学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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調整日でも平穏はない(前編)

『雪ノ下陽乃、意識消失』

 

『試合終了!勝者、シルヴィア・リューネハイム!』

 

空間ウィンドウからそんな声が聞こえてシルヴィが光の衣を解除するのを見た俺は空間ウィンドウを閉じて息を吐く。

 

「シルヴィが勝つのは予想していたが、あの力は予想外だったな……」

 

あの光の衣は桁違いの力を持っていた。壁を越えた人間である雪ノ下陽乃の技を悉く打ち破ったのだから、シルヴィの技の中でも最強クラスだろう。

 

「……恐らくはお義母さんを倒したのもあの力を使ったからね」

 

オーフェリアは満足そうに頷いているが、お前どんだけ雪ノ下陽乃が負けることを望んでいたのかよ?

 

まあそれはともかく、アレがお袋を倒した技だろう。実際に戦ってないからわからないが、俺の影神の終焉神装と比べたら攻撃力は向こうの方が上なのは間違いない。防御力と機動力はまだ不明だが間違いなく強敵だろう。

 

「……凄いです。でも!頑張って勝って認めて貰わないと……!」

 

ノエルは若干気圧されながらもやる気を剥き出しにしている。そしてそれと同時にオーフェリアはジト目でノエルを見るし、マジでなんなんだ?まあ聞いたら血を見る事になりそうだから聞かないけど。

 

そんなことを考えながら俺はベッドから起きて帰宅の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後……

 

「ただいまー」

 

ノエルと別れてから自宅に帰宅した俺とオーフェリアが玄関の鍵を開けて家の中に入ると……

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……私?」

 

シルヴィが裸エプロンの姿で俺達を迎えてくれる。薄ピンク色のエプロン越しでもわかる圧倒的な膨らみ、サイズが小さいからか惜しげも無く晒される美脚、そして若干の恥じらいの色のあるシルヴィの表情。

 

俺の天使は俺の疲れを一瞬で無くしてくれる。ここは間違いなき桃源郷だろう。生きてて良かった……

 

しかし、まだだ。まだ足りないものがある。それは……

 

「もちろんシルヴィだな。ただ……」

 

「ただ?」

 

シルヴィとオーフェリアが首を傾げる中、俺はオーフェリアを見て……

 

「オーフェリアも裸エプロンになってくれ……」

 

天使が1人だけじゃ足りない。やはり2人でないとな。

 

「……八幡のエッチ」

 

俺の要望に対してオーフェリアは若干頬を膨らませながらも靴を脱いでキッチンの方に向かった。どうやらオーフェリアも裸エプロンになってくれるようだ。

 

「じゃあ、今日は私とオーフェリアで八幡君の疲れを癒すね……」

 

言いながらシルヴィは俺の方に寄ってきて……

 

 

ちゅっ……

 

約数時間ぶりにキスをしたのだった。

 

俺は懐かしさを感じながらもオーフェリアが裸エプロンになって戻ってくるまでシルヴィの唇を奪い続けて、オーフェリア裸エプロンになってやって来てからは3人でキスをしまくったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ八幡君。明日は3人で久しぶりにデートしようよ」

 

暫くしてリビングのソファーの上にて俺が裸エプロン姿の2人とイチャイチャしていると、シルヴィがそんな提案をしてくる。

 

「……私もしたいわ。王竜星武祭が始まってから3人で過ごす時間は減ったし、その間八幡は他の女子……特にノエルと仲良くしてるし」

 

「だよねー。八幡君いっつも女の子と居るしね」

 

オーフェリアとシルヴィがジト目で俺を見てくる。その目は止めろ。特にやましい事はしてないからな。今日試合前にノエルにキスされたけど。

 

まあそれはともかく、3人でデートするのは久しぶりだし良いか。次の対戦相手はレナティだし気分転換して緊張を解いておきたいし

 

「わかった。あ、でも途中でヴァイオレットの見舞いに行って良いか?」

 

ヴァイオレットは今日の5回戦にてロドルフォに手足を爆発させられて治療院に入院している。本当は今日行くつもりだったが、リースフェルトとの戦闘で思った以上に疲れたので今日はパスしたのだ。

 

しかしヴァイオレットが女で良かった。でなきゃロドルフォに顔面もしくは全身を爆発させられていた可能性もあったし。

 

