学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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活動報告にアンケートを実施しましたので協力お願いします


比企谷八幡は表と裏の仕事をこなす

クインヴェール女学院職員室にて……

 

pipipi……

 

「はいこちらクインヴェール女学院です」

 

電話の音が鳴ったかと思えば、初老の男性教師が電話に出る。それを確認した俺は手元にある書類に目を戻して教え子の戦闘記録を見直す。

 

俺はW=Wで実働部隊もやっているが、クインヴェールで教師もやっている。担当科目は昨年度定年退職したお袋と同じ戦闘科目についてだ。

 

戦闘科目は星武祭の結果に繋がるのでかなり重視されていて、教師も星武祭で好成績を残した人間ばかりだ。今のクインヴェールに戦闘科目担当教師は12人いるが、その内俺を含めた4人は星武祭で優勝経験があるし。

 

んで俺は中等部の生徒を担当しているが、今年は俺の娘の歌奈を筆頭に中々有力な生徒がゴロゴロ入学している。場合によっては今シーズンは総合優勝を狙えるかもしれない。

 

俺が学生時代だった頃のクインヴェールは万年最下位と弱小だったが、お袋がクインヴェールで働いてからは大きく変わった。お袋がクインヴェールに就職してから定年退職するまで丸々6シーズンあったが、その時の順位は4位を2回、3位を1回、2位を2回、そして総合優勝を成し遂げた。

 

それまでクインヴェールは一回しか総合優勝をしてないが、2回目の総合優勝はお袋のおかげである事は誰の目から見ても明らかである。

 

閑話休題……

 

お袋の影響もあってクインヴェールは徐々に弱小校で無くなっているので、息子の俺もクインヴェールの為に尽力しないといけない。

 

「その為にも有力な新入生を早い内に強く「比企谷さーん、星導館学園の天霧さんからお電話ですよ。番号は12番で」あ、はい。わかりました」

 

いきなり名前を呼ばれたので俺は手元にある電話を取って12番のボタンを押す。星導館の天霧って事は……

 

「もしもし」

 

『あ、八幡さん。お久しぶりです』

 

「やっぱり綺凛か。久しぶりだな」

 

電話の相手は天霧綺凛ーーー旧姓刀藤綺凛だった。

 

予想はしていた。天霧を苗字に持つ俺の知り合いは5人いるが、綾斗は星猟警備隊に、ユリスはアスタリスク中央区にある花屋に、紗夜は技術開発局に、クローディアは星導館の運営母体の銀河に所属している。

 

となるとあり得るのは星導館で俺と同じように教師をしている綺凛以外ありえない。

 

『そうですね。最後にあったのは3ヶ月くらい前ですから』

 

俺の娘4人と綺凛の息子は同じ年で同じ小学校に通っていたので、俺は妻3人と綺凛と一緒に卒業式に参加したから3ヶ月ぶりなのは正しい。

 

「んで、俺に何の用だ?わざわざ職員室に電話をかけてくるって事は星導館の教師としてクインヴェールの教師である俺に用があるんだろ?」

 

プライベートの話ならクインヴェールの職員室ではなく、俺の携帯に直接電話をする筈だからな。

 

『はい。実は星導館では鳳凰星武祭が始まる前に他学園と合同で訓練をしようと考えているので、その件についてお話があります』

 

他学園との合同訓練?星武祭以外でも他所の学園と合同でイベントを企画するのはあるが訓練ってのは初めて聞くな。

 

「ちなみに理由は?」

 

『はい。星武祭では他所の学園と競い合う場所です。人によっては緊張してしまい本来の実力を発揮出来ない……というパターンもあるのでその対策として、新入生を中心に他学園との交流を考えてみたんです』

 

なるほどな……一理ある。俺は教職に就いてから10年以上で、その間色々な生徒を見てきた。その中には星武祭ーーーいつもと違って他学園の生徒と戦う事に緊張して、勝てる相手に負けた新入生もいた。綺凛の言う通り星武祭前に他学園と軽く戦えばその緊張を和らげることも可能だろう。

 

ともあれ……

 

