学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

217 / 324
やはりソフィア・フェアクロフはポンコツである

「それで八幡さん。何が美奈兎さん達が喜ぶと思いますの?」

 

ショッピングモールにて、フェアクロフ先輩が俺に話しかけてくる。現在俺は偶然会ったフェアクロフ先輩と一緒にクリスマスパーティーのプレゼント交換で用意するプレゼントを探している。

 

周囲からはそれなりに視線を感じているが問題ないだろう。オーフェリアとシルヴィからは了承を得ているし、フェアクロフ先輩とは距離を取っているし、既に俺がチーム・赫夜に協力している事は有名だし。

 

邪推はされてネットで叩かれる事はあっても浮気扱いにはならないだろう。先月も魎山泊の修行を終えたばかりの若宮と偶然会って、一緒に飯を食った際は、特に浮気扱いにはならなかったし。

 

「そうですね……と、言ってもチーム・赫夜って全員趣味が違いそうですからね」

 

「まあ美奈兎さんとクロエさんでは趣味が全く逆ベクトルですわよね」

 

俺が若宮にプレゼントをあげるとしたら可愛い髪飾りとかだが、フロックハートの場合は万年筆とか手帳になるだろう。じゃあ無難に装飾品にすればどうかと言えば、蓮城寺も礼儀正しいタイプの人間で派手な装飾品は好まないだろうし、アッヘンヴァルも装飾品よりぬいぐるみを好みそうだ。

 

「となると女の子らしい実用品、ですかね?」

 

「実用品といいますとエプロンとかですの?」

 

「ですね。後は弁当箱とか……」

 

「なるほど……あ!あそこに雑貨屋がありますのでそこに行きましょう!」

 

見れば女の子向けの雑貨屋が目に入る。まああそこなら良い物がありそうだな。入るのに抵抗を感じるが、この際に文句は言ってられないな。

 

「了解しました。では……」

 

俺が小さく頷くとフェアクロフ先輩は人に迷惑のかからない程度の速さで早歩きをして雑貨屋に向かうので、俺はゆっくりとしたペースでそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑貨屋は外から見たように女子向けの店で、可愛らしい物が沢山ある。レヴォルフの制服の着ている俺は完璧に異端なる存在だろう。店員さんや客は唖然とした表情を見せる。

 

しかしもう気にしない事にした。んな事で一々気にしているなら、シルヴィとオーフェリアの2人との交際も出来ないし。

 

「八幡さん八幡さん!このエプロンは如何でしょう?!」

 

そんな声が聞こえたので見ればフェアクロフ先輩が右手に薄ピンク色のエプロンを持っていた。

 

「良いですねそれ。可愛くもありながら綺麗さもありますし」

 

フェアクロフ先輩が持っていたエプロンは男の俺から見ても女の子らしくプレゼントに適したエプロンだった。これならチーム・赫夜のメンバーだけでなく、オーフェリアやシルヴィの全員が似合うだろう。

 

というかオーフェリアとシルヴィがこのエプロンを使って裸エプロンをやったらマジで最高だわ。俺が家に帰ると玄関で2人が『おかえりさない、ご飯にする?お風呂にする?それとも……私?』なんて恥じらいながら言ってきたら、俺は即座に理性を吹っ飛ばして玄関で2人を押し倒す自信があるくらいだ」

 

「は、ははははは八幡さん?!いきなり何を言ってますの?!」

 

そこまで考えているとフェアクロフ先輩の叫び声が聞こえてきたので顔を上げると、顔を真っ赤にしたフェアクロフ先輩がいた。否、店にいる他の客や店員も真っ赤になりながら俺を見ていた。

 

「なんすかいきなり?」

 

「それはこっちのセリフですわよ!い、いきなりは、は、裸エプロンだなんて……」

 

「え?もしかして口に出していましたか?」

 

「バッチリと」

 

マジか……俺の妄想が口に出たのかよ……これは恥ずかしいわ。

 

「そ、それで!八幡さんはシルヴィアとオーフェリアに裸エプロンをさせているのですの?!」

 

フェアクロフ先輩が詰め寄るように聞いてくる。気の所為かフェアクロフ先輩が興奮しているように見えるんだが……

 

「いえ。俺が2人に強要した事はないですね。偶に不意打ちでやってくるんです」

 

俺が家に帰ると偶に裸エプロンで迎えてくるのだ。しかも週に一度とかでなく不規則に。1ヶ月以上間隔をあける時もあれば、1週間ずっと裸エプロンで迎えてくる時もあり、予測が出来ない。出来ないが可能なら毎日やって欲しい。

 

すると……

 

「は、破廉恥ですわよ!そ、そんな裸エプロンだなんて……」

 

フェアクロフ先輩は真っ赤になってモジモジし始める。毎回思うがこの人可愛すぎだろ。もしもこの人が裸エプロンをしたら……

 

『お、おかえりなさいまし……八幡さん』

 

……ヤバい。間違いなくエロ可愛いだろ。見たいな

 

