学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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こうして新年が始まる

翌日……

 

「んっ、んんっ……」

 

瞼に朝の日差しを受けたので薄っすらと目を開ける。すると視界の先には……

 

「あっ、起きたね」

 

「ふふっ……起きたばかりの八幡、可愛いわ……」

 

視界の先には紫色の髪の可憐な女子と白色の髪の美しい女子ーーー俺の恋人のシルヴィとオーフェリアが一糸纏わぬ姿でクスクスと笑っていた。

 

「……おはよう、オーフェリア、シルヴィ」

 

瞼を擦りながらも2人に挨拶をすると2人は笑いながら俺の顔に近寄り……

 

「「おはよう八幡(君)、大好き……」」

 

 

ちゅっ……

 

俺の首に腕を絡めてからそっとキスをしてきた。シルヴィとのキスによって生まれた音が未だに寝惚けている俺を活性化させて、一瞬で幸せな気分にしてくれる。

 

そして俺の胸板には2人の大きな胸が当たり形を変えるくらい押し付けられていてドキドキする。

 

「んっ……ちゅっ……ぷはっ!俺も、お前らが大好きだよ」

 

2人とキスをし続けて少し呼吸が苦しくなり、息継ぎをしながら俺は2人の愛に応える。世間では未だに俺に対するアンチはあるが、もう気にしていない。世間が何と言おうと2人と一緒に愛し合う覚悟は出来ているのだから。

 

「私も八幡君の事が大好きだよ……こうやって君がいるだけてドキドキするの……んっ……」

 

言うなりシルヴィは俺から離れてから、俺の右手を掴み、自身の胸に押し付けてくる。すると手の平にシルヴィの柔らかな胸の感触と、その先にある心臓の鼓動が伝わってくる。

 

「んっ……八幡の心臓もドキドキしてるわ……」

 

対するオーフェリアは俺の胸に手を当てて愛おしそうに撫でてくる。それによって俺は自身の心臓の鼓動が早まるのを自覚する。

 

新年からこうやって2人と過ごせるなんて最高だ。一年の計は元旦にあり、というし今年はいい事がありそうだな。

 

ふと時計を見ると6時前。起きるにはまだ早い、朝飯を作るなら8時くらいで大丈夫だろう。

 

だから……

 

「なぁ……もう少しだけ甘えても良いか?」

 

両親は飲み過ぎだし、小町も休みの日は起きるのが遅い。だから俺達も少しくらいベッドで過ごしても大丈夫だろう。

 

「「もちろん」」

 

俺の頼みに2人は笑顔で了承するや否や、ベッドに倒れ込み両サイドから俺に抱きついてくる。

 

俺達は3人揃って裸だから寒いが、3人で身体を寄せ合うと直ぐに寒さが吹き飛んだ。やはり俺達は3人揃えばどんな障害も関係ない事を改めて理解した。

 

そして幸せな気分のまま、3人でキスを始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

pipipi

 

「んんっ……もう8時か……終わりにするか」

 

暫く3人でキスをしていたら8時を告げるアラームが鳴ったのでキスを止めて身体を起こす。

 

「そうだね……名残惜しいけど、いつまでも寝ているのも良くないし」

 

「……そうね。お腹も空いたし朝食を作りましょう」

 

同じようにシルヴィとオーフェリアもベッドから身体を起こす。その際にシーツが2人の身体に纏われていて、裸よりエロく見えてしまった。

 

「とりあえず人数分の餅は焼いておくか……」

 

言いながらクローゼットに向かい着替えを取り、下着を履く。

 

「じゃあ私はお雑煮を作ろうっと」

 

「んじゃオーフェリアは洗濯を頼んで良いか?てかシルヴィ、新年早々勝負下着かよ?」

 

見ればシルヴィの奴、持ってる下着で1番エロい黒のTバックを着ている。

 

「うーん。朝からエッチな気分になったからかな?あ、でもスカートじゃなくてズボンを履くよ」

 