「とりあえず話はわかった……が、俺の一存では決められないから後日連絡で良いか?」

 

『もちろんです。ただ、鳳凰星武祭まで1ヶ月半とそこまで時間がある訳ではないので……1週間以内に返事を頂けると助かります』

 

「わかった。それまでに連絡する」

 

『はい。それではよろしくお願いします。……失礼します』

 

そう言って通話が切れたので受話器を置く。合同訓練か……星武祭が年々変わっていくように、学園の在り方も年々変わっていくなぁ……

 

とりあえずこの件についてはペトラさんに報告をしとかないといけ『pipipi……』メールか。この着信音って事はクロエからだろう。

 

俺が端末ーーー自分の端末ではなくW=Wから支給された専用を取り出すと……

 

 

『作戦開始1時間前。教師から諜報員に変わって配置について』

 

そんな簡素なメールだった。それを見た俺は手元にある電子書類を閉じて立ち上がり、校長にメールを見せる。俺がW=Wの諜報員も兼任していることを知っている校長は1つ頷いたので、俺は一礼して職員室を後にした。

 

 

 

 

「さぁて……ネズミ捕りの時間だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

PM6:45 クインヴェール港湾ブロックの一角にて……

 

「こちらエイト。Aー7についた。見回り用の擬形体以外の存在は確認されていない」

 

俺はAー7地点にある倉庫の隅に身を潜めながらオペレーターのクロエに連絡を入れる。

 

何故普段は人が入らない港湾ブロックにいるのかというと、歓楽街にいるマフィア『ディアス・フィアーズ』が今夜7時にW=Wの倉庫から物資を盗むという情報を手に入れたからだ。

 

俺の担当する倉庫には煌式武装が保管されていて、連中が狙おうとしている物の中では1番高価な物が保管されている倉庫である。

 

ちなみに隠密行動をする際、俺は自分の名前をエイトと呼んでいる。馬鹿正直に名前を出したら盗聴してくる奴に情報を与えるようなものだからな。

 

そんな事を考えていると……

 

『こちらソーマ、Cー4に到着しました。人影はありません』

 

『こちらアネッサ、Gー14に到着。敵の気配無し』

 

『こちらヤミー、Kー2に到着するも、敵確認出来ず』

 

俺以外の諜報員からも連絡が来る。どうやら他の場所にも来てないようだ。

 

『了解。でも用心して。さっきクインヴェールを見回りしているグループから不審な人間ーーー火を放つ可能性のある人間がいるって連絡が来たから』

 

なるほどな……そう考えると港湾ブロックに攻め込む人間は7時丁度に攻めて、速攻で盗んで、速攻で逃げる算段だろう。長引いたら不利なのは明白だし。

 

そこまで考えている時だった。遠く離れた場所ーーー湖から万応素が反応する気配を感じる。双眼鏡を使って見れば湖の上を高速で移動している物体が4つ見える。マトモな方法で外部から港湾ブロックに行くには専用の電車に乗る必要があるので、十中八九敵襲だ。

 

「こちらエイト。未確認物体を確認、任務を開始する」

 

『こちらソーマ。エイト同様未確認物体を確認。処理を開始します』

 

『こちらアネッサ、ソーマ同様未確認物体を確認。上陸次第任務に移行します』

 

『こちらヤミー、未確認物体を確認。戦闘準備をする』

 

 

俺達4人が臨戦態勢に入る。仕事としては可能なら拘束、無理なら抹殺を指示されている。妻と子供を持っている俺からしたら、可能な限り殺しはしたくないので頑張ろう。

 

そう思っていると湖から人が5人出てきて上陸してくる。そして内4人が倉庫に入っていく。1人は十中八九見張りだろうが……

 

「甘い」

 

次の瞬間、俺は脚部に星辰力を込めて爆発的な加速をして見張りの男に近寄り……

 

「落ちろ」

 

「がはぁっ!」

 

そのまま腹部に蹴りを叩き込む。男は苦しそうな表情を浮かべながら湖に落ちる。見れば男はプカプカと仰向けに浮いている。顔は水から出ているので死にはしないだろう。先ずは1匹……