「それなら良いよ。私も生徒会長として明日のデートが終わってから行く予定だったし」

 

「そうか。んじゃ何処行きたいんだ?」

 

 

「……私は3人と一緒ならどこでも良いわ」

 

「うーん……遊園地とかは疲れるから適当にブラブラしようよ。甘いもの食べたりショッピングしたり」

 

「んじゃ適当にブラブラな」

 

「うん。じゃあ予定も決まったし寝るまでイチャイチャしようね?」

 

「……今夜は寝かせないから」

 

言いながら裸エプロン姿の恋人2人は俺に近寄り……

 

 

 

ちゅっ……

 

3人でキスをする。マジでコイツら天使過ぎだろ?

 

結局俺達は飯と風呂の時間を除いて寝るまでずっとキスをして、ベッドに入ってからも身体を重ねてイチャイチャしまくったのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日、星武祭の調整日より1日休みである。外部から来た客はアスタリスクの街を周り、元からアスタリスクにいる学生らはこれまでの試合やこれからの試合を語り合ったりと色々な過ごし方をしている。

 

勝ち残っている俺とシルヴィはオーフェリアと一緒にデートをする事になっている。

 

しかしその前にヴァイオレットの見舞いに行く予定であったのだが……

 

 

「きぃぃぃぃぃぃっ!悔しいですの納得できませんの不服ですの異議ありですのー!」

 

これだけ元気なら見舞いの必要は無かった気がする。ヴァイオレットはベッドの上にて喧しく喚いている。個室だったから良かったものの、他の病人がいたら間違いなく迷惑千万だろう。

 

「わかったから少し落ち着け。悔しいのはわかるが、今は治療に集中して次に繋げろ」

 

「そんなド正論なんて今は聞きたくないですの!八幡さんは勝ったからそんな風に言えるのであって負けていたら私と同じようになっているに決まってるですの!」

 

まあそこを言われちゃ返す言葉がないな……これについてはシルヴィの苦笑いしてるし。

 

「しかもなんなんですの?!あのロドルフォ・ゾッポのふざけた能力は!あんなのチートですわよ!」

 

それについては同感だ。まさか星辰力に干渉して能力の使用を阻害するとは思わなかった。ロドルフォは距離さえ詰めればオーフェリアに勝てると言われているが、それは事実だと思う。

 

「きぃぃぃぃぃぃっ!悔しいですの!準決勝で八幡さんと戦いたかったですのぉぉぉっ!」

 

ヴァイオレットは歯軋りしながらそんな事を言ってくる。小町やノエルも王竜星武祭で俺と戦いたいと言っていたが、そんなに戦いたいのか?

 

「そんなに俺と戦いたいなら王竜星武祭が終わったら戦ってやるよ。だから落ち着け」

 

俺がそう口にするとヴァイオレットは喚くのを止めて俺を見てくる。

 

「本当ですの?マジですの?!嘘ではないですの?!」

 

「別に構わない」

 

元々お前とは魎山泊にて週に一度戦っていたからな。そのくらいお安い御用だ。

 

「絶対ですわよ!」

 

「わかったって」

 

結局俺はヴァイオレットに何十回も確認をされたが、どんだけ疑われてんだよ?面倒臭がりとはいえ、そのくらいなら簡単にOKするからな?

 

 

 

 

 

 

 

「さて……見舞いも終わったし、次は何処に行くか?」

 

治療院を出た俺は恋人2人に尋ねる。あの後俺達は小町の見舞いにも行ったが、王竜星武祭が終わる頃には退院出来るそうだ。星脈世代は基本的に常人より遥かに高い回復力を持っているのだ妥当なところだろう。

 

「うーん……とりあえずブラブラしよっか」

 

「そうね……」

 

言うなり恋人2人が抱きついてくるので俺は2人の手を握りながら商業エリアに向かって歩き出す。

 

道を歩く度に沢山の人ーーー外部の人間が俺達を見ている。中には指を指したり、写真を撮っている人もいるが気にしない。というか既に何度も撮られまくったから慣れた。

 

暫く歩いていると広場の端に人垣が出来ているので行ってみると……

 

「グッズ屋か……」

 

遊歩道の壁際に星武祭のグッズ屋かあり、露天商が沢山の客に手慣れた様子で対応している。

 

「はい天霧綾斗の写真付きペンダントね!毎度あり!」

 

