学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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良い試合とは……? 比企谷八幡VSレナティ(後編)

「はぁっ……!」

 

「えーい!」

 

掛け声と共に俺とレナティの拳がぶつかる。それによって足元にクレーターが生まれるも、俺達はそれを無視してぶつかり合う。

 

単純なパワーなら動力源である複数のウルム=マナダイトをロボス遷移方式によって多重連結しているレナティの方が上だが今の所は拮抗している。

 

何故なら……

 

『比企谷選手、鎧から大量の棘を生み、地面に刺すことで支えとして、レナティ選手の攻撃とぶつかり合っています!』

 

『加えて鎧の腹部分から影の刃を出してレナティ選手の意識を割いてレナティ選手のパワーを減らしているな。単純な力ならレナティ選手の方が上だが、比企谷選手は工夫でその差を埋めているな』

 

実況と解説の言う通り、俺はレナティと攻撃を打ち合いながらも、

影を使ってレナティの意識を割いたり自分の身体を支えたりして何とか戦えている。

 

「もー!はちまんの攻撃、面倒だよー!」

 

レナティは不満タラタラな表情を浮かべながら拳の力を強める。流石ウルム=マナダイトをロボス遷移方式によって多重連結しているだけあってパワーは底知れない。これは防げそうにないな。

 

そう判断した俺は鎧から地面に刺している影の刃を抜いて、一旦後ろに跳ぶ。レナティの校章に向けて影の刃を飛ばしながら。

 

「むぅぅぅっ!」

 

影の刃はレナティからしたら雑魚かもしれないが、校章を狙う技なら無理は出来ないだろう。案の定レナティは悔しそうな表情を浮かべながらも、校章を守る為に後ろにジャンプした。

 

しかしマジで厄介だな。今の所は拮抗しているが、このまま続けば拮抗は崩れて徐々に俺が不利になるのは確実だ。

 

しかしどうするか?影神の終焉神装を使えば勝てる自信はある。実際に昨日1日休んだから医者から使っても良いと言われてるし。

 

しかしアレは肉体に強い負荷が掛かる。もしも使って勝てたとしても明日の準決勝では使えな……ん?

 

(待てよ。よく考えたら俺が準決勝で当たる相手って天霧かロドルフォだし影神の終焉神装は使えなくね?)

 

ロドルフォは星辰力に干渉する能力を持っているので影神の終焉神装を纏っても内部から爆発してくるだろうし、天霧は『黒炉の魔剣』で影神の終焉神装を焼き切るだろう。

 

そう考えると……

 

(レナティとの戦いで影神の終焉神装を使って、明日の準決勝で使えなくても問題ないじゃん)

 

どうせ肉体が消耗してなくても使い機会はないんだし。寧ろ使わないでレナティに負ける方が損じゃねぇか。

 

そう判断した俺は……

 

 

「呑めーーー影神の終焉神装」

 

ただ一言、そう呟く。すると俺の周囲から星辰力が爆発的に噴き上がり、影狼修羅鎧に纏わり付いたかと思えば、押し付けるように圧縮が始まる。

 

同時に俺の身体からギシギシと音が鳴り若干の痛みが生まれるも、今の俺はそれを気にしない。寧ろ限界まで影狼修羅鎧を圧縮するように星辰力を操作する。

 

そして遂に限界まで影狼修羅鎧を圧縮し切り、背中から悪魔の如き翼を生やし……

 

「よっ……とっ!」

 

そう呟いて息を吐く。同時に辺りに衝撃が走り俺の足元にヒビが入る。

 

「あっ!はちまんの本気だー!」

 

するとレナティは興味深そうに俺を見てくる。本当に純粋な奴だな……

 

「まあな。そんじゃ続きをやろうか」

 

「うん!レナはまだ満足ーーー良い試合についてよくわからないけど、今のはちまんとバトルしたらわかる気がするなー!」

 

「そうかい。そうなる事を祈っとく……じゃあやろうか」

 

そんな風に言われたらこちらとしても全力で相手をしよう。てか全力を出さないと足元を掬われるし。

 

「うん!」

 

俺とレナティは一言だけ言葉を交わして互いの拳をぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『殴り合いです!比企谷選手とレナティ選手、ガードを捨てて殴り合いをしています!2人の殴り合いの余波でステージはボロボロ!比企谷選手はステージを壊さないと気が済まないのかぁっ!』

 

