学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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ウォーターサバイバルは色々な意味で盛り上がる

ウォーターサバイバル

 

星導館学園の水泳部と射撃部による共同開催イベントで、簡単に言うとプールに浮かぶ浮島を跳び回り水鉄砲を使って自分以外の人をプールに叩き落とすサバイバルゲームだ。

 

ルールとして水鉄砲以外による攻撃ーーー相手を殴るなど直接攻撃や能力の使用の禁止があるが、それ以外は基本的にルール無用だ。

 

浮島を星脈世代の男女が高速で跳び回り、水鉄砲による激しい撃ち合いが高い人気を誇っているイベントである。

 

そんな星導館屈指の人気イベントを俺を観戦しているが……

 

 

 

『あぁっと!ここでランドルーフェン選手!沙々宮選手の水鉄砲を顔面にモロに食らって脱落っ!世界最強の魔女も純粋な水鉄砲の撃ち合いでは分が悪かったぁっ!』

 

「あぁ……よく頑張ったぞオーフェリア」

 

「やはり能力抜きだと厳しいですね」

 

「寧ろ長く保った方よ。オーフェリアは能力以外の遠距離戦のデータはないし」

 

「う、うん……それにソフィア先輩よりマシだよ……」

 

中々楽しんでます。ステージではオーフェリアが沙々宮の水鉄砲による一撃を食らってバランスを崩して浮島からプールに落ちていた。

 

ゲーム開始時には40人いたが今はシルヴィ、小町、沙々宮、若宮と、俺の恋人と妹と知り合いの4人だけだ。

 

4人は高い機動力を発揮して浮島を八双飛びよろしく跳び回って水鉄砲を撃ち合う。

 

しかし……

 

『若宮選手、当たらない!ゲーム終了までに当てることが出来るのか?!』

 

若宮の射撃の腕が酷過ぎる。何せ実況の言う通り若宮は、水鉄砲で1人も落としてないどころか、1発も当ててないレベルだ。そりゃ今まで近接戦しかやってないから仕方ないっちゃ仕方ないが……

 

それでも脱落してないのは高い機動力で他の人の攻撃を全て回避したからだ。被弾した回数も参加者の中でも少ない方だろう。

 

ちなみにフェアクロフ先輩は開始10秒もしないでポンコツが発揮されて、違う浮島に飛ぶが着地をした瞬間足を滑らせてプールに落ちた。このゲームが終わって合流したら物凄く悔しがるのが容易に想像できる。

 

そう思いながらもステージを見ると沙々宮が動き出す。足に星辰力を込めて浮島を破壊するかのように強く蹴り、若宮との距離を詰めにかかる。どうやら痺れを切らしたようだ。

 

対する若宮は方向転換しながらも牽制射撃をするも、逃げながらの射撃では沙々宮に当てることを出来ずにいた。

 

そして沙々宮が飛び移った浮島に着地して再度足に星辰力を込めて浮島を蹴ると同時に小町も動き出す。沙々宮と同様、足に星辰力を込めて大跳躍をして若宮の上に回り、上空から射撃をする。

 

同時に沙々宮も射撃を開始する。狙いはバランスを崩すべく両者共に若宮の左足に。

 

水鉄砲と言ってもただの水鉄砲ではない。サバイバルゲームに使う水鉄砲であるので高威力に改造されている。

 

そんな水鉄砲による二撃が足に当たれば……

 

『若宮選手、ついに脱落!高い機動力で逃げ続けていたが、中距離特化の比企谷選手と沙々宮選手の相手はキツかったようだ!』

 

若宮がプールに落ちる。それによって後はシルヴィ、小町、沙々宮の3人だ。しかし直ぐに1人脱落するだろう。何故なら……

 

「やっぱ小町が狙われたか……」

 

シルヴィと沙々宮は空中にいる小町を集中して狙う。自由のきかない空中にいる小町を落とすのは妥当な判断だ。対する小町は持ち前の射撃技術で2人の射撃を相殺するも2対1故に全てを凌ぐ事は出来ずに身体に何発も直撃する。

 

しかし小町は特に焦ることなく体勢を崩しながらも果敢に反撃してシルヴィと沙々宮に攻撃を当てる。空中、それも体勢を崩した状況で正確に2人を狙える技術は並大抵ではない。おそらく魎山泊で星露が鍛えたことによって開花した才能なのだろう。

 

それにしても……

 

「小町マジでカッケェな……お兄ちゃん嬉しい」

 

少し前、それこそ鳳凰星武祭の時に比べて格段に腕を上げている。兄としては嬉しい限りだ。

 

「貴方、もしかしてシスコン?」

 

感動しながら写真を撮っていると、フロックハートが呆れ顔を向けてくるが何を言っているんだ?そんなこと……

 

「当たり前だろ」

 

「即答……」

 

フロックハートとアッヘンヴァルが呆れた表情を、蓮城寺は苦笑を浮かべているが、妹を愛して何が悪い?小町は家族として心から愛して入り自信があるからな。自慢の妹だ。それこそ目に入れても痛くないほど可愛いと断言出来る。

 

そんな事を考えているとシルヴィが水鉄砲を未だに空中にいる小町に向けるのを止めて標準を下の方に合わせる。何をするつもりだ?

