学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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こうして会見が始まる

「ではこれより、比企谷八幡さんとシルヴィア・リューネハイムさん、オーフェリア・ランドルーフェンさんの3人の交際についての会見を執り行います」

 

司会の男性がそう告げて会見が始まり、再度無数のフラッシュが生まれる。失明する事はないだろうが眩しいな……

 

そんな事を考えていると1番近くにいる男性記者が手を挙げるので、司会者が先を促す。

 

「では最初に比企谷さんとランドルーフェンさんに質問というより確認ですが、貴方達とシルヴィアさんの3人は付き合っている……これについては事実ですか?」

 

まあ以前にシルヴィが認めたとはいえ、最初に事実かどうかの確認をするのは定石だよな。この辺りは予想通りだ。

 

対する俺達の返事は決まっている。

 

「「はい(ええ)、事実です(よ)」」

 

俺とオーフェリアは躊躇いなく肯定する。同時にフラッシュが焚かれる。

 

まあ当然だろう。俺とオーフェリアは今、シルヴィは獅鷲星武祭最終日に肯定したのだ。これによって『俺とオーフェリアとシルヴィの3人は付き合っている』事が紛れも無い事実として世間に広がったのだし。

 

「で、ではどういった経緯でそのような関係になったのでしょうか?」

 

今度は違う女記者が1番あり得る、それでありながら1番面倒な質問をしてくる。この質問が終われば大分楽になるだろう。

 

そこまで考えていると今度はシルヴィが口を開ける。

 

「はい。理由としては私とオーフェリアがそうしてくれと八幡君に強くお願いして、八幡君が了承したことによって今の関係となりました」

 

その言葉に記者達の間に騒めきが生じる。今の言い方だとオーフェリアとシルヴィが二股を望んだみたいな言い方だ。

 

記者達が騒めく中、オーフェリアがマイクを持つ。すると記者は驚愕の雰囲気を残しながらも騒めきを消してオーフェリアに視線を向ける

 

「……私とシルヴィアは鳳凰星武祭の期間中ーーー殆ど同時期に八幡に告白して、これでもかと八幡に自身をアピールした」

 

「でもちょっと攻め過ぎて八幡君に負担をかけてしまって……」

 

オーフェリアとシルヴィの言葉に嘘はない。何せ2人は抱きついたり、一緒に風呂に入ったり、唇や頬にちゅっちゅっしてくたし、負担がかかったまでとは言わないが、気圧されていたのは間違いない。

 

それで……

 

「それで俺が選べずにいたら、2人が『どちらか選べないならどっちも選べ』と言ってきて、2人の意見に従って2人を選びました」

 

俺の言葉に更に騒めきが生じるが気にしない。気にしたら負けだからな。

 

まあ俺が重婚出来ないのかと思わず口にしたら、2人がどっちも選べと言ってきたが正確だが。

 

「……つまり比企谷さんが最初にどちらかと付き合って、その後にもう1人を彼女にしたのではないと?」

 

うん、普通そう思うよな。まさかオーフェリアとシルヴィの方から両方選べなんて、側から見たら変だろう。

 

そんな女記者の質問に対して、オーフェリアとシルヴィは……

 

「「はい(ええ)。私とオーフェリア(私とシルヴィア)から両方選べと言いました(言ったわ)」」

 

一切口調を変えることなくそう答えた。

 

「そ、そうですか……ありがとうございます」

 

質問をした女記者は引き攣った笑みを浮かべながら礼を言ってくる。まさかここまで馬鹿正直にズケズケ言うとは思っていなかったのだろう。

 

女記者が黙ると第三者の記者が手を挙げる。司会者が先を促すようにジェスチャーを見せると男性記者が口を開ける。

 

「では3人に質問します。世間では二股をかけていて許されない事だと言われていますが、3人の考えを聞かせてください」

 

絶対来ると思った。世論はこう言っているがお前らの意見を聞かせろって質問。世間が悪く言ってるんだからお前らは悪だって空気を流すから嫌いなんだよなぁ……

 

まあだからどうしたって話だ。

 

そんな事を考えていると先ずはシルヴィから口を開ける。

 

「まあ世間から見たら私達の関係は歪だと思います。それについては紛れもない事実だからどうこう言いません……ですが、私にとってこの歪な関係は何物にも変えられない大切な関係なので崩すつもりはありません」

 

ハッキリとした口調でそう喋る。わかっていた事だが、ハッキリとそう言われると嬉しいな。

 

なら俺も恥を捨てて自分の本心を口に出すか。こっちがどれだけ本気なのか、俺達が別れる気がない事を世間に教えてやる。

 

「俺も同じ意見ですね。世間がなんて言おうと俺達3人は絶対に別れるつもりはないです。一生かけてオーフェリアとシルヴィを愛し続けます」

 