当たり前だ。万が一出掛けた時にエスカレーターに乗ってシルヴィの下着を見られたりしてみろ。俺は見た男の息の根を止めないといけない。まあ仮にスカートを履くならシルヴィの足に影を纏わせて見えないようにするけどな。

 

「なら良いが……よし、じゃあ行くぞ」

 

「うん」

 

「ええ」

 

俺が着替え終わると2人も同じようにして着替え終えるので、自室を出て一階に向かう。

 

しかしまだ誰もいない状態だ。どうやらまだ全員寝ているようだ。

 

そんな事を考えながらも俺とシルヴィは餅を取り出して、オーフェリアは洗濯をしに脱衣所に向かった。

 

そして海苔や醤油の準備をしていると……

 

 

「ふぁ〜、おはようお兄ちゃん、シルヴィアさん……」

 

「あ〜、くっそー、頭痛え……」

 

小町とお袋が欠伸をしながらキッチンにやってくる。

 

「よう。悪いが朝飯は俺達も起きたばかりだからもうちょっと待ってくれ」

 

正確に言うと起きたのは2時間近く前だが、さっきまで2時間近くイチャイチャしていて自室を出たのがついさっきだ。まあそれを馬鹿正直に言うと絶対にからかわれるだろうか言わないけど。

 

「ほいさっさー」

 

「私は頭痛いから良いや。つーか水をくれ。昨日はいつもより飲み過ぎた……」

 

お袋はげっそりした表情で水道水を飲み始める。お袋でコレなら親父は暫くの間起きないだろう。

 

そう思いながら餅を焼いていると、オーフェリアが戻ってきた。

 

「……おはよう、小町、お義母さん」

 

「おーっす、オーフェリアちゃん……あ、そうだ。私これ飲んだら寝るけどその前に……」

 

言いながらお袋が自分の鞄からポチ袋を俺達4人に渡してくる。

 

「はいお年玉。この場にいる全員は星武祭やアイドル活動で稼いでいるから要らないかもしんないけど、私の子供だし受け取りな」

 

私の子供という箇所を聞いたオーフェリアはシルヴィが喜びを露わにする。お袋の子供という箇所で喜ぶ、つまり俺と結婚する気があるという事だ。それを理解した俺も嬉しくなる。

 

「ありがとうございます、お義母さん」

 

「……ありがとうございます」

 

シルヴィと、珍しくオーフェリアが敬語を使って礼をする。対するお袋は顔色が悪い状態でもカラカラと笑う。

 

「良いってことよ。……んじゃ私は頭痛いし寝るわ。またなー」

 

そのままお袋はフラフラになりながら再度寝室に戻って行った。毎度思うが、飲み過ぎて翌日頭が痛くなるなら飲むなよ……

 

「(まあ行っても聞かないだろうがな)……とりあえず餅も焼けたし食べようぜ」

 

「そうだね。その時に今日の予定を決めよっか」

 

シルヴィの言葉に小町とオーフェリアが頷いたので俺は餅に海苔と醤油を添えてテーブルに運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で小町はショッピングモールに新年初物セールに行ってから学園の友達と会う予定だけどお兄ちゃん達はどうするの?」

 

小町が餅を食べながら聞いてくる。

 

「ショッピングモールに買い物には行くな。その後はデートてもするつもりだ」

 

「出来ればお参りとかやってみたかったけど……」

 

「……アスタリスクに神社はないわ」

 

まあ水上学園都市に神社があっても趣きも何もないからな。

 

「じゃあ一緒に買い物をして、終わったら別れて行動すんのか?」

 

「それが良いかなぁ……3人のイチャイチャは見ていて砂糖を吐きたくなるし」

 

小町が目を腐らせながら俺達3人を見てくる。明らかに目が腐っていて思わず引いてしまう。

 

「えーっと、小町ちゃん?私達は別にイチャイチャなんて…「3日前に自然公園で堂々とディープキスをしてましたよね?」あ、あはは……」

 

そういや魎山泊が終わった後に3人でデートしたな。

 

