学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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そういえばUAが100万を突破しました。読者の皆様には感謝の極みです。

今後ともよろしくお願いします


入院しても比企谷八幡は忙しい

「はい。私が八幡君と付き合っている事も、八幡君がオーフェリアと付き合っている事も紛れもない事実です。そしては私はオーフェリアとも、オーフェリアは私とも付き合っています。私達は3人揃ってカップルであり、これについては何があっても変わることはないです」

 

シルヴィアの言葉によって記者の間に騒めきが生じる。当然の事だ。まさかシルヴィア本人が交際している事を認め、その上3人揃ってカップルという爆弾を投下したのだから。

 

「えっ……ええと3人でカップルなんですか?」

 

先程シルヴィアに指名された記者は一度しか質問を許可されてないにもかかわらず、つい2度目の質問をしてしまった。

 

シルヴィアは答えるべきが悩んだが、答える事にした。ハッキリと知らせた方が良いと判断したので。

 

「はい。世間では八幡君が私とオーフェリアを相手に二股をかけていると言われてますがそれは事実です。でもそれは私とオーフェリアも同じであって、私は八幡君とオーフェリアを相手に、オーフェリアは私八幡君を相手に二股をかけています……ではそろそろ時間ですので失礼します」

 

シルヴィアはそう言うと一礼してステージに向けて歩き出すが、記者達は呆然としていた。記者の大半は比企谷八幡が二股をかけているとは思っていたが、3人の関係はそれ以上のものだと理解して思考を停止してしまったのだ。

 

結果一部の記者は表彰式が始まるまで思考を停止していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後……

 

「やっぱりマディアス・メサは出てきてないか」

 

「当然でしょうね」

 

病室にて、俺はオーフェリアと一緒に表彰式と閉会式を見ているが、チーム・エンフィールドにトロフィーを渡しているのはマディアス・メサではなかった。おそらくマディアス・メサの補佐だと思うが顔に曇りが生じていた。

 

しかも表彰台には俺の予想通り、天霧とエンフィールドと沙々宮とフェアクロフ先輩の4人しか居らず、その事もあって表彰式はいつもより盛り上がりに欠けている。

 

勿論この表彰式も充分に盛り上がっているが、今まで何度も表彰式を見た俺からすれば盛り上がりが足りない。

 

「まあ仕方ないか……とりあえず奴が出てこないなら俺達の平穏も大丈夫だな」

 

もしも奴とヴァルダが出てきたら俺達の平穏は再度崩れる可能性が高い。可能なら一生牢屋から出てくるな。

 

「そうね……あ、そういえば」

 

するとオーフェリアはいきなりポケットから端末を取り出して空間ウィンドウを開いて操作を行う。

 

「どうしたんだ?」

 

「……レヴォルフの理事会にメールを送ったのよ。序列1位としてディルク・エーベルヴァインをクビにして八幡を新しい生徒会長にするようにしろって」

 

あー、そういやディルクから力を奪うために、オーフェリアにディルクをクビにしろと頼んだら俺をディルクの後任にするとか言っていたな。予想はしていたが、俺が生徒会長か……

 

「……憂鬱だな」

 

ディルクから力を奪うのは賛成だが、俺が生徒会長の仕事をやるのは正直怠いのが本心だ。

 

「……だから私が副会長として八幡を支えるわ。八幡の補佐でも、雑務でも、お茶汲みでも、エッチな事でも何でもやるわ」

 

「おい待て。最後にとんでもない事を言わなかったか?」

 

気の所為かエッチな事って聞こえたような気がする。

 

「気の所為よ」

 

「は?いや多分ちが「気の所為よ」そ、そうか……」

 

オーフェリアが重ねてそう言ってくるので思わず何も言えなくなってしまった。しかし生徒会室でエッチな事って、何処のエロゲだよ?

 

 

「……とりあえず八幡。理事会には申請しといたから退院した後、会見前に引き継ぎをしましょう。その時は私も護衛で行くから」

 

オーフェリアが本題に戻す。これ以上さっきの言葉について問うのは無理みたいだな。なら俺も諦めよう。

 

「はいはい……って、そろそろ終わるな」

 

見ればいつのまにか締めの挨拶となっていた。まあフェアクロフ先輩が準優勝のトロフィーを受け取った時点で興味を無くしたからどうでも良い。基本的に中継だと生徒会長も映らないし。

 

そんな事を考えながら第二十四回獅鷲星武祭は幕を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後……

 

「それにしても……シルヴィアがあそこまで発言するとは思わなかったわ」

 

「あはは……まあどの道会見で言ってたし遅かれ早かれだよ」

 

「だな。んで会見の時は俺とオーフェリアも肯定すれば良し、だな」

 

「というかそんな事があったのですね……」

 

治療院の廊下にて、俺とオーフェリアはシルヴィとフェアクロフ先輩とら合流して若宮達の見舞いに来ている。俺は既に麻酔を打っているし、左腕が無い以外は健康だから自由に行動して良いと言われている。

 

そんな訳で俺達は表彰式前にあったやり取りを話しているが……

 

