学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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抽選が行われて各陣営は……(前編)

「んっ……あっ、八幡さん……んんっ」

 

「………」

 

シリウスドームのラウンジの一角にて、ノエルの喘ぎ声が聞こえてくる。そして彼女の顎には俺の手が添えられている。

 

何をしているかって?色々あってノエルの顎を撫でてたんだよ。え?変態だと?煩えよ、自分でもわかってるよ!俺だって初めは断ろうとしたんだが、ノエルの涙目+上目遣いのおねだりに逆らえなかったんだよ!

 

pipipi……

 

内心叫んでいると、いきなり端末が鳴り出したので、端末を取り出してみれば抽選会の時間まで10分を切っていた。そろそろ向かった方が良いだろう。

 

だから俺は……

 

「悪いがノエル、そろそろ抽選会に行くからここまでな」

 

「あっ……」

 

そう言ってノエルの顎から手を離すと、ノエルはピクンと跳ねてから小さく喘ぐ。顔を見ると真っ赤になってトロンとした瞳で上目遣いをしながら俺を見てくる。その姿は余りにも蠱惑的で俺の顔にも熱が生まれてくる。

 

幸い俺達のいたラウンジは人気の少なくトイレからも離れている場所の上、観客はステージで行われている予選の総評に夢中だから多分気付かれてないだろう。もしもバレたらど変態と呼ばれるかもしれん。

 

「お前はどこで抽選会を見るのか知らないが、見るなら人の少ないガラードワースの生徒会専用の観戦席にしとけ」

 

「そう、ですね……あの、八幡さん」

 

「どうした?」

 

「その、八幡さんが嫌でなければ……また撫でてくれませんか?」

 

え?またやるの?!いや別に嫌って訳じゃないけど。オーフェリアとシルヴィは俺の愛撫は気持ちが良いと言っていたが、本当なのか?

 

疑問に思っていると……

 

「………」

 

うるうるした目で見てくる。その目は止めろ。マジで逆らえん。

 

「……気が向いたらな。俺はもう行く」

 

そう言って俺はラウンジを後にして早足で入場ゲートに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「八幡さん……はぁ……2年半より前に八幡さんと会えてたら良かったのに。そうしたら私もシルヴィアさん達みたいに八幡さんの隣に……いや、今からでも……」

 

 

 

 

 

「あら比企谷君。結構ギリギリですね」

 

入場ゲートに到着すると俺以外の生徒会長5人は既に揃っていた。まあ全員時間を守るタイプだろうから仕方ないだろう。

 

「時間には間に合ったから問題ない」

 

「でも八幡君って基本的に五分前行動だよね。今日は2分前行動だったけどなんかあったの?」

 

「腹を壊していた」

 

真顔で嘘を吐く。流石に馬鹿正直にノエルの顎を撫でていたなんて言ったらヤバいしな。バレたら媚薬を飲まされてから両手両足を縛られて搾り取られるかもしれないし。

 

そんな事を考えていると……

 

『それではただいまから本戦トーナメントの抽選会を行います』

 

司会進行の声にステージからは圧倒的な歓声が上がる。まあ大半の観客はこれが目的で来ているようなものだしな。

 

そんな中、前シーズンで総合優勝をしたガラードワースの生徒会長のエリオットが1番最初に出て、2位のアルルカントの生徒会長の左近がそれに続く。どうやら前シーズンの総合順位の順にステージに向かうようだ。レヴォルフは前シーズン4位だったので左近の次の次に出る事になる。

 

そして前シーズン3位の界龍の生徒会長の星露がゲートから出たので一拍遅れて俺もゲートからステージに歩を進める。同時に観客席から歓声をモロに受ける。毎回思うが試合をしてないのに凄い盛り上がりだな。

 

そして俺達6人が壇上に立つと、壇上の中央に箱が置いてある。あの中に1から32と表記された紙が32枚入っているのだ。

 

ちなみに今回各学園が本戦に送れた人数は……

 

