学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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怪物VS怪物 比企谷八幡VS范星露(後編)

仙具

 

それは万有天羅の二つ名を持つ人間が作り上げた特殊な武装。煌式武装や純星煌式武装とは異なる性質を持つ武装故に詳しい情報については万有天羅以外知る者はしない。

 

しかし万有天羅以外の者でも分かる事はある。それはどの仙具も並の煌式武装を遥かに上回り、純星煌式武装に匹敵する事だ。

 

そんな仙具の中でも桁違いな力を持つ仙具が3つある。

 

1つは闘戦勝仏が使用していたと言われる『如意金箍棒』

 

伝承通り伸び縮みする事が出来る棒だが、伸縮速度は桁違いで音速を遥かに上回る程だ。何度も伸縮しながら放つ高速の連撃はまさに圧倒の一言である。それによって『如意金箍棒』は最速の仙具と言われている。

 

2つ目は初代万有天羅の最高傑作と言われる『業煉杵』

 

独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵と神々しさを秘めた三種の金剛杵から成り立つ仙具、金剛杵から放たれる未知のエネルギーの衝撃波は肉体と精神に桁違いなダメージを与えたり、エネルギーの壁はありとあらゆる攻撃を防ぐ攻防一体でバランスの取れた仙具である。それによって『業煉杵』は最高の仙具と言われている。

 

そして最後に挙げられる桁違いの力を持つ仙具とは……

 

 

「行くぞ八幡よ!」

 

満面の笑みを浮かべながら俺に詰め寄ってくる星露の手にある『方天画戟』だ。

 

かつて最強の武将と言われし呂布奉先が持っていた武器と同じ名前の仙具だ。そしてこの『方天画戟』だが、仙具にしては珍しく特殊な効果はない。

 

しかし何故数ある仙具の中で桁違いの力を持つ仙具と称されているのかと言うと……

 

理由は簡単、普通の仙具にあるような能力を封印して、その分の出力を全て槍の性能に注ぎ込んであるからだ。

 

それに『方天画戟』による一振りは桁違いで、振った時に生まれる風圧が純星煌式武装の一撃に匹敵して、直撃さえすればシリウスドームの防御障壁すらも破壊する事が可能。ぶっちゃけシリウスドームが崩壊した1番の原因は『方天画戟』だ。

 

『如意金箍棒』が最速の仙具で『業煉杵』が最高の仙具なら、『方天画戟』は最強の仙具である。

 

そしてそんな桁違いの仙具を使ってくる以上、こちらも最強のカードを切らないといけない。

 

 

「呑めーーー影神の終焉神装」

 

俺は自身の最強の技の名を告げる。

 

同時に俺の周囲から星辰力が爆発的に噴き上がり、影狼修羅鎧・改に纏わり付き、鎧を押し付けるように圧縮が始まる。

 

同時に俺の身体からギシギシと音が鳴るも学生時代と違って痛みは感じない。これも成長した証だろう。

 

そう思いながらも限界まで影狼修羅鎧を圧縮するように星辰力を操作して、限界まで影狼修羅鎧を圧縮すると背中から悪魔の如き翼を生やして息を吐く。

 

同時に全身から辺りに衝撃が走り俺の足元にヒビが入る。

 

影神の終焉神装

 

影狼修羅鎧を凝縮し高速機動が可能な翼を生やした俺の最強の鎧だ。

 

(鍛錬でならともかく、対人戦で使うのは本当に久しぶりだ)

 

これを使うのは壁を超えた人間の中でも上位の人間が相手な時なだけだ。それ以外の敵は終焉神装を使わなくても問題なく対処出来るので使う機会は限られている。

 

しかし星露に勝つにはこれを使わないと絶対に無理だろう。

 

そこまで考えていると星露が上段から『方天画戟』を振り下ろしてくるので俺は両手に星辰力を込めてからクロスして防御態勢を取る。

 

次の瞬間……

 

 

ゴッッッッッッッッッッッッ!

 

腕に圧倒的な衝撃が走り、同時にその衝撃が地面に伝わって直径400メートルの人工島が一瞬で粉々に砕け散った。

 

それによってバランスを崩した俺と星露は一旦距離を取る。既に人工島は完全に崩壊したので俺は翼を羽ばたかせて、星露は周囲に大量の呪符をばら撒きそれを足場にしている。

 

(しかし……大分ダメージを受けていたとはいえ人工島を一撃で破壊するなんて……久しぶりに見たが『方天画戟』の破壊力ヤバ過ぎだろ?)

