学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡の公式序列戦が始まる(前編)

 

 

 

 

 

 

周りから歓声を浴びていると反対側のゲートから1人目の対戦相手が現れる。

 

1人目の対戦相手はレヴォルフの序列12位『螺旋の魔術師』モーリッツ・ネスラーだ。そして俺の事を物凄く睨んでいる。

 

まあ以前俺が序列20位の時に当時序列10位のモーリッツを冒頭の十二人から蹴落としたからな。恨まれても仕方ないだろう。

 

まあだからどうしたって話だが。

 

「よう。あんたとやるのは久々だな」

 

「……ええ。あなたに負けた屈辱は1日も忘れていませんよ。今日あなたを倒して不動と言われている序列2位の座をいただきます……!」

 

俺は序列2位の座を手に入れてからはオーフェリア以外には負けてない。その為レヴォルフの序列1位2位は不動扱いとなっている。

 

「残念だがそれは無理だ。お前の力じゃ俺の運命は変えられない」

 

一度言ってみたかったセリフを言ってみる。するとモーリッツは不愉快そうに目を細める。

 

「あの女の真似ですか……!なるほど、あなたがあの女と連んでいるのは有名でしたがやはり化け物同士仲が良いようですね」

 

そう言われて今度は俺の目が細まるのを自覚する。俺はともかくオーフェリアは裏の世界に巻き込まれて化け物になったんで好き好んで化け物になった訳ではない。

 

だがこいつに説明する気はない。人のプライバシーを話す趣味はないしこんな雑魚に話す時間を割きたくない。

 

「はいはい。どうせ俺は化け物ですよ。御託はいいから早く来いよ。12位のカスが」

 

代わりに皮肉たっぷりの笑みを浮かべる。

 

「き、きさま……!」

 

おっ、呼び方が変わったな。相当キレてやがる。まっ、精々イレーネとの戦いのウォーミングアップくらいの戦いになってくれよ。

 

心の中で次の試合の事を考えている中、試合開始のゴングが鳴る。

 

『試合開始!』

 

アナウンスが流れると同時にモーリッツは俺に突っ込んでくる。それと同時に突風が巻き起こりモーリッツの両腕に纏わりつく。

 

突風がドリル状の三角錐を形成すると同時に俺は腰からナイフ型の煌式武装『黒夜叉』を抜いて星辰力を込め迎え撃つ。

 

黒夜叉とモーリッツの両腕がぶつかると同時に火花が飛び散り甲高い摩擦音が鳴り響く。

 

それを確認すると俺は空いている左手にハンドガン型煌式武装『レッドバレット』を抜いて発砲する。

 

「ちっ!」

 

モーリッツは舌打ちをして下がる。俺のレッドバレットは物理的攻撃力はないかわりに相手の気分を悪くする精神攻撃能力を持っている。気分が悪くなると言っても10発当てて乗り物酔いするくらいでそこまで強くない。

 

要するにガラードワースが持っている純星煌式武装『贖罪の錐角』の粗悪なデッドコピーと思ってくれればいい。あの聖杯と違って人の意識を奪うなんて無理だし。

 

モーリッツが下がるのを見て更に発砲する。何十発も撃ち込んでいるが余り当たらないな。

 

(……仕方ない。距離を詰める)

 

そう判断すると同時にモーリッツに突っ込み再度黒夜叉とモーリッツの右腕がぶつかる。

 

それと同時にモーリッツに向けて発砲しようとする。しかしモーリッツの左腕が俺のレッドバレットを弾き飛ばした。ありゃりゃ、拾うのは無理っぽいな。

 

「……どういうつもりですか?」

 

次の手を悩んでいるとモーリッツが睨みながら話しかけてくる。

 

「何の話だ?」

 

「とぼけないでください。何故一度も影を使わないのですか?」

 

あぁ。それは簡単だ。今の俺は煌式武装による鍛錬中だからだ。

 

去年の王竜星武祭、俺がシルヴィに負けた理由は色々あるがそのうちの一つは煌式武装による戦闘があると思う。

 

当時の俺は自身の能力に頼りまくり煌式武装を軽んじていた。それに対してシルヴィは自身の能力と煌式武装を上手く噛み合わせていた。

 

それ以降俺は毎日煌式武装を使うようになり鍛え、高等部に上がった頃に基礎をマスターしたので実戦練習をする必要があった。

 

そしてその相手がモーリッツって訳だ。

 

まあそれを一々説明するのも怠いからなぁ……

 

「使ってもいいが使ったらお前の勝ち目は0になるけどいいのか?」

 

そう返すと更に目を細めてくるが事実だぞマジで?

