学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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憎悪VS逆恨み!比企谷小町VS一色いろは

『さぁて!次の試合も盛り上がるだろうよっ!星導館の序列4位、世界で最も有名なバカップルの男を兄に持つ『神速銃士』比企谷小町のご登場だぁー!』

 

カノープスドームの実況を務めるABCアナウンサーのクリスティ・ボードアンがそう叫ぶと、呼ばれた本人ーーー比企谷小町がゲートからステージに向かった。

 

「いやー、久しぶりにスポットライトを浴びたけどやっぱり星武祭は凄いなぁ」

 

ステージに立った小町は自分に照らされるスポットライトに目を細めてそう呟く。2年半ぶりに星武祭に参加した小町はこの眩しさに懐かしさを感じていた。

 

『アスタリスク最強の喧嘩屋の娘にして、世界最強のバカップルの妹である彼女がどんな暴れっぷりを見せるのか?!お前ら目ん玉かっぽじって良ーく見とけよ!』

 

『ちょ、ちょっとクリスティさん!落ち着いて……』

 

クリスティのハイテンションな説明に解説の護藤蓮也は慌てながら落ち着かせようとする。そんな実況と解説を聞きながら小町はため息を吐く。

 

(やれやれ、やっぱりお母さんとお兄ちゃんは目立ち過ぎだなぁ……)

 

小町は母と兄の業績を思い出す

 

母の涼子は史上2人目に王竜星武祭を二連覇したり、歓楽街最強の喧嘩屋としてヘルガ・リンドヴァル隊長と何度も戦った伝説を持ち、兄の八幡は世界の歌姫と世界最強の魔女の2人を恋人に持ち街中で堂々とディープキスをするようにイチャイチャしている伝説を持っている。

 

平和主義者の小町からしたら2人の行動は度肝を抜くものであり、学園でも友人に聞かれて若干辟易している。

 

そこまで考えていると……

 

「へ〜、直で見るのは久しぶりですけど、あの屑の妹とは思えないくらい普通な顔ですね〜」

 

いきなり前方からそんな声が聞こえたので顔を上げると小町の前方にはガラードワースの制服を着た対戦相手……一色いろはが醜悪な笑みを浮かべて小町を見ていた。

 

(……一色いろは。ガラードワースの序列30位で逆恨みでお兄ちゃん達の関係をバラした女……!)

 

小町は内心歯軋りしながら一色を見る。彼女は2年半前に葉山と組んで鳳凰星武祭に参加した。しかし葉山は1回戦が始まる前に兄である八幡をヒキタニ呼びしてオーフェリアの逆鱗に触れて、プレッシャーをかけられて気絶したのだ。

 

それによって葉山と一色の鳳凰星武祭は不戦敗となり幕を閉じたのだが、一色は葉山が八幡をヒキタニ呼びした事を棚に上げて八幡を恨むようになった。

 

以後一色は事あるごとに八幡の悪口を同じガラードワースの生徒に広めていたが、ショッピングモールでオーフェリアとシルヴィアに咎められて、そのやりとりがネットにアップされた事によって一色はガラードワースで孤立した。それに対して一色は一切反省せず更に八幡を恨むようになった。

 

そして獅鷲星武祭決勝前夜、カジノに行った帰りに中央区を歩いていたら八幡がオーフェリアとシルヴィアの3人でキスをしている光景を発見して、内心ほくそ笑みながら写真を撮ってネットにアップした。それによってネットで八幡は叩かれまくり一色は幸せだった。

 

しかしそんな幸せな日々は長くは続かず、一色は理事会に呼ばれて余計な事をしてくれたと責められまくったのだ。もしも3人の関係が原因でシルヴィアが引退して、ガラードワースの生徒が暴露したと世間にバレたらお前をスケープゴートにする、と。

 

結果シルヴィアは引退しないで済んだが、一色は何故自分がこんな目に遭っているのかと反省をすることはなく、より一層八幡に逆恨みをするようになった。

 

小町はそこまで詳しく知っているわけではないが、理不尽な逆恨みをして兄を悪口を広めたという事くらいは知っている。

 

しかしそれだけで十分だ。小町にとっては理不尽に兄を貶める人間は敵なのだから。兄を貶めるというなら、小町も一色を大舞台で失格にならない程度に貶めるつもりである。

 

そう思いながら小町は構えを取ると、一色は無視されたのが不快だからか挑発をしてくる。

 

「無視ですかそうですか。……ま、あの屑の目が腐っているように、貴女の耳が腐っているなら仕方ないですね」

 

「……は?」

 

聞き捨てならない挑発に小町は思わず声をあげる。すると一色は気を良くしたのか更に挑発をする。

 

「なんですか怒ったんですか?私は事実を言っただけですよ?」

 