星導館6人

 

クインヴェール5人

 

レヴォルフ6人

 

ガラードワース 3人

 

アルルカント 5人

 

界龍 7人

 

……って感じだ。ちなみに前シーズンは……

 

星導館4人

 

クインヴェール3人

 

レヴォルフ10人

 

ガラードワース 4人

 

アルルカント 4人

 

界龍 7人

 

と、星導館とクインヴェールは前シーズンに比べて大きく伸びていて、俺が所属するレヴォルフは大きく下がっている。ガラードワースとアルルカント、界龍は毎シーズンそこまで人数は変化してないのだ。

 

そんな事を考えていると、エリオットがステージの中央に行き箱に手を突っ込み紙を取り出し……

 

「聖ガラードワース学園所属、ノエル・メスメル、14番」

 

言葉と共に上空に映るトーナメント表の14番の所にノエルの名前が乗る。

 

俺はレヴォルフだからガラードワースとアルルカントと界龍が終わった後、最初に引いた番号となる。それはつまり、ガラードワースとアルルカントと界龍から本戦に出場するのは15人なので俺は16番目に引いた番号である。

 

正に中間地点だ。その時にどんな組み合わせとなるのか不気味で仕方ない。

 

そんな事もありながら5分近く経過すると……

 

「続いて、レヴォルフ黒学院比企谷会長。こちらに来てクジを引いてください」

 

司会進行が俺の名前を出すので、俺はたった今クジを引き終えた星露とすれ違う形でクジの箱がある前に立つ。

 

そして上空にあるトーナメント表を見る。

 

(やれやれ……キッチリ別れたな)

 

今トーナメント表は15人埋まっているが、1から16までの番号の内8つが、17から32までの番号の内7つが埋まっている。

 

しかも壁を越えた人間についてもだ。界龍の壁を越えた選手ーーー暁彗、梅小路、雪ノ下陽乃はそれぞれ1番、4番、12番で、アルルカントの壁を越えた選手と擬形体ーーー『大博士』とレナティ は32番と25番……と見事に別れている。

 

(さて、俺は誰になるやら……)

 

一度深呼吸をしてから、箱に手を突っ込み1番初めに触れた紙を取り出して近くにいる司会に紙を渡す。すると司会は紙を開いて番号を確認してから一度息を吸って……

 

「レヴォルフ黒学院所属、比企谷八幡、31番」

 

俺の番号を告げる。31番だと?それってつまり……

 

俺は改めてトーナメント表を見上げると……

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡VSヒルダ・ジェーン・ローランズ

 

そう表示されていた。それを認識した俺は息を呑む。まさか初戦から壁を越えた人間とはな……

 

ヒルダ・ジェーン・ローランズ。世間では『大博士』と呼ばれているアルルカントで最も天才と言われている女だ。

 

そしてオーフェリアを普通の人間から世界最強の魔女に変えた女である。以前天霧が姉ちゃんの意識を覚ます為に奴にかけられていたペナルティを解除したのだが、その後に奴は自身の肉体を実験に使ったのだ。

 

そしてその成果は既に確認済みだ。予選では星導館学園序列3位『輪蛇王』ファードルハ・オニールの持つ純星煌式武装『蛇剣オロロムント』をぶっ壊すというとんでも無い事をやってきたのだ。試合のデータを見てもどんな能力かはまだ理解出来ていないが間違いなく厄介なんは間違いないだろう。

 

しかし決まった以上文句は言ってられない。早く次のクジを引かないとな……

 

頭を切り替えた俺は再度息を吐いてから次のロドルフォのクジを引いたのだった。

 

 

 

 

 

 

それから10分後……

 

「以上をもちまして抽選会を終了します」

 

最後にクジを引くシルヴィが引き終わると司会がそう口にする。同時に観客席にいる観客も立ち上がり退場し始める。

 

すると……

 

「八幡君」

 