 

頭に疑問符を浮かべるなか、小町は浮島を移動する沙々宮の肩に水鉄砲を直撃させる。沙々宮はよろめき浮島に倒れるもプールには落ちていない。

 

同時に小町は近くの浮島に着地しようとするが、その前にシルヴィと沙々宮が新しい一手を打った。小町の足が浮島に着く直前に、2人は小町の足が着きそうな場所に水鉄砲を放つ。放たれた水弾は一直線に進んでいき……

 

『おおっと!リューネハイム選手と沙々宮選手の放った一撃が比企谷選手の右足に直撃!これは大きい!』

 

小町の右足に当たり、小町は着地に失敗して浮島から落ちかける。まだプールには落ちていない。体勢を立て直せば特に問題なく復帰出来るだろう。

 

(まあそんな隙を2人が見逃すはずはないだろうがな……)

 

内心ため息を吐きながらステージを見ると、シルヴィと沙々宮は一切の容赦なくよろめいている小町の足に再度水弾を撃ち込む。幾ら小町でも体勢を崩した状態で足に2発も水弾を食らえば……

 

「小町も脱落か……」

 

当然のようにプールに落ちる。これでシルヴィと沙々宮のタイマンとなる。

 

「美奈兎を逃げ難くするように上に跳んだのは悪くない戦術だったけど……2人の射撃技術の高さが予想以上だったわね」

 

だろうな。他の連中の場合、浮島に着地しようとする小町の足をピンポイントで狙うのは至難の技だ。褒めるべきはシルヴィと沙々宮ね射撃技術の高さだろう。

 

「これで一騎打ち……八幡さんはどちらが勝つと思いますか?」

 

蓮城寺はそう言ってくるが判断が難しい。

 

「そうだな……身体能力はシルヴィの方が圧倒的に上だが、動体視力とバランス感覚は沙々宮の方が上だし、時の運もあるし……」

 

「つまり、予想がつかない……?」

 

「まあそんな所だ」

 

アッヘンヴァルの問いにそう答える中、シルヴィと沙々宮が向かい合い、両手に水鉄砲を構えて自身らのいる浮島を蹴って互いの距離を詰めて両手に持つ水鉄砲の引き金を引いた。

 

それでありながら即座に回避して、すれ違いながら浮島を八双飛びよろしく飛び回る。それでありながら銃を撃つのは止まらない。

 

レベルの高い戦いに会場のボルテージは最高潮に達する。これはあたかも星武祭の本戦のようで俺自身もテンションが上がるのを実感する。

 

 

(負けるなよ、シルヴィ……)

 

俺が見守る中、シルヴィと沙々宮は再度距離を詰めながら引き金を引き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という訳でゲームを制したのはクインヴェール女学園のシルヴィア・リューネハイムさんです!」

 

実況の声と同時に歓声が上がる。最後の激戦でシルヴィは沙々宮をプールに落とした。しかしタイマンが始まってから5分近く戦ったので良い勝負だったと断言出来る。

 

「ではシルヴィアさん、一言お願いします」

 

トロフィーを持った実況がシルヴィに近寄りマイクを差し出すと、シルヴィはマイクを受け取り……

 

 

 

「八幡君、優勝したよ!」

 

それはもういい笑顔でピースを俺にしてきた。瞬間、周囲の人間が一斉に俺を見てくる。てかフロックハートに蓮城寺にアッヘンヴァルは距離を取るな。泣くぞ?