「あの時小町も友達と近くに遊びに行ったんですけと、それを物凄く気まずかったんですよ!3人が舌を絡める所を見せられ挙句、お兄ちゃん達が自然公園を出た瞬間友達からは嵐のように激しく質問をされるし……」

 

「す、すまん……とりあえずお前といるときはキスをしないようにする」

 

「お願いだよ……」

 

小町は目を腐らせながらため息を吐く。確かに俺達は関係がバレてからは堂々とデートしているからな。今後は人目のつかない場所でキスをしよう。

 

 

そう思いながら俺は朝食を食べて、4人で行く準備を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、相変わらず混んでるねぇ」

 

それから1時間後、開店して間もないにもかかわらず混雑しているショッピングモールを見て小町が呆れたようにため息を吐く。

 

「そりゃ新年だからな。それよりもさっさと初物セールに行くなら行こうぜ」

 

今俺達は入口にいるが、いつまでもここにいても意味がないからな。

 

「あいあいさー。前回来た時はあの葉虫の所為で楽しめなかったし、今日は思い切り楽しまないとね」

 

小町がそう言うが同感だ。最後にこのショッピングモールに来たのはクリスマスパーティーに使うプレゼントを買う為だが、その時に葉山に会って殴られたからな。ぶっちゃけ最悪の買い物だった。

 

「……全くね。しかもあの葉虫、八幡を殴った罰で序列を剥奪されて逆恨みをしているらしいし、何処まで私を怒らせれば気が済むのかしら?」

 

オーフェリアが小町の言葉に賛同する。シルヴィは苦笑いを浮かべているが、2人の言葉に対して注意していない。

 

あの事件の後、ガラードワースの生徒会長のフォースターが俺に事情を聞いてきたので正直に話した結果、フォースターは葉山に序列剥奪の罰を与えた。

 

しかしあいつらがあの程度で落ち着くとは思えないな……

 

「まあ気にすんな。もしもなんか言われてもシカトすれば良い話だ。というか小町よ、新年早々葉山の話なんてするな」

 

普通に気分が悪くなるし、そんな話をしたらショッピングモールに奴らが現れるフラグだからな?

 

「ごめんごめん。次から気をつけるよ。じゃあ行こっか」

 

小町がそう言って歩き出すので俺達もそれに続く。今日から新しい年で、毎日が楽しいってことは無い。時には嫌な事もあるだろう。

 

それについては運命だからどうこう言わないが、せめて今日くらいは平和に終わってください。一年の計は元旦にありって言うし、初っ端から面倒な事に巻き込まれるのはゴメンだ。

 

 

そう思いながらエスカレーターを使って二階に上がると……

 

「うわぁ……」

 

見ればあらゆる店で福袋コーナーがあるが、戦場と化している。主婦同士のぶつかり合い、男性同士が星辰力を噴き出しながらぶつかり合っている。

 

「凄い戦いだね……まあ一般人と星脈世代が別々だから大怪我はしないと思うけど」

 

シルヴィが苦笑したように呟く。星脈世代と一般人がぶつかったら冗談抜きで死者が出る為、福袋コーナーでは星脈世代専用の福袋コーナーと一般人専用の福袋コーナーの二種類がある。(尚、レジで星脈世代かどうかを確認する)

 

「で?小町の欲しい福袋はどれだ?」

 

「えーっとね……アレだね」

 

見た先には女性用の洒落た服が売られている店だ。福袋が大量に積んであるが、時間にはなっていないので福袋コーナーの周囲には人が寄っていない。

 

しかし大量の女性が獣のように福袋を見ていた。お前らはハイエナかよ?