 

ーーー私が八幡君と付き合っている事も、八幡君がオーフェリアと付き合っている事も紛れもない事実です。そしては私はオーフェリアとも、オーフェリアは私とも付き合っています。私達は3人揃ってカップルであり、これについては何があっても変わることはないですーーー

 

ーーー世間では八幡君が私とオーフェリアを相手に二股をかけていると言われてますがそれは事実です。でもそれは私とオーフェリアも同じであって、私は八幡君とオーフェリアを相手に、オーフェリアは私八幡君を相手に二股をかけています……ではそろそろ時間ですので失礼しますーーー

 

あの時にシルヴィが言った事は鮮明に覚えている。チラッとネットを見たら『まさかの同意の上』『シルヴィアちゃんはレズビアン?!』などと、予想外であったと告げているのだ。まあオーフェリア限定でレズだろうな。

 

「そんな訳で10日後の会見は面倒なことになりそうですね。ちなみにフェアクロフ先輩、若宮達の容態ってどんな状態なんですか?」

 

「閉会式前に院長から聞いた所、美奈兎さんとニーナさんは治癒能力を受けて今日中に帰れますわ。ですが柚陽さんは3日、クロエさんは1週間の入院ですわ」

 

まあ大体予想通りだ。若宮とアッヘンヴァルはフロックハートの能力を使った事による疲弊だけだが、蓮城寺はそれに加えて沙々宮の高威力の煌式武装を食らったし、フロックハートは両腕を刺されたり両足の腱が切れたらしいし妥当なところだろう。

 

(しかしチームで1番クールなフロックハートがあそこまで熱くなるとはな……)

 

アレが決勝の試合の中で1番驚いたからな。あそこまで執念を感じた試合は初めてだ。余程勝ちたかったのだろうな。

 

チラッとフェアクロフ先輩を見る。目には泣き腫らした跡が付いている。気持ちは良くわかるが、他の面々にも付いていそうだ。泣いている女子の対処法なんて知らないぞ俺?

 

そんな事を考えている間にも若宮達が使う病室の前に到着したので中に入る。

 

「あ、ソフィア先輩!シルヴィアさん達も!」

 

「表彰式、お疲れ様……」

 

「わざわざ来ていただきありがとうございます」

 

病室に入ると既に治癒能力を受けたと思われる若宮とアッヘンヴァルが椅子に座っている。蓮城寺とフロックハートはベッドにいるが、フロックハートは相当のダメージだった故に眠っていた。

 

見れば若宮とアッヘンヴァルの目元にはフェアクロフ先輩同様に泣き腫らした跡が付いていた。跡がクッキリ残っているから相当泣いたと推測出来るが、今は落ち着いているようだ。

 

「よう。その様子じゃ日常生活に支障はなさそうだな」

 

「うん。まあ柚陽ちゃんとクロエは入院するけど……それよりも、ゴメン」

 

「あん?何がだよ?」

 

「せっかく一年近く訓練に付き合って貰ったのに……優勝出来なくて」

 

若宮はそう言って謝ってくるが、別に俺としては謝られても困るのが本音だ。俺は一年近くチーム・赫夜の訓練に付き合ったが、それ自体比較的楽しいものだった。決勝では惜しくも敗れたが、あの試合を見て俺は震えたしケチをつけるつもりもない。

 

そう口に出したいが悩んでしまう。『そんな事ない』だの『お前らはよくやった』なんて慰めの言葉を言うのは簡単だが、敗者に不用意な慰めは却って追い込んでしまう可能性もあるからだ。

 

「俺は別に気にしていないが、これからどうすんだ?夢は諦めるのか?」

 

「まさか!」

 

「ならウジウジすんな。そんな暇があるならさっさと完治させて次にどの星武祭に出るか決めるんだな」

 

もちろん悔しがることも大切だが、若宮達の顔には泣き腫らした跡があるので既に悔しがっただろう。ならば直ぐに夢を叶える為に次はどうすれば良いかを考えるべきだ。

 

「……っ!うん、私絶対に諦めない!」

 

若宮は両頬をパチンと叩いてガッツポーズを取る。流石昔49連敗して折れなかっただけあって、立ち直るのは早いな。まあそれが若宮の長所だけど。

 

「私は既に星武祭の参加資格はないですが、諦めません。星武祭以外の方法でフェアクロフ家の跡継ぎになってみせますわ!」

 

「私は修行の為に星武祭に参加しましたが……もしも出来る事があればお手伝いします」

 

「わ、私も、協力する……!」

 

若宮に続いてフェアクロフ先輩や蓮城寺、アッヘンヴァルもやる気を露わにしている。やっぱりこのチームは本当に良いチームだな。1年間一緒にいて面倒を見たのは正解だった。その経験は間違いなく俺にとっても糧になったと思える。

 

(これなら愚痴を聞く必要はなさそうだな。とりあえずフロックハートは早く目を覚ませよ)

 

そう言いながら寝ているフロックハートを見る。呼吸は落ち着いているが、他の4人に比べて明らかにボロボロだ。目覚めるのは当分先だと思うが早いところ目を覚まして欲しい。

