学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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活動報告のアンケートの結果、王竜星武祭の後、番外編として大人になった八幡達のやり取りをやりたいと思います。

つきましてはどんな話を書くかはまだまだ悩んでますので、新しく活動報告を追加したので是非コメントお願いします




激戦、比企谷八幡VSヒルダ・ジェーン・ローランズ(前編)

『さあいよいよ本戦の始まりです!このシリウスドームにて本戦開幕試合を務めるのレヴォルフ黒学院の比企谷選手とアルルカントアカデミーのローランズ選手です!』

 

言葉と共にステージに立つと大歓声が生じる。対面からは『大博士』ヒルダ・ジェーン・ローランズがこちらに向かってくる。見るからに肉付きの薄い身体だが、その内側には圧倒的な力があるのを既に知っている。

 

そして彼女は俺の目の前に立つと

 

「きししししし!初めましてというべきですかね。今のオーフェリア・ランドルーフェンの持ち主さん?」

 

不気味な笑みを浮かべながらそう言ってくる。こうして対面しているだけなのに悍ましく思う。ディルクとは別の意味で危険な雰囲気を醸し出していて、こいつを見ると姉の為とはいえ、天霧がこいつのペナルティを解除したのは間違いではなかったのかと思ってしまう。

 

「その持ち主ってのは止めろ。俺はオーフェリアとは対等と思っているし、物みたいに扱うつもりはない」

 

俺がそう返すと『大博士』は呆れた表情を浮かべる。

 

「はぁ?あのイレギュラーを利用しないなんて随分と欲がないんですね。アレを自在に操れば世界を獲る事も不可能ではないのに」

 

その言い方からして彼女はオーフェリアの事を物のようにしか思ってないようだ。それだけで俺はコイツとは相容れない確信を持てた。

 

「生憎だが世界の覇権なんざ興味ない。それよりそろそろ開始時間だから戻れ。ま、失格になりたいなら止めないが」

 

「おっとこれは失礼。出来ればオーフェリア・ランドルーフェンを倒してあたしという完成品の証明をしたかったんですが、貴方もそれなりに強いので今はそれで我慢しましょう」

 

言いながら『大博士』は俺に背を向けて開始地点に戻る。どうやら奴はオーフェリアにやった実験を自分にも行い、そして王竜星武祭でオーフェリアを倒し自分の証明をしたかったようだな。

 

(つくづく気にくわねぇな。ま、俺がどう考えようが勝者が正しいんだし試合に集中するか)

 

そう思いながらも俺は息を吐いて開始地点に向かう。

 

それから暫くして……

 

 

 

 

『王竜星武祭4回戦第1試合、試合開始!』

 

試合開始の合図が起こる。同時に俺は足元にある影に星辰力を込めて……

 

「影の刃郡」

 

100を超える影の刃を一斉に『大博士』に放つ。予選では能力の使用を避けていたが彼女相手に出し惜しみは厳禁だ。

 

すると……

 

「きしししし!」

 

『おおっと!比企谷選手の攻撃がローランズ選手に当たる直前に弾かれたぁっ!』

 

『比企谷選手クラスの攻撃を弾くとなれば『黒炉の魔剣』クラスが必要か?』

 

次の瞬間、彼女の体内から圧倒的な星辰力が湧き上がったかと思えば、影の刃が彼女に当たる直前に全て弾き飛びこちらに向かってくる。

 

同時に俺は影から大量の手を生み出して弾かれた刃を掴み俺に当たるのを防ぐ。予想はしていたが全て弾いてきたか。

 

彼女は予選でもありとあらゆる攻撃をはじき返していたのだが、こうして直で見ると度肝を抜いてしまう。

 

「さてさて、次は私から行きましょうかね」

 

『大博士』はそう言って腕を振るう。すると本能的に恐怖を感じたので横に跳ぶと、さっきまで俺がいた場所が見えない何かに押し潰されるようにひび割れて凹んでいた。

 

「おやおや、予想はしていましたが当てるのは難しいですねぇ……流石は壁を越えた人間ですか」

 

彼女はそう言って拍手を送ってくるが、そこには余裕を丸見えである。

 

「そりゃどうも。にしてもお前も随分とシンプルな能力を持ってるな」

 

言いながら再度影の刃は放つ。今度は彼女を取り囲むように。

 

「ほほう!その言い方だとあたしの能力について理解しましたか?」

 

