獅鷲星武祭が終わってから5日後……
「んじゃ……お世話になりました。義腕、どうもありがとうございます」
治療院のロビーにて俺は治療院の院長に頭を下げて礼を言う。既に左腕には義腕が装着されていて体調も万全である。
「ふんっ……とりあえずお前さんの要望とおりマナダイトを複数加えて硬いものにしておいたわい。わかっとると思うが武器を仕込むでないぞ」
院長は鼻を鳴らしながらそう口にするが……
「大丈夫っす。知り合いには断られたんで」
これはマジだ。入院中に材木座が見舞いにやってきたので義腕が出来たら武器を仕込んでくれと頼んだら断られた。
何でもチーム・赫夜がチーム・ランスロットを倒すきっかけとなった『ダークリパルサー』を材木座が作った事を上司にバレてしばかれたらしい。そんな事があったんじゃ無理強いは出来ないと俺は諦めたのだった。
「なら良いわ……ふんっ!」
院長は鼻を鳴らしながら去って行ったので俺は一礼してから治療院を出ると……
「あっ!出てきたぞ!」
何と大量の取材陣がいた。理由は知らないが俺が入院して今日退院する情報を手に入れて張り込みをしていたのだろう。入院中に来なかったのは気難しい院長が追い払ったと推測出来る。
「例の二股に関する事ですがどう考えているのでしょうか?!」
「世間では猛反対を受けていますがどの辺りはどうするのですか?!」
「何か一言お願いします!」
取材陣がこちらに詰め寄ってくる。このまま行くと間違いなく時間を食うな……
どうしたものかと悩んでいると視界の端に変装したオーフェリアとシルヴィがいた。どうやら退院した俺を迎えにきたのだろう。
それについてはマジでありがたいので……
「それは会見で話しますので」
言いながら俺は足に星辰力を込めて、地面を強く蹴り、取材陣の波を飛び越える。そしてオーフェリアとシルヴィの前に立つと、今度は影に星辰力を込めて……
「起きろ、影翼竜」
5メートル程の黒い翼竜を生み出して、オーフェリアとシルヴィを乗せてから飛べと指示を出す。すると翼竜は一度けたたましく鳴いてから翼を広げて大空へと飛び立った。
すると2人は俺の方に近寄って……
「「退院おめでとう、八幡(君)」」
ちゅっ……
2人同時に俺の唇にキスをしてくる。2人が見舞いに来てくれた時もやっていたが、2人とするキスは本当に幸せだ。
「んっ……ありがとな2人とも、愛してる」
俺は両手で2人を強く抱きしめながらキスを返す。ここは上空500メートルで、アスタリスク上空を観光する飛行船は今の時間は飛んでいないので俺達の間に邪魔する存在は何一つ存在しない。
「うんっ……私も八幡君とオーフェリアを愛してるよ……ちゅっ……」
「……私も、3人で過ごすちゅっ……時間が1番好きよ……んんっ」
俺達は幸せを感じながら唇を重ねる。普段は基本的に室内でしかしないが、こんな風に屋外でやるのも悪くないな。
10分後……
「ったく、マスゴミ共が……どこで俺が入院した情報を手に入れたんだが……一応聞くがウチにも来てるか?」
キスを10分した俺は自宅に帰るべく家の方に飛んでいる。ともあれ馬鹿正直に帰宅したら面倒なので一度再開発エリア辺りに寄って、そこで俺も変装してから帰るつもりだ。
「ううん。家はバレてないよ。ただ学園の新聞部や仕事先で会う取材陣は面倒なんだよねー」
シルヴィはげんなりとした表情を浮かべている。予想はしていたが改めて世間に知られると面倒だと思っているのだろう。
「まあ予想の範囲内だな。オーフェリアは?」
「行き帰りは変装してるからバレてないわ。ただ学園の新聞部がしつこいわ」
オーフェリアも似たような表情を浮かべている。その様子じゃ俺も復学したら捕まりそうだな。
(まあこうなる事は分かりきってたし仕方ないか。会見が終われば多少は落ち着くだろうしそれまで辛抱しよう)
下手にキレて俺達の関係に傷が付いたら面倒だから。そんな事を考えながら空を飛んでいると
pipipi……
俺の端末が鳴り出したのでポケットから取り出すと……
「うおっ、理事会からじゃねぇか。内容は……引き継ぎ資料じゃん。随分と早いな」
レヴォルフの理事会から生徒会長としての引き継ぎ資料や生徒会長に与えられる特権内容が記されている資料が送られてきた。
俺はてっきり退院してから引き継ぎ資料を貰うかと思っていたんだが……
「それは私が原因ね。八幡とあの男を会わせたくなかったから、八幡が入院中に彼の元に行って『早く引き継ぎ作業をしなさい。でないと八幡が生徒会長になった後に猫を使って殺すわよ』っておど……お願いしたから」
「お前今脅しって言ったよな?てか猫を使って殺すって……」
確かに猫が暗殺をするのは知っているが、ハッキリと口にしたのはオーフェリアだけだろう。
「……当たり前じゃない。確かにあの男は元私の所有者よ。でも今の私は八幡とシルヴィアのもの。2人に危害を加える人間は全て敵よ」
まあ俺もあのデブを殺したいけどよ……あいつの知り合いに腕を斬られたり、平穏を崩されたりしたからな。
「そうかい……じゃあ復学したら直ぐに生徒会長だな」
まさか俺が生徒会長になるとはな……レヴォルフに転入した当初は全く考えもつかなかったぜ。
「そうだね。2週間後の六花園会議では宜しくね」
「……私は副会長として八幡を支えるわ」
2人は楽しそうに笑っているが、そんなに俺が生徒会長になるのを楽しみなのか?