「……少し黙ってくれないですかね?試合に集中したいので」

 

小町はブチ切れそうになりながらも務めて冷静にそう返すと、一色は嘲笑を浮かべながらも口を閉じない。

 

「は?試合?どうせ貴女もあのクズ同様に最低な手段しか使えないんでしょ〜?」

 

そこまでが限界だった。

 

「黙れ屑が」

 

「ひいっ!」

 

小町が魎山泊で鍛えられている最中に自然と身に付けた殺気を出しながら一色を睨むと、一色はビビリながら後ろに下がる。

 

「さっきから黙って聞いてれば随分と言ってくれるね。大体人の事を屑屑言ってるけど、アンタの方が屑でしょ」

 

小町がそう言うと一色は更にビビるも、直ぐに気を取り直してキレる。

 

「は?何で私があの屑より下なんですか?卑怯な事をしなければ大した事のない屑より下だなんてふざけた事を言わないでくれませんか?」

 

「……もう良い」

 

小町はそう言ってから一色に背を向けて開始地点に向かう。対する一色も不満タラタラの表情を浮かべながら開始地点に向かう。

 

両者が同時に開始地点に着くと、一色は槍型煌式武装を展開するも、対する小町は徒手空拳のままだ。小町が銃を使った戦闘スタイルは有名なので小町の構えを見た観客からは騒めきが生じる。

 

しかし小町はそれを無視して目の前にいる対戦相手である一色を睨みつける。

 

(お兄ちゃんがあの葉虫にやったみたいに最初の数分弄んでから一気に仕留めようと思ったけど止めた。最初から圧倒的な絶望を与えてあげる)

 

生まれて初めて本気でキレた小町は目の前にいる女を完膚なきまで叩き潰す以外の事を頭から除外してスタートダッシュの準備をする。

 

そして開始時間が近づくにつれて観客席も静まっていき……

 

『Tブロック1回戦第1試合、試合開始!』

 

機械音声が試合開始を告げる。同時に両者が前に出るも……

 

 

「なっ?!」

 

一瞬で小町はいろはとの距離を詰める。試合開始時点で2人との距離は50メートル近くある。そして2人が接近した場所は一色の開始地点から僅か10メートル程離れた場所。つまり一色が10メートル進む間に小町は40メートル進んだ事を意味する。

 

小町は魎山泊での修行にて近接戦闘能力と、星辰力のコントロールを星露との実戦で学んだ。圧倒的な強者との実戦訓練にて小町は界龍の拳士が得意とする、身体の要所に上手に星辰力を込める技術を身につけた。

 

今の小町はアスタリスク最速と評される趙虎峰に限りなく近い速度を出せる程に成長したのだ。

 

そして腕に星辰力を込めて右手で一色の持つ槍型煌式武装をへし折り、間髪入れずに左手で一色の右肩を掴み……

 

 

グシャリ

 

そのまま肩の骨を砕いた。

 

「っ!〜〜〜!」

 

それによって一色は声にならない悲鳴をあげて膝を地面につける。しかし小町は冷たい表情のまま、今度は一色の左肩を掴み……

 

 

グシャリ

 

再度肩の骨を砕いた。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!痛いっ!痛いぃぃぃぃぃっ!」

 

一色はそれによって今度は大声で叫び出す。対する小町は冷たい表情のまま拍子抜けした気分になる。

 

「この程度にお兄ちゃんを屑呼ばわり……バカじゃないの?」

 

小町は偽りなく自分の気持ちを口にする。小町が目標としているのは兄を超えること。その為に星露の元で過酷な訓練をしたのだ。

 

そして王竜星武祭前、最後の魎山泊にて小町は今の自分は兄に勝てる可能性はあるのかと星露に尋ねた。

 

対する星露は、お前が体術、射撃技術、純星煌式武装など持てる全てを使えば100回に1回は勝てると答えた。その事については不満はない。自分は壁を越えた人間ではないと自覚をしているから。

 

だから小町は目の前で膝をついている女の弱さと言動を見て強い苛立ちを感じていた。

 

(体術のみの小町相手に何も出来ないで肩を壊された癖にお兄ちゃんを屑呼ばわりしてるって……)

 

小町は内にある怒りを爆発させないように息を吐く。そうでもしないと殺してしまいそうだからだ。

 

「それじゃ二度と減らず口を叩けないよう、顎を砕いて終わりにするか」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

そう言いながら小町は右手に星辰力を込めて構えを見せると、一色は目から涙を、スカートの中から金色の液体を流しながら逃げようとする。

 

両肩を砕かれ、泣きながら失禁する一色は世間一般から見たら無様極まりない存在であった。

 

しかし小町の中には容赦するという考えは一切なく……

 

