学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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激闘を終え、各陣営は……(前編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者チーム・赫夜!』

 

機械音声がステージに響く。それによってステージには沈黙が生まれるも……

 

 

 

 

『おぉぉぉぉぉぉっ!』

 

ステージを覆っていた防護ジェルが解除されると、大歓声が生じてシリウスドーム全体の空気を震わせた。

 

「か、勝ったの……?」

 

全身をボロボロにしたクロエが……腕から血を流しながらも呆然と呟くと……

 

「ああ……君達の勝利だよミス・フロックハート、おめでとう」

 

目の前にいるアーネストが頭痛によって額に手を押さえながらも爽やかな笑みを見せてくる。そして…….

 

『こ、ここで決着!チーム・赫夜、獅鷲星武祭二連覇をした絶対王者チーム・ランスロットを相手に大金星だー!』

 

『いやはや、驚きましたな。結成して1年のチームが勝つとは……!』

 

実況と解説の声を聞いて、クロエは自分達の勝利が事実であることを認識する。

 

「クロエ……!」

 

すると先ほど自らを犠牲にしながらもケヴィンを撃破したニーナが涙を流しながら駆け寄ってくる。その後ろから柚陽が笑顔でやって来て、未だに地面に倒れ伏しているソフィアもボロボロながら口元に笑みを浮かべている。

 

「お疲れ様です。最後のやり取りは見事でしたよ」

 

「……ありがとう。柚陽こそ最後にフォローしてくれてありがとう」

 

「チームメイトですから」

 

柚陽の笑顔にクロエも小さく笑顔を見せる。初めはやり行きでこのチームに協力する事になったクロエだが、今はこのチームと一員として戦える事に幸せを感じていた。

 

(後一戦……後一戦勝てば皆の願いが叶う……!)

 

チームを組んだ当初は殆ど不可能と思っていたが、クロエ達は遂に後一歩の所まで辿り着いた。

 

後一戦……チーム・黄龍かチーム・エンフィールドのどちらが勝ち上がってくるかわからないが強敵なのは間違いない。

 

しかしクロエの中では諦めるという考えはなかった。ここまで来た以上諦めるなど論外、石に齧りついても勝つつもりだ。

 

しかし……

 

「……とりあえず美奈兎とソフィア先輩を起こしましょう」

 

「あ、ソフィア先輩は私が運びますからクロエさんは無理しないでください。ニーナさんは美奈兎さんをお願いします」

 

「わかった……!」

 

今は休息が必要である。決勝は明日の正午だが、それまでにどれだけ回復するかが勝敗を分けるのだから。

 

そう思いながらクロエは柚陽とニーナが地面に倒れ伏す美奈兎とソフィアに駆け寄る光景を見ながら一息吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者チーム・赫夜!』

 

クインヴェール専用観戦室……機械音声がチーム・赫夜の勝利を告げると、一拍おいて観客席から大歓声が生じるのがわかる。

 

そしてここでも……

 

「うぉっ?!」

 

「マジかよ?!」

 

「本当に勝ったよ〜!」

 

「……信じられないわ……!」

 

「す、凄い……!」

 

ルサールカの面々は大声で驚きを表現している。しかしこの場にいる全員は大小差はあれどルサールカと同じ意見だろう。

 

俺自身、勝てるかもしれないと思っていたが、いざ勝ったのを見ると胸の内に驚きの感情が生まれる。しかしそれ以上に嬉しい感情が生まれている。

 

(ここまで強くなるなんて……マジで嬉しいな……)

 

そこまで考えていると手がガッツポーズをしている事に気がついた。嬉しいのは事実だが、柄じゃない行動を見られると恥ずかしいので慌ててガッツポーズを解除しようとするも……

 

「ほ〜。アンタがガッツポーズをするほど喜ぶなんてな〜。ある意味美奈兎ちゃん達が勝った事より驚いたよ」

 

お袋がニヤニヤ笑いを浮かべながら俺を見てくる。最悪だ、よりによって1番見られたくない相手に見られたよ……!

