学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡の公式序列戦が始まる(中編)

売店に行きハンバーガーセットとコーヒー2つを買った俺は休憩場所に戻ると相変わらずオーフェリア1人だけだった。

 

「ほれ」

 

適当に買ったコーヒーを渡しオーフェリアの隣に座る。

 

「ありがとう」

 

いつもの表情でコーヒーを飲み始めるので俺も買ったハンバーガーセットを食べ始める。

 

画面では序列外の人間が序列入りに挑んでいるが……余り盛り上がってない。まあさっきまでレヴォルフの序列1位2位3位の3連続の試合だったからな。

 

とりあえず俺が賭けてる試合は……よし、順調だな。これなら割と稼げる。携帯を見ながら笑っているとオーフェリアが見てくる。

 

「……八幡も賭けとかするのね」

 

「偶にイレーネに付き合わされる。意外か?」

 

「そうね。別に悪い事とは言わないわ」

 

「そいつはどうも」

 

オーフェリアの冷たい瞳で引かれたら結構……あれ?ヤバい、結構ゾクゾクする。

 

若干ドMに目覚めかけているとオーフェリアの腹が鳴る。当の本人は特に恥ずかしがる素振りを見せていないが。俺は気にしないが女の子なら少しは恥じらいを持てよ。

 

俺はため息を吐きながら無言でオーフェリアにポテトを差し出す。オーフェリアは俺を見てくるので首で促すとポテトを口にする。

 

「……ポテトなんて久しぶりに食べるわね」

 

「そんなにか?」

 

「ええ。昔孤児院にいた頃に食べていたわ」

 

孤児院……確かリーゼルタニアだっけ?星導館のお姫様の国だったな。

 

「ふーん。まあ美味けりゃそれでいい」

 

モグモグ食べているから少なくとも不味いと思ってはいないだろう。

 

「そういやオーフェリア。お前今日序列戦終わったら暇か?」

 

「……?いきなりどうしたの?」

 

「いやこの後妹と会うんだがお前に会いたいらしくて」

 

オーフェリアと知り合っているのを知って以降会わせろ会わせろって言ってくるし。

 

「用事はないけど……無理ね。八幡は効かないから忘れているのかもしれないけど私は常に周囲に毒素を撒いているのよ。八幡の妹に害を及ぼしたら悪いわ」

 

あー、そうだった。俺は体内を影でコーティングしているからオーフェリアの毒は効かないが小町には耐えられないだろう。

 

「それに……私みたいなつまらない人間と知り合っても八幡の妹は喜ばないわ」

 

オーフェリアはそれがさも当然の様に言ってくる。しかし俺はそれに対して異を唱える。

 

「そうか?俺はお前をつまらないと思わないし優しいと思うぞ?」

 

そう返すとオーフェリアはほんの少し、しかし確実に驚きを顔に浮かべながら俺を見てくる。

 

「優しい?本気で言っているの?」

「いやだって俺がパンを落とした時にはくれたし、今だって小町に悪いと思って遠慮したじゃん。普通に優しいと思うが」

 

オーフェリアに近寄ると毒に襲われると悪魔扱いしている人が多いが、オーフェリアの毒を防げる俺からすれば話してみればリアクションは薄いが普通の人間だと思うし。

 

「………」

 

「何だよ?鳩が流星闘技くらったような顔しやがって」

 

「別に……今の私を優しいなんて言う変わり者なんて八幡ぐらいと思っただけよ。後、鳩がくらうのは豆鉄砲よ」

 

「流星闘技は軽い冗談だが……俺ってそんな変わり者か?」

 

「王竜星武祭でMAXコーヒー飲み放題を願う人は普通に変わり者よ」

そこを言われると何も言えないな。これはシルヴィや小町も呆れるくらいだし。

 

「へーへー。どうせ俺は変わり者ですよ」

 

んな事は自分でもわかっている。

 

「……でも、あなたは優しい人。こんな私にいつも優しくしてくれる本当の変わり者」

 

「……っ」

 

無表情でそう言ってくるがハッキリと言うな。別に俺は特に優しくしたつもりはない。だから優しいって訳じゃない。

 

……なのに、オーフェリアに言われると……悪くない気分だ。

 

「……そいつはどうも。俺を優しいって言うなんてお前も変わり者だな」

 

「そうね。私も八幡も変わり者」

 

それについては否定しないがはっきりと言うなよ……しかも自分自身の事も変わり者呼ばわりしてるし。

 

そんなオーフェリアを見て苦笑していると俺の端末が鳴り出した。それはつまり今からイレーネと戦うって事だ。

 

「じゃあ俺は先に行く」

 

「……ええ。頑張って」

 

「お前もな」

 

そう返しながら再度控え室に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージに出ると再び歓声が上がる。一部では「やれー!」だの「ぶ

っ殺せー!」って聞こえてくるがこれは絶対にレヴォルフだけだろう。

 

そう思いながら反対側のゲートを見ると対戦相手のイレーネがやって来た。それにより更に歓声が大きくなる。

 

しかし俺は歓声を無視してイレーネと彼女の肩に担がれている純星煌式武装『覇潰の血鎌』に意識を集中する。イレーネとは何度かやり合った事があるがあの純星煌式武装はあんまり好きじゃない。はっきり言ってやり辛い。

 

俺も腰にある黒夜叉とレッドバレットを抜くとイレーネが不敵な笑みを浮かべてくる。

 

「そういや、お前とは決闘は良くするが公式序列戦でやるのは久々だな」

 

言われて思い出してみる。確かに公式序列戦でやったのは半年前だ。

 

「そうだな。まあ勝つのは俺だ」

 

「言ってろ。今日こそ不動の2トップの一つを貰うぜ」

 