露天商が売ってるのは版権を無視した海賊版である。正規の品は学園が管理している正規の店や星武祭の会場、はたまたネットで購入出来て、露店では売らない。

 

しかし何故非正規グッズに沢山の客が流通しているのかというと、その素材が普通に流通しているものではなく半ば盗撮めいた手段で手に入れたものばかりだからだ。

 

それらの商品は星武祭の人気の下支えになっていて、学園側も大目に見ているので、今の所警備隊からもお目こぼしをされている。

 

まあ学園がクレームを入れたらアウトなので過激なグッズはないけどな。

 

そんな事を考えていると……

 

「さぁさぁ!既に今回の王竜星武祭で活躍した選手のグッズも売られているよ!お勧めは一昨日の4回戦でシリウスドームを半壊させた比企谷八幡の鎧姿のポスターだよ!」

 

「ください!」

 

「……欲しいわ」

 

「はい毎度ありってえぇぇぇぇぇっ!」

 

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

人混みによって姿が見えない露天商が影神の終焉神装を纏った俺のポスターを紹介していると、シルヴィとオーフェリアが瞬時に人混みを嗅ぎ分けて、少ししてから露天商と客の驚きの声が響き渡る。まあ普通そうだよな。

 

そう思う中、人混みによって見えないが恋人2人がいる方向を見ながら耳を傾ける。

 

「私とオーフェリアに1つずつお願いします!」

 

「いや、それは良いけどよ……アンタら比企谷八幡の彼女なんだし本人に頼めば良いんじゃないか?」

 

店員の言う事は一理あるが、俺としてはチョット無理だ。

 

理由は簡単、影神の終焉神装は強力故に発動するだけで肉体に負荷が掛かるからだ。幾ら恋人2人が見たいと言っても何の理由も無しに使うのは勘弁して欲しい。

 

すると……

 

「「それはそれ、これはこれ」」

 

2人の声が聞こえてくる。マジで恥ずかしいからグッズ屋から距離を取ろう。幸い客の殆どはオーフェリアとシルヴィに意識が向いているし。

 

「はぁ……とりあえず毎度あり」

 

店員は戸惑いながらも職務を遂行する。同時にオーフェリアとシルヴィが人混みから出てきて俺に俺のポスターを見せてくる。

 

「どう八幡君?このポスター、すごく見栄えが良いよ?」

 

「帰ったら私の部屋に貼るわ」

 

同時に店にいた客は俺に気付き騒めき声を上げてくる。もう良いや、どうにでもなれ……

 

「そ、そうか……なら良かった。それよりも大分目立ってるし場所を変えよう」

 

俺はそう言って2人の手を引っ張って速足でこの場を去った。恋人2人に自分のポスターを見せられて恥ずかしい気持ちと俺のポスターなんかで恋人2人が喜んでいるのを見れて嬉しい気持ちを胸に秘めながら。

 

 

 

 

 

 

 

「いやーまさか当人達が来るとはな……それはさておき!さぁさぁ!まだまだ新作は寄っといで!お勧めは「八幡さんのグッズ、全種類ください……」おっ、毎度ってぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

八幡達3人が去ってから露天商を含めてその場にい面々はポカンとしていたが、やがて再起動して商品の売買をし始めるも、次に来た客を見て再度大声が響いた。

 

「あ、あの、どうかしましたか?」

 

キョトンとした表情を浮かべるのは聖ガラードワース学園の銀翼騎士団の一員にして、序列7位、今回の王竜星武祭でベスト8に進出している『聖茨の魔女』ノエル・メスメルだった。

 

予想外の客に露天商は驚きをしたものの……

 

「い、いや……毎度あり」

 

何とか再起動してノエルに商品を渡す。

 

「ありがとうございます。レティシアさん、買えました」

 

商品を受け取ったノエルは腕一杯に八幡関係の商品を抱えてレティシアに話しかける。それはもう本当に幸せそうな笑みで。

 

対するレティシアはノエルの笑顔を見て若干気圧されながらため息を吐く。

 

「ノエル……貴女が誰のグッズを買うのは自由ですわ。海賊版を買う事についても学園側が見逃してる店ですのでどうこう言いませんが……ポスターは部屋に貼り過ぎないでくださいまし」

 

「は、はい。わかってます……八幡さん、格好良い……」

 

ノエルはレティシアの言葉に頷いてから、トロンとした表情で八幡のグッズを見る。側から見たらノエルの顔はまさに恋する乙女の表情であった。

 

そしてノエルは表情通り八幡に恋する1人の女の子だ。

 

(本当にメロメロですわね。比企谷八幡はまさに「八幡さんの鎧姿のポスターをくださいまし!」ソフィアさんまで……あの男、正真正銘の女誑しですわね。天霧綾斗とどっちの方が女誑しなのでしょう?)

