学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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こうして物語の序章は終了する。

「よう。お前が人の妹を襲撃した男でいいのか?」

 

俺はそう言って笑いながら3人の方に向けて歩を進める。

 

「な、『影の魔術師』!どうしてここが?!」

 

人形使いの男はビクビクしながら指を向けてくる。その顔は絶望に満ちている。俺は更に絶望を与えるべく笑みを深める。

 

「質問してんのは俺だ。てめぇが小町を襲撃した屑でいいのかって聞いてんだよ?」

 

「ひぃぃぃ!」

 

人形使いはそう叫びながら後ろに下がる。が、後ろにある壁にぶつかって地面に崩れ落ちる。

 

「ひ、比企谷。どうしてここに?」

 

人形使いに近寄ろうとするとリースフェルトが話しかけてくる。

 

「ん?さっきコンビニで買い物してたら天霧が再開発エリアに向かって走ってるのが見えたんだよ。それでピンときた。それよりリースフェルト、こいつが例の襲撃者でいいのか?」

 

「あ、ああ。そうだ」

 

ふーん。こいつがやっぱり小町を狙った屑か。

 

「こいつには後で地獄を見せるとして……天霧、お前中々やるな。クローディア・エンフィールドがスカウトしたのも納得したぜ」

 

「いやいや。100体以上の人形を縛りつけている比企谷に比べたら大した事ないよ」

 

よく言うぜ。四色の魔剣の1つ『黒炉の魔剣』を持ってる奴が弱い訳ないだろうが。四色の魔剣は純星煌式武装の中でもかなり強力で使い手を選ぶと聞く。同じ四色の魔剣を持つガラードワースのアーネスト・フェアクロフを考えると弱いとは思えん。

 

「そうかい。……まあ今はどうでもいいな。とりあえず先ずはこの人形を全部ぶっ壊すか」

 

そう言って天霧から視線を外して100体以上の人形とその操り手を見る。

 

「ひぃぃぃ!な、何で動かないんだよ?!動けよ!!動いてあいつを殺せよ!」

 

男はそう言って人形を操るような素振りを見せるも、当の人形はギシギシ音を立てるだけで動く気配はない。斧を振ったり銃を発砲しようとしても指の先まで影が纏わりついている為攻撃をする事が出来ない。

 

(……何だよ拍子抜けだな。100体以上の人形を動かせるからどんなもんかと思ったがこの程度の拘束すら抜け出せないなんて)

 

 

もういいや。全部ぶっ壊すか。

 

俺は手を上げて

 

 

 

 

 

 

 

「犯せ、影の病」

 

そう言って指をパチリと鳴らす。

 

瞬間、人形に纏わりついていた影は拘束力を上げて人形を締めつけ始める。それによってさっきより遥かに大きくギシギシ音を立てる。

 

「や、止めろ!」

 

人形使いは俺がやろうとしている事を理解して制止の声をあげるがもう遅い。

 

 

100体以上の人形は大きな破砕音と共に全て粉々に砕け散った。

 

全ての人形はバラバラとなり地面に広がる。

 

「そ、そんな……僕の人形が……」

 

人形使いは呆然としている。しかしだからといって放置するつもりはない。

 

「さて、次はお前だ」

 

俺がそう言って影の触手を蠢かせると人形使いは尻餅をつきながらも叫び出す。

 

「ま、まだだ!まだ僕には奥の手がある!」

 

そう言って腕を振るうと背後にある瓦礫の山から巨大な人形が現れる。さっき全て破壊した人形の5倍くらいの大きさで人というよりゴリラの体型をしている。

 

しかし特に恐怖は感じない。はっきり言って簡単に破壊出来るだろう。だから……

 

「おい天霧。アレはお前に任せた」

 

「え?俺?」

 

天霧がキョトンとした顔をしながら俺を見てくる。俺としてはこいつの実力を見てみたい。だから天霧に任せてみる。

 

「まあ安心しろ。万が一ヤバくなったら助ける。それにリースフェルトはカッコイイお前を見てみたいらしいし」

 

天霧に抱かれて真っ赤になっているリースフェルトを見ながらそう言うとリースフェルトは更に真っ赤になる。

 