 

「いやー、自分の息子がシルヴィアちゃんとオーフェリアちゃん以外ここまで感情を出すとは、親として嬉しいな〜」

 

「ブチ殺すぞ」

 

「やってみろクソガキ。久しぶりに腕を見てやるぜー?」

 

軽く殺気を出しながらお袋を見ると、お袋はカラカラ笑いながらも手招きしてくる。上等だ、いつまでも弱いと思っていたら痛い目を見るぞ。こっちは星露にしばき倒されているんだから。

 

「ちょっとちょっと?!八幡君落ち着いて!」

 

「……私達は変だと思わないから恥ずかしがる必要はないわ」

 

「お願いですから場所を考えてください。ここは観戦室ですからね?」

 

するとシルヴィとオーフェリアが俺を羽交い締めにして、ペトラさんが俺とお袋が間に入って仲裁に入る。まあ、確かに……ただでさえ他所の学園の専用観戦室に入るのも問題なのに、そこで暴れたりしたら間違いなく運営委員から罰を受けるだろう。それは学園全体にも迷惑が掛かるし止めるのが賢明だ。

 

「……わかったよ。わかったから2人とも離せ」

 

「え?2人の胸を堪能出来てるのに?」

 

「「……八幡(君)?」」

 

お袋が余計な事を言うと、2人が羽交い締めを止めたので振り向くとジト目で俺を見ながら低い声を出してくる。やっぱりお袋は俺の敵だ。

 

「いや待て2人とも。俺は別にそんな事を考えてないからな?」

 

「ふーん……」

 

「……嘘ね」

 

2人は全く信じてない。まあ俺は比較的エロいからな。信じてくれないのも仕方ないかもしれない。

 

しかし今回に限ってはマジでその考えは無かった。まあお袋に言われて柔らかいことを自覚したけど。

 

とりあえず……

 

「ま、まあ!それはともかく!若宮達は勝ったけど、相当負傷したし様子を見に行くわ。可能なら薬とかを売店で購入しとかないとな」

 

これは重要だ。チーム・ランスロットに勝ったのは素直に凄いと思うが、試合を見る限りチーム・赫夜もかなりのダメージを負った。だから俺としては少しでもフォローしたいと思う。べ、別にこの空気から逃げたいわけじゃないからね?!

 

「話を逸らしたね」

 

「話を逸らしたわね」

 

「話を逸らしたなー」

 

対してシルヴィとオーフェリアはジト目を、お袋はニヤニヤ笑いを浮かべながらそう言ってくる。てかこの空気を作ったお袋に言われるとガチでムカつくな。王竜星武祭に参加する前に絶対にお袋をぶっ倒してやる。

 

「……まあ、美奈兎ちゃん達のダメージが大きいのは事実だしそれは賛成だけど」

 

「だろ?じゃあ行こうぜ」

 

「あ!八幡君?!」

 

「早いわね……」

 

言いながら俺は早歩きでクインヴェールの専用観戦室を後にする。このまま観戦室にいたらまたお袋におちょくられそうだしな。

 

俺は背後から追ってくる恋人2人の気配を感じながらも足を速め売店に向かった。

 

 

 

 

 

 

「いやー、やっぱり八幡はからかいがいがあるなー」

 

「貴女の場合、誰にでも揶揄うでしょう?」

 

「まあな。それよりペトラちゃん。美奈兎ちゃん達はチーム・ランスロットを撃破したけど、これなら馬鹿息子がW=Wに就職したら3人の交際を認めてくれんだよな?」

 

「……そうですね。完全に反対意見は消えることはないと思いますが、多分大丈夫でしょう」

 

「なら良かった。3人には幸せになって欲しいからなー」

 

「ただバレないように最善を尽くして欲しいですね。交際を認めたとしても3人の関係が発覚したら面倒な事になるのは間違いないですから」

 

「だよなー……ったく、第三者が人の交友関係にケチを入れてんじゃねぇよ。私が王竜星武祭を優勝して手に入れた願いはまだあるし、3人の関係がバレたら、ウザいマスゴミの皆殺しでも頼もうかなー」

 

「……ノンビリとした口調で恐ろしい事を言わないでください。というか頼まないでくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者チーム・赫夜!』

 

