学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は冬休みの予定を考える

 

 

「そういや八幡、アンタは冬休みに恋人2人と一緒に実家に帰んのか?」

 

レヴォルフ黒学院の生徒会室にて、電子書類を片付けていると簡単な雑務をこなしているイレーネがそんな事を聞いてくる。

 

既に獅鷲星武祭が終わってから2ヶ月経過して冬休みまで1週間を切っているが、仕事は山程ある。

 

ちなみに他の役員のオーフェリアとプリシラと樫丸は別の仕事でここには居ない。尚、オーフェリアは仕事に行く直前に「もしもイレーネ相手にラッキースケベを起こしたら今夜干からびるまで搾り取るから」と低い声でそう言ってきてメチャクチャビビった。

 

閑話休題……

 

「いや。実は親父も今はアスタリスクで働いてて、実家は売ったんだよ」

 

「ほー、ちなみにアンタの親父って何の仕事をしてんだ?お袋の方は有名だけどよ」

 

レヴォルフに通う人間でお袋を知らない人間はいないだろう。何せオーフェリアの前に王竜星武祭で二連覇したり、ヘルガ・リンドヴァル警備隊長とやり合ったり、歓楽街のマフィア500人を治療院送りにしたりと様々な伝説を生み出しているし。母親ながら怖過ぎる……

 

「親父はアルルカントで『思想派』の事務をやってる。元々親父はアルルカントの『思想派』の人間だから」

 

「ほー、『原理の魔女』と同じか」

 

そういやアルルカント序列1位『原理の魔女』フェヴローニャ・イグナトヴィチも『思想派』の人間だったな。

 

「そうそう。学生時代は序列14位とそこそこ強いレベルだけどな」

 

親父の星武祭での最高成績は王竜星武祭ベスト16。割と良い成績で才能はある方だと思う。

 

まあ5回戦ではお袋に秒殺されたけど。しかしそれを見て弱いとは言わない。何故ならお袋は決勝戦の相手も30秒で倒したし。

 

「んで話を戻すが、両親共にアスタリスクに居るから新年に家族で会うかもな。年末年始はのんびり過ごしたい」

 

「ふーん。だから面倒くさがりのアンタが熱心に取り組んでいる訳なんだな」

 

イレーネは感心するようにそう言ってくる。今日の分の仕事はとっくに終わっているが、俺は冬休みに少しでも楽をする為に、冬休みにやる仕事の中で冬休み前でも出来る仕事をこなしている。

 

「まあな。でも何でお前もやってんだ?」

 

イレーネの場合、両親が屑だから絶縁状態だし、俺が立て替えた借金についてはディルクと違って星武祭で稼いだ賞金も返済に充てて良いと言ったので急ぎのバイトも無いはずだ。わざわざ必要以上の仕事をするとは思えない。

 

するとイレーネはそっぽを向きながら頬をポリポリ掻く。

 

「まーアレだ。ちょっと鍛錬でもしようかと、な。邪魔な仕事を早めに終わらせたいだけだよ」

 

鍛錬だと?まあ確かに『覇潰の血鎌』を失ってからのイレーネは体術の鍛錬を熱心に取り組んでいる。それはわかっているが、面倒くさがりのイレーネが仕事を早めにこなして鍛錬の時間を作るだと?

 

普通から考えにくい事だ。そうなると余程有意義な鍛錬……あ

 

(まさかイレーネもアレに参加しているのか?だったらカマをかけてみるか)

 

そう判断した俺は口を開ける。

 

「なるほどな……熱心で何よりだ。褒美に仕事が終わったら飯を奢ってやるよ」

 

「おっ、マジで?何を奢ってくれんだ??」

 

「ああ。最近見つけた中華料理店なんだよ。店の名前は……魎山泊」

 

俺がそう言った瞬間、笑顔だったイレーネの顔が凍りつく。ビンゴだな。

 

「やっぱりな……まさかお前も魎山泊の一員とは思わなかったぞ」

 

