学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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今回で200話に届きました。読者の皆様、ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします


比企谷八幡は会見に備えて動く

「それじゃあ八幡君とオーフェリアは、今日の夜8時にウチの学園に来て貰うから」

 

俺が退院してから3日、朝食を食べ終えて学園に登校しようとするシルヴィが俺とオーフェリアにそう言ってくる。

 

獅鷲星武祭が終わったのに何故クインヴェールに行くのかと言うと、明後日に行われる俺とオーフェリアとシルヴィの関係についての会見対策をする為だ。

 

「了解した。じゃあまた放課後に」

 

「……気をつけて」

 

「うん。じゃあお先に行ってきまーす」

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

言うなりシルヴィは髪の色を変えてから俺とオーフェリアにキスをして家から出て行った。それを見送った俺はテーブルの上にある紅茶を一気飲みしてから、髪の色を変えるように見せるヘッドフォンを装着する。同時にオーフェリアも同じようにヘッドフォンを装着して髪の色を栗色に見せる。

 

「さて……俺達も行くぞオーフェリア」

 

「……ええ。行きましょう」

 

オーフェリアが手を握ってそう言ってくるので俺もオーフェリアの手を握り返して家を出た。

 

 

 

 

 

 

オーフェリアと一緒に登校した俺は20分くらい歩き、レヴォルフに到着するが……

 

「相変わらずマスゴミが多いな……」

 

「本当ね……マスコミって暇人なのかしら?」

 

校門の前には大量のマスゴミがいる。全員俺とオーフェリアを待っているのだろう。

 

内心バレるな、と強く願いながら校門をくぐると……

 

(セーフ……なんとかバレなかったし、これなら放課後まで大丈夫だ)

 

基本的に外部の報道機関の人間は学園の敷地内に入ってはいけないルールなのだから。これで後は学園の新聞部と盲信的なシルヴィのファンに注意すれば問題ない。前者は影を使って逃げればいいし、後者は適当に目立つ場所に磔にすれば問題ないだろう。まぁ、暴れ過ぎると会見の時に心象が悪くなるから自重するけど。

 

え?二股かけてる時点で既に心象が悪いって?そこは気にすんな。今更どうしようもない事なんだから。

 

 

「じゃあオーフェリア、またな」

 

人目のつかない場所に着いた俺は変装を解きながらオーフェリアに向けて話しかけるとオーフェリアは小さく頷く。変装を教室なんかで解いたら変装している俺がどんな姿が1発でバレてしまうからだ。

 

「……ええ。じゃあまた後で」

 

そう言ってオーフェリアは俺と同じように変装を解いて自分の教室に向かったので、俺も自分の教室がある反対方向に向けて歩き出すが……

 

(この殺気……俺が序列入りした頃みたいだな)

 

転入初日に喧嘩を売ってきた序列入りをぶちのめした時にも辺りから殺気を向けられたが、あの時と似た空気だ。あの時は序列二位になるまで殺気を向けられていたが、今回はいつまで殺気を向けられるのやら……

 

俺はそんな事を考えながら……

 

 

 

「不意打ちするなら殺気を隠せ馬鹿」

 

「がはぁっ!」

 

背後から殺気丸出しでナイフ型煌式武装を振るってきたリーゼント野郎の腕を掴んでから、カウンターとして鳩尾に蹴りを叩き込む。

 

やれやれ……この調子だと後何回狙われるんだか……

 

内心ため息を吐きながら俺はリーゼント野郎をそのまま壁に叩きつけて再度自分の教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って訳で教室でも襲われたから疲れた」

 

「……そう。お疲れ様」

 

放課後、俺はレヴォルフの図書館の個人ブースにてオーフェリアに膝枕をされている。オーフェリアの白魚のように綺麗な手が俺の頭に添えられて幸せな気分になる。

 

夜8時にクインヴェールに集合だが、今は四時と早過ぎるので人目のつかない場所でオーフェリアに甘えている。

 

本来なら生徒会室で甘えようと思ったが、まだ生徒会が発足してないので使えない。何でもディルクが生徒会長だった時はソルネージュの人間を役員にしていたらしく、それ関係が理由らしい。

 

生徒会が正式に発足されるのは会見以降故、今の俺はまだ生徒会室を使う権利はないと判断して図書館の個人ブースでオーフェリアに甘えている。

 

「あ〜、やっぱりオーフェリアの膝枕は最高だな」

 

マジで幸せだ。このまま24時間味わっても飽きることはないだろう。それほどまでにオーフェリアのムチっとした太腿は最高である。

 

「なら良かったわ……ところで八幡」

 

「何だよ?」

 

「生徒会の役員はどうするの?」

 

オーフェリアがそんな事を言ってくるが、生徒会の役員についてはある程度決めてある。

 

