学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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午後の学園祭デートが始まる

「まさか沢山のお客様がいるなかでキスをするとは思いませんでしたよ」

 

「その話を蒸し返すな。モヒカンにするぞ?」

 

「予想外の報復を提案しましたね……」

 

「………八幡君、流石に女子をモヒカンにするのは……」

 

「やり過ぎね」

 

「冗談に決まってるだろうが、その顔は止めろ」

 

星導館の生徒会室にて、俺は恋人2人とエンフィールドの4人で昼飯を食っている。

 

何故こうなったかというと……

 

①ウォーターサバイバルの後、チーム・赫夜と軽く見て回る

 

②正午になる直前、チーム・赫夜はガラードワースにてフェアクロフさんと飯を食う約束をしているのでガラードワースに移動

 

③俺達……というか俺がガラードワースにメチャクチャ嫌われているのでチーム・赫夜と別れ星導館で飯を食うと決めた

 

④飯を買っていたらエンフィールドと鉢合わせしたので生徒会室に案内を頼む

 

……って、感じだ。

 

んで生徒会室でエンフィールドがおちょくってきて今に至る。

 

「んでお前は午後も仕事か?」

 

「ええ。綾斗と遊びに行きたいのは山々ですが、仕事も多いですし遥さんとの時間を邪魔する訳にはいきませんから」

 

「そういや天霧の奴、大博士のカス野郎に頼んで姉ちゃんの封印を解除したんだったな。その後はどうなんだ?」

 

一応生徒会長だから天霧と会ってなくてもその辺りの事情は把握している。俺としては大博士のペナルティを解除するのは危険だと思ったが、第三者の俺が天霧の行動について止める権利はないからな。

 

「もう日常生活には支障がないようですよ。それと比企谷君に処刑刀……マディアス・メサを倒してくれた事についてお礼を言いたいそうなので今度時間を作ってくださいな」

 

そういや天霧の姉ちゃんを斬ったのもマディアスらしいな。もうあいつらと関わりたくないから事情を聞いてなかったからすっかり忘れていた。

 

「別に礼を言われる事じゃねぇよ。俺の平穏を邪魔する奴だから倒しただけで他意はない」

 

実際奴と相対した時に俺の胸中にあったのは、俺とオーフェリアとシルヴィの平穏を崩されるかもしれないという焦りと怒りだけでしたし。

 

「相変わらず比企谷君は自分が最優先ですね」

 

エンフィールドはコロコロ笑っているが、お前も実際自己中だろうが。

 

俺が自己中なのは否定しないが、銀河に喧嘩を売った理由が天霧の胸の中で死ぬ為、その為にありとあらゆるものを利用していたエンフィールドに自己中呼ばわりされたくはないな。

 

「ほっとけ。まあその人と会ったら適当に受け取っておく」

 

「お願いしますね。それと比企谷君達は午後はどうするんですか?」

 

「予定としては界龍に行くつもり。クインヴェールの生徒もバトルイベントに参加するらしいし」

 

エンフィールドの問いにシルヴィが答える。実際魎山泊で俺が鍛えているワインバーグは出る気満々だし、若宮もフェアクロフさんと会った後に参加するとか言っていた。

 

どいつもこいつも王竜星武祭に向けて腕試しをする算段だ。星露としては本当に喜ばしいだろう。あのバトルジャンキーは自分が戦うだけでなく、強者同士の戦いを見るのも好んでるし。

 

「ああ。アレですか。去年もそうでしたが星武祭に参加する選手が腕試しをするという事でウチからも出る人がいると思いますよ。比企谷君達は出るんですか?」

 

「俺は出るつもりだ」

 

「でも比企谷君は誰に挑むのですか?やはり公主ですか?」

 

「んなわけないだろうが。王竜星武祭前に手の内全部晒すなんて真っ平ごめんだ」

 

俺が星露とマトモにやり合えるのは自身の最強技、影神の終焉神装があるからだ。しかしアレは王竜星武祭までバレたくないので魎山泊以外では使用してない。既に俺の弟子のワインバーグとメスメルは知っているが、界龍のステージなんかで使ってそれ以外の人にバレるなんて絶対に嫌だ。

 

「では誰と戦う予定ですか?『覇軍星君』は武者修行で休学中、『神呪の魔女』梅小路冬香は毎年出てないですし、『魔王』雪ノ下陽乃ですか?」

 

「いや……俺が考えてるのは趙虎峰かセシリー・ウォンあたりだな」

 

「ちなみに理由は?こういってはなんですがあの2人も強いですが、比企谷君に比べたら実力不足だと思いますよ」

 

「ああ違う違う。ただ戦うんじゃなくて能力抜きーーー体術のみで挑むつもりだ」

 