 

俺は手に感じる痛みに顔を顰めながら『方天画戟』の威力に呆れてしまう。

 

この人工島は決して脆くない。全力を出してないとはいえ俺と星露が5分戦っても半壊程度で済んだのだから。

 

しかし『方天画戟』の一撃で半壊した人工島は完全に崩壊した。これは人工島が脆いのではなく『方天画戟』の威力が高いからだろう。

 

何せ終焉神装+星辰力による防御でもメチャクチャ痛い上、籠手部分が凹んでしまったし。

 

「くくくっ……!遂に出たのう!」

 

だから籠手部分の修復をしていると星露はクツクツと楽しそうに笑い始める。余りにも笑い過ぎて目の端に涙を浮かべるほどに。

 

「本当に楽しそうだな、お前」

 

「当然じゃろう!儂はずっとこの時を待っておったのじゃ!」

 

言いながら星露は『方天画戟』を構えて、足場となった呪符を蹴って俺に向かってくる。空中であるにもかかわらず、その速さは普段と遜色ない速さである。

 

俺も受けに回って負けなので翼を羽ばたかせて猛スピードで星露との距離を詰める。

 

しかし星露との距離が10メートルを切った所で急上昇して、即座に星露の後ろに回り込み蹴りを放つ。狙いは意識を刈り取る為に首だ。

 

対する星露も負けておらず俺に背中を向けたまま呪符を蹴って、そのまま俺の足に乗ってくる。わかってはいたがつくづくデタラメな存在だな。

 

そこまで考えていると寒気がしたので顔を上げると星露が俺の足から降りながら『方天画戟』による薙ぎ払いを仕掛けてくる。狙いはさっきの俺と同じように意識を刈り取る為に首だ。

 

もちろん馬鹿正直に喰らうわけにはいかないので、俺は左手に星辰力を込めて『方天画戟』にアッパーをぶちかます。それによって壊すには至らなかったが、星露の手から離すことには成功する。

 

だから俺は追撃を仕掛けるべく右手を振るうと星露は手に圧倒的な星辰力を込めて防御する。同時に衝撃が足元の湖に走り大きなクレーターが出来たかと思えば、元の形に戻ろうとする反動で俺と星露に大量の水を浴びさせる。

 

しかし俺も星露も気にせずに攻撃を仕掛ける。目の前にいる相手の方が危険だから。

 

星露は俺の右手を防ぎながらも足に星辰力を込めて二度蹴りを俺の鳩尾に放ってくる。

 

「ぐっ……!」

 

それによって腹には衝撃が走り、吐き気を催すも、俺はそれを無視して空いている左手で肘打ちを星露の鳩尾にお返しする。

 

「ふははっ!良いぞ八幡!もっと来るのじゃ!」

 

星露は血を流しながらもそう言ってガンガン殴ってくる。壁を超えた人間だろうと一撃で沈められる終焉神装の一撃も、普通の人間とは別種の存在である星露を一撃で沈めるのは無理だ。

 

俺のやる事は1つ。こちらが戦闘不能になる前に星露をノックダウンする事。

 

だから俺は星露の拳や蹴りによって生まれる多大なダメージを無視して、星露の身体のありとあらゆる箇所に攻撃を仕掛ける。

 

足払いを仕掛けようとしたらその前に違う呪符に飛び移り、そこから飛び蹴りを放ってくる。だから俺は敢えて食らいながらも星露の足を掴む。

 

それによって胸に激痛が走り鎧の口まで血とゲロが込み上がってくるがそれを無視して……

 

「ふんっ!」

 

「ぐはっ!」

 

星露の鳩尾に拳を叩き込む。同時にミシミシと音が聞こえて、星露は口から血を流しながら後ろに吹き飛ぶ。

 

(今のは結構ダメージか入ったな……このまま押し切る)

 

俺は翼を羽ばたかせて加速して星露との距離を一気に詰める。後一発決めればこちらが有利……っ!

 

そこまで考えた時だった。視界が僅かに暗くなったのでチラッと上を見れば、先程跳ね上げた『方天画戟』が落下するのが見えた。それも星露がいる場所に。

 

(マズい……アレを持たせる前に仕留めないと)

 

俺は内心焦りながらも更に加速して星露に詰め寄るも一歩遅かった。既に星露の手には『方天画戟』があってこちらに振り下ろしている。

 

(この速度じゃ回避は間に合わない。間に合っても無理な回避になって肉体に負荷が掛かりまくるし迎撃するか)

 

そう思いながら俺は義手に星辰力を注ぐ。すると義手は本来の大きさの3倍となり埋め込まれた2つのマナダイトが光り輝き……

 

「はぁっ!」

 

「そこっ!」

 

光が最高潮に輝いた瞬間に左手を突き出して『方天画戟』とぶつけ合う。同時に拳と『方天画戟』から衝撃が生まれて俺と星露に襲いかかるも……

 

(このままだと押し負けるな……)

 

今の所は拮抗しているが、徐々に押されているのがハッキリとわかる。しかし今から無理矢理逃げても完全に回避するのは無理で、かなりのダメージを受けるだろう。

 

(それならいっそ……その力の全てを俺の左手と右足に凝縮しろ)

 

内心そう呟くと俺の身に纏っていた影神の終焉神装が剥がれて、俺の左腕と右足に集まる。

 

それによって左腕からミシミシと音が聞こえるも漸く『方天画戟』による一撃を食い止める事は出来た。となれば当然……

 

(向こうも第二撃を用意してるよな……)

 

見れば『方天画戟』を持っていない星露の左腕からは信じられない程の星辰力が籠っている。どうやら奴も同じ考えをしているようだ。星露を見ればニカッと子供のような笑みを浮かべていた。