 

フロックハートの願いは自由になる事だ。これについては将来W=Wに就職する予定の俺なら叶えられるかもしれないし、協力するつもりだ。

 

そんな事を考えながら俺はオーフェリアとシルヴィに試合の感想を話す若宮達チーム・赫夜の話に耳を傾け始めた。

 

そこには暗い空気は無く、話が盛り上がる中フロックハートの口元が一瞬だけ笑ったようにも見えた気がしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後……

 

チーム・赫夜と他愛ない雑談を済ませた俺達は俺が使っている病室に戻るべく廊下を歩いていると……

 

「よう馬鹿息子、元気そうだなー」

 

病室に着く直前に真横からそんな声が聞こえてきたので見ると、お袋とペトラさんがこちらにやって来た。

 

「まあな。てか馬鹿息子呼びは止めろって」

 

「はっ!恋人との平穏を手に入れる為とはいえ無茶やらかす奴なんざ馬鹿息子で十分だっつーの」

 

ぐっ……そこを言われたら返す言葉はない。確かにオーフェリアとシルヴィの2人と幸せを手に入れる為に色々と無茶をしたのは否定しないが……

 

「わ、悪い。お袋とペトラさんは赫夜の見舞いか?」

 

「それもありますが、貴方とオーフェリア・ランドルーフェンにW=Wとの契約について話があって来ました」

言いながらペトラさんは空間ウィンドウを2つ開いて俺とオーフェリアに渡してくる。

 

俺達3人の交際を認める条件はチーム・赫夜が準優勝以上の結果を出す事。そして準優勝だった場合は俺とオーフェリアがアスタリスク卒業後にW=Wに就職する事だ。

 

チーム・赫夜が準優勝だったので、俺達3人の交際を認められるにはW=Wと契約を交わすしかない。契約書には要約すると『比企谷八幡とオーフェリア・ランドルーフェンはシルヴィア・リューネハイムと交際する場合、レヴォルフ卒業後にW=Wに就職する』といった内容のことが書かれている。

 

それを見た俺は一度オーフェリアと顔を見合わせてから……

 

「ほらよ」

 

「………」

 

承認ボタンを押す。すると空間ウィンドウからピコンと電子音が鳴って大きく承認マークが押された。

 

「これでW=Wは俺達の関係にケチをつけないんですよね?」

 

「ええ。ですが一切も躊躇うことなく承認するとは思いませんでしたよ」

 

ペトラさんが呆れたような表情を浮かべるが……

 

「「当然です(よ)。俺(私)達3人は何があってもずっと一緒にいると決めてますから(いるから)」」

 

俺達から自由が若干奪われる程度で交際が認められるなら安い買い物だ。喜んで承認ボタンの1つや2つ押してやるよ。

 

「はっはっはっ!それでこその3人だな。んじゃペトラちゃん、約束通り後で上の連中に報告しとけよー?」

 

「わかってます。それともう1つ。10日後に会見がありますが、前日までに軽い打ち合わせがしたいのですが宜しいですね?」

 

「わかりました。では会見2日前でどうでしょうか?」

 

「大丈夫ですよ。では上には2日前に申請しておきますので」

 

そう言いながらペトラさんは赫夜の病室がある方向に向けて歩き出す。するとお袋もその後を追うが途中で足を止めて振り向いてくる。

 

「とりあえず正式に認められておめでとさん。会見の時は自分達の意見を思いっきり言いなよ?」

 

お袋は軽く手を挙げて助言をしてから去って行った。もちろん、嘘偽りなく俺達の気持ちを話すつもりだ。

 

そう思いながら俺達はお袋と別れ俺の病室に入ると……

 

「2人ともありがとう。私の為に契約をしてくれて」

 

シルヴィがいきなり俺とオーフェリアに抱きついて礼を言ってくる。

 

「気にすんな。俺はお前と引き裂かれないから安い買い物と思っているしな」

 

「……ええ。それにこれは私の為にやった事。私はもう八幡とシルヴィアがいない人生なんて嫌だからやった事でシルヴィアがお礼をするところじゃないわ」

 

言いながら俺達は3人で抱き合う姿勢となる。俺にとってオーフェリアとシルヴィは食事のように生きる為に必要な存在なのだ。それを放棄するのは死を意味するから契約しただけだ。

 

「八幡君、オーフェリア……」

 

するとシルヴィが艶のある表情で俺達を見てくる。これはアレだな……キスをしろって意味だよな。

 

そこまで考えると俺はオーフェリアと軽くアイコンタクトをしてから……

 

 

 

 

ちゅっ……

 

3人でそっと唇を重ねた。俺達3人の関係は不滅である事を告げるかのように。

 

するとオーフェリアもシルヴィも同じように強くキスをしてきたので負けじとキスを返す。

 

 

結局俺達はそのまま面会時間終了までの6時間、ずっとキスをしていたが、全然後悔は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふーん!やっぱりネットでは最悪の評価……良い気味ですっ」


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