 

pipipi……

 

そこまで考えているとポケットからメールの着信音が鳴る。端末を開くとメールが2通来ていた。それも同じ時間に。

 

(ヤバい、このパターンは……)

 

冷や汗を流しながらメールを開くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『fromオーフェリア 八幡、今ソフィアの裸エプロン姿を想像したでしょ?今夜搾り取るから』

 

『fromシルヴィ 八幡君さ、今ソフィア先輩の裸エプロン姿を想像したよね?今夜搾り取るから』

 

怖い!何故わかった?!前から思っているが、オーフェリアとシルヴィ、俺の服に盗聴器……いや、盗聴器じゃ俺の頭の中は読み取れないし違うな。

 

(でも何でわかるんだよ?!アレか?!恋する乙女は無敵ってか?!)

 

 

「……さん?」

 

だとしたら本当に無敵だろう。俺が2人に勝てる要素はない。仕方ないが、今夜は大人しく搾り取られよう。

 

「……さん!」

 

まあ俺も搾り取られるのは嫌じゃ「八幡さん!」うおっ?!いきなりなんだ?

 

考え事を止めて顔をあげるとフェアクロフ先輩が俺の肩を叩いていた。

 

「なんすか?」

 

「なんすかではありませんわ。さっきから声を掛けているのに返事をしなかったので」

 

「すんません。ちょっと予想外のメールが来たんで」

 

恋人2人が俺の頭の中を完璧に読むというあり得ない事をやってきて思考を停止してしまったようだ。

 

「そうですの?……それより!裸エプロンのような破廉恥なやり取りは厳禁ですわ!」

 

いや、裸エプロンぐらい大丈夫でしょ。フェアクロフ先輩は既に俺が2人を抱いているのを知っているんだし。

 

しかし馬鹿正直にそう言うと面倒な事になるのは予測出来るので……

 

「わかりましたよ。今後は出来るだけ自重します」

 

とりあえず謝っておく。でないとフェアクロフ先輩は説教をやめないだろう。

 

それはダメだ。さっきからフェアクロフ先輩は周りを見失っているのか裸エプロン裸エプロンと何度も言っている。これ以上言い続けたらマジで俺の立場が危ない。

 

そう判断して謝った。しかし……

 

 

 

 

 

 

 

「約束ですわよ!言っておきますが裸エプロンだけではなく、ゴスロリやスクール水着、プリキュアのコスプレも自重してくださいまし!」

 

次の瞬間、フェアクロフ先輩は俺が2人によく頼むコスプレのラインナップを声に出して説教をしてきた。

 

「(おい!この人TPOを読んで説教しろよ!)フェアクロフ先輩!わかりましたから店で説教をするのはやめてください!」

 

「えっ……はっ!」

 

フェアクロフ先輩も今俺達のいる場所を理解したようだ。ハッとした表情で辺りを見渡すも……

 

(.あーあ、俺の趣味嗜好が知られちまったよ)

 

店内にいる全員がゴミを見る目で俺を見ていた。やっぱフェアクロフ先輩はポンコツだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでしたわ!」

 

それから10分、とりあえず店を出た俺達は休憩スペースに行った。そしてとうちゃくするや否やフェアクロフ先輩は土下座する勢いで頭を下げてくる。

 

「……お気にならさず。元はと言えば俺が裸エプロンなんてアホな事を考えて口に出したのが悪いんで」

 

そもそもの発端は女子との買い物中に裸エプロンなんてアホな事を考えて呟いた事だし。アレだけで店にいた人は俺の趣味が裸エプロンと理解したし。

 

「ですが、他の趣味を知られたのは私の所為ですし……」

 

まあ、そこはな、フェアクロフ先輩が興奮して周りを失念してたからだな……

 

てか……

 

「何で俺の趣味を知ってるんですか?」

 

そこだ。俺は話した覚えはないし、フェアクロフ先輩が俺の趣味をどうやって「獅鷲星武祭より前に私達チーム・赫夜がオーフェリアと女子会をした際に、無趣味だと思っていた八幡さんはどんな趣味かと聞いたら……」オーフェリアェ……奴には帰ったらお尻ペンペンの刑だな。

 

「はぁ……もう良いですから気にしないでください」

 

もう今更だろう。過ぎた事に怒っても意味がないし。

 

「ですが、八幡さんに迷惑を……ですから何かお詫びを……」

 

そう言われてもなぁ……思う事がない訳ではないが、お詫びを求める程ではない。

 

どうしたものかと悩んでいると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!で、でしたらお詫びとして今度八幡さんの好きなプリキュアの格好をして恩を返しますわ!」

 

「ぶふぉっ!」

 

予想外の爆弾をぶっ込んできた。それによって俺は思わず吹き出してしまった。

 

「い、いや。流石にそれはフェアクロフ先輩も恥ずかしいですから……」

 

見たいかどうかと聞かれたら断然見たいが、フェアクロフ先輩も恥ずかしいだろうしそこまで求めていない。

 

