学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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なんだかんだ比企谷八幡はチョコを貰う(後編)

俺は今アスタリスク市街を影狼夜叉衣を纏って高速で走っている。前にいる人間はこちらを見て驚きを露わにするが、次の瞬間には通り過ぎている。

 

メスメルとオカンシャ『ブランシャールですわ!』……ブランシャールからチョコを貰った俺は恋人から連絡が来たので自宅に向かっている。なんか今頭の中にブランシャールの声が聞こえきたような気がするが気にしない。

 

恋人2人が作ってくれたチョコだ。今すぐにでも堪能したい。俺は影狼夜叉衣に備わった翼に星辰力を込めてただ走る。今の俺は誰よりも速い自信がある。それこそ封印を全て解除した天霧や、身体強化されたシルヴィ、アスタリスク最強と評される星露よりも速い自信がある。

 

そんな風に全速力で進むこと3分……

 

「到着っ……!」

 

俺とオーフェリアとシルヴィの愛の巣に着いたので影狼夜叉衣を解除して早足で玄関に向かいインターフォンを押す。

 

『はーい』

 

すると愛しき恋人のシルヴィの声が聞こえてくる。あぁ、声を聞くだけで幸せななる……

 

「俺だシルヴィ、ただいま」

 

『あ、八幡君おかえり。今から30秒してから鍵を開けてくれない?』

 

「わかった」

 

そう言いながら俺は玄関の前に立って鍵を取り出す。同時に家の中からドタバタした音が聞こえてくる。音が徐々に近づくのを聞く限り玄関に向かっているのだろうが、なにをしているかはわからない。

 

(まあ2人の事だから変な事はしてないと思うが……っと、もう30秒だな)

 

言われた時間が経過したので鍵を使ってドアを開ける。するとそこには……

 

「「おかえりさない、貴方♡」」

 

ちゅっ……

 

恋人2人がメイド服に似た可愛らしい服を着て俺を迎えるや否やキスをしてくる。いきなりの行動に驚きはしたものの、俺も2人にキスを返して2人の想いに応える。

 

「ちゅっ……ただいま。その格好、凄く良いぞ」

 

初めて見る格好だが、2人とも凄く可愛い。今すぐにでもベッドに押し倒して甘えたいくらいだ。

 

「ありがとう。今日に備えて買ったんだけど……」

 

「……八幡に喜んで貰えて嬉しいわ」

 

シルヴィは満面の笑みを、オーフェリアは小さくそれでありながら確かな笑みを浮かべてくる。ダメだ、やっぱり俺の恋人は最強だな。

 

「今日の為ってことはバレンタイン専用の衣装か?」

 

「もちろん。……あ!でも八幡君がこの衣装が好きなら偶には着るよ」

 

「……八幡が何度も見たいなら何度も見せてあげる……それよりも鞄を預かるわ」

 

オーフェリアが手を差し出してくる。まるで新婚したばかりの妻が夫を迎い入れるように。

 

「じゃあ……ほらよ」

 

カバンを渡す。

 

「んっ……………八幡、随分チョコを貰ったわね」

 

するとオーフェリアが面白くなさそうな表情をしながらそう言ってくる。改めて自分のカバンを見ると大量のチョコが見える。

 

「ふーん……八幡君結構モテるんだね」

 

するとシルヴィも膨れっ面を浮かべながら俺を見てくる。俺が帰ってくるまでに貰ったチョコは……イレーネ、プリシラ、樫丸、若宮、蓮城寺、フェアクロフ先輩、アッヘンヴァル、フロックハート、ワインバーグ、小町、リースフェルト、メスメル、ブランシャールから計13個貰った。アスタリスクに来る前は小町以外からは貰ってないのでかなり貰っているだろう。

 

しかし……

 

「いやこれ全部義理だからな?」

 

間違いなく全部義理だろう。大抵がお礼としてチョコを渡していたし。というか一部の相手は俺じゃない奴に本命がいるし。

 

それ以前に……

 

「仮に本命が混じっていたとしても、俺が異性として愛するのはお前ら2人だけだ」

 

あり得ないが、もしも仮に貰ったチョコに本命が混じっていたとしても、そいつの想いに応えるのは無理だ。気持ちはありがたいが俺はオーフェリアとシルヴィ以外の女子を愛するつもりはない。

 

すると2人は途端に不機嫌そうな表情を消して笑顔になる。

 

「そっか……なら良かったよ」

 

「……ヤキモチを妬いてごめんなさい」

 

「別に気にしてない。それよりもお前らのバレンタインチョコを食べたい」

 

俺は2人のチョコを一番最初に食べると決めていたのだ。さっき連絡が来た時からずっと待ち望んでいたから早く食べたい。

 

「うん、じゃあリビングに来て」

 

シルヴィがそう言ったのでリビングに向かうと……

 

「うおぉ……」

 

 

テーブルにはチョコレートソースのかかったステーキを中心とした美味そうな料理があり、中央には見るだけで口の中が甘くなりそうな雰囲気を醸し出すチョコレートケーキが堂々と置いてある。