「な、何でテメエが知ってんだよ?!まさかお前も鍛えられているのか?!」

 

「んな訳ないだろ。あそこの生徒は壁を越えれる可能性のある人間だぞ」

 

魎山泊は星露が作り上げた私塾である。生徒は俺や天霧やシルヴィなどの壁を超えた人間を倒せる可能性のある人間だ。俺は星露に壁を超えた人間と言われているので生徒ではない。

 

「じゃあ何で知ってんだよ?」

 

「ちょっと前に星露に借りが出来てな。その借りを返す為に魎山泊でアシスタントをやってんだよ」

 

俺を鍛えてくれるというデカい借りが出来たので、俺は週に一度魎山泊に行き星露の手伝いをしている。

 

「ん?でも何でアタシはお前と会った事がないぞ?」

 

「俺が面倒を見てんのは能力者だからな」

 

星露は生徒の身体能力や反応速度を高めるのが仕事で、俺の仕事は能力者と戦って生徒の新しい技を磨くのを手伝う事だ。

 

「へー、ちなみに誰を鍛えてんだ?」

 

「悪いが星露に口止めされているから教えられないな」

 

「ちっ」

 

その辺りは公平を期す為だろう。実際にチーム・赫夜の件についても他言無用と言われたし。

 

ちなみに俺が面倒を見ているのはガラードワースの序列7位のノエル・メスメルとクインヴェールの序列35位のヴァイオレット・ワインバーグの2人だ。2人は共に能力者なので、俺が多彩な攻めを見せて攻撃のバリエーションを増やすように指導している。

 

しかしこの2人、才能はあるんだが負かすと面倒くさい。ノエルの方は割と泣き虫で泣くと罪悪感が凄いし、ヴァイオレットは負けると地団駄を踏んでキーキー喚いて煩くて苛々する。

 

魎山泊は週に一度だが、4日後にある魎山泊で俺がやるのはヴァイオレットだし……今から憂鬱だ。

 

「まあ来年になる頃はわかると思うぞ」

 

既に魎山泊が開いてから1ヶ月、俺の担当している2人は能力の幅が広がっているし、序列戦を見れば1発でバレるだろう。

 

そこまで考えていると……

 

「……ただいま」

 

「ただいま戻りました」

 

「こ、これが向こうから会長に渡された仕事です!」

 

他の役員3人が帰ってきて、最後に部屋に入ってきた樫丸が電子書類を渡してくる。どうやら会長の俺の承認が必要の書類のようだ。

 

「はいよ。とりあえずご苦労さん」

 

「……問題ないわ。それより八幡、イレーネにラッキースケベはしてないわよね?」

 

「してねーよ!本人に聞いてみろ」

 

帰ってまず聞く事がそれかよ?!前科があるとはいえどんだけ疑われてんだよ俺は?!

 

「……イレーネ?」

 

「い、いや!してねぇぞ!」

 

オーフェリアがドス黒いオーラを撒き散らしながらイレーネに質問する。イレーネは引き攣った笑みを浮かべながら首を横に振るうとオーフェリアからドス黒いオーラが消える。

 

「……そう、なら良いわ」

 

「そいつはどうも。それより外で仕事をしてきた3人は上がって良いぞ。イレーネも今日の分が終わってるなら構わない」

 

「……私は残るわ」

 

オーフェリアは手を挙げてそう言ってくる。オーフェリアは毎回俺が上がるときに上がるからな。まあ家が同じだし当然だけど。

 

「ふーん……じゃあ私は上がるわ。大分飽きてきたし」

 

「では私も失礼します」

 

「お、お疲れ様です」

 

そう言って3人は会釈をして生徒会室から出て行った。同時に俺とオーフェリアは2人きりになり、オーフェリアが俺の隣に座って電子書類の一部を取っていく。

 

「いつも悪いな」

 

「……副会長として、彼女として八幡を助けるのは当然のことよ」

 

「それでもだよ、ありがとな」

 

「……んっ」

 

オーフェリアの頭を撫でるとくすぐったいそうに目を細める。オーフェリアのこの仕草はマジで可愛いんだよなぁ……

 

「ところで八幡、クリスマスに何が欲しい?」

 

「あん?そうだな……オーフェリアとシルヴィだな」

 

「……八幡のエッチ」

 

「違ぇよ!お前らと過ごす時間って意味だよ!」

 

何でそっち方向だと思うんだよ?!そ、そりゃまあ……3人で聖なる夜を性なる夜にしたい気持ちがない訳じゃないけどな?