 

「見張りがやられたぞ!」

 

「馬鹿な?!俺達の行動が筒抜けだったというのか?」

 

倉庫の中から戦闘音を聞いた4人が驚くようにこっちを見るが遅過ぎるな。

 

「影よ」

 

俺がそう呟くと自身の影が大量に地面から生えて、そのまま全ての倉庫全体を包み込む。出入り口だけでなく壁の部分も全てだ。万が一壁を壊してもその先は影の膜がある。俺は完璧主義者だからな。絶対に逃がさん。

 

「さあ好きなだけ盗めば良い。どうせ出られないんだし」

 

いくら大量に盗んでも出入り口さえ封鎖すれば意味ないんだよ。これで任務達成だ。良かった、殺しをしないですんだぜ。

 

同時に倉庫から銃声が聞こえてくるが無駄だ。俺の影の膜を破りたきゃ純星煌式武装でも持ってこい。

 

内心そう思いながら俺はクロエに通信を行う。

 

「こちらエイト。任務完了。1人を気絶、4人を倉庫内に閉じ込めた」

 

『こちらソーマ、任務完了しました』

 

『こちらアネッサ、任務完了。全員拘束した』

 

『こちらヤミー、任務完了。全員殺害完了』

 

 

ヤミーの奴、相変わらず殺しが好きだな。流石人殺しをする為に諜報員に入っただけの事はある。

 

内心呆れているとクロエから通信が入る。

 

『了解。クインヴェールに直接襲撃を掛けてきた連中も拘束成功。既にそっち正規の兵を向かわせているから、彼らが来たら帰還して』

 

「『『『了解』』』」

 

クロエの指示に対して俺達は了解の返事をして正規の兵が来るまで滞在するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

 

「やられました……!こちらの動きが読めていたようです!」

 

「なっ?!」

 

アスタリスク歓楽街にある『ディアス・フィアーズ』のアジトの一室にて、港湾ブロックに向かった部下の服に仕込んであった盗聴器から現状を知った部下がそう告げると『ディアス・フィアーズ』のリーダーと一色いろはは驚愕の声を上げる。

 

しかしそれは一瞬で一色は即座に思考を再開する。

 

(動きが読まれた以上、ここにいるのは危険……潮時かな)

 

一色は即座に逃げる事を選択した。

 

元々彼女は八幡に対して復讐する事しか考えていなかった。そこで一色はW=Wにちょっかいをかけているマフィアを探して、『ディアス・フィアーズ』を見つけたのでリーダーに色仕掛けをして気に入られて味方を得たのだ。

 

しかし動きが読まれた以上、『ディアス・フィアーズ』と縁を切ってから逃げないといけない。

 

(とりあえずリーダーを可能な限り肉盾にして逃げないと……途中で殺してほとぼりが冷めるまでビジネスホテルにいれば問題ない……!)

 

そう結論づけた一色はリーダーに媚を売って逃げるのに協力するように頼もうと近付いたその時だった。

 

 

 

ドゴォォォォォンッ…….

 

「がはっ!」

 

爆音と共にドアが吹き飛んだ。ドアはそのまま下っ端に当たり下っ端はドアと壁に挟まれる。

 

何事かと思いリーダーと一色はドアが飛んできた方向を見れば目を見開いてしまう。そして直ぐにガタガタと震えだす。

 

何故2人が怯え出したのかというと、そこにいた人が予想外の人だったからだ。

 

それは……

 

 

 

 

 

 

「『猿王』、比企谷翔子……!」

 

レヴォルフ黒学院序列1位『猿王』比企谷翔子だった。彼女はレヴォルフと馴染み深い歓楽街にいる人間からも知られている。

 

何故かというと翔子は今年の春に入学したにもかかわらず、入学初日に当時の序列1位を決闘で下して序列1位を手にしたのだ。以後3ヶ月間、ありとあらゆる相手から積極的に決闘を受けながらも全て蹴散らしている。

 

そんな彼女は母親と同じ真っ白な髪を揺らしながらギラギラした瞳を向けてくる。

 