「会長に俺、お前が副会長で、イレーネを会計、プリシラを書記、樫丸を庶務に「……全員女じゃない。八幡のバカ……」痛ぇっ!」

 

オーフェリアが膨れっ面になりながら俺の耳を引っ張ってくる。可愛い、嫉妬するオーフェリアマジで可愛い。が、痛いから離してくれ

 

「ったく……俺がお前とシルヴィ以外の女を愛することはないからな?」

 

「……でも八幡、ラッキースケベはよくやるし」

 

ぐっ……確かに、そこを言われたら返す言葉はない。オーフェリアからしたらそれは間違いなく愉快な事ではないだろう。

 

しかし俺、レヴォルフに殆ど知り合いが居ないからなぁ……他に役員候補がいないのも事実。さて、どうしたものか?

 

返答に悩んでいるとオーフェリアがため息を吐く。

 

「……まあ良いわ。八幡って友達が少ないし仕方ないわ」

 

「さり気なくdisらないでくれない?」

 

「事実でしょ?八幡は友達が少ないし文句は言わないわ。ただもしもラッキースケベをしたら……」

 

「したら?」

 

俺がオーフェリアに尋ねると、オーフェリアは珍しく満面の笑みを浮かべ……

 

 

 

 

 

 

 

「一回ラッキースケベをする毎に、八幡のアドレス帳に載っている人1人に、八幡の趣味にプリキュアがある事をバラすわ」

 

とんでもない提案をしてきた。

 

「何だと?!」

 

思わず叫んでしまうが仕方ないだろう。こいつよりによって何て恐ろしい事を提案してくるんだ?!つまり俺が3回ラッキースケベをしたら3人に俺の趣味がプリキュアだという事をバラされるという事だ。

 

「わ、わかった。今後はマジで気をつける」

 

んなもんバレたら一生の恥だ。しかもその流れで2週間に一度は必ずオーフェリアとシルヴィにプリキュアのコスプレをさせて抱いているのもバレたら恥か死んでしまうし。

 

「……約束よ」

 

オーフェリアはそれはもう良い笑顔で俺の耳を引っ張るのをやめて頭を撫で撫でしてくる。ちくしょう、可愛過ぎて怒れねぇ……

 

結局俺はオーフェリアに逆らう事なく頭を撫で撫でされ続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後……

 

「失礼しまーす」

 

「……お邪魔するわ」

 

「あ、来た来た。じゃあペトラさん。打ち合わせをしよっか」

 

「そうですね。ではそちらに座ってください」

 

クインヴェールの理事長室にて俺とオーフェリアはペトラさんとシルヴィと向かい合って座る。理由は明後日の会見に対する最後の打ち合わせだ。会見なんて面倒だが、仕方ない。

 

「んじゃ何から話すんですか?」

 

「そうですね、向こう側が絶対にしてくる基本的な質問に対する返答を考えるつもりです。……まあ二股をかけてる時点でどんな返答をしてもある程度は叩かれますけど」

 

ペトラさんは剣呑なオーラを出すが、それについては否定出来ん。二股をかけてる時点で問題行為なのだから。

 

「ですがその前に……オーフェリア・ランドルーフェン」

 

ペトラさんの視線が俺からオーフェリアに移る。対するオーフェリアはキョトンとした表情を浮かべている。

 

「……何かしら?」

 

「おそらく……というかほぼ確実に比企谷八幡の事をあからさまに悪く言う記者がいると思うけど、彼が侮辱されたからって星辰力を噴き出さないようにお願いします」

 

「あー、確かに八幡君の事を悪く言う人は出るだろうね」

 

2人の言う通り、間違いなく俺を悪く言う記者はいるだろう。そしてそれを聞いたオーフェリアは高い確率でキレるだろう。何せ俺がヒキタニ呼びされただけでブチ切れたし。俺に代わって怒ってくれる気持ちは嬉しいが……

 

「だよな。悪いがオーフェリア、今回は我慢してくれ」

 

流石に会見でブチ切れたりしたら心象に悪いし、オーフェリアには我慢をしてもらいたい。

 

対するオーフェリアは明らかに不満がありますといった表情を浮かべるも……

 

「……わかったわ」

 

事情を理解している為頷く。それを見たペトラさんも同じように頷く。

 

「結構。それと貴女が暴れなくても、明らかに悪意を剥き出しにした質問をする記者が居たらこちらで対処しますので」

 

「任せるわ。そんな屑が居たら社会的に殺して」

 

物騒な会話だが、もしも悪意ある質問をしてくる記者が居たら、その記者が所属しているテレビ局や出版社に抗議をしたり圧力をかけたりするのだろう。

 

統合企業財体の幹部のペトラさんがそう言うなら、どう加減してもその記者の人生は詰むだろう。オーフェリアもそれを理解しているからか不満タラタラの表情を消して頷いている。