対する『大博士』が腕を横薙ぎに大きく振るうと、多方向から攻める影の刃がまたしても全て破壊される。

 

「お前の能力は純粋な『力』そのもの、違うか?」

 

そして彼女は手でバスケットボールをつくような動きをしてくるので、俺は星辰力を足に込めて走り出すと、俺が走り去った場所がドンドン凹んでいく。

 

「その通りです!あたしは昔から炎だの雷だの、貴方のように影だの、力を何か別の形に変換して使うのが不合理だと思っていたんですよ。おそらくそんなあたしの感性が発露した結果、『力』を使う能力者になれたのでしょう」

 

やっぱりな。力そのものをするとは、まさにシンプルイズベストを地で行った能力だ。

 

(とりあえず奴の能力はわかったし、少し攻めるか)

 

ぶっちゃけリスクもあるが、このままこの状況が続いたら不利なのは俺だ。何せ俺は逃げ続けるだけで体力を消耗してしまう。対して向こうはまだ一歩も動いていない上、星辰力はオーフェリアクラスの量だ。向こうの星辰力切れが起こる前に俺の体力が先に切れてしまうのは言うまでもないだろう。

 

「纏えーーー影狼修羅鎧」

 

言葉と共に俺の身体は即座に狼を模した鎧に包まれる。少し前なら鎧を纏うのに10秒以上かかっていたが、2年以上星露との鍛錬を積んだ事で1秒で纏う事が出来るようになった。

 

鎧を纏うと同時に俺は脚部に星辰力を込めて走り出す。これも星露との鍛錬で身につけた技法だ。おかげで鎧を纏っていても爆発的な加速力を得る事が出来た。

 

俺が走っていると、離れた場所にいる『大博士』が横薙ぎに腕を振るってくるので俺は咄嗟に横に走り出すと、さっきまで俺がいた場所から圧力を感じる。

 

(圧力から察するにパワーは桁違いだが……攻撃速度はそこまで早くないな)

 

加えて奴の能力は力という見えない存在を放つものであって、俺自身に直接干渉するタイプの能力だ。それなら特に苦労しないで回避出来る。

 

ただ……

 

(奴はまだ本気を出していない。自分で自分をオーフェリアより強い完成品と断言するくらいだからな)

 

奴は外道の屑だが、無能ではない。にもかかわらずオーフェリアより強いと断言するんだから奥の手がある筈だ。警戒していこう。

 

そう思いながら俺は『大博士』が腕を振るった瞬間……

 

「ふっ!」

 

星辰力を脚部に込めて再度爆発的な加速をする。今回は回避する為ではなく、『大博士』を倒す為に。

 

すると……

 

「おおっと、速い速い。ですが、貴方の力では私の力は破れませんよ、きししししっ!」

 

その言葉が聞こえると俺の前方から圧力を感じる。どうやら今度は『力』を攻撃ではなく防御に使用したようだ。

 

(ちょうどいい。奴の力の強度も確かめないとな……)

 

奴の『力』の強度を理解するとしないじゃ全然違うからな。まずは情報を得る。

 

だから俺は……

 

「ふんっ!」

 

右腕を振るって殴りつける。すると見えない『力』とぶつかって辺りに衝撃が走り俺の周囲にクレーターが生まれる。

 

しかし腕の先にはまだ圧力がある事から『力』を壊す事は出来ないようだ。

 

「きししししっ!素晴らしいパワーですが、あたしの力を破るには力不足のようですね?」

 

内心舌打ちをしながら距離を取ると、『大博士』は高笑いをする。奴の笑い顔はムカつくが言ってる事は紛れもない事実なので特に怒らずに考える。

 

(影狼修羅鎧のパワーでは無理か……となると、攻め手を変……っ!)

 

そこまで判断した時だった。目の前にいる『大博士』がパンチをする仕草を見せてきて、同時に俺の目の前にある『力』が向かってくるのを理解した。

 

近距離ゆえに避けれない、そう判断した俺は両腕に星辰力を込めて再度向かってくる『力』を殴りつける。するとその『力』は一瞬だけ動きを止めるも……

 

「がはっ……!」

 

直ぐに俺の両拳から生まれる力を打ち消して俺を吹き飛ばす。ヤベェ……想像以上に痛ぇ……

 

吹き飛んでから地面に着地した俺は反射的に横に跳ぶ。俺が『大博士』の立場なら……

 

ズズンッ……

 