すると……

 

「大丈夫ですわ!既に八幡さんには裸も下着姿も見られましたし、胸やお尻を揉まれたり、埋められましたから耐性はついてしますわ!」

 

ぐっ……確かに数え切れない程ラッキースケベをしたからな。そういった事に耐性をつけていてもおかしくないだろう。

 

 

しかしフェアクロフ先輩ってやっぱりポンコツだろ?本人は真面目に言っているだろうが、どうしてもポンコツにしか見えない。

 

それでありながら自覚してないし、流石PKS(ポンコツかわいいソフィア)だな……

 

「流石に少しは恥ずかしいですけど……八幡さんには迷惑をおかけしましたので、八幡さんが望むなら……」

 

フェアクロフ先輩が恥じらいながら俺の事をチラチラと見てくる。それはまさに破壊力抜群で、オーフェリアとシルヴィと付き合っていなかったら玉砕覚悟で告白している位可愛い。

 

てかもしもフェアクロフ先輩がオーフェリアとシルヴィと一緒に……

 

『ハートキャッチ、プリキュア!』

 

ヤベェ、是非見た「「八幡(君)、今の話、詳しく聞かせて欲しいわ(な)」」……え?

 

いきなりそんな声が聞こえたので恐る恐る後ろを見ると……

 

 

 

 

 

「いやー、まさか八幡君もこのショッピングモールに居るとはね。それで?詳しい話を聞かせてね?」

 

「……八幡のバカ」

 

ドス黒いオーラを纏ったシルヴィとオーフェリアがいた。どこから聞いていたかは知らないが……

 

 

「ちゃ、ちゃうんです」

 

俺は言い訳するしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

10分後……

 

「なるほどね。要するに八幡が妄想を口にしたら、ソフィア先輩が怒って、その際に八幡君の秘密の趣味を口にしたから、詫びとしてプリキュアのコスプレをすると言った訳だ」

 

事情を全て話すとシルヴィは呆れたように頷く。対称的にオーフェリアはシュンとした表情を浮かべる。

 

「……ごめんなさい八幡。元はと言えば私が余計なことを言ったから……」

 

ちくしょう、その顔は反則だ。帰ったらお尻ペンペンする予定だったが、そんな表情をされたら怒れない。

 

「はぁ……気にすんな。別に怒ってないからな」

 

正確には怒る気力を無くした。そんな表情をされたら怒るに怒れない。

 

「……ええ」

 

俺がオーフェリアの頭を撫でると、オーフェリアは小さく頷く。とりあえずこれなら大丈夫だろう。

 

「それで八幡君、ソフィア先輩にはプリキュアの格好をさせるの?」

 

シルヴィがさっきの話の件について聞いてくる。そうだな……

 

「あ、じゃあクリスマスパーティーの時にネタとして披露してください」

 

これなら俺も眼福だし、クリスマスパーティーのネタとして有効だろう。

 

「え?!ちょっ!美奈兎さん達にも見せるのですの?!私はてっきり八幡さんだけに「「ダメ、八幡(君)専用のプリキュアは私とシルヴィア(私とオーフェリア)だけだから」」……うぅ、わかりましたわ!」

 

オーフェリアとシルヴィの言葉にフェアクロフ先輩は言葉に詰まりながらも了承する。

 

「あ、別に本当に嫌ならやらなくても大丈夫ですからね?」

 

見たいのは山々だが、無理やりにまで見るつもりはない。そこのところはしっかりと考えている。

 

「い、いえ。悪いのは私ですから大丈夫ですわ」

 

どうやら恥じらいはあるようだが、絶対に嫌という訳ではないようだ。

 

「そっか……じゃあ私もクリスマスパーティーの時にプリキュアの格好を「是非頼む」即答だね……まあ良いけど」

 

しまった。つい即答してしまった。

 

内心後悔していると……

 

「あ!それなら全員プリキュアの格好で「全員に俺が含まれているなら絶対却下だ」あらあら……」

 

フェアクロフ先輩ェ……何て恐ろしいことを考えているんだ。俺のプリキュア姿とか誰得だよ?

 

「てかそろそろ買い物に戻りましょうよ」

 

さっきからプリキュアの話しかしてないし。人気の少ない場所で小声で話しているとはいえ話の内容がヤバいし。

 

「あ、そうだね。夜も遅いし行こうか」

 

言いながらシルヴィが歩き出すので俺達もそれに続く。そうだ、早めにプレゼントを決めないといけないからな。

 

そして暫く歩くと先導しているシルヴィが足を止めたので、シルヴィに追いついてからシルヴィが見ている方向を見れば……

 

 

 

 

 

「……は?」

 

なんか視線の先には小町とリースフェルトと葉山率いるガラードワースの生徒が揉めていた。見る限り葉山がなんか言って小町とリースフェルトが呆れていた。

 

……とりあえず話を聞くか。

 

場合によっては葉山達の息の根を止めなくちゃいけないかもしれないけど。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。