今回の目的は勝つ事ではなく、星辰力を効率良く体術に利用する技術を自身の身体を以って体験することだ。星脈世代なら誰もが星辰力を使って防御力や攻撃力を高めることが可能だ。

 

しかし瞬発力に活かすのは少しでも加減を間違えたら身体のコントロールを失う故に桁違いに難しい。

 

俺自身星辰力を身体強化に使用する事は出来なくもないが、界龍と拳士に比べたら付け焼き刃も良いところだ。

 

だから今回は壁を超えた人間に挑まずに、優秀な人間に挑み技術を盗む方向で行くつもりだ。

 

「あー、なるほどね。あの2人なら良い勉強になるね。八幡君、王竜星武祭に向けてやる気満々だね」

 

シルヴィも俺が挑む理由を初めて聞いたからか納得したように頷き俺を褒めてくるが……

 

「よく言うぜ。新曲を作っているお前だってやる気満々だろうが」

 

偶に自宅でシルヴィが歌っていて、聞いたことのない曲もある。アレは絶対に新曲を作っているとわかる。歌詞だけじゃどんな能力を発揮するかはわからないが、間違いなく王竜星武祭に備えての作曲だろう。

 

「当たり前じゃん。八幡君がどんどん強くなって、それ以外にも強い人は出てくるんだし、私も強くならないと優勝は無理だから」

 

だろうな。俺の知る限り今回の王竜星武祭に参加が確実な有力選手はシルヴィ以外にも沢山いる。

 

星導館からは魎山泊のメンバーの小町にリースフェルトにレスター・マクフェイル、中距離戦ならアスタリスク最強クラスの沙々宮が、

 

ガラードワースから魎山泊のメンバーのメスメルが、

 

界龍からは暁彗、雪ノ下陽乃、梅小路冬香と星露を除いた界龍最強の3人が、

 

アルルカントからは鳳凰星武祭準優勝の擬形体に加えて三体目の擬形体が、

 

レヴォルフからは俺の前に2位の座にいたロドルフォ、魎山泊のメンバーのウルサイス姉妹が、

 

そしてシルヴィの所属するクインヴェールからは序列2位のネイトネフェルに加えて魎山泊のメンバーの若宮とワインバーグ、鳳凰星武祭ベスト4の雪ノ下由比ヶ浜ペアなど、油断できないメンツが揃っている。

 

治癒能力者による治療が受けれない以上、トーナメントの組み合わせ次第では優勝するのは至難の道になる事もあり得る。

 

優勝する可能性を少しでも高めるにやれる事はやっておかないといけない。

 

 

「ふふっ……やはりレヴォルフもクインヴェールもやる気は十分ですね。だからこそ我が星導館は次の王竜星武祭で結果を出し、総合優勝をしないといけないですね……それこそマディアス・メサの失脚によって生まれた損失を補填出来るように」

 

そういや星導館のバックにいる銀河はマディアス・メサの逮捕によって他の統合企業財体から責められまくっていたな。

 

普通なら銀河は潰れているが、久しぶりに星導館が総合優勝をしそうなので辛うじて生きている状態だ。今シーズンの星武祭を盛り上げている星導館を潰したら間違いなく他の統合企業財体は世間から叩かれるだろうし。

 

しかし王竜星武祭である程度結果を出して総合優勝をすれば世間からの評価によって多少は持ち直すだろう。

 

そしてそうなる可能性は高いだろう。実際今の星導館は2位の界龍を突き放してぶっち切りの1位だし。

 

「あー、一応謝っておくべきか?」

 

マディアスの逮捕という、銀河が大打撃を受ける事件に俺は大きく関わっているからな。

 

「いえ。マディアス・メサの逮捕は間違ってないと思います。放っておけば碌でもない事になっていたでしょうから」

 

だろうな。奴の目的については多少知っているが放置したら間違いなく後々面倒な事になっていただろう。

 

「そうかい。ま、総合優勝を止めるのは無理だろうが、王竜星武祭の優勝は俺が貰うからな」

 

強敵が多いのは認めるが譲るつもりはない。アスタリスクに来てから負けるのが嫌いになったし。

 

「いやいや、優勝するのは私だからね?」

 

シルヴィが不敵な笑みを浮かべながら俺を見てくる。恋人が相手でも一切容赦しないようだ。まあ俺もするつもりはないけど。

 

「……私は立場上片方だけを応援するのは無理だけど……決勝で2人が当たるのを楽しみにしているわ」

 

オーフェリアは優しい笑みを浮かべてそう言ってくる。オーフェリアにそう言われちゃ頑張るしかないな……

 

 

そう思いながらも俺は昼飯を食べるのを再開した。話していたら大分時間を食っちまったよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後……

 

「んじゃ早速申請してくるか」

 

界龍に着いた俺達は校門の近くで売られていた団子を口にしながら大型ステージに向かって歩く。

 