 

「……でも、八幡が望むなら」

 

「おーいオーフェリア?望む事を前提で話すのを止めてくれない?」

 

「望んでないの?」

 

「望んでます」

 

しまった。つい、ノリで答えてしまった。やはり俺はオーフェリアとシルヴィの前だとかなり素直になってしまうな。

 

「ふふっ……やっぱり八幡はエッチね」

 

オーフェリアはクスクス笑いながらそう言って電子書類を片付け始める。本来なら一言や二言言いたいが、少し前のオーフェリアなら絶対に見せない可愛らしい笑みを見てしまったら何も言えなくなってしまう。

 

しかしそんな自分は嫌いじゃなかった。

 

内心苦笑しながら俺は自分の仕事を片付けるのを再開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、仕事を済ませた俺とオーフェリアは家バレを防ぐ為にいつものように変装をしていつものように帰宅した。ここまではいつも通りだ。

 

そこから違いがあるとすれば……

 

 

 

 

 

 

「お、おかえり2人共。ご飯にする?お風呂にする?それとも……わ、私?」

 

もう1人の恋人が裸エプロン姿でそんな事を言ってくることだろう。玄関を開けてリビングに向かっていると、リビングから裸エプロン姿のシルヴィがやって来ていきなりそんな事を言ってきたのだ。

 

(マジでなんなんだこいつは?そんなに俺を野獣にしたいのか?)

 

こんな姿を見たら今直ぐ押し倒して食い尽くしたいだろうが。こいつは自分の可愛さを理解しているのか?

 

とはいえ……

 

「じゃあ、シルヴィで……んっ……」

 

「んっ……ちゅっ……」

 

これ以外の選択肢はないだろう。俺はシルヴィを抱き寄せてキスをする。するとシルヴィは目を見開いて驚くも直ぐにキスを返してくる。

 

同時に仕事で溜まった疲れが見る見る回復してくる。シルヴィのキスって凄過ぎだろ?

 

「……八幡、私もする」

 

するとオーフェリアも仲間外れにするとばかりに不満そうな表情を浮かべながら俺のシルヴィの間に入って同じようにキスをしてくる。

 

すると更に幸せな気分になる。やはりオーフェリアやシルヴィと一対一でキスをするより3人でする方が幸せになるな。

 

そう思いながら俺達は互いの唇を更に求めるべく強く抱きしめあった。

 

 

 

 

「で、何でいきなり裸エプロンで迎えてきたんだ?」

 

それから20分後、俺はオーフェリアとシルヴィに挟まれながら夕食を口にする。既にシルヴィは裸エプロン姿ではなくなっている。誠に残念極まりない。どうせならオーフェリアと一緒にダブル裸エプロンが見たかったんだが…….

 

「えっと今日クリスマスのプレゼントについて調べてたの。だけど中々良いのが無くて男の子の喜びそうなものを色々調べたら裸エプロンが目について……八幡君ってエッチだし」

 

「否定はしないが当たり前のように言わないでくれ」

 

そしてオーフェリアはコクコクと頷かないでくれ。

 

「じゃあ嫌だった?」

 

「いや全然全く」

 

「やっぱりエッチじゃん」

 

「いや待て俺は悪くない。悪いのはお前の可愛さだ」

 

「もー、八幡君ってお世辞が上手いんだから……えへへ」

 