シルヴィが心配そうな表情をして俺に話しかけてくる。それを見た俺はシルヴィの言いたい事を理解する。

 

「大丈夫だ。今の所落ち着いているから。多分明日も万全な状態で挑めると思う」

 

いきなり『大博士』と戦うのは予想外だったが、決まった以上どうこう言うつもりはないし、焦ってもいない。

 

「なら良いけど……絶対に無茶はしないでね?気付いてないかもしれないけど、今の八幡君の顔……ちょっと怖いから」

 

シルヴィはそう言ってくる。どうやら落ち着いていながらも無意識のうちに冷静さを欠けているようだ。試合までに何とかしとかないとな。

 

その為には……

 

「シルヴィ」

 

「何かな?」

 

「帰ったら……お前とオーフェリアを相手に少しだけ甘えても良いか?」

 

最愛の恋人2人との時間を過ごしたいと思う。2人がいれば落ち着く事は容易だろうし。

 

俺のお願いに対してシルヴィは小さく頷く。

 

「いいよ……私とオーフェリアで良ければ好きなだけ甘えて良いよ」

 

「……ありがとな」

 

そう言って俺はシルヴィと恋人繋ぎをしながらステージを後にする。とりあえず試合まで丸一日以上あるし、コンディションは万全にしておかないとな……

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、星導館学園専用の観戦室にて……

 

「あ〜、クローディアさんくじ運悪過ぎでしょ?」

 

小町が目を腐らせながら愚痴りまくる。それを聞いたクローディアを除いたチーム・エンフィールドの4人は苦笑を浮かべたり同情の視線を向けてくる。

 

「まあ私と綾斗は比較的当たりだし、紗夜の相手も厄介だが、小町の相手に比べたら可愛いものだな」

 

ユリスが投げやりにそう呟く。綾斗の相手は界龍の『水撃士』川崎大志で、ユリスの相手がレヴォルフの『沙竜』ロスヴィータ・ディーツェ、紗夜の相手はアルルカントの『双頭の鷲王』カーティス・ライトである。

 

大志とディーツェも良い選手だが、綾斗とユリスの相手をするのは力不足である。紗夜の相手のカーティスは魎山泊のメンバー故に間違いなく強力な相手である。紗夜と言えども苦戦する可能性は高い。

 

しかし……

 

 

 

「そうですね。何せ小町の相手は壁を越えた選手ですから」

 

そう言いながら小町は再度トーナメント表を確認する。しかし何度見ても組み合わせは変わらず……

 

比企谷小町VSネイトネフェル

 

小町は改めてため息を吐く。

 

ネイトネフェル、クインヴェールの序列2位で『舞神』の二つ名を持つ。名前の通り舞と体術を駆使して戦う女性で無手の状態ならシルヴィアを上回るなど、間違いなく壁を越えた人間である。

 

前々回の王竜星武祭ではオーフェリアに、前回の王竜星武祭では八幡に負けていて2人にリベンジを公言している。

 

そんな相手が本戦の最初から当たるなんて運が悪いとしか思えない。

 

(まあ当たった以上やりますか……お兄ちゃんまでは凄く遠いけど)

 

小町が八幡と当たるとしたら準々決勝だが、それは険しい道である。何せネイトネフェルに勝てても、5回戦でも壁を越えた選手と当たる可能性が高いのだから。八幡本人も計算に入れたら小町は壁を越えた選手3連続と組み合わせが悪過ぎる。

 

「はぁ……とりあえず明日の試合を頑張らないと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、クインヴェール専用の観戦席では……

 

「あーあ、初戦から私と同じ魎山泊のメンバーか〜」

 

美奈兎はやれやれとため息を吐きながらトーナメント表を見る。そこには……

 

若宮美奈兎VSレスター・マクフェイル

 

そう表情されていた。今大会の予選の試合と、レスターのこれまでの戦闘記録を比べると実力差がモロに出ていたので、美奈兎は直ぐにレスターは自分と同じ魎山泊のメンバーと理解した。