「……私も同じ意見よ。それ以前の話として……私達は倫理的には問題な行為をしているのは否定しないけど、法律的には何も悪い事をしていないから第三者が私達の関係に干渉する権利はないはずよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『まあ世間から見たら私達の関係は歪だと思います。それについては紛れもない事実だからどうこう言いません……ですが、私にとってこの歪な関係は何物にも変えられない大切な関係なので崩すつもりはありません』

 

 

『俺も同じ意見ですね。世間がなんて言おうと俺達3人は絶対に別れるつもりはないです。一生かけてオーフェリアとシルヴィを愛し続けます』

 

『……私も同じ意見よ。それ以前の話として……私達は倫理的には問題な行為をしているのは否定しないけど、法律的には何も悪い事をしていないから第三者が私達の関係に干渉する権利はないはずよ』

 

 

3人の放った言葉は世界中に発信された。当然彼らのいるアスタリスクにも……

 

 

 

 

 

 

 

「ふぉぉぉぉっ!!お兄ちゃんいつのまにあんな大胆な事を?!小町ポイントカンスト来たぁぁぁぁぁぁっ!ひゃっはぁぁぁぁっ!」

 

「待て小町!お前はどうしたんだ?!」

 

「……明らかに狂い出した」

 

「あ、あはははは……」

 

「ですが、3人は強い意志を持って発言しましたね。綾斗もあんな風に私に……」

 

「く、クローディア!くすぐったいよ!」

 

「そんなに恥ずかしがらなくても良い「お前はお前で何をやっているんだ?!」あらあら……」

 

 

星導館の生徒会室では小町が狂喜乱舞して……

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっはっー!遂に言いやがったよ!」

 

「比企谷先生は本当に楽しそうですね……」

 

「当たり前だろ?楽しいんだから」

 

「相変わらずですねー、それにしても本当にバカップルだなー」

 

「全くだぜ。砂糖を吐きそうだ」

 

「世間にバレた以上これからはガンガンイチャイチャしそうねー!」

 

「……ブラックコーヒーの売り上げが伸びそうね」

 

クインヴェールの女子寮では涼子が息子の将来に安心しながら高笑いして……

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっわ、凄えバカップル……なあ、プリシラ」

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

 

「アタシ達八幡に新しく生徒会役員にスカウトされたけどよぉ……つまり八幡と『孤毒の魔女』のイチャイチャを毎日見るって事じゃね?」

 

「あー、あはは……」

 

「あのデブの借金を立て替えてくれたのは感謝してるが、今からでもスカウトって蹴れねぇかな?」

 

レヴォルフ近くにあるマンションではウルサイス姉妹が未来の生徒会活動に不安を抱き……

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁちぃぃぃぃまぁぁぁぁんっっっ!貴様、相棒の我を置いて彼女を2人持つとは……王竜星武祭で見ておれ!我の全てを賭けて作り上げた純星煌式武装を超えた煌式武装の錆にしてくれるわぁぁぁぁぁっ!そして我も声優の彼女が欲しいわぁぁぁぁぁっ!」

 

「はははははっ!その意気であるぞ将軍!我輩も今から血が滾るである!」

 

「カミラ様、材木座義輝とアルディが混ざるとウザくて敵いません。そして何故材木座義輝は非凡なる才を持ちながらあそこまで残念な人格なのでしょう?」

 

「……私に聞くな。やはり私の後継者は奴から変えるべきか……?」

 

アルルカントのラボでは材木座義輝が来年の王竜星武祭に備えて一層気合を入れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何ですかそれー?!私はこんなに酷い目に遭ってるのに……しかもシルヴィアさんも何であんな屑に……!」

 

ガラードワースの女子寮では一色いろはが性懲りもなく逆恨みをして……

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷……!そうやって歪な関係を肯定するなんてどこまで歪んでいるんだ!やっぱり王竜星武祭ではお前を倒して矯正してやる……!!」

 

「そうだ!葉山くんならあんな卑怯者余裕だよ!」

 

「葉山君なら勝てるって!王竜星武祭で頑張って!」

 

『HA・YA・TO!フゥ!HA・YA・TO!フゥ!』

 

「ありがとう皆、必ず勝つよ」

 

ガラードワースの中庭では葉山隼人が八幡を倒すと宣言して、取り巻きから賞賛を浴び……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あは、あはあはあは×♫℃↓◇!」

 

「虎峰?おーい虎峰?ダメだこりゃ?こりゃ暫く木派の方もアタシが面倒見ないといくないかもね」

 

界龍の食堂にて趙虎峰は完全に壊れ、セシリー・ウォンは彼を背負って医務室に運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達3人の言葉に会場に唖然とした空気が流れ出す。

 

(はっ……大方世間の意見に屈すると思っていたのだろうが甘ぇよ。俺にしろオーフェリアにしろシルヴィにしろ、世間の評価に揺らぐ程度の関係じゃねぇよ)