まあそれは置いといて……とりあえず役員も考えないといけないな。会長が俺、副会長にオーフェリアだから会計と書記と庶務の3人か……
(とりあえず樫丸は入れてやるか)
ディルクの秘書の樫丸は間違ってレヴォルフに入った小動物的少女だ。今まではディルクの秘書って事で他のレヴォルフの生徒に狙われなかったが、ディルクがクビになった以上狙われるだろう。流石にそれは可哀想なので保護するつもりだ。
(となると後は2人。普通に考えたらウルサイス姉妹だが、オーフェリアって俺があの2人と話すと不機嫌になるからなぁ……)
しかも獅鷲星武祭が始まる前に、廊下を歩いていたら転んでプリシラの胸に顔を埋めてしまったらオーフェリア凄く怒ったし。
一瞬そんな考えが浮かんだが、とりあえず正式に会長に就任してから考える事にした。今は家に帰って2人と甘いひと時を過ごすことが最優先だから。
「ただいまー」
それから30分、真っ直ぐ帰宅せずに再開発エリアに降りた俺達はそこから影に潜って自宅に帰宅した。今度からはこうやって帰るべきだろう。家バレしたら間違いなくマスゴミが押し寄せてきそうだし。
閑話休題……
「お帰り。もう昼食は出来てて後は並ぶだけだから、座ってて」
「……退院祝いとして八幡の好きなグラタンを作ったわ」
シルヴィとオーフェリアはそう言ってキッチンに向かったので、俺はリビングの椅子に座る。治療院での飯は味気なかったから、久々にオーフェリアのグラタンを食べるのは楽しみで仕方ない。
そんな事を考えながらテレビを見るも……
『と、言うわけでシルヴィアさんが認めた以上、5日後の会見はその辺りを突くでしょうね』
そんな声が流れる。見れば番組情報を見れば『アスタリスク最大の恋愛問題の真相は如何に?!』って番組だと知った。
不愉快になった俺は適当にチャンネルを変えると……
『そうですね。男性を1人の女性を愛すべきです。ですから彼の在り方は間違っています』
街頭インタビューで葉山が真顔で俺の在り方を否定している。再度番組情報を見れば『世間の意見?!社会の変化は?!世界最大の二股事件に迫る?!』と表示されている。
(予想はしていたが……本当にこのニュースばかりだな)
新聞の番組欄を見れば、殆どが獅鷲星武祭関係の番組とマティアス・メサの逮捕関連番組、そして俺達3人の関連番組だった。
てか葉山の奴……
「あの葉虫……随分とふざけた事を言ってくれるわね」
「全くだよ。正直納得出来ない」
するとオーフェリアとシルヴィが不満タラタラな表情になりながらグラタンやサラダ、食器を持ってキッチンからやって来た。
「まあ葉山の言ってる事は間違っちゃいない。実際俺はお前ら2人の告白に対して返事に迷って重婚する道を選んだしな」
普通の人間が俺の立場なら、あの時にオーフェリアかシルヴィのどちらかを振っているだろうし。
「そうじゃなくて……八幡君のことをわざとヒキタニ呼びしている人が他人の在り方を否定する筋合いはないって思ったの」
ああ……まあ確かにその辺りはな……
「まあどの道俺は気にしてない。他人にどう言われようが俺はあの時、お前ら2人を同時に愛する道を選んだ事に後悔はないから」
これについては事実だ。俺は今2人と一緒に過ごせて本当に幸せだ。今思えばあの時にどちらかを切り捨てずに済んで心底良かったと思う。
「……そうね。私も付き合った当初はどうやってシルヴィアより愛して貰えるか考えたけど、今はこうして3人で過ごすのが1番幸せだわ」
「だよねー。いやー、あの頃は私も何としてもオーフェリアより愛して貰えるように考えたけど、途中で考えるのをやめて良かったよ」
どうやら2人も3人で過ごす道が最善だと思っているようだ。良かった……俺の独り相撲じゃなくて本当に良かった。