聖ガラードワース学園の専用観戦室。そこは今沈黙に包まれていた。モニターにはチーム・赫夜のチームリーダーとチーム・ランスロットのチームリーダーが互いの校章を破壊しているシーンが映されている。

 

ガラードワースの専用観戦室にはチーム・トリスタンを始めとした今回獅鷲星武祭に参加した生徒が揃っているが、全員が信じられない気持ちとなっていた。

 

聖ガラードワース学園の人間からしたら、自学園の冒頭の十二人『銀翼騎士団』は憧れの存在である。

 

その『銀翼騎士団』のメンバーで構成されたチーム・ランスロットとチーム・トリスタンが結成して1年のチームーーーそれもガラードワースと折り合いの悪いレヴォルフの生徒が鍛えたチームに負けたのだ。そうなるのも仕方ないだろう。

 

「あり得ない……!こんなの間違っている!」

 

誰かがハッキリと口にする。同時に箍が外れたようで……

 

「そうよ!会長達があんな素人集団に負ける訳ないじゃない!」

 

「『孤毒の魔女』や『影の魔術師』が卑怯な手を教えたに決まってる!」

 

「そうだ!この試合は無効だ!」

 

チーム・ランスロットを崇拝する面々が騒ぎ出す。あたかもチーム・赫夜が悪だと評しながら。

 

暫くチーム・赫夜に対する文句が続くと……

 

「静かにしろ!ガラードワースの生徒ともあろうが他者を貶める発言は止めろ!」

 

痺れを切らしたチーム・トリスタンのリーダーのエリオットが怒鳴る。それによって大半の人は静まるが一部は納得していない。

 

「ですが!会長達が負けるなんてあり得ないです!」

 

「僕も同じ気持ちだ……が、会長達が負けたのは紛れもない事実だし、卑怯な手を使ったのなら運営が介入している筈だ。それがないという事は……」

 

実際チーム・トリスタンや本戦に出場したチームは感情的に納得はしてないが、チーム・ランスロットが負けた事を認めている。認めたくはないが、ここでチーム・赫夜を侮辱するのはチーム・ランスロットに対する侮辱でもある。それを理解しているが故にエリオットはチーム・赫夜の悪口を言う面々を諌めたのだ。

 

(来年から僕が会長になるんだし……次の獅鷲星武祭までの3年でもっと強くならないと……!)

 

既にガラードワースではエリオットがアーネストの後を継ぐ事は殆ど決まっている。今の自分は会長に遠く及ばないと理解するエリオットは今回の敗北を認め、3年に王者の奪還をする事を強く決意した。

 

それはチーム・トリスタンを始めとしたガラードワースの中でも強いチームのメンバーも同じ気持ちであった。

 

しかし一部のメンバーは未だに納得せず、チーム・赫夜ひいてはチーム・赫夜と深く関わっているオーフェリアや八幡に敵意を生み出していた。

 

 

 

 

 

 

 

(比企谷、王竜星武祭では見てろよ……!俺は絶対にお前を認めないし、お前を倒してみせる……!)

 

その中で今シーズンの鳳凰星武祭で不戦敗、獅鷲星武祭で1回戦負けした男が、前シーズンで王竜星武祭ベスト4の男に強い敵意を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了!勝者チーム・赫夜!』

 

「ぱぽん!まさか我の『ダークリパルサー』が勝利の鍵を握るとはな!」

 

アルルカントアカデミーの『獅子派』の専用ラボにて『獅子派』の副会長であり、『ダークリパルサー』を開発した材木座義輝はチーム・赫夜の勝利を見て高笑いをする。

 

「おお!将軍の作った煌式武装が大活躍とは!我輩としても鼻が高いである!」

 

材木座と並んで試合を見る擬形体のアルディも興奮したような素振りを見せる。既にアルディは様々な事を学習して見た目はともかく、中身は殆ど人間のようになっていて、材木座とはかなり仲が良い。

 

「うむ!それでアルディ殿、実は我、王竜星武祭に備えて『ダークリパルサー』を上回る煌式武装を開発中であるのだが見てくれるか?」

 