 

レティシアは新しく現れた自分の知り合いが露天商に八幡のグッズを求めている光景とノエルが恋する乙女の表情を浮かべながら八幡のグッズを眺めている光景を見比べながらそんな事を考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから3時間後……

 

「んじゃそろそろ昼飯を食おうぜ」

 

ある程度ブラブラした俺は2人に話しかける。何だかんだデートでは色々あった。

 

お茶の専門店に行ったら星露と鉢合わせしてしまい、キラキラした目で俺とシルヴィに王竜星武祭が終わったら戦ってくれと頼んできたり……

 

行政区の方に言ったら雪ノ下家当主の秋乃さんと長女の陽乃と会って秋乃さんには陽乃から自由を奪ってくれてありがとうと礼を言われたり……

 

陽乃の方は俺に殺意に向けてきてオーフェリアが殺意を向き返したらビビったり……

 

歓楽街の近くでお袋か違法カジノを1人で潰していて責任者を殺そうとしたのを止めたり……

 

と色々あった。

 

午前の物凄いインパクトのあるデートだった。いや、まあ3人でショッピングしたり、合法カジノで遊んだ時はそれなりに楽しかったけどさ、疲れて腹が減ったのは否めない。

 

「そうだね。何処で食べよっか?」

 

「……マコンドで良いんじゃない?近いし外部の客は少ないし」

 

オーフェリアの言うマコンドはチーム・赫夜の若宮の友人がバイトをやってるカフェだ。

 

出る料理の味も良いが、店の場所がメインストリートから一歩外れた場所にあり学生客はともかく外部からの客には気付かれにくく、星武祭期間中でも混雑している事はない店だ。

 

基本的にクインヴェールの生徒が利用する場所だが、俺は恋人2人を始め、チーム・赫夜の5人に妹の小町、ヴァイオレットやノエルらと何度も足を運んでいるので殆どお得意様となっている。

 

よって……

 

「だな。見る限り他の飲食店は混んでるし」

 

「決まりだね。じゃあ行こうか」

 

俺とシルヴィはオーフェリアの意見に従ってマコンドに向けて歩き出した。

 

そして歩くこと10分。目的地に到着したのでマコンドのドアを開けると……

 

 

 

 

「さあ、覚悟は出来たか材木座?」

 

「待て待て待て!落ち着け沙々宮殿!出来てない!出来てないからな!」

 

「頑張れー沙々宮ちゃん!」

 

「煽らないでください!紗夜さんも落ち着いてください!」

 

「くっ……こうなったら!」

 

「ひゃあっ!ちょっと将軍ちゃん?!いきなり抱きついて何をするつもりかな?!」

 

「貴様も道連れだ!さあ沙々宮殿!撃てるものならエルネスタ殿ごと撃つが良い!」

 

「わかった」

 

「ちょっと待てい!人質がいるのに撃とうとするなんて貴様に人の心はないのか?!」

 

「人質をとる将軍ちゃんがそれ言うの?!というか撃たないで!」

 

 

沙々宮が巨大な煌式武装を材木座に向けていて、材木座がエルネスタを道連れにしようと抱きついていて、エルネスタが顔を赤くしながらも必死に沙々宮の煌式武装から逃げようとして、刀藤が必死になって3人を止めていた。

 

カオスだ、カオス過ぎる……

 

俺達3人が絶句していると俺は刀藤と目が合った。

 

「………」

 

「………」

 

暫く沈黙が続く中、俺は……

 

「良し、違う店にしよう」

 

戦略的撤退する事に決めた。それについてはオーフェリアもシルヴィも賛成のようで俺と一緒に踵を返して店を出ようとするが……

 

 

 

「お願いですからこの状況を何とかするのを手伝ってくださーい!」

 

刀藤が悲痛な声を出しながら俺達を呼び止める。

 

結局俺達は必死過ぎる刀藤を見捨てる事は出来なかった。

 

 


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