予想通り、俺が着地した箇所に『力』が生まれてステージの床を凹ませる。危なかった……今のを食らっていたら多分負けてたな……

 

内心安堵の息を吐きながら正面を見ると『大博士』は余裕の笑みを浮かべている。

 

(わかってはいたがつくづく桁違いだな……とりあえず影狼修羅鎧じゃ勝てないから攻め手を変えるか)

 

そこまで考えた俺は自身の影に星辰力を込めて……

 

「目覚めろーー影の竜」

 

そう呟くと自身の影が辺り一面に広がり魔方陣を作り上げる。そして黒い光が迸り魔方陣を破るゆうに20メートルくらいの大きさの黒い竜が現れる。

 

俺は竜を召喚すると同時に『大博士』に向かって走り出し、竜に上空から回り込む形で突撃をするように指示を出す。

 

すると竜は一度雄叫びを上げてから上空に飛び上がり指示通り『大博士』の右に移動して突撃を仕掛ける。

 

そして俺が走り出す中、『大博士』との距離が10メートルまで切った時に……

 

「拐えーーー影波」

 

言葉と共に影から大量の黒い液体のような影が出てきて、そのまま波のような形となり影の竜と一緒に『大博士』に襲いかかる。

 

それに対して影の波によって俺の目には見えない『大博士』は……

 

「そんなんであたしを倒せるとでも?」

 

言葉と共に前方から圧力を感じる。同時に竜は『力』とぶつかって消滅して、影の波も『力』の壁にぶつかると徐々に消えて始める。

 

しかしこれは予想の範囲内だ。こんな小技で影狼修羅鎧による一撃を防げる『力』を突破出来る訳がない。本命は別だ。

 

影の波が徐々に消えていく中、俺は再度影に星辰力を込めて……

 

「刺せ、影刃」

 

自身の足元から一本の影の刃を生み出して、それと同時に地面に刺して掘り始める。すると特に邪魔が無いようで問題なく『大博士』の元に向かっている。

 

そんな中、遂に影の波が全て消滅して視界に『大博士』が見えると同時に俺は走り出す。

 

「またしても突撃ですか?そんなんじゃ無理ですよ」

 

『大博士』が呆れながら手を振るうと、またしても俺と『大博士』の間から圧力を感じる。さっきのように『力』を生み出したのだろう。

 

確かに奴の言う通り影狼修羅鎧で『力』を破るのは無理だ。だから……

 

 

「ああ。ならこれならどうだ?」

 

俺がそう言った瞬間、『大博士』の足元の地面からからさっき仕込んだ影の刃が飛び出して彼女の左腕に突き刺さる。

 

「なっ?!」

 

これには『大博士』も予想外だったようで、驚きの感情が顔に出る。同時に前方から感じた圧力も無くなる。どうやら規格外の力を持っていても、普通の能力者と同じように予想外の出来事に会うと能力が乱れるようだ。

 

その事に安心した俺は脚部に星辰力を込めて爆発的な加速をして、『大博士』に突っ込む。

 

それに対して『大博士』は手を振るおうとするが……

 

「遅ぇ!」

 

「ぐほっ……!」

 

それより早く俺の拳が彼女の鳩尾に減り込む。それによって『大博士』は吹っ飛ぶが……

 

『ここで比企谷選手、ローランズ選手に一撃を与えた!しかしローランズ選手、殆どダメージを受けていない!』

 

 

「きしっ!きしししし!やりますね!影の竜と影の波は目眩しの囮で、本命は地面からの奇襲であたしの能力を撹乱、フィニッシュに貴方自身の一撃……流石世界で最も多彩な能力者。見事な繋ぎですね」

 

吹き飛んだのは僅か10メートルだけで、口から血を流してはいるがそこまでダメージを受けたようにも見えない。実際に鳩尾を殴った時も骨が折れる音がしなかった。こんな事は初めてである。

 

それはつまり……

 

(星辰力による防御か)

 

圧倒的な星辰力を身に纏って防御したのだろう。オーフェリアも圧倒的な星辰力を身に纏いあらゆる攻撃を無力化しているし。

 

(だからって影狼修羅鎧の一撃を食らってあの程度かよ?オーフェリアを超えたってのも強ち間違いじゃないかもな)

 

そう思いながら俺は息を吐いて構えを見せる。正直言って今の一撃で倒せないのは予想外だった。

 

 

全くだ。次にどう攻めるか悩んでいると……

 

 

 

「やれやれ……本当なら開始地点から動かないで倒すつもりでしたが予定変更です。貴方相手に手を抜いたら負ける可能性もあるので全力でいきましょうか」

 

その言葉と共に『大博士』は長剣型の煌式武装を取り出して起動する。

 

(剣だと?こいつ接近戦も出来るのか?)