『比企谷選手も好き好んでステージを壊している訳ではなかろう。ともあれノーガードで圧倒的な力による殴り合いはシンプルだが見ていて気持ちが良いな』

 

「にゃははー。レナティってば凄く楽しそう。やっぱり八幡ちゃんと当たれて良かったなぁ」

 

アルルカントアカデミーの専用観戦室にて、レナティを代理としているエルネスタは嬉しい気分で実況と解説の声を聞きながら、ステージにて行われている八幡とレナティの殴り合いを見ている。

 

「うむ。人間の場合勝って当然の試合よりも勝てるかわからない試合をした方が大きな変化を与えるからな。それを踏まえてこの試合を見れば、レナティ殿は勝っても負けても良い方向に成長すると思うのである」

 

「うん。やっぱり王竜星武祭に出して良かったよ」

 

隣に座る材木座がそう言うとエルネスタは頷く。

 

実際のところ2人が見る限り、今のレナティは本当に楽しそうに八幡の影神の終焉神装を突き破るべく殴っている。逆に八幡がレナティを殴ると、やったなー、とばかりに悔しそうに殴り返している。

 

レナティが生まれてから1年少しだが、エルネスタも材木座もレナティがここまで感情を露わにするのは初めて見た。この試合は間違いなくレナティの糧になると確信を抱いている。

 

「でも母親としてレナティには勝って欲しいな」

 

自分の願いを叶えたいからだけでなく、レナティには強者からの勝利によって生まれる快感を得て欲しいと思っている故に。

「ま、エルネスタ殿からしたらそうであろうな。我としてもエルネスタの努力が報われて欲しいし勝ってもらいたい所である」

 

「なっ?!い、いきなり何を言ってるのかな将軍ちゃんは?!」

 

エルネスタは材木座の言葉に思わず頬を染めて突っかかってしまうも、材木座は頭に疑問符を浮かべた表情だった。

 

「?我何か変な事を言ったのであるか?我は思った事を口にしただけであるぞ」

 

「〜〜〜!もう良いから黙っててよ!将軍ちゃんの馬鹿!アホ!厨二!童貞!」

 

「何故そこで我、disられないといけないのだ?!」

 

材木座が顔を赤くするエルネスタに文句を言う間にも、ステージでは八幡とレナティな殴り合いは続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふみゅみゅみゅみゅみゅみゅっー!」

 

「痛ぇなこら、お返しだ……!」

 

レナティが可愛い声を出しながら1発1発が純星煌式武装以上のラッシュを放ってくるので、俺も負けじとラッシュを返す。

 

同時に周囲にはドドドドドッと激しい轟音が響き渡り、両者の足元から衝撃が走りステージ全体にヒビが入る。

 

そしてレナティの攻撃は影神の終焉神装越しに俺の身体に僅かだが衝撃を与えて、俺の攻撃は衝撃によってレナティの堅固な皮膜装甲から火花を生み出している。

 

全身に痛みが徐々に蓄積してくるがどうでも良い。今はただレナティとの殴り合いを楽しみたい。

 

正直に言おう。今の俺はレナティとの殴り合いに悦を感じている。レナティが純粋無垢だからか俺も純粋に楽しいという感情が湧いている。

 

少し前の俺なら絶対にあり得ないが、これは間違いなく星露との鍛錬の影響かもしれないし、実際に俺の心の奥底に強い闘争心があったのかもしれない。

 

しかし今はそんな事はどうでもいい。今の俺はレナティを打ち負かす事以外どうでもいい。

 

「そらっ!」

 

「にゅにゅっ!」

 

互いにラッシュをする中、俺は一度左腕でレナティの一撃を受け流し、間髪入れずに右手を使ってレナティの腹に一撃入れる。それによってレナティの腹から火花や青白い電気がバチバチと鳴り出すが……

 

「むぅぅぅっ!やったなーはちまん!お返しだぁー!」

 

レナティは悔しそうな表情を浮かべながらも両腕を使って俺の右腕を掴み、そのまま宙にぶん投げる。

 

俺が空中に吹き飛ばながらもステージを見ると、レナティは一度力を溜めるように屈み込み、大きくジャンプをして俺に襲いかかってくる。

 

同時に俺は翼を羽ばたかせてからレナティの方に突撃を仕掛けて……

 

「はあっ!」

 

「ふみぃっ!」

 

空中で拳をぶつけ合う。すると辺りに衝撃が走り……

 

「ちっ……!」

 

「わわわっ!」

 