「ひ、比企谷!な、何を言って……?!」

 

いや、そんなに真っ赤になって否定しても説得力ないからね?それに元々リースフェルトを助けに来たのは天霧だ。俺は何となく付いてきただけだし。

 

そう思いながら天霧を見ると天霧はため息を吐きながら頷く。

 

「はぁ……わかったよ」

 

そう言うと『黒炉の魔剣』を構える。対して人形使いはやけくそになったような笑いをしながら腕を振るう。

 

「ははは!さあ、僕のクイーン!やってしまえ!」

 

そう言うと巨大な人形は素早い動きで俺達に詰め寄る。俺は万が一に備えて影を展開できるように準備する。

 

天霧はというと息を吐いて人形の拳があたる直前に『黒炉の魔剣』を閃かせる。

 

 

 

 

 

「五臓を裂きて四肢を断つーーー天霧辰明流中伝ー九牙太刀!」

 

天霧がそう叫ぶと一瞬だった。

 

一瞬にして巨大な人形の両手足が斬り落とされ地響きを上げながら地面に倒れこむ。そして胴体には大きくえぐられた跡がある。

 

(……何が大したことないだよ?普通に強いじゃねぇか)

 

にしても何でリースフェルトと決闘した時に本気を出さなかったんだ?この強さなら言っちゃ悪いがリースフェルトを瞬殺出来ると思うぞ?

 

疑問に思っていると天霧は人形使いに近寄る。

 

「ひ、ひぃぃぃ!」

 

すると顔を引きつらせながら逃げ出した。転がるように人形の残骸の中を逃げるが逃すつもりはない。

 

「影よ」

 

俺がそう呟くと俺の影が地面から現れて人形使いの両手両足を縛る。念の為骨は折っておくか。

 

そう思いながら影の拘束力を上げると鈍い音が聞こえる。

 

「がぁぁぁぁぁ!!」

 

人形使いは絶叫を上げながら暴れる。うるせぇなぁ。

 

「お、おい比企谷。やり過ぎじゃないのか?」

 

リースフェルトが引き攣った顔をしてくるがやり過ぎだと?

 

 

 

 

 

 

「そうか?妹を狙った屑に優しくする理由はない。大体犯人を逃げられなくするのは当然だと思うが?」

 

「そ、それは……そうだが……」

 

「……まあお姫様には刺激が強いかもしれないな。で、こいつはどうすんだ?風紀委員や警備隊に連絡するならさっさとしろ」

 

「ああ、それならクローディア達が来ると思うからここで待機……ぐっ!」

 

「天霧?」

 

天霧が話している途中、急に表情が苦痛に歪みだした。

 

「ど、どうした?」

 

リースフェルトも驚きながら尋ねる。しかし天霧が返答する前に異様な雰囲気を感じ取った。

 

周囲の大量の万応素が天霧を中心に集約されていく。

 

(……何だこりゃ?)

 

辺りに俺とリースフェルト以外の魔術師や魔女はいない。って事はこいつはあらかじめ仕込まれていた物だろう。それ自体は珍しくはないが……

 

(これほどの万応素を何に使うんだ?)

 

「あああああああっ!」

 

天霧がそう叫ぶと同時に複数の魔方陣らしきものが天霧を取り囲む。更にその魔方陣から光の鎖が現れて天霧の体を何重にも縛りつけていく。

 

「これは、先ほどのーー?!」

 

リースフェルトは驚いた表情をしているが事情を知っているようだ。

 

「うっ……」

 

天霧は呻き声を最後に気絶する。それを確認すると同時に俺は影を操作して地面に影のクッションを敷く。それによってリースフェルトを抱き抱えていた天霧は怪我をしないで済んだようだ。

 

「おい!綾斗!しっかりしろ!」

 

リースフェルトが心配そうな表情をしながら天霧に話しかけている。

 

「おいリースフェルト。お前はこれを知ってるのか?」

 

俺が尋ねるとリースフェルトは俺を見て話しかけてくる。

 

「……わからない。だがさっきの魔方陣は……お前が来る前にも見た。その魔方陣は綾斗が星辰力を高める際に弾け飛んだものと同じものなんだ」

 

よくわからないが……星辰力を高める際に必要な儀式みたいなものか?