 

そんな事を考えていると……

 

「なるほど、彼氏の為に頑張ったと……それならトロフィーを渡すのも私より彼氏の方が良いでしょう!比企谷八幡さん、お願いしまーす!」

 

「ふあっ?!」

 

実況の人が予想外の事を言ってくる。え?!俺がやるの?!これにはシルヴィも驚きの表情を浮かべている。

 

俺が絶句している間にも実況は俺に話しかけてくる。

 

「比企谷さーん。次のゲームの時間が押してるので早くお願いしまーす」

 

『そうだそうだ!』

 

『早く上がりなさいよ!』

 

『今更恥ずかしかってんじゃねぇよバカップルが!』

 

『シルヴィアたんに手を出してんじゃねぇよ……!はぁはぁ……』

 

観客は実況の声に便乗して俺に文句を言ってくる。一部は違う事を言っているが。

 

(これは逃げられそうにないか……)

 

内心ため息を吐きながらも俺は背中に星辰力を込めて影の翼を生み出してプールの上にある表彰台に向かう。

 

「では比企谷さん、お願いします!」

 

実況はそれはもう良い笑顔でトロフィーを渡してくる。この野郎、後で半殺しにしてやる。

 

殺意を滾らせながらも、俺はトロフィーを受け取ってシルヴィに近寄る。同時にスク水を着たシルヴィが目に入る。間近で見ると凄くドキドキしてきた。

 

「あー……えっとだな……優勝おめでとう、シルヴィ」

 

最初の部分はしどろもどろになってしまうも、シルヴィにトロフィーを渡す。

 

「うん、ありがとう八幡君。凄く嬉しい」

 

シルヴィはそう言ってからトロフィーを受け取る。同時に観覧席から大量の拍手が生まれる。とりあえずこれで俺の仕事は終わりだな。

 

「比企谷さん、ありがとうございました。ちなみにですが……キスはしないのですか?!」

 

「ぶっ……!い、いきなり何を言ってんだよ?!」

 

予想外の言葉に思わず吹き出してしまう。こいつはさっきから……

 

呆れている時だった。

 

『そうだ!キスしろよ!』

 

『普段あれだけキスしてんだから出来るだろうが!』

 

『キース!キース!』

 

『キース!キース!キース!キース!』

 

観客がそんな事を言ってやがてキスコールになる。見れば小町や沙々宮もキスコールをしてるし、あいつらには後でアイアンクローの刑に処してやる。

 

(しかし少し前までは俺に対してアンチが多かったんだが……これはこれでウザいな…….)

 

俺達3人のキスシーンがネットに流れた当初は俺に対するアンチが強かったが、今年に入ってからは街中でもイチャイチャしまくったからか『このバカップル3人の関係を崩してはいけない』という風潮が高まっている。

 

おかげで今じゃ殆ど闇討ちはされなくなったが、こんな空気を生み出してくるのは厄介極まりない。

 

 

『キース!キース!キース!キース!』

 

しかもこいつらは未だにキスコールを続けているし、その上シルヴィも艶のある目で俺を見てくる。シルヴィとは長い付き合いだから目の意味もわかる。アレは……俺とのキスを求めている目だ。

 

これは……逆らえんな。

 

『キース!キース!キース!キース!』

 

「わかった!やるからキスコールは止めろ!」

 

俺が投げやりにそう叫ぶと一瞬で静まり全員がガン見してくる。どんだけ統率力が高いんだよこいつら…….

 

呆れ果てながらも再度シルヴィの元に近寄り肩を掴む。人前でキスをするのは慣れたが、周囲の空気に負けてキスをするのは初めてだから若干緊張する。

 

「じゃあ、シルヴィ……」

 

「うん、いつでも良いよ……」

 

シルヴィがそう言って目を瞑るので俺はシルヴィを抱き寄せ……

 

 

 

 

 

ちゅっ……

 

 

シルヴィの唇に自分の唇を重ねた。

 

『おおおおおぉぉぉぉぉ!!』

 

それによって外野からは興奮した声が聞こえてくるがもう良いや。一度やっちまったものは仕方ないし。

 

そう思いながら俺は制服が濡れる事を厭わずにシルヴィを抱きしめて、キスを続けた。

 

実況や悪乗りした小町達をしばき倒すのは後にして今はこの時間を楽しまないといけないからな。

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い大胆」

 

「ですよね紗夜さん!いやー、お兄ちゃんも2人と付き合って積極的になったので嬉しいですよ」

 

「……悔しいわ。私も八幡に表彰やキスをされたかったわ」

 

 

 

 

 

 

「うん!やっぱり八幡君とシルヴィアさんは仲が良いね!」

 

「いや美奈兎さん、2人は良過ぎますわよ」

 

 

 

 

「あの男、目立つのが嫌いなのに目立ちまくりじゃない」

 

「まあまあクロエさん。あの空気の中、逃げるのは難しいですよ」

 

「き、キスをするのも難しいと、思う……!」

 

 

 

 

 

 

 

「な、何ですかあれー!私はあの屑のせいで最悪の学園生活なのに、何であの屑が幸せになっているんですかー!」

 

 

 

 

 

 

「比企谷……どうやってシルヴィアさんを誑かしたのか知らないが、王竜星武祭でお前を倒してシルヴィアさんをウチの会長と一緒にお前から解放してやる……!」


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