 

「うーん。見る限り序列入りしている人はいないし余裕じゃない?」

 

シルヴィの言う通り有名な人は居ないし、見る限り全員大した力量ではない。

 

「ですね。これなら大丈夫でしょう」

 

言いながら小町が店に向かうと遂に時間となった。ホイッスルが鳴ると同時に星脈世代専用コーナーの近くにいた沢山の女性が足に星辰力を込めて福袋に飛びかかる。福袋を手に入れるのにここまで全力なのはアスタリスクだけだろう。

 

しかし……

 

「おっ、小町の奴やるじゃん」

 

見れば小町は他の女性の体当たりや手による掴みを受け流してゆっくり、それでありながら一歩一歩進んでいる。

 

「……力づくに進むというよりは受け流す感じかしら?」

 

「そうだね。これが実戦なら相手の近接攻撃を受け流して隙が出来た所にハンドガンを叩き込む感じかな?」

 

シルヴィの言う通りだろう。魎山泊に入門した人間は基本的に反応速度を高める為に星露と戦うので、近接戦の腕は大きく上がる。その中で各々に適したスタイルを確立する感じだ。

 

例えば俺が指導している生徒は2人いるが、ワインバーグはマスケット銃型煌式武装を使った接近戦と自身の能力を複合したスタイルで、メスメルは能力で相手を攻めて、向こうが接近戦を仕掛けてきたら接近戦を応戦するスタイルだ。

 

 

小町の場合はおそらく接近戦で相手の攻撃を受け流して、隙が出来た所で校章を銃で撃ち抜くスタイルだろう。

 

これなら格上の相手でも勝てる可能性はある。小町の銃の展開の速さと相手に狙いを定め発砲する速度はアスタリスクでもトップクラスだ。星露はそこに目を付けて勧誘したのだろう。

 

そうこうしている間にも小町はどんどん前に進み、遂に福袋の1つを手に入れた。

 

「おー、やるね小町ちゃん」

 

シルヴィは軽く驚きを露わにして、オーフェリアも拍手をする。確かに凄い。以前より成長しているのはよくわかるが……

 

(魎山泊で身につけた技術を福袋争奪戦に使うって……)

 

いや、まあ、手に入れた技術をどう使うかは自由「いただきですのー!」……この声は。

 

嫌な予感がした俺は視線をズラすと、少し離れた店で俺が魎山泊で面倒を見ているヴァイオレット・ワインバーグがハイテンションで福袋を持っていた。

 

(お前もかワインバーグ……)

 

見ればシルヴィも苦笑してるし。確かに今のワインバーグの身体能力なら余裕だろうけどさ……

 

呆れる中、ワインバーグは福袋も持って俺達がいる方向とは真逆の方に去って行き、福袋を売る準備をしている店に向かう。どうやら奴は何軒もの福袋争奪戦に挑むようだ。

 

「お待たせー……って、アレ?どしたの?」

 

呆れる中、小町がハイテンションで戻ってくるが、俺の顔を見て不思議そうな表情を浮かべる。

 

「いや、さっき魎山泊の人間がいて、お前と同じように鍛えた技術を利用して福袋を手に入れた奴がいたんだよ……」

 

「え?!誰それ?!小町、魎山泊のメンバーはユリス先輩とマクフェイル先輩しか知らないから教えて!」

 

マクフェイル?確か以前リースフェルトに突っかかりまくっていたアイツか。星露の奴、本当に色々な奴に声をかけてるな。

 

「悪いが無理だ。星露からは口止めをされてるんでな」

 

基本的に魎山泊の話は箝口令が敷かれているので話すのは厳禁だ。別に話しても星露がブチ切れるとは思わないが、鍛えて貰っている俺からしたら義理を欠くことになるから小町が相手でも教えるつもりはない。

 

「そっか。じゃあ仕方ないね」

 

小町は俺の本気度を理解したからか特に不満を漏らさずに頷く。納得してくれて何よりだ。

 

「悪いな」

 

「別に良いよ。それよりも次のお店に行こうよ!」

 

「わかった。あ、それが終わったらパフェを食べようぜ」

 

元々俺がショッピングモールに来た理由の1つは新年限定のパフェを食べる事だから。

 

「良いよ。小町もそれ食べたいし」

 

言いながら小町がエスカレーターに向かうので俺達はそれに続く。そして上に向かおうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ』

 

下の階から葉山率いるガラードワースの面々が俺達のいる階に上がってきたのだ。

 

……あーあ、フラグが成立しちゃったよ。新年早々面倒な事になりそうだな。

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