 

まあ今はそれについてはどうでもいい。問題は天霧の容態についてだ。一応医療機関に連れてった方がいいだろう。

 

そう判断した俺は影に星辰力を込める。

 

 

 

「目覚めろーー影の竜」

 

そう呟くと自身の影が辺り一面に広がり魔方陣を作り上げる。そして黒い光が迸り魔方陣を破るゆうに20メートルくらいの大きさの黒い竜が現れる。

 

「ひ、比企谷……?」

 

リースフェルトは驚いた表情を見せているが暴力には使わないからね?

 

「リースフェルト、その竜に乗って天霧を治療院に連れてけ。そいつの状態は知らないが念の為だ」

 

初めて見る能力だ。念の為治療院に行っておいた方がいいだろう。

 

「ああ……だがサイラスは……」

 

サイラス?ああ、この人形使いか。

 

「クローディア・エンフィールドへの引き渡しは俺がやっとく。ついでにお前と……そこで気絶してるマクフェイルも治療院で診てもらってこい」

 

よく見りゃ少し離れた所にこの前に暴れていたマクフェイルもいるし、リースフェルトも軽くない怪我をしている。星脈世代だから後遺症はないと思うが治療院には行った方がいいだろう。

 

「……いいのか?」

 

「構わない。俺は無傷だし暇だし。行くならさっさと行け」

 

そう言いながら気絶してるマクフェイルを拾って竜に乗せると、マクフェイルは竜の中に入り込む。影の竜の中は快適だから高速で移動しても問題ないだろう。

 

「済まない……では、サイラスの引き渡しは任せる」

 

リースフェルトはそう言って天霧を支えながら影の竜の中に潜り込む。

 

それを確認した俺は竜に移動先を指示する。影の竜は一度雄叫びを上げると翼を広げて治療院に向かって一直線に飛んで行った。

 

竜の速度は時速500km、これから3分もしないで治療院に着くだろう。

 

俺は竜が見えなくなるのを確認して、サイラスと向き合う。

 

 

「さて……クローディア・エンフィールドが来るまで嬲るとするか」

 

自分でも嫌らしいと思うくらい邪悪な笑みを浮かべてサイラスに近寄る。

 

「ひぃぃぃぃぃ!!い、嫌だっ!助けてくれぇぇぇぇ!」

 

サイラスは惨めに泣きながら助けをこう。しかし無駄だ。

 

「無駄だ。天霧もリースフェルトもマクフェイルも既にいない。ここは俺とお前の2人きりだぜ」

 

俺が天霧達を治療院に運んだ理由はあいつらを助ける為だけでなく、サイラスを嬲る邪魔をさせない為でもある。多分天霧やリースフェルトは嬲るのを止めそうだし。

 

はっきり言ってこいつは小町を襲撃するという俺の逆鱗に触れる行為をした屑だ。殺しはしないが地獄を見せるつもりだ。

 

そんな事を考えながら俺は影に星辰力を込めて小さい塊を作る。

 

「行け」

 

そう呟くと影の塊はサイラスの口の中に入る。

 

「んんっ?!」

 

サイラスは驚いた表情を見せているが疑問に思っている顔だ。まあまだ攻撃してないからな。

 

30秒くらいしたので俺は口を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嬲れーー暴れ影針鼠」

 

俺がそう叫んだ瞬間、サイラスの口から大量の血が出る。

 

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

両手両足を拘束されているサイラスは余りの苦痛に叫ぶ事しか出来ないようだ。

 

俺が今やっているのはサイラスの胃の中に入れた影の塊を針鼠の形に変えて暴れさせる事だ。

 

今サイラスの胃の壁は大量の針が刺さっている状態になっている。その激痛は半端ないだろう。以前喧嘩を売ってきた歓楽街のマフィアにやったら痛みで気絶したし。

 

「ぐぅぅぅぅぅ!や、やめ……ぁぁぁぁぁ!!」

 