 

「とりあえず1番重要な話はそれみたいですし、質問に対する返答を決めましょうか」

 

「ええ。先ず始めに向こうは貴方とオーフェリアに改めて関係を問うてくるでしょう。そこは普通に肯定するだけで良いですが問題なのは……」

 

「どうして2人と付き合うことになったのか、ですよね?」

 

「ええ。そこが会見の中で最も重要であり最も危険な質問です」

 

だろうな。俺個人に真っ先にしてくる質問は間違いなくその質問だろう。

 

しかしここで馬鹿正直に『重婚出来ないかとボヤいたら、2人がそれを聞いて重婚していいと言ってきて、2人と付き合った』なんて言ったら間違いなく叩かれるだろう。

 

(まあ何て答えても二股をかけてる時点で叩かれるけど、そこは気にしないでおこう)

 

そんな事を考えていると、シルヴィか口を開ける。

 

「じゃあさーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後……

 

「……で、私の引退に関する質問に対する答えも決まったし……大体この辺りで良いよね」

 

記者がしてくる可能性の高い質問に対する回答を大方決まるとシルヴィがそう言ってくる。

 

「そうですね。大体この辺りで良いでしょう。当日に今回出なかった質問をされた場合は、焦らずに落ち着いて答えるように」

 

ペトラさんは俺とオーフェリアを見ながらそう言ってくるので俺とオーフェリアは頷く。まあ俺とオーフェリアは取材慣れしてないからな。しかしオーフェリアが焦る所は全然想像が出来ないな。

 

「じゃあ帰ろっか。八幡君、オーフェリア」

 

「……そうね」

 

言いながらシルヴィは俺の右腕に、オーフェリアは左腕に抱きついてくる。やれやれ、この甘えん坊め。

 

そう思いながらも俺は幸せな気持ちになりながら影に星辰力を込めて、2人と一緒に影に潜りそのまま理事長室を後にして自宅に向けて動き出した。

 

 

 

クインヴェールを出る頃になるとシルヴィが話しかけてくる。

 

「八幡君、いよいよ明後日だけど頑張ろうね」

 

「当たり前だ。仮に会見でどんな結果になろうと俺はお前ら2人と別れるつもりはない」

 

何で世論に影響されて別れなきゃいけないんだって話だ。俺が2人と別れるとすれば、2人から別れを切り出された時だけだ。

 

まあ……

 

「うん。私も何があっても2人と別れるつもりはないよ」

 

「……私もよ。私にとって2人は命より大切な存在なのだから」

 

2人が別れを切り出す事はないだろう。事前実家に帰った際に2人と繋がったあの夜以降、俺達は一心同体となったのだ。だから俺は別れを切り出すつもりはないし、オーフェリアもシルヴィも同じだろう。

 

「だよな……ところでさ……」

 

「ん?どうしたの?」

 

「その、アレだ……会見が終わったら一息つくしよ……デートしないか?」

 

星武祭や入院、会見とかあってぶっちゃけ精神的に疲れたし、久しぶりにデートしたい気持ちがある。最近デートしてないし。

 

若干恥ずかしく思いながらも2人を誘ってみると……

 

「もちろん大歓迎だよ」

 

「……何処に行くの?ショッピング?水族館?」

 

2人は笑顔で俺のデートの誘いを了承してくれる。良かった、2人に断られていたら自殺していたぞ俺。

 

「そうだな……何でも良いからブラブラしようぜ」

 

ショッピングだの水族館だのプールなども嫌いじゃないが、偶には金のかからないデートでも良いだろう。

 

「わかった。じゃあブラブラしよっか」

 

「なら自然公園やアスタリスクの湖岸にピクニックでも行きましょう」

 

「良いなそれ。それを最高なデートにする為にも明後日の会見を無事に終えよう」

 

俺達の会見が終わっても反対派は沢山いるだろう。しかし明後日の会見が終われば久しぶりにひと段落出来るんだ。そう考えると嫌でもやる気が出てくるものだ。

 

俺がそう口にすると2人は笑顔で頷き……

 

「「ええ(うん)」」

 

 

ちゅっ……

 

同時に俺の唇にキスをしてくる。それによって俺は幸せな気分になりながらテンションを大きく上げる。マジで今の俺なら何でも……それこそ星露相手に勝ち星を挙げれるかもしれん。

 

「んっ……ありがとな。愛してる」

 

言いながら俺も2人にキスを返す。やはりあの時ーーー鳳凰星武祭決勝にて2人に重婚しろと言われた時、2人の告白を受け入れた俺の選択は間違ってないと断言出来る。

 

そう思いながらも俺達はお互いに愛を伝えるキスを気が済むまで続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

そして2日後……

 

いよいよ会見の日を迎えた。


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