周りでは刀を使った舞や武術の講習会が盛んに行われている。中々興味深いのはあるが俺の体術は実戦で身につけた我流なので余り有効活用出来ないだろう。

 

「うん、本当に能力抜きでやるから間違いなく厳しいだろうけど……」

 

「……頑張って」

 

2人はそう言ってくるが、正直厳しい。星露との鍛錬で近接戦の腕が上がったのは事実だが、セシリー・ウォンにしろ趙虎峰にしろ昔から星露の教えを受けているし。特に前者は体術に加えて星仙術も使うし。

 

「はいよ〜」

 

そう言いながら俺が受付に向かおうとした時だった。

 

「あ……は、八幡さん……」

 

その直前に右からそんな声が聞こえたので振り向くと……

 

「メスメルか。ここにいるって事は誰かに挑むのか?」

 

聖ガラードワース学園序列7位のノエル・メスメルが笑顔に浮かべながらこちらに向かってくる。同時にオーフェリアとシルヴィが不機嫌丸出しの表情をしながら俺を見てくる。後で説明するからその顔は止めろ。

 

「は、はい……今から5位のセシリー・ウォンさんの相手を予約しようと……」

 

「あ、マジで?んじゃ俺は虎峰と戦うか」

 

「え?八幡さんのことですからてっきり星露さんか雪ノ下さんかと……」

 

「今回は体術のみで戦って身体を以って技術を得る事が目的だからな。お前が言った2人に体術のみで挑んでも瞬殺されるだろうし」

 

星露との訓練は影神の終焉神装をマスターする事と実戦能力を高めるのが目的で細かい技術は習ってないからな。この機会を見逃すつもりはない。

 

「そうですか、アレだけ強いのに更に努力をなんて……尊敬します……!」

 

メスメルが笑いながらそう言ってくる。何この子?メチャクチャ可愛いんだけど?

 

そこまで考えていると左右の脇腹から激痛が走るので左右を見れば……

 

「ねぇ八幡君、この子って魎山泊のメンバーで八幡君に手取り足取り優しく鍛えられてるんだよね?」

 

「………バカ」

 

恋人2人が満面の笑み(ただし瞳は絶対零度)を浮かべながら俺の脇腹を抓っていた。痛い痛い痛いっ!確かに可愛いとは思ったけど、脇腹抓るのはノォォォッ!

 

「ま、待てシルヴィ。教えてるのは否定しないが手取り足取りって程じゃない!戦って反省会をするだけで、反省会で見つけた反省点は基本的に手取り足取りではなくて実戦で身体に教えてるからな!」

 

一応後遺症が残らないように多少は加減をしているが、それ以外では割と容赦なく鍛えている自負がある。それこそチーム・赫夜の時以上に。

 

「ふーん……まあいいや。それじゃあノエルちゃん。聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

 

「な、何ですか?」

 

メスメルが若干気圧されながらもシルヴィに返事をする。シルヴィの奴、何を聞く気だ。

 

内心冷や汗をかいていると……

 

 

「魎山泊でさノエルちゃん、八幡君にラッキースケベをされた?」

 

「わにゃっ?!」

 

シルヴィがそんな質問をすると、メスメルは妙な呻き声を出して後ずさり、顔を真っ赤にしながら俯く。明確な返事はしてないが、態度で丸わかりだ。

 

「へぇ〜……八幡君?」

 

「い、いや待てシルヴィ。わざとじゃない。メスメルの生み出す茨に引っかかってだな……てか「……言い訳なんて男らしくないわよ?」……はい、すみませんでした」

 

言い訳をしようとしたが、その前にオーフェリアが遮ってきて何も言えなくなった。怖過ぎる……

 

「あ、あのっ……!八幡さんはわざとやった訳じゃないですし、私も気にしてないですから……そのっ……許してあげてくれませんか?」

 

するとメスメルが真っ赤になりながらも上目遣いでオーフェリアとシルヴィを見て俺を弁護してくる。

 

するとそれを聞いたオーフェリアとシルヴィも若干頬を染めて悩んだような表情を浮かべる。どうやら小動物のような雰囲気を醸し出しすメスメルの弁護によって迷いが生まれたようだ。

 

 

そして……

 

「……はぁ、わかったよ。よく考えたら前にお仕置きはしたし、これ以上は言わないよ」

 

「……そうね」

 

良かった……2人から怒りのオーラがみるみる消えていく。マジでありがとうございますメスメルさん。今の貴女は小動物みたいな雰囲気を出しながらも天使のような雰囲気も感じます。

 

 

内心メスメルに感謝しながらも4人で受付に向かって対戦相手を申請した。

 

尚、受付の人がオーフェリアを見た瞬間、オーフェリアに参加禁止である事を伝えてきた。まあ昨年界龍の3位を普通の人間にしようとしたら当然の反応と俺は思った。


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