お互いは磁石の反発作用の如く吹き飛び、俺は天井の防護ジェルに、レナティはボロボロになっているステージに叩き付けられる。

 

だから俺はそのまま防護ジェルを蹴ってステージにいるレナティに向かって突撃して拳を振り下ろす。

 

「わわわ!これはマズいかも!」

 

レナティは言いながら横に一歩ジャンプして俺の一撃回避する。それによって俺の一撃はステージの床に当たり……

 

「あ、やべ……」

 

『何とぉ!何と何と!比企谷選手の一撃によって遂にステージが割れたぁっ!』

 

『私も長年星武祭を見ているがステージが割れたのは初めて見るな。そしてこの状態で試合を続けるのか?』

 

『ええっと……運営委員会からは中止が伝えられてないから続行ですね。とはいえ試合が長引けば中止になるかもしれないです』

 

しまった。俺とレナティの戦いによって防護ジェルは壊れなかったが、ステージに限界が来たようだ。これって弁償するのか?

 

疑問符を浮かべながら俺は割れ目に飲み込まれないように距離をとってからレナティを見るとレナティが提案をしてくる。

 

「ねぇねぇはちまん、ちょっと良い?」

 

「何だよ?」

 

「試合が長くなって中止になったら嫌だしさ、一発勝負しよー?」

 

「一発勝負?」

 

「うん。前におじいちゃんが持ってる漫画を読んだ時に似たような場面があったし」

 

「おじいちゃんって誰だ?材木座か?」

 

「ん」

 

レナティが頷くが材木座がおじいちゃんだと?あいつはお父さんじゃないのか?お母さんはエルネスタで。

 

まあ今は良いや。それよりもレナティの提案した一発勝負についてだ。確かにレナティの言うように勝負が長引いて試合が中止になったりしたら嫌だし、早めにケリをつけられたらありがたいが……

 

「ルールは?」

 

「はちまんとレナが一番強い攻撃をぶつけ合って吹き飛んだ方の負けー」

 

「もしもお互いの攻撃が弾けた程度で吹き飛ばなかったら?」

 

「にゅ?んー……もう一回ぶつけ合うはダメー?」

 

言われて考える。おそらく罠ではないだろう。レナティと戦ってわかったが彼女は純粋だから。

 

そしてステージが割れた事、俺自身の体力の消耗具合を考えると長引くのは面倒だし……

 

「わかった。その勝負受けて立つ」

 

受けることにした。この勝負が一番勝率が高いし、こいつとの戦いは最後まで小細工なしでやりたいし。

 

「にひひー!決まりー!じゃあお互いに準備しよう?」

 

レナティはそう言ってから比較的ボロボロになっていない場所に立ち上がり自身の左腕に触れる。

 

すると左腕が光り輝き信じられない程のエネルギーを感じ取れる。アレは明らかにヤバい光だ。光から圧力を感じるし。

 

とはいえ相当無茶な技のようだ。レナティの左腕からは光だけでなく火花も生まれているし。恐らくロボス遷移方式によって多重連結したウルム=マナダイトによる流星闘技と思えるが、間違いなくリスクのデカイ技と思える。

 

そんな事を考えながら俺もレナティの正面に立ち……

 

(影神の終焉神装、その力の全てを俺の左手に凝縮しろ)

 

内心そう呟くと俺の身に纏っていた影神の終焉神装が剥がれて、俺の左腕に集まる。それによって腕には重みが発生するが義手だから問題ない。

 

そして義手に埋め込まれたマナダイトに星辰力を込める。すると鎧の内部から圧倒的な力を感じる。

 

影神の終焉神装を凝縮させた義手による流星闘技、4回戦にて『大博士』を倒した技であり、破壊力だけなら今の俺が放てる最強の技だ。

 

技の準備が完了すると、レナティも丁度終わったようで俺と向き合う。先程まで周囲を輝かせていた光は左腕に集まっている。そこからも圧倒的な力を感じる。

 

「はちまんは終わったー?レナは準備出来たよー?」

 

「安心しろ。俺も準備出来た」

 

「にひひっ!じゃあやろっか、一発勝負!」

 

「ああ。やろうか」

 

レナティが笑いながらそう言って構えを取るので、俺も頷いて構えを取る。

 

互いに構えを取って一息吐いて……

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ふみぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

お互いに掛け声を上げて距離を詰めてお互いの左腕をぶつけ合う。

 

瞬間、俺とレナティの拳から圧倒的な衝撃が生まれて、比較的無事だったステージの一部にも穴が開いて、防護フィールドに衝撃が叩きつけられてギシギシと鳴り出す。

 