 

そこまで考えると同時に俺は凝縮された鎧を纏った右足に力を込め、星露は圧倒的な星辰力を込めた左腕を振り上げて……

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

 

お互いに叫び声と共に最強の一撃を胸の校章に叩き込んだ。

 

瞬間……

 

ドォォォォォォォォォンッ

 

爆音と共に俺と星露は磁石の反発作用の如く弾けるように飛んで、バラバラになった校章が目に入ったかと思えばそのまま琵琶湖の湖面に叩きつけられたのだった。

 

 

 

 

 

 

『『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』』

 

銀河の特設ステージにあるモニターにて、八幡と星露が叫び声を上げながら互いの校章に最速の一撃を叩き込む映像が映される。

 

そして……

 

ドォォォォォォォォォンッ

 

爆音がステージに響き、モニターには琵琶湖に巨大な穴が出来て、八幡と星露が反発するように吹き飛んで琵琶湖に叩きつけられる映像が映される。

 

その光景に四学園の生徒を始め、ノエルや綺凛、虎峰にセシリーも絶句している。王竜星武祭の時以上に激しい一撃がお互いの校章に叩き込まれた光景はステージにいる全ての人間を沈黙させたのだ。

 

そんな中……

 

『比企谷八幡、校章破損』

 

『范星露、校章破損』

 

2つの機械音声が重なるように同じ言葉を告げる。

 

しかし基本的にこの制度による試合に相打ちは存在しない。意識消失ならまだしも校章破損の場合、コンマ以下の差異まで計測が可能だからだ。

 

 

『試合終了!勝者、比企谷八幡!』

 

結果、0.02秒早く星露の校章の方が早く破壊される結果となった。

 

するとステージに静寂が生まれるも、それも一瞬。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

 

直ぐに大歓声が沸き起こってステージを揺らす。ステージには200人程度の人しかいないのに歓声の強さは星武祭のそれに匹敵していた。

 

「まさか師父が……」

 

「や、やー……これは予想外だったね」

 

星露の弟子である虎峰とセシリーは呆然として……

 

「凄い……私もまだまだ修行が足りませんね」

 

綺凛は2人の戦いを見て自分も強くなると決意して……

 

「凄い!やっぱりパパは強い!」

 

「マジか!師父を倒すなんて父さんパネェ!」

 

「流石ですお父様!」

 

歌奈、竜胆、茨は父親の勝利にハイテンションになり……

 

「おめでとうございます、八幡さん……!」

 

ノエルは目尻に涙を浮かばせながらも笑って夫の勝利を祝うなど様々な反応が生まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あー……身体が痛え……」

 

俺は今琵琶湖に浮かびながら空を見上げている。最後に星露の一撃をモロに受けたので身体が動かない。

 

(というかどっちが勝ったんだ?)

 

俺は吹き飛ばされながらも俺と星露の校章が破壊された事を告げる機械音声は耳にしたが、どっちが勝ったかを告げる機械音声は聞く前に水面に叩きつけられたので聞こえなかったのだ。正直言ってどうなったか全く予想が出来ない。

 

暫くプカプカと浮かびながら空を見上げているとチャプチャプと水が跳ねる音が聞こえてきたかと思えば……

 

「実に見事な試合じゃったぞ八幡よ。やはり八幡との戦いは血湧き肉躍る最高の戦いじゃ」

 

そんな声が聞こえてきたので俺は無理矢理身体起こして見れば、星露が足に星辰力を込めて水の上を歩いていた。

 

「そりゃどうも。ちなみにどっちが勝ったんだ?俺勝敗のカギがを告げる機械音声は聞いてないんだよ」

 

「八幡じゃよ。儂の方がほんの僅か遅かったようじゃ」

 

「マジで?俺が勝ったのか?」

 

正直言って信じ難いので思わず聞き返してしまう。

 

「うむ。確かに八幡の名前を告げていたな」

 

それに対して星露は頷きながらそう返す。その事から事実である事は間違い無いようだが……

 

(ヤベェ、かなり嬉しい)

 

今まで一度も勝てなかった相手、それも世界最強である彼女に勝てたのだ。正直言ってかなり嬉しい。

 

「まさか儂を倒せる人間が現れるとは思わなかったわい。またいずれ手合わせ願うぞ」

 

星露は楽しく笑いながらそう言ってくるが疲れている様子は全く見られない。つくづく規格外な奴め……星露を見ていると試合に勝って勝負に負けた感じがする。俺はマトモに動けないしこれが校章無しの実戦勝負なら負けていただろう。

 

(やっぱりまだまだ星露との距離はあるなぁ……)

 

さっきまでの嬉しさは減ってしまうが仕方ないだろう。これで勝ったと胸を張るのは少々厳しい。

 

「へいへい」

 

だから俺は星露の誘いを受けるつもりだ。次にやるときには胸を張って勝ったと言えるくらい強くなると決意しながら。

 

それから俺は迎えの船が来るまでのんびりと星露と空を眺めるだけの存在となったのだった。

 

 

 

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