そう言って『覇潰の血鎌』を軽く振るう。いつでも準備万端のようだ。

俺が改めて息を吐くと……

 

 

『試合開始!』

 

試合開始のアナウンスが流れると同時に動き出す。

 

「影の刃」

 

そう呟くと俺の影が地面から刃の形状となり一直線でイレーネに突き進む。

 

「はっ!単体のそれは怖くねーよ!」

 

イレーネは笑いながら軽いステップで回避する。まあこんな挨拶を避けれない奴が冒頭の十二人にいる訳がないよな。

 

だったら……

 

「影の刃群」

 

改めて次の能力を発動する。

 

それによってさっきイレーネに飛ばした影の刃は何百もの小さい刃となって散弾のごとく多方向に襲いかかる。それと同時にレッドバレットをイレーネに狙いを定めて放つ。

 

これが俺の基本的なスタイルである。影の刃群による攻撃で倒せれば良し、倒せなくてもレッドバレットで相手の気分を悪くしてコンディションを下げれば問題ない。

 

事実このスタイルはオーフェリア以外の相手には必ずと言っていいくらい利用している。オーフェリアにはこんな小細工効かないから特別なスタイルで挑んでいるけど。

 

 

「ちぃ!相変わらずいやらしい攻撃だぜ!」

 

そう言ってイレーネは『覇潰の血鎌』を振るって影の刃を破壊しながら銃弾を避ける。しかし完璧に両方をこなすのは不可能のようでレッドバレットの弾丸は何発か受けた。後5、6発当てたら乗り物酔いに近い頭痛を与えられる。そうすりゃ一気に有利になる。

 

「てか重力は使わないのか?」

 

「お前相手に無闇に使ったら負けるだろうが!」

 

あー、そうだった。『覇潰の血鎌』は所有者の血液を奪うんだった。補給役の妹のいないイレーネは乱発は厳禁だろう。

 

(……と、なると俺の隙を突く際に使うはずだ)

 

なら簡単だ。隙の少ない攻撃で削りながら大技で倒す。

 

そう判断した俺は自身の影に星辰力を込める。すると影の一部が地面から離れ形状を変えて散弾銃となった。

 

それが俺の手に渡ると同時に躊躇いなく引き金を引く。すると銃口から50近くの弾丸が一斉に放たれる。

 

更に畳み掛ける為再度影に星辰力を込め影の刃群をイレーネ目掛けて放つ。

 

「ちっ!重獄葦!」

 

対してイレーネは舌打ちをしながら『覇潰の血鎌』を横に振るう。するとイレーネの前方に紫色の壁が現れて全ての影が防がれた。

 

(……やっぱこの程度で純星煌式武装は破れないか。だったら……)

 

「影よ」

 

そう呟くと同時に影が俺の体に纏わりつき地面に引きずり込まれ影の中に入る。幸いイレーネには紫色の壁があるから見られていないだろう。

 

影に入ると同時に俺はイレーネの後ろに回りこむ為に移動を始めた。

 

イレーネの真横あたりに着くと紫色の壁が消えた。するとイレーネは俺がいない事に気付いて一瞬驚いた顔をするが直ぐにキョロキョロし始める。イレーネは間違いなく俺が影に潜っているとわかっているだろう。

 

だが……遅い。俺は既に後ろに回り込んでいる。

 

 

 

俺は影から出てそれと同時にレッドバレットを乱射する。後ろからの不意打ちの為イレーネは10発近く被弾した。これでイレーネにかなりの強さの頭痛が襲うだろう。これなら一気に楽になるな。

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうっ!十重壊!」

 

イレーネは顔を顰めながらも『覇潰の血鎌』を振るって自身の周囲に複数の黒い重力球を出して俺に放つ。

 

それと同時に影の壁を作るも全ての重力球を防ぐ事は出来ずに2発防ぎ損ねてこちらに向かってくる。

 

1発は迎撃しようとしたレッドバレットに当たる。それと同時に重力球は一気に縮小して、レッドバレットを飲み込んで弾き飛ばした。

 

残った1発は俺の体に当たる。するとさっき同様、重力球は縮小して一気に重力が増し俺に襲いかかる。

 

「ぐううううっっ!!」

 

それによって地面に押し付けられ、高重力に体中が軋む。ヤバい……

 

「か、影よ」

 

俺は痛みに堪えながらも半ば無理やり影に星辰力を込める。それによって影が俺の体に纏わりつき地面に引きずり込まれる。

 

影の中に入ると高重力による苦しみはなくなった。とりあえず負けは回避したな。

 

安堵の息を吐いていると地表ではイレーネが苛ついた表情を見せている。

 

「ちっ!これだから八幡はめんどくせーんだよ!他の連中なら今ので勝ってたのに!」

 

それについては同感だ。あの状態からどうにかなるのは影の中に逃げられる俺ぐらいだろう。

 

 

(……しかし今回は俺のミスだ)

 

イレーネに頭痛を与える事に成功して一瞬油断した。純星煌式武装相手にそれは厳禁だ。

 

 

油断こいた所為で小さくないダメージをくらったな。このままじゃ負けるかもしれん。

 

(……いや、負けるのは嫌だ)

 

オーフェリアに勝つ事を目標としている者としてオーフェリア以外に負けていられない。

 

そう判断した俺は作戦を変更した。初めは長期戦にするつもりだったが短期決戦にする事にした。久々に本気を出すとするか。

 

(さて……オーフェリアとシルヴィ以外に使うのは初めてだが……まあイレーネの実力なら過剰攻撃扱いにならないだろう)

 

最強のカードの一つを切ると決めた俺は目を閉じてゆっくりと、それでありながら大量の星辰力を練り始める。

 

体全体に星辰力が渡ったのを確認して口を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「纏えーーー影狼修羅鎧」

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