「よう。『ディアス・フィアーズ』のボス猿共。単刀直入に言うがよぉ、てめぇら私のダチ相手にカツアゲしたみたいだし潰させて……ん?おい、そこのお前」

 

「ひっ!な、何ですか?」

 

いきなり翔子に呼ばれた一色は失禁してしまうが、翔子は無視して口を開ける。

 

「間違えたら迷惑をかけるから先に尋ねとくぜ?テメェ、学生時代にウチの親父とお袋達の関係を暴露した一色いろはか?」

 

「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

対する一色は失禁しながらも顔から鼻水や涙を流して、窓から逃げようとするが、その前に翔子が動きだす。

 

「ビンゴだ。んじゃ覚悟しろよ?殺しはしないが地獄を見せるから」

 

言うなり翔子は先回りしてから一色に足払いをかけて転ばせる。それによってうつ伏せになって倒れる一色に対して、翔子はジャンプして……

 

「……っ?!〜〜〜っ!」

 

そのまま一色の頭を踏み潰す。死なないように加減したが、一色には耐えきれず頭を床にめり込みながら悶絶する。翔子は気絶しないように攻撃したので、気絶によって痛みから逃れることは出来なかった。

 

それを確認した翔子は即座にリーダーの方を見てから、脚部に星辰力を込めて爆発的な加速をしてから鳩尾に拳を叩き込む。

 

「かっ……!」

 

リーダーはそのまま気絶して床に倒れこむ。同時に翔子は部屋を見渡し、隅に金庫を発見したので無理矢理開ける。そして友人がカツアゲされた金額ーーー32000円だけを抜き取って金庫の扉を閉める。

 

「さーてと、ちゃっちゃとアイツに返してやって遊びに行くか」

 

翔子はそう言ってそのまま窓から降りたのだった。

 

翔子は敵には容赦しないが、友人の為ならマフィアすら潰す女である。友人が僅かな額の金を取られただけで怒りを露わにする。

 

それに加えて圧倒的な実力もあるので、レヴォルフの女子らは年関係なく、今年入学したばかりの翔子に心酔しているのであった。

 

『猿王』比企谷翔子

 

彼女はまさしく生きる伝説『狼王』八代涼子の再来と言われるのだった。

 

その15分後W=Wが放った刺客が一色及び『ディアス・フィアーズ』のメンバーを捕まえたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 




登場人物紹介

比企谷翔子(13)

レヴォルフ黒学院序列1位

二つ名 猿王

八幡とオーフェリアの娘で生粋のバトルジャンキー。入学初日に前序列1位を決闘で下して1位となる。入学してから3ヶ月、申し込まれた決闘は全て受けて全勝している。また祖母譲りのカリスマ性によって大量の舎弟を持つ。

戦闘スタイルは純粋に体術のみ。しかし身体のありとあらゆる箇所に星辰力を込める技術レベルが高く、不規則な動きが可能で大抵の人間はマトモに反応出来ずに敗北する。

ガラは悪いが仲間には優しい。仲間が傷つけられたら犯人をどこまでも追い詰めて叩き潰すのを信条としている。

腹違いの姉妹である茨や竜胆、歌奈との仲は悪くないが、暇さえあれば勝負を挑む癖を持っている。その際茨と歌奈は辟易して、竜胆は喜んで勝負を受ける。

目標は父の八幡に勝つ事。






一色いろは

ガラードワースOGであるが、鳳凰星武祭では相方の葉山がオーフェリアによって気絶されられた事で八幡を逆恨み。更にシルヴィアとオーフェリアに怒られた動画が出回った事によりぼっちとなり更に八幡を逆恨み。恨みを晴らすべく王竜星武祭に2度出場するも、高2の時に参加した試合では小町に、大学2年の時に参加した試合では星露に瞬殺される。

小町に敗北した際は失禁して、ガラードワースの評判を下げる要因となり上層部から「これ以上動かれると迷惑だ」と言われて一般生徒から隔離させられて卒業まで懲罰教室で過ごしていた。

それがきっかけで八幡に殺意を抱き、八幡が所属するW=Wに嫌がらせをしようと20年以上動いていた。



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