「じゃあね」

 

そのまま一色との距離を詰めて顎にアッパーをしようとする。

 

しかし……

 

「ぎ、ギブアップ!ギブアップします!」

 

小町の拳が一色の顎に当たる直前に、一色は自由の効かない腕を無理やり動かして自身の校章に触れてギブアップを宣言した。

 

『試合終了!勝者、比企谷小町!』

 

機械音声がそう告げて小町の勝利を告げるので、小町はアッパーをやめて拳を下ろす。このまま一色の顎を砕きたいのは山々だが試合が終わった時点で手を出したら問題行為になるので嫌々断念した。

 

しかし……

 

「ねぇ?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

このままでは腹の虫が収まらないと小町が一色の元に近寄ろうとするが、足を踏み出した途端一色は更に激しく失禁をするので思わず距離を取る。

 

「汚いなぁ……まあ良いや。次にお兄ちゃんの侮辱をしてみなよ?死より恐ろしい地獄を教えてあげるから」

 

「……っ」

 

小町が殺気を剥き出しにしながらそう告げると一色は泡を吹きながら事切れたかのように地面に倒れた。

 

それを見た小町は一度ため息を吐いてから出口に向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで試合終了!小町の奴が開始10秒でいろは両肩を砕いて戦意をへし折ったー!』

 

『彼女達に何があったのか知らないけど、冒頭の十二人もしくはそれに近い実力の持ち主じゃない限り、比企谷選手の殺気に気圧されるだろうね』

 

レヴォルフの生徒会専用の観戦ブースにて実況と解説の声が流れる中、俺は恋人2人と一緒に息を吐く。

 

「いやー、小町の奴、完璧に強くなってやがるな」

 

「そうだね。速度なら身体強化をしてない私より速いと思うな」

 

「……公式序列戦ではこんなデータは無かったし、王竜星武祭が始まるまで完全に隠していたようね。それにしても良くやったわ」

 

オーフェリアはステージで気を失っている一色を見てガッツポーズをする。丁度同じタイミングで医療班がステージにやって来て一色を担架に乗せようとするが、その直前一瞬だけど動きが鈍くなる。おそらく失禁したのを見て躊躇してしまったのだろう。責められる謂れはない。

 

というか小町ちゃん怖い。俺の為に怒ってくれたのは嬉しいけど、ぶっちゃけ怖かった。一応ギブアップする前に攻撃をやめたし運営委員にはお咎めはないだろう。肩を砕く程度の事なら星武祭で割と起こる事だし。

 

「まあそうかもな……とりあえず見たい試合は終わったし、どうする?違うステージの中継でも見るか?」

 

今日カノープスドームで行われる試合の中で冒頭の十二人が出る試合は小町とロドルフォの試合だけだ。他の有力選手の試合を見たのでぶっちゃけ今日のカノープスドームで見たい試合はない。

 

「あ!じゃあ八幡君、シリウスドームに繋いでくれる?あのレナティって擬形体の試合が見たいな」

 

ああ。エルネスタが新しく作った擬形体か。確かに見ておきたいな。多分アルディやリムシィよりスペックが高いだろうし。

 

そう思いながら空間ウィンドウを開きシリウスドームで行われている試合を見れるように繋ぐと……

 

 

『Uブロック1回戦第1試合、試合開始!』

 

丁度レナティの試合が始まったようで……

 

『えーい!』

 

『だべぇぇぇぇぇぇぇっ?!』

 

開始3秒でレナティが手に持つ巨大な剣型煌式武装を振るって対戦相手である葉山グループの三馬鹿の1人である戸部をステージの壁に叩きつける。

 

『試合終了!勝者、エルネスタ・キューネ!』

 

そして試合は終わった。速い、余りにも速過ぎる。まさか見たい試合をテレビで見ようとしたら、丁度始まって10秒以内で終わるとは思わなかった。これにはシルヴィとオーフェリアも予想外だったようでポカンとしている。

 

「……よし、帰るか」

 

俺は思わずそう呟く。シリウスドームの予定も調べてあるが、レナティ以降の試合は優勝候補の選手は出てこないし、見る理由はない。それだったら帰って混雑する前に帰って、自宅で優勝候補選手の記録を見直した方が建設的だろう。

 

俺がそう言うと、2人は目を見合わせてから立ち上がり俺に抱きついてきた。どうやら異論はないようだな。

 

結果、俺達は帰りが混雑する前に帰宅し、記録を見直したり、イチャイチャしたりしていたら王竜星武祭2日目が終了した。

 

 

 

 

余談だが、小町との試合の後に治療院に運ばれた一色は完全に心が折れたようで休学する事になったらしい。どうせなら葉山も休学させて欲しいと思ったのは仕方ないだろう。

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