言いながら材木座はアルディに新作煌式武装の設計図が表示された空間ウィンドウを見せる。

 

『獅子派』の会長、材木座の上司であるカミラ・パレートがアルディと同じ擬形体のリムシィを自身の代理として王竜星武祭に出場させるように、材木座も自身の代理としてアルディを出場させる腹である。

 

アルディは材木座に渡された空間ウィンドウを暫く見ると高笑いを生み出す。

 

「ふはははは!流石であるな将軍!願わくば我輩、この武器らを使用して再度刀藤綺凛と相対したいのである!」

 

「ふはははは!勿論そのつもりである!その点、チーム・赫夜は今回の試合で良いデータを生み出したのでより優れた武器を作れるであろう!やはりあの時に『ダークリパルサー』を生み出して正解だったな!」

 

「ほう?あの剣はお前が作り出したのか、材木座?」

 

「うむ!まあ我としてもチーム・ランスロットを打ち破るキッカケとなる程活躍をするとは思わなか、っ……た?」

 

いきなり後ろから聞き覚えのある女の声が聞こえ、材木座は内心冷や汗をダラダラ流しながら後ろを向くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかチーム・ランスロットを打ち破るキッカケを作った武器を作るとはな。それは素直に凄いと思うが、その努力をクインヴェールではなく自分の所属する学園に費やして欲しいものだ」

 

材木座の上司であるカミラ・パレートが額に青筋を浮かばせながら仁王立ちしていた。その隣にはリムシィがいてゴミを見るような視線で材木座を見ていた。

 

「あ、いや、カミラ殿……アレは八幡からの要請だし、一応アルルカントにも協力したのだが……」

 

材木座はしどろもどろになりながらも言い訳をする。実際材木座の功績は大きい。今シーズンの星武祭でアルルカントは鳳凰星武祭で7ペア、獅鷲星武祭では4チーム本戦に出場したが、内3ペアと2チームは材木座の作り上げた煌式武装を使用している。

 

しかし……

 

「そうだな。だがだからと言ってクインヴェールに協力する理由にはならないな。そんな余裕があるならリムシィの新作煌式武装の実験台になって貰おうか」

 

つい先程まで材木座に頼まれて小説を読んで疲れていたカミラは慈悲を材木座に与えるつもりはない。

 

「え?いやカミラ殿?流石にそれは「リムシィ、第二実験室の予約をしておいたから材木座を的にして試射してきれ」カミラ殿?!」

 

「了解しました。さあ行きますよ材木座義輝。時間は限られているので急ぎましょう」

 

リムシィはそう言って材木座の首根っこを掴み移動を始める。

 

「えっ?!ちょっとマジで止めて!」

 

材木座は思わず素の口調になるもリムシィは特に気にせず材木座をラボから引き摺りだす。カミラはそれを気にする素振りを見せずに空間ウィンドウを開き第二実験室の様子を映す。

 

材木座は過去何度もカミラを怒らせて、リムシィの新作煌式武装の実験台になっている。アルディも当初は材木座を助けようとしたがリムシィが……

 

「では貴方が代わりに的になりますか木偶の坊?私としては貴方をスクラップにする事に賛成ですので」

 

と言ったのでマッハで材木座を見捨てた。そんな訳で材木座は『獅子派』の副会長でありながら基本的に扱いが悪い。

 

空間ウィンドウにてリムシィが材木座を第二実験室に放り込んだ所でカミラは先程材木座が開いた空間ウィンドウに気付き覗いてみる。

 

「これは……相変わらずとんでもない煌式武装を考えるな。何故こいつはエルネスタに匹敵する才能を持っているのに小説家を目指すのだ?」

 

既に何百回も思っている事を呟きながら第二実験室の様子を見ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『模擬戦開始!』

 

『ルインシャレフ、モード『フェンリル』、発動』

 

『ちょっと待つのである!それはマジで……がはあっ!』

 

開始早々リムシィの新作煌式武装による一撃が材木座を吹き飛ばした。カミラはいつもの事なので気にせずに空間ウィンドウを見ながらデータの収集を始めた。

 

それから5分後、第二実験室には屍と化した材木座がいた。

 

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