 

そりゃ付き合った当初は世間の評価にビクビクしていたが時間が経つにつれて恐れは無くなり、実家に帰省した際に両親に交際を認められて夜に2人を抱いてからは一切恐れなくなった。

 

俺達3人の絆は何があっても綻ぶ事はないと断言出来る。俺はオーフェリアとシルヴィを、オーフェリアは俺とシルヴィを、シルヴィは俺とオーフェリアを幸せにする為に愛を捧げ、捧げられているのだ。

 

そんな俺達の関係がたかが世間からの悪評なんかで崩れる可能性は万が一にもない、完璧な0と断言出来る。

 

「で、では別れるつもりはないと?」

 

男性記者が手を挙げてそんなことを言ってくる。あたかも別れる事を望むような口振りで。テメェはさっきの話を聞いてなかったのか?そんなもん……

 

「「「ないです(ないわ)」」」

 

ある訳ねえだろうが。俺達が別れるとしたら死別以外あり得ねぇよ。

 

俺達がそう答えるとその記者は不満そうに鼻を鳴らしながら手を降ろす。大方シルヴィのファンだろう。態度には苛ついたが我慢だ。正直に言うと両手両足をへし折って磔にしてやりたいが、カメラの前でそんな事をやったら豚箱行きだし、我慢だ。

 

そんな事を考えていると違う男性記者が手を挙げる。見れば俺に対して明らかな下卑な表情を浮かべてくる。明らかに俺を怒らせるのを狙っているのだろう。見ればオーフェリアとシルヴィは不愉快そうな表情を、ペトラさんは面倒事が起こる可能性があると疲れた表情を浮かべていた。

 

 

(挑発したきゃしてみろ。俺は昔から馬鹿にされてきたからな。ちょっとやそっとの挑発に乗ることはないからな?)

 

そう思いながら記者を見れば……

 

「では比企谷さんに質問です。先程一生かけて2人を愛すると言いましたが、その言い方ですと2人を平等に心から愛しているのですか?」

 

「ええ。どちらか1人を優先した事はないですし、2人の事は本当に愛しています」

 

まあシルヴィの場合仕事の都合上離れ離れになるから、オーフェリアに比べて一緒にいる時間は少ない。しかしだからと言って2人と一緒にいる時はあからさまに優先順位をつけた事は一度もない。

 

俺がそう答えると記者は嫌らしい笑みを深めてくる。

 

「それは本当ですか?嘘を吐いてないですか?」

 

「吐いてないですね。何故そんな事を?」

 

「いえいえ。ネットの評価や私の考えではそうは思えないので」

 

「生憎ネットはあまり見ないので」

 

最近のネットが正確だがな。大半が俺の悪口見ていて不愉快になるのは容易に想像出来る。しかしそれだけで俺が嘘を吐いていると疑うとは思えない。

 

そう思っていると……

 

「ネットでは貴方がシルヴィアさんを手に入れる為、『孤毒の魔女』を言葉巧みに操り、洗脳効果のある毒を手に入れる為に利用「「ふざけるな!!」」ひいっ!」

 

次の瞬間、俺とシルヴィは椅子から立ち上がりふざけた質問をした記者に怒鳴り散らしていた。挑発には乗らないと決めていたが、こいつの発言が俺の逆鱗に触れた以上我慢出来ない。ここまでキレたのは生まれて初めてだろう。

 

チラッと隣を見ればシルヴィも憤怒に満ちた表情を浮かべていた。これほど怒ったシルヴィは初めて見る。

 

「ちょっとシルヴィア!落ち着いて!」

 

「……八幡っ、私は気にしてないから」

 

ペトラさんがシルヴィを、オーフェリアが俺の腕を掴んでくるが……

 

「私が洗脳?ふざけた事を言いますね?私は自分の気持ちに従って、八幡君とオーフェリアと共に歩むと決めたんです!私達の事を何も知らないのに勝手な事を言わないでください!」

 

「それ以前に俺がオーフェリアを利用しただと?ふざけるな!オーフェリアは物じゃねぇんだよ!」

 

何も言わずにはいられなかった。確かに俺はオーフェリアの所有権を持っているが、それを利用してオーフェリアに命令した事は一度もない。ディルクから離れた以上、オーフェリアには自由になって欲しいので俺は絶対にオーフェリアを物のように扱うつもりはない。

 

よって今の記者の言葉には看過出来ずに思わず叫んでしまった。本来なら俺の行動は問題行為かもしれないが後悔はしていない。

 

 

にしても会見前はオーフェリアがブチ切れないか危惧されていたが、まさか俺とシルヴィがブチ切れるとはな。会見での戦いは初めてだが予想外だ。

 

俺はふざけた質問をした記者に殺意を浴びせながらもそう考えた。頼むからこれ以上、俺を怒らせるなよ……?


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