サイラスは叫ぶ事しか出来ない。しかし殺すつもりはない。殺したらヤバイしな。だから俺は影針鼠の一部を削ってサイラスの胃の壁の穴が開いている部分をコーティングする。これなら出血多量で死ぬ事はないだろう。

 

(さて、次は小腸を嬲るか)

 

そう判断して影に指示を出そうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでにしていただけませんか?『影の魔術師』」

 

後ろから話しかけられたので振り向くと金色の髪を持った美しい少女、クローディア・エンフィールドがいた。

 

(……まあ、両手にある剣で美しさが凶々しくなってるけど)

 

そう思いながらエンフィールドの両手を見る。

 

そこには目玉の様な鍔飾りの文様を持つ、不気味な形状の双剣があった。

 

純星煌式武装『パン=ドラ』星導館学園が誇る純星煌式武装の中でも、未来視という破格の能力を持った魔剣。直で見るのは初めてだが……中々不気味だな。

 

そう思いながら息を吐く。

 

「はいよ。戻れ」

 

そう言って指示を出すとサイラスの口から影の塊が出てくる。

 

 

「……なるほど。それでノーマン君の体内を蹂躙した訳ですね」

 

「そんな所だ。胃に幾つか穴は開いてるが穴は影でコーティングしてあるから死ぬ事はないと思うぞ」

 

「そうですか。彼にはまだ利用価値があるので死んで貰っては困るのですよ」

 

「利用価値?……ああ、アルルカントに貸しを作ると?」

 

「あら?彼がアルルカントの手先とわかったのですか?」

 

「確証はないがな。星導館の技術であんな人形100体も作れるとは思えない」

 

あんな技術があるのはアルルカント以外には考えにくい。

 

そう思いながらいつの間にか気絶しているサイラスを地面に放る。

 

「ほらよ。大分嬲ってスッキリしたし連れてけよ。……そこで隠れてる男にでも頼んでな」

 

俺がそう言って近くにある柱を指差す。すると柱の裏から頬に目立つ傷を持った星導館の制服を着た男子生徒が現れた。身のこなしのレベルはかなり高いな。そしてこの場所にいる事から星導館の特務機関『影星』のメンバーだろう。

 

「いやー、バレないように隠れてたんだけどな。流石レヴォルフ最強の男」

 

態度はヘラヘラしているが目の奥には強い光がある。間違いなくこいつも一流だろうな。

 

「そいつはどうも。それより連れてくなら連れてけよ。俺は帰る。……あ、そうだエンフィールド。天霧達は治療院に連れてったんで」

 

「そうですか。どうもありがとうございます」

 

「どうしたしまして。んじゃ俺はこれで」

 

適当に挨拶を返して廃ビルを後にする。さてさて……サイラスを生かしてアルルカントに貸しを作って何をするのやら……

 

 

 

そんな事を考えながら俺は懐にあるマッ缶を取り出して飲みながら自分の寮に向かって歩き出した。







新章予告

鳳凰星武祭も近づく最中、比企谷八幡はある事を知る。

「……それで自我を持った機械を武器として星武祭で使う事をアルルカントは考えているらしいのよ」

「ほう武器として、か……」







平和に過ごしているとレヴォルフ黒学院に昏梟の校章を持つ者達が現れる。

「今度我が学園がレヴォルフ黒学院と星導館学園の三校で新型の煌式武装の開発をする事になってな。その挨拶に来たのだよ」

「いやー。私の人形ちゃんを100体纏めて木っ端微塵にした君と鳳凰星武祭で1番の脅威になりそうな剣士くんをこの目で一度拝んでみたくってさー」

「はははははっ!久しぶりだな八幡!我が相棒よ!」








アルルカントの煌式武装について興味を持つ中、星導館の面々と関わり合う。


「……オーフェリア・ランドルーフェン。……よろしく」

「いやー!兄がお世話になっています!」

「じゃあよろしくね八幡!」

「それがお前の新しい切り札か……小町」

「これで決めるよお兄ちゃん!」

「……八幡。私、八幡と一緒に……」

「おいオーフェリア。今直ぐ警備隊にど変態がいると通報しろ」

「ちょっと待ってちょっと待って!!」





学戦都市でぼっちは動く

銀綺覚醒編 近日発表

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