 

「そうね。彼の攻撃は絶対に食らってはダメよ。単純なパワーなら今大会トップクラスなのだから」

 

美奈兎の友人のクロエはそう警告すると美奈兎は頷く。美奈兎の見る限り、単純なパワーだけなら八幡の影狼修羅鎧の拳より上だと思っている。そんな一撃を受けたら一気に勝負を決められてしまう。

 

「ふふん!美奈兎は大変ですのね!私は初戦は当たりですの!」

 

ヴァイオレットがドヤ顔でそう口にする。それは紛れもない事実でヴァイオレットの相手は運で勝ち上がってきた界龍の生徒だ。この場にいる全員がヴァイオレットの5回戦進出を確信している。

 

しかし……

 

「でもヴァイオレット、その代わり5回戦の相手はマズイんじゃない?」

 

「わ、わかっていますの!」

 

美奈兎の言葉にヴァイオレットはわかりやすいくらいにテンパる。ヴァイオレットは5回戦で間違いなく壁を越えた人間と戦うという確信を抱いている。

 

「ですが上等ですの!ここまで来た以上勝ち上がってみせますわ!そして準決勝で八幡さんを倒してみせるのですの!」

 

ヴァイオレットの目標は当然優勝だが、それ以外にも自分の師匠であり憧れの存在である八幡に勝つという目標がある。魎山泊では1回だけ影狼修羅鎧を纏った八幡を倒したが、その時の八幡は全力でない事をヴァイオレットは知っている。

 

ヴァイオレットは八幡の切り札、影神の終焉神装を打ち破りたいと思っているのだ。

 

 

ヴァイオレットや美奈兎がやる気を出している中……

 

 

「ゆきのん……」

 

「……大丈夫よ。由比ヶ浜さん。初めから私はこの為に出場したんだから」

 

観戦室の隅にて、予選で小町に敗北した由比ヶ浜が心配そうな表情で本戦出場を果たした雪ノ下雪乃に話しかける。

 

2人の視線の先にはトーナメント表があり……

 

雪ノ下雪乃VS雪ノ下陽乃

 

姉妹対決が行われる事を示していた。雪ノ下としては姉を超える事を目標としていたので、万全の状態で挑めるのは悪くないと思っている。

 

ただ、不安も当然あるので雪ノ下はクインヴェール最強の教師である涼子に話しかける。

 

「比企谷先生、私が姉さんに勝てるとしたらどの位の確率だと思いますか?」

 

アスタリスクに来る前の雪ノ下ならこんな自信のない質問はしなかっただろう。しかし雪ノ下自身は鳳凰星武祭で天霧に、普段の修行で酒を飲みながら戦う涼子に手も足も出ずに負けていて、壁を越えた人間の強さを知った。そして自分の姉も壁を越えた人間である以上、圧倒的な格上と認めるしかなかった。

 

そんな雪ノ下の質問に対して涼子は日本酒を一気飲みして……

 

「ぷはぁ〜。そうだな〜持てる力を全て出し切れば……100回やって2回くらい勝てんじゃね?厳しいけど頑張れよ、私の給料の為に」

 

「……結局そこに行き着くのですね。まあ、そのつもりです」

 

涼子の投げやりな返事に雪ノ下は呆れながらも頷く。涼子の戦術眼は確かなものであるのはこの場にいる全員が知っている。だから彼女の言うことは間違っていないだろう。

 

それを聞いた雪ノ下は一層やる気を出すようになった。

 

 

 

 

 

「いや〜、全員やる気があって何よりだよ。なぁペトラちゃん」

 

「ですからペトラちゃんは止めてください。それよりも、今回の王竜星武祭、貴女は誰が優勝すると思っていますか?」

 

ペトラが涼子に話しかけると涼子はうーんと唸りながら暫く考える素振りを見せてから……

 

 

 

 

 

 

 

 

「多分……シルヴィアちゃんかな?」

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