シルヴィがそう言いながらもニヤニヤして俺に抱きついて甘えてくる。ほら、やっぱり可愛い。こんな可愛い子の裸エプロンを見て興奮しない男はいないだろう。まあ他の男に見せるつもりはないけど。

 

「全くこの甘えん坊め……それより飯を食べようぜ」

 

「あっ、そうだね」

 

「割と話し込んだわね」

 

話し込んだからか大分冷めちまっている。可能なら温かい飯が食いたいので話は一時中断する。それを聞いたシルヴィとオーフェリアも頷いて食べ始める。

 

そして暫く食べて、もう直ぐ卓の料理が無くなる頃シルヴィが口を開ける。

 

「あ、そういえば八幡君にオーフェリア。クリスマスイブなんだけどさ、今日美奈兎ちゃん達にクリスマスパーティーに誘われたんだけど一緒に参加しない?獅鷲星武祭についてのお礼もしたいらしいし」

 

お礼ねぇ……律儀な奴だ。俺は別にやりたいからやっただけなんだが。

 

「別に構わないがイブだけな。クリスマスはお前ら2人だけと過ごしたい」

 

去年はクリスマスとクリスマスイブはシルヴィが仕事でおらずオーフェリアと2人きりだった。勿論仕事だから仕方ないが、物足りなかったのは事実。シルヴィの仕事のない今年は3人でクリスマスを過ごしたい。

 

「もちろん。私もクリスマスは3人で過ごしたいし」

 

「……私も構わないわ」

 

「決まりだね。じゃあ当日までにプレゼントの用意をしといてね。プレゼント交換があるし」

出たよプレゼント交換。俺アレ嫌いなんだよな。相手が喜ぶプレゼントを選べる自信ないし。

 

しかし2人もパーティーに参加する以上頼るわけにはいかないし、エンフィールド辺りに助言を求めるか。

 

「了解した……」

 

嫌だが、流石に持っていかない訳にはいかないので俺は了承の返事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから6時間後……

 

 

「んじゃ、大晦日に俺の家だな」

 

『悪いな。私達夫婦の家は汚いし、小町は寮だから必然的にアンタん家しかないんだよ』

 

飯を食った後はいつものようにイチャイチャして、いつものように3人で風呂に入り、いつものように3人で寝ようとしている。今はお袋と年末年始の予定について話してるけど。

 

「別に構わないよ。じゃあまた大晦日に」

 

『あいよ。またな馬鹿息子』

 

お袋が通話を切ったので、俺も空間ウィンドウを閉じて端末をベッドの傍に置く。するてシルヴィとオーフェリアが部屋に入ってくる。

 

「八幡。年末年始の予定はどうなったの?」

 

「大晦日にウチに泊まることになった。って訳で年末に来客用の布団を買いに行こうぜ」

 

ウチにある寝具はベッド一つだけだし。親父にお袋に小町が来るなら布団の用意をしておかないといけない。

 

「はーい。でも八幡君は結構忙しいだろうし、私が買いに行こうか?クインヴェールの生徒会長ってお飾りだし」

 

「……まあ忙しいのは否定しない。状況によっては頼んで良いか?」

 

「もちろん。それじゃあ寝ようか。明日の早いし」

 

言いながらシルヴィは電気を消す。すると月明かりによって自室が照らされて、2人が俺に近付くのがわかる。

 

そして……

 

「「おやすみ八幡(君)、大好きよ(だよ)」」

 

ちゅっ……

 

いつものように3人でキスをしてベッドに入る。これでまた明日も頑張れるな。

 

それにしても最近は生徒会長の仕事や自身の鍛錬、魎山泊のアシスタントなど色々な事をやってるな。

 

アスタリスクに来る前の俺なら絶対に想像出来ない行為だが、不思議と気分は悪くなった。

 

それも全て俺に抱きついている2人の恋人のおかげだろう。2人によって俺は割と積極的になれたのだから。

 

(ありがとな)

 

内心感謝を告げながら俺は突如やってくる睡魔に逆らわずにゆっくりと意識を手放した。

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