 

(……まあいいや。飽きたし適当に終わらせよう)

 

そう思いながら俺は意識を集中して星辰力を消費する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「影の牢獄」

 

そう呟くと俺の影が蠢き出してモーリッツの足に纏わりつき動きを止める。

 

「なっ……?くっ!こんなもの!」

 

モーリッツは振り払おうとするがそんなんじゃ俺の影は振り払えないぞ。

 

「広がれ」

 

俺がモーリッツから離れながらそう呟くと纏わりついていた影が捕食者の口の様に大きく広がりモーリッツを包み込んだ。それは黒いボールのようにステージに存在している。

 

「な、何ですかこれは?!」

 

ボールが出来ると同時にボールの中から叫び声が聞こえてくるので質問に答える。

 

「影の牢獄。俺の星辰力が混じった影で相手を閉じ込める技だ。これを破壊するには純星煌式武装でも持ってくるんだな。……あ、それと中の空気は限られてるから早く出ないと死ぬぞ」

 

実戦で使うのは初めてだがこれを破れるのはそうはいないだろう。そりゃ各学園のトップ3以上の奴らには時間稼ぎすら使えるか怪しいがモーリッツ程度ならこれで充分だ。

 

「くっ!こんなもの……!」

 

そんな声が聞こえてくるのと同時に鈍い音が聞こえてくる。おそらく影の牢獄を破壊しようと試みているのだろう。

 

しかし音は聞こえてくるも破れる様子はない。その音が2分くらい聞こえていると牢獄の中から疲弊したような声が聞こえてくる。

 

この様子だと後2分くらいでモーリッツは息が出来なくなるだろう。そうすりゃ意識不明扱いで俺の勝ちだ。

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ!暴風の咬滅!」

 

モーリッツがそう叫ぶと同時に牢獄の中からさっきより遥かに甲高い音が聞こえてくる。

 

出たなモーリッツ最強の技。あの技は攻撃速度が遅いが破壊力ならレヴォルフ屈指だ。これなら牢獄を破壊出来るだろう。

 

案の定牢獄に綻びが生じている。

 

「おおおおおっ!!」

 

モーリッツが叫ぶと同時に更に綻びが広がっている。それにより牢獄全体に罅が出来た。

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

モーリッツの叫びと共に牢獄は破壊された。破壊された影は俺の足元に戻り始める。

 

うんうん。まさか影の牢獄が破壊されるとはな……。これについては完全に予想外だった。本当におめでとうモーリッツ。

 

だからお礼に……

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

速攻で試合を終わらせてやるよ。

 

俺は黒夜叉でモーリッツの校章をぶった切った。

 

「……え?」

 

自身の最強技を放って疲労困憊のモーリッツは素っ頓狂な声を上げる。

 

それと同時にモーリッツの校章が敗北を告げる。

 

『モーリッツ・ネスラー 校章破損』

 

『試合終了!勝者比企谷八幡!』

 

アナウンスが流れると歓声が上がる。先ずは一勝だな。

 

モーリッツを見ると未だに茫然としていた。これは話しかけない方がいいな。

 

そう思いながらステージを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージから消えた俺はオーフェリアが待っている休憩場所を目指す。すると控え室からイレーネが出てきて不敵な笑みを浮かべてくる。

 

「よー八幡。試合見たぜ。中々面白い技持ってんじゃねーか」

 

そう言って肩を組んでくる。

 

「っても純星煌式武装持ちのお前には使わないと思うぞ」

 

「ほー。まあいいや。今日こそお前に勝って2位の座を頂くぜ」

 

「悪いがそう簡単に渡すつもりはないな」

 

「言ってろ。次はステージでな」

 

そう言ってイレーネはステージに行った。確かイレーネの相手は序列30位だっけか?余程の事がない限り負けないだろう。

 

イレーネが見えなくなるまで見送ってから俺も歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩場所に戻るとオーフェリア1人だけだった。向こうも俺に気付いて会釈をしてくるので隣に座る。

 

「お疲れ様」

 

「おう」

 

「八幡の影の牢獄は初めて見たわ」

 

「まあ俺の影技は使い道が色々あるからな。っても牢獄はお前には効果ないだろうな」

 

「……そうね。八幡が私を倒せるとしたらあの技だけでしょうね」

 

そう言われて前回のオーフェリアとの序列戦を思い出す。

 

「まあアレは強力だがデメリットが多過ぎる。現に俺はお前に1回も勝ってないし」

 

アレはまさにつのドリルや地割れと言った命中率の低い一撃必殺だから。何としても2年後の王竜星武祭までにモノにしないとな。

 

そう思いながらイレーネの試合を見ると対戦相手はイレーネの純星煌式武装に押し潰されて気を失った。まあイレーネが負けるとは微塵も思っていなかったけど。

 

次の組み合わせを見ていると腹が鳴る。やっぱりたこ焼きだけじゃ足りないな。

 

「オーフェリア、俺今から追加で飯食うが何か買ってきて欲しい物あるか?」

 

「……じゃあコーヒーをお願い」

 

「それはMAXコーヒーか?」

 

「普通のコーヒーで」

 

ちっ。残念極まりないな。一度オーフェリアに勧めてみたが、一度飲んで以降飲んでくれない。

 

若干ガッカリしながら俺は売店に足を運んだ。


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