 

「チョコレートを使った料理は初めてだけど……八幡君の為に頑張ったんだ」

 

「八幡の口に合ったら嬉しいわ」

 

2人は健気にもそんな事を言ってくる。俺の為に慣れない料理を頑張って作るなんて男冥利に尽きるな……マジで幸せ過ぎて死んでしまうかもしれない程だ。

 

とはいえこんな料理を目の前にして我慢は身体に毒だ。是非とも頂こうじゃないか。

 

そう思いながらステーキをナイフで切って口に入れると……

 

「美味え……」

 

思わずそう呟いてしまう。ステーキにはデミグラスソース派だが、チョコレートソースも中々捨て難い。ちゃんとステーキそのものとマッチしていて最高だ。

 

「本当?ふふっ……」

 

「嬉しいわ。八幡の為だけに作ったのだから……」

 

両隣に座る2人は愛おしそうに俺の足をさすってくる。俺こそ大切な2人にこんな美味いものを作って貰えて嬉しいよ。

 

そう思いながらも2人の作った料理を全て美味しく平らげて、いよいよケーキを食べることになる。

 

すると2人はケーキをフォークで小さく取って俺に突き出し……

 

「「八幡(君)、あーん」」

 

「んっ、あーん」

 

俺にあーんをしてくるので口を開けてあーんされる。すると口の中に甘過ぎない甘味が広がる。加えて味も上品、店で売っても金を稼げてもおかしくないと思える。

 

「それは無理かな。これは八幡君の為だけに作ったから」

 

「私達の愛を込めたケーキは八幡以外には食べさせないわ」

 

「気持ちは嬉しいがナチュラルに心を読むな」

 

前に何故俺の心を読めるのかと聞いたら2人揃って『愛する人の考えなんて直ぐにわかる』なんて言ったが、だからといってここまでハッキリとわかるのだろうか?

 

いや、2人が特別なだけだろう。というか彼氏持ちの女子全員がオーフェリアとシルヴィのように心を読めたら普通に怖い。

 

(まあ2人になら俺の心を知られても構わないけどな……)

 

俺はオーフェリアとシルヴィを本当に愛している。最近は口に出す事もあるが、正直に言うと言い足りないと思えるくらいに。

 

2人の言うことが本当なら俺が2人を心の底から、誰よりも愛している事を知って貰えるのだから。それは嫌ではなく凄く嬉しい事だ。

 

(今の気持ちも……知ってるみたいだな)

 

見れば2人はさっきよりも優しい表情を浮かべて再度あーんをしてくる。これは逆らえないな……

 

俺は苦笑を浮かべながら再度あーんをされる幸せな時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ。ワインバーグはともかく、メスメルの方には鎧を身につける方法を伝授するべきか?」

 

食後、俺は自分の部屋で魎山泊のメンバーのワインバーグとメスメルがくれたチョコを食べながら、ワインバーグとメスメルが俺や星露と戦っている記録を見ながらそう呟く。一応星露のアシスタントとして真面目に仕事はしているつもりである。

 

とはいえメスメルはともかく、ワインバーグについては実戦経験を積ませる事は出来ても具体的なアドバイスをするのはメスメルよりも難しい。

 

なぜならワインバーグの能力はあらゆる種類の砲弾を生み出す攻撃に特化した能力であり、俺のようにバランスタイプの能力者が教える事は限られている。

逆にメスメルは足元から茨を生み出す能力者で、自身の足元にある影を使用して戦う俺と似ているのでアドバイスがしやすい。

 

近いうちに影狼修羅鎧に似た茨の鎧を、最終的には影神の終焉神装に似た茨の装備を教えるつもりだ。

 

強剛な鎧は肉体にかかる負荷や消費する星辰力が半端ないので余り教えなくないが……

 

「あそこまで頼まれたらな……」

 

メスメル本人から影神の終焉神装に匹敵する装備を教えてくれと何度も何度も頭を下げられ、終いには土下座をしそうだったので最終的に俺が折れた。あそこまでされたら教えない訳にはいかない。

 

ともあれ、アレは教えるのに時間がかかるので他の事もやらないといけない。

 

俺は端末を取り出してメールを作成する。送り先はレヴォルフの装備局だ。装備局は以前材木座が作った『ダークリパルサー』を解析したので量産が可能となったので、メスメルに使用する分を作って貰うことにした。表向きは俺の為としておいて?