「俺もだよ……じゃあ久しぶりに3人で飯を食おうぜ」
やっぱり愛する恋人との食事は最高のひと時だからな。入院中は別々だったが、もう我慢出来ない。
俺がそう言うと2人は小さく頷き、俺の左右に座ってグラタンをテーブルに置いた。それを確認すると俺達は両手を合わせて……
「「「いただきます」」」
いただきますの挨拶をしてグラタンを食べ始めた。久々の3人で食べる食事はまさに最高のひと時だった。
『そうですね。男性を1人の女性を愛すべきです。ですから彼の在り方は間違っています』
「ふふーんだ!ネットだけでなくテレビでも葉山先輩に悪く言われていい気味『高等部1年一色いろは、大至急理事長室に来るように』……え?」
それから10時間後……
「じゃあ電気消すぞ」
昼食はの後、俺はオーフェリアとシルヴィの2人と一緒にキスをしたり、変装して散歩に行ったり、一緒にキスをしたり、一緒に夕食を作って食べたり、一緒にキスをしたり、一緒に風呂に入ったりして今から寝る所だ。……今更だがキスしまくりだな俺。まあ嫌じゃないけど。
そんな事を考えながらも電気を消してベッドに入ると……
「えへへー。久しぶりに八幡君と寝れるなー」
「この日をずっと待ち望んでいたわ……」
即座にオーフェリアとシルヴィが抱きついてくる。2人と一緒に寝るのも1週間ぶりだ。正直言ってずっと待ち望んでいた。
(やっぱり俺も大分シルヴィとオーフェリアに溺れちまってるな……マジで次にシルヴィが海外ライブに行く時どうしよう?)
下手したら禁断症状が起こるかもしれない。それくらい俺の中ではシルヴィとオーフェリアの存在がデカイのだ。
「そうだな……俺も待ち望んでたよ……んっ」
「んっ……はち、まん……」
「ちゅっ……んんっ」
言いながら俺は2人の唇に順にキスを落とす。対する2人は驚くも俺のキスを受け入れてくれる。
「ちゅっ……八幡君からキスをするなんて珍しいね」
「偶には良いだろ。入院中は寂しかったんだから」
「……もちろん大歓迎よ。私達は八幡になら何をされても良いから……んっ」
「っ?!」
するとオーフェリアが蠱惑的な笑みを浮かべてキスをしてくる。同時に俺の中のリミッターが解除された。普段ならこの程度では解除されないが入院の際に2人とお休みのキスをしてないからか簡単にリミッターが解除された。
俺は即座に身体を起こして2人に見下ろすような体勢になる。2人は目を見開いて驚いているが知った事ではない。
「なら……今からお前らをメチャクチャにしても良いよな?」
暫くの間2人と別々に寝ていて、挙句に何をされても良いなんて言ってきたんだ。これ以上は我慢出来ない。
「……いいよ。私は八幡君の彼女だから……好きにして」
「……八幡になら何をされても受け入れるわ」
2人は艶のある表情を浮かべながらも抵抗はしない。それを聞いた俺は2人のパジャマのボタンを外す。するとオーフェリアは青の下着を、シルヴィはピンク色の下着を纏った姿を披露してくれる。
同時に俺は2人の唇にキスをしてから、2人の頬や耳、おでこや首筋にキスを落とす。
「八幡君……キス、上手すぎ、だよ……」
「んっ……くすぐったいわ」
2人は顔を赤くしながら身を捩るが、それがまた俺の理性を刺激する。こいつらはどんだけ誘惑が上手いんだよ?
そう思いながらも俺は先ずオーフェリアの、その次にシルヴィのブラジャーとショーツを脱がして、生まれた時の姿にする。
「じゃあ……久しぶりに」
俺が最後の確認をすると2人は笑顔で頷き……
「「ええ(うん)、来て八幡(君)」」
その言葉に俺は2人に覆い被さった。久しぶりの夜の営みは俺達の絆を更に強化する儀式のようでありながら、最高に気持ちが良かったのは言うまでもないだろう。
会見まで後4日……