そんな中、俺達は自分達の拳の激突によって生まれる衝撃を無視して拳を押し付け合う。目の前の敵を倒す、それ以外の事を考えたら負けだ。

 

そんな中、俺の左腕だけに凝縮した影神の終焉神装は徐々に剥がれだし、圧倒的な光を煌々と輝かせるレナティの左腕にヒビが入る。

 

しかし……

 

「ぐっ………ぐぅぅぅぅっ!」

 

「にゅにゅにゅにゅにゅっ!」

 

俺達は特に気にせずに力を込める。他の事に気を取られて意識を割いたりしたら押し切られる……!

 

そう思いながら力を込めていると何秒か、何十秒か、はたまた何分経過したか知らないが遂に……

 

 

 

 

 

バキィッ!

 

ドゴッ……!

 

影神の終焉神装が義手ごと粉砕されて、同時にレナティの左腕がスパークを散らしながら粉々になり……

 

「がはっ!」

 

「にゅにゅにゅにゅっ!?」

 

俺達の壊れた腕から衝撃が走り俺とレナティは磁石が反発するように吹き飛んだ。

 

そしてステージの壁にぶつかってから地面に倒れ伏す。一応全身に星辰力を込めたから骨は折れてないようだが、全身から痛みを感じる。

 

俺が痛みを感じながら身体を起こすと、同じように離れた場所にいるレナティもよろめきながらも身体を起こす。向こうは全身から火花やスパークが散っているから相当限界だろう。

 

(まあ俺も割りかし限界に近いな)

 

星辰力はともかく、影神の終焉神装を使うのは無理だろう。使ったら肉体に掛かる負荷で気を失いそうだし。

 

そう思いながら俺はゆっくりとレナティの元に向かう。するとレナティもゆっくりだが俺に近寄ってくる。一発勝負ではお互いに吹っ飛んだので引き分けだ。つまり必然的に違うルールで勝負をつけないといけない。

 

そして観客席が無言の中、俺達はお互いに触れ合える位までの距離に近寄る。

 

「さてレナティよ。一発勝負では引き分けだったがどうする?」

 

「んー……今の一発勝負でレナ、エネルギーの殆どを使って限界。はちまんも似たような状況だよね?」

 

「まあな。んでどうする?今からチマチマした勝負をするか?」

 

この状況でチマチマした勝負をするのはやる気が出ないが決着をつけないといけないからなぁ……

 

「えー、レナそんな勝負やりたくなーい。はちまん何か良い案ある?」

 

「良い案ねぇ……じゃんけんとか?」

 

一応じゃんけんも一発勝負だしな。まあ星武祭の勝敗をじゃんけんで決めるのは前代未聞だろうけど。

 

そんな風に軽い冗談を言うと……

 

 

「ぷっ……!にひひっ……良いじゃん!じゃんけんで決めようよ!」

 

レナティは名案とばかりにぴょんぴょん飛び跳ねるがマジで?軽い冗談で言ったんだけど。

 

ともあれレナティは乗り気だし良いか……

 

「はいよ。じゃあ一発勝負な」

 

「ふふーん。勝つのはレナだから」

 

言いながら俺が手を出すとレナティも無事な右手を出してくる。

 

『な、何をするのでしょうか?』

 

『全くわからん』

 

実況と解説はそんな事を言っているが、この場にいる全員、いやこの試合を見ている全員が予想出来ないだろう。

 

そんな事を考えながらも俺とレナティは顔を見合わせて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「最初はグー!じゃんけん……ぽん!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺→パー

 

レナティ→グー

 

勝敗が決まった。

 

「ふみぃぃぃぃぃっ!?」

 

レナティは手をグーにしたまま驚愕の声を上げる。顔には信じられないという色が混じっている。

 

「俺の勝ちだ、レナティ」

 

「うぅぅぅ!く〜や〜し〜い〜!」

 

レナティは悔しそうにしながらも自身の校章に手を当てる。そして俺を見てから口を開ける。

 

「はちまん!次は負けないから!」

 

「はっ、次も俺が勝つ」

 

「むぅぅぅっ!レナの負け!」

 

レナティはそう言って自身の負けを認める。

 

『試合終了!勝者、比企谷八幡!』

 

機械音声が俺の勝利を告げる。すると一拍置いて……

 

 

 

 

 

 

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

観客席からは驚愕の声が響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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