 

疑問に思った瞬間だった。『大博士』は一気に距離を詰めてくる。その速度はまさに壁を越えた人間のそれだった。

 

そして上段から長剣を振り下ろしてくるので、俺は両手をクロスして受け止める準備をする。いくら速いと言っても見切れない速さじゃない。

 

しかし……

 

「無駄ですよ!」

 

その言葉と共に長剣から圧倒的な圧力を感じる。マズい!こいつ剣に自分の能力を纏わせてやがる!

 

これは食らったらマズいと思ったが、今更避ける事は出来ないので両腕に星辰力を込めて迎え撃つ体勢を取るも……

 

「ぐっ……!」

 

両手に圧倒的な衝撃が走る。同時に衝撃によって俺達の足元にクレーターが出来上がる。

 

(……っ!影狼修羅鎧を纏っていて、その上で両腕に星辰力を込めていても凄い衝撃だ……!)

 

生身の状態で食らったら間違いなく気絶しているだろう。それほどまでに『大博士』の力は桁違いだった。

 

しかし『大博士』は止まらず、血を流す左手を長剣から離して……

 

「ふっ!」

 

掛け声と共に振るってくる。それだけで俺は何をしてくるか読めたが、『力』の加わった長剣によって身動きは取れずにいたので……

 

「ぐぅぅぅぅっ!」

 

横から襲ってくる『力』の伴流を避けることが出来ずにモロに食らって吹き飛んでしまう。

 

しかし、それでも尚、『大博士』は容赦をせずに瞬時に俺の懐に入ってくる。迎撃したいが、バランスを崩していて叶わない。

 

「これで終わりです!」

 

そして言って『力』を纏った長剣を横薙ぎに振るってくる。無論、避けれる筈もなく……

 

 

「がぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

そのまま鳩尾に叩き込まれる。それと同時に影狼修羅鎧の鳩尾部分が壊れて、俺は先程以上に吹き飛ばされて……

 

「がはっ……!」

 

そのままステージの壁に叩きつけられる。口からは先程の横薙ぎの一撃が原因で血を流している。

 

(クソッ……力という圧倒的な力だけじゃなくて、オーフェリアクラスの星辰力、加えて圧倒的な剣技だと?)

 

マジでなんなんだこいつは?本当にオーフェリアを超えた存在じゃね?

 

何とかステージの壁から離れて正面を見ると……

 

「きししししっ!どうですか?あたしの圧倒的な力は?今の私は最強の魔女でありながら超人でもあるのですよ!」

 

『大博士』が高笑いしながらそう言ってくる。俺に攻撃しないでペラペラ喋っていることから圧倒的な余裕を感じる。

 

(.このままじゃ負けるだろうからアレを使うか……)

 

そんな彼女を見ながら俺は内心そう呟く。

 

影神の終焉神装

 

俺の最強の技であり、『大博士』同様に超越者である星露とも互角に戦える俺の能力の極致である。これを使えば勝ち目はある。

 

試合前はそう思っていた。……が、

 

(勝てるのか?影神の終焉神装で?)

 

確かにアレを使えば星露とはマトモにやり合える。それは事実だが、結局のところ俺は星露に一度も勝っていないのだ。

 

(くそっ……こんなネガティブな事を考えるな。どのみち使わないと勝ち目はないんだし……)

 

そう思いながらも俺は震えながら星辰力を込め始めるが、今影神の終焉神装を使っても不安定なモノしか作れないと思う。くそっ……ダメだ。余計な事を考えるな……!

