めて俺を押してシルヴィとオーフェリアの元に飛ばす。

 

すると2人は正面から俺にギュッと抱きついてくる。

 

「八幡君……私は今でも充分幸せだよ。八幡君が幸せにしてくれるから」

 

「ええ。私を自由にしてくれてから、私は八幡と一緒に居られるなら他に何も望んでないわ」

 

お袋による暴露に加えて、2人の優しい笑顔に優しい抱擁によって俺の全身はとてつもなく熱くなっている。

 

しかしそれでありながらとても心地が良いので2人を引き離さずに、俺からも抱擁を返す。この温もりを感じたいが故に、俺自身も2人から幸せを与えられている事を伝えたいが故に。

 

 

 

 

 

「うわぁっ……」

 

「マジでバカップル過ぎだろこいつら……」

 

「……完全に私達の事を忘れてるわね」

 

「モニカ、ブラックコーヒーが飲みたくなってきたよ……」

 

「私も飲みたくなってきました」

 

「やれやれ……こんな甘い光景を見せないでくださいよ」

 

「人聞きの悪い事を言うなよペトラちゃん。私は馬鹿息子がシルヴィアちゃんやオーフェリアちゃんに怒られるのを助けようと善意でやったんだぜー」

 

「どの口が言いますか。先程自分の息子の秘密を嬉々と暴露していた癖に。それと何度も言いますがちゃん付けはやめてください」

 

「良いじゃんかよーペトラちゃん」

 

「……殴りますよ」

 

「おっ、良いぜー。私、前からペトラちゃんとも戦いたいと思ってたんだよねー」

 

「はぁ……つくづく貴女は万有天羅に似てますね」

 

 

 

 

 

それから30分後、俺はお袋やルサールカやペトラさんに抱き合っている光景を見られて悶えたのは言うまでもないだろう。

 

それとお袋はいつか絶対にしばき倒すと心に決めた。




今回も読んでいただきありがとうございます。

尚、王竜星武祭編の対戦カードですが、

八幡VSシルヴィア、八幡VSヒルダ、八幡VS綾斗はやると決めました。

他の組み合わせはまだ悩んでいますので、このキャラとこのキャラの戦いが見たいと思ったら活動報告のアンケートにご協力いただけたら幸いです

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