 

『ダークリパルサー』の恐ろしさはガラードワースの人間なら知っているだろう。何せ絶対王者のチーム・ランスロットを倒すきっかけとなった武器なのだから。

 

そして俺と戦闘スタイルが似ているメスメルが持てば、格上相手に勝てる可能性が増えるだろう。

 

え?レヴォルフの装備局で量産した武器をガラードワースの生徒に使わせて怒られないかって?大丈夫だろう、責任は製作者である材木座が取るだろうし。というか取らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

 

「むっ!なんか嫌な予感と寒気がしたのである!」

 

「どうしたの将軍ちゃん?前者はともかく寒いのは冬だから当たり前じゃん」

 

「おじいちゃん変なのー」

 

「いや、寒さとは別の寒気が……というかレナティ殿!おじいちゃん呼びはマジで止めて!我カミラ殿……レナティ殿の父より若いのであるからな!」

 

「にゃははー、細かいことは気にしない気にしない」

 

「きにしないきにしなーい」

 

「ちょっ、待っ……レナティ殿?!抱きつくのはノォッ!」

 

「相変わらず将軍ちゃんは煩悩塗れなのに純粋だなぁ……レナティ 、おじいちゃんはレナティをおんぶしたいって」

 

「はーい。おじいちゃん、おんぶー」

 

「エルネスタ殿ォォォォッ!」

 

 

 

 

 

 

 

なんか今材木座の悲鳴が聞こえたような……気の所為だな。

 

とりあえず『ダークリパルサー』の追加の量産申請はしたし「八幡君、お風呂湧いたし一緒に入ろうよ」……風呂に行くか。

 

俺は空間ウィンドウを閉じてクローゼットに向かって着替えを取り出して、自室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから20分後…….

 

「ねぇ八幡君、お願いがあるんだけど」

 

湯船に浸かっていると俺の背中に抱きついているシルヴィが耳元で囁いてくる。前方ではオーフェリアが俺に抱きついて甘えているが、既に何百と経験したことなので特に緊張しないでいる。慣れってのは恐ろしいな。

 

「なんだよ?」

 

「うん。あのさ、もうすぐ私とオーフェリアは出るけど……八幡君は私達が出てから5分くらいしてから出てくれないかな?」

 

ん?シルヴィ達が上がってから5分後に上がれだと?

 

「それは構わないが、何故だ?」

 

理由がわからん。先に上がってイタズラでもするつもりか?まあ2人にならイタズラをされても良いけどさ。

 

「……私とシルヴィアが八幡に第2のバレンタインの準備をしたいから」

 

疑問符を浮かべているとオーフェリアがそんな事を言ってくる。第2のバレンタインだと?意味がわからん。第2なんてしなくても飯の時に渡せば良くね?

 

「よくわからんがわかった」

 

なんだか知らないがとりあえず了解する。イタズラをするにしてもそこまで悪質なものじゃないだろうし。

 

「ありがとう。じゃあオーフェリア」

 

「……ええ。じゃあ私達はベッドで待ってるから」

 

2人はそう言って一糸纏わぬ姿で風呂から上がる。そして扉越しに身体を拭いているのがわかる。

 

(マジで何を企んでるんだか……)

 

そう思いながらも俺は湯船に浸かりながら時計を見る。しかしいつもは一緒に上がるからか、2人がいなくなった途端に寂しくなるな……

 

マジで『オーフェリアとシルヴィがいないと死んじゃう病』になったのかもしれん。

 

そんなアホな事を考えていると5分が経過したので俺も風呂から上がり身体を拭き、パジャマに着替える。

 

そして脱衣所を後にして階段を上る。さてさて、どんな事をしてくるんだが……

 

若干緊張しながらも遂に俺の部屋の前に到着したのでノックをする。

 

『入って良いよ』

 

シルヴィの声が聞こえてきた。どうやら入って良いようだし行くか。

 

「すぅ……はぁ……邪魔するぞ」

 

俺は一度深呼吸をしてから部屋に入る。するとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お、おかえり、八幡(君)」」

 

一糸纏わぬ姿に真っ赤なリボンをーーー所謂裸リボン状態のオーフェリアとシルヴィが身体に巻いてあるリボンのように真っ赤にしながらベッドの上にいた。

 

え?マジで何なのこれは?俺の願望が具現化したものなのか?正直言って凄くエロいんですけど?

 

俺が絶句していると……

 

「は、八幡」

 

オーフェリアが真っ赤になりながらも話しかけてくるので再起動する。

 

「お、おう!どうした?その格好は……」

 

「うん。少し恥ずかしいけどこれが私達の第2のバレンタイン……」

 

「だから八幡……」

 

そこまで言うと2人は真っ赤になった顔を上げて……

 

 

 

 

 

 

 

 

「「八幡(君)、私達をた・べ・て♡」」

 

蠱惑的な笑みを浮かべながら俺を誘ってきた。

 

次の瞬間、俺の中の何かが吹き飛んでベッドに飛び込み、2人の唇を奪いながら、両手で2人の胸や腰、尻や女子だけが持つ聖域を触れ始める。

 

もう無理だ。そんな刺激的な格好で誘われたら断れない。俺は獣のように2人を食い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

それ以降、俺の記憶はなく、気がつけば俺自身も裸になっていて、俺と同じように裸のオーフェリアとシルヴィに抱きつかれながらベッドの上で仰向けで寝ていた。

 

翌日になってその時の事は殆ど覚えてなかったが、幸せだったのは確かだった。


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