 

内心が暗い感情で埋め尽くされそうになった、その時だった。

 

 

 

 

「頑張れ!お兄ちゃん!」

 

いきなり馬鹿でかい声が聞こえてきた。余りにも大き過ぎる声故に観客からは騒めきが生まれ、目の前にいる『大博士』も一瞬ポカンとした表情を浮かべていた。

 

しかし俺をお兄ちゃんと呼ぶのは小町しかいないので、俺は声の聞こえた方向を見ると観客席の一角に小町がいた。

 

しかし小町だけではなく……

 

「立て!お前の実力はそんなものじゃないだろう!」

 

「頑張って八幡君!」

 

「諦めないでください!」

 

「貴方はこんな所で負ける人間じゃないですわ!」

 

「勝って、八幡……!」

 

「私達を鍛えた貴方がこんな所で無様に負けるなんて許さないわよ!」

 

「負けたら1日だけでなく1週間買い物に付き合って貰いますわよ!」

 

「テメェ、アタシとプリシラの今の主の癖に負けたりしたらぶっ殺すぞ!」

 

「私もお姉ちゃんも八幡さんが負ける所は見たくないです!」

 

「八幡さん!私は八幡さん格好良い所を見たいです!頑張ってください!」

 

小町以外にリースフェルト、若宮、蓮城寺、フェアクロフ先輩、アッヘンヴァル、フロックハート、ヴァイオレット、イレーネ、プリシラ、ノエルが一箇所に集まっていて、大声で激励をしてくる。

 

普段物静かな蓮城寺やフロックハート、ノエルですらメチャクチャデカい声で激励をしてくる。

 

そして……

 

「八幡……負けないで……!勝って!」

 

入場ゲートからオーフェリアからの激励を受け取る。チラッと見れば涙を浮かばせながら俺を見ている。

 

同時に俺は身体に走る痛みを無視して立ち上がる。そうだ。勝てるかどうかじゃねぇ。若宮達チーム・赫夜やヴァイオレットやノエル、恋人2人に勝つと約束した以上勝たないといけないんだ……!

 

「きしししししっ!知り合いの声を聞いて立ち上がりますか。ですが貴方はあたしに勝てない。これについては不変の事実です……よっ!」

 

言いながら『大博士』はパンチをする仕草を見せてくる。同時に圧倒的な圧力がこちらにやって来る気配を感じる。どうやら俺を押し潰す算段なのだろう。

 

対して俺は一度息を吸って……

 

 

 

 

「呑めーーー影神の終焉神装」

 

ただ一言、そう呟く。漫画の主人公って訳じゃないが、あいつらの声を聞いて不安が無くなっている。今ならいつも通り…….いや、いつも以上の力が出せる気がする。

 

同時に俺の周囲から星辰力が爆発的に噴き上がり、影狼修羅鎧に纏わり付いたかと思えば、押し付けるように圧縮が始まる。

 

同時に俺の身体からギシギシと音が鳴り若干の痛みが生まれるも、今の俺はそれを気にしない。寧ろ限界まで影狼修羅鎧を圧縮するように星辰力を操作する。

 

そして遂に限界まで影狼修羅鎧を圧縮し切り、背中から悪魔の如き翼を生やし……

 

「おぉぉぉぉぉぉっ!」

 

雄叫びと共に右腕で前方からやって来る圧力を殴りつける。それによって俺の拳は一瞬だけ止まるも……

 

「おおっ?!」

 

直ぐに圧力を弾き飛ばし、腕から放たれた衝撃波が『大博士』に向かって飛んでいく。しかし俺と『大博士』は離れた場所にいるので衝撃波は簡単に避けられる。

 

『大博士』は衝撃波を回避すると高らかに笑いだす。

 

「きしししししっ!素晴らしい!素晴らしいですよ!比企谷八幡!これほどの力を持っているとは思いませんでしたよ!」

 

それはもう、本当に楽しそうに笑い出す。

 

「まさかあたしやオーフェリア・ランドルーフェンと違ってあちらの世界に踏み入れずにこれ程の力を出すとは……実に素晴らしい!是非とも研究したいものですねぇ!」

 

そんな『大博士』の言葉の中には色々聞きずてならない単語が多々あった。あちらの世界だの、俺を研究したいだの割とヤバそうな言葉が。

 

しかし……

 

「今の俺には関係ねぇ……お前に勝つこと以外どうでも良い……!」

 

目の前にいる彼女に勝つことが最優先だ。それ以外の事は考えるべきじゃない。

 

「きしししし!確かに貴方の力は素晴らしい。ですがあたしの方が強いです!貴方が勝つ事はあり得ないでしょう!」

 

 

「お前が俺より強いのは百も承知だ。だが……この試合だけは死んでも勝たせて貰うぞ、『大博士』!」

 

言葉と共に俺は脚部と悪魔の如き翼に星辰力を込めて『大博士』に突っ込んだ。

 

 

 

 

シリウスドームのステージにて2体の怪物がぶつかり合う。


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