学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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トーナメント表が発表されて色々な思惑が交錯する

『……それでねお兄ちゃん。刀藤さんと沙々宮先輩も出場枠に空きが出たから参加するんだよ』

 

「ほうほう。てか沙々宮って強いのか?」

 

俺は久しぶりに食堂で飯を食べながら妹と電話をしている。今日はオーフェリアは用事があるようでいないので食堂で飯を取っている。いつもは混んでいるから行かないが今日は空いている。

 

現在は7月の終わりで鳳凰星武祭に参加しない生徒は夏休みになっている。俺は星武祭を直接見に行くので学校に残っているが学生の半分くらいは実家に帰省している。鳳凰星武祭が終わったら一度小町と実家に帰省する予定だが。

 

 

 

『うん。何度か戦ったけど銃型の煌式武装で白兵戦するし』

 

待て。銃型の煌式武装で白兵戦だと?意味がわからん。銃で相手を殴ったりするのか?まあ冒頭の十二人に入っている小町が強いと言っているんだし強いのだろう。

 

さて……となると星導館からは、現序列1位の天霧と旧序列1位の刀藤が出るのか。まあ鳳凰星武祭を得意とする星導館からすればこの2ペアに期待してるのだろう。

 

「そうか。じゃあ今日の組み合わせ発表で本戦までに当たらないように祈っとけ」

 

トーナメントの組み合わせは後15分くらいで発表される。その為、今の時間でも時計を確認している生徒がチラホラいる。

 

『うん!そろそろ食堂に着くから切るね』

「ああ。またな」

 

挨拶をすると電話が切れるので空間ウィンドウを閉じる。さて、食べるのを再開するか。

 

俺は先程注文したラーメンをちゅるりと一気に口にかきこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ラーメンを食べ終えて食器を片付けていると携帯端末が鳴りだす。その音は周りからも鳴り出していた。トーナメントの発表時間だからだ。

 

すると食堂にいるほぼ全員が携帯端末を開くので俺もそれに続いた。

 

鳳凰星武祭の参加人数は512人、256組だ。人を探すのも割と怠い。

 

息を吐きながらAブロックから探してみると幸いな事に小町と戸塚はAブロックだった為直ぐに見つかった。Aブロックの他の選手を見ると冒頭の十二人は小町以外いないので余程の事がない限り本戦には出れるだろう。

 

安堵の息を吐きながら他の有力選手を探してみる。

 

Cブロックには天霧とリースフェルトがいるからCブロックはこいつらだろう。てかこのブロックにいる奴ら不憫過ぎる。天霧の力は1日5分くらいしか出せないみたいだが鳳凰星武祭は2週間かけてやるから、封印で悩む事はないだろう。

 

雪ノ下と由比ヶ浜はDブロックか。由比ヶ浜の実力は知らんが予選最後に当たるだろう界龍コンビ以外には負ける可能性はないだろう。

 

Hブロックにはアルルカントのエルネスタとカミラがエントリーされているがもしかして人工知能云々のやつか?だとしたら興味深いな。もしかしたら煌式武装を作ったのは材木座だったりしてな。

 

……ん?Jブロックには葉山の名前がある。あいつ本当にアスタリスクに来たのかよ。行った場所はガラードワースだが皆仲良くのあいつには向いてるかもな。てかパートナーは一色いろは?誰だか知らないがてっきり三浦と組むかと思ったぜ。

 

厄介そうなのはガラードワースの銀翼騎士団のコンビと界龍の双子くらいだろう。

 

準優勝の趙虎峰とセシリー・ウォンの2人は本当に獅鷲星武祭に鞍替えしたようで名前はなかった。俺あのコンビのファンだから残念だ。まあいたら優勝するのはあの2人か天霧とリースフェルトのペアのどちらかだろうな。アルルカントについては良くわからんから除外するけど。

 

しかし1番気になるのは……

 

「何でこいつらも出場するんだ?」

 

 

俺は一息吐いて再度トーナメント表を見る。

 

俺の視線の先にあるのはGブロック。そこにイレーネ・ウルサイス、プリシラ・ウルサイスと表記されていた。

 

……この組み合わせについては良くわからん。イレーネが出るとしたら王竜星武祭だと思ったし、プリシラは星武祭そのものにそこまで興味なかった筈だ。

 

(そう考えると後は……)

 

一瞬だけ思考に耽ったが直ぐに理解した。参加する理由なんてアレしか浮かばない。

 

それと同時に俺はある場所に足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

俺は今、薄暗く陰気な廊下を無言で進む。この場所は一般の生徒には立ち入りが許されない区画だ。俺はそれを一切気にしないで歩き続ける。

 

レヴォルフには『強者への絶対服従』という唯一絶対のルールがある。俺の場合は序列2位、つまりレヴォルフで2番目に強いので大抵の要求は通る。

 

俺は序列2位になった時に与えられた権限を使ってセキュリティチェックをパスして奥に進む。

 

今回向かっている場所は懲罰教室。レヴォルフの中でも特に凶暴凶悪の学生が集められている牢獄の様な場所だ。俺が話したい相手はその場所にいる。

 

入口に着いた俺は警備員に話しかける。

 

「おい。イレーネ・ウルサイスの部屋に案内してくれ」

 

話したい相手はイレーネだ。何か歓楽街のカジノで暴れて潰した事で捕まったらしい。元は向こうがイカサマしたのが原因らしいがやり過ぎだろ?

 

「イレーネ・ウルサイスですか?彼女ならつい先程釈放されましたよ」

 

ちっ。入れ違いになったか。とんだ無駄足になっちまったな。

 

俺は軽く舌打ちをして懲罰教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

懲罰教室を出て日光を受ける。何度かあそこには行ったが慣れないな。

 

息を吐きながら携帯端末を開いて電話をかける。するとワンコールで繋がった。

 

『んだよ八幡。なんか用か?』

 

画面には派手な制服とマフラーを着用しているイレーネが飯を食いながら顔を見せてくる。

 

「よう。シャバの空気はうまいか?」

 

軽く皮肉を込めて挨拶をする。

 

『ああうまいね。何せあそこじゃ腹が減って仕方なかったからな。……で、あたしに何か用か?』

 

「ああ。お前が鳳凰星武祭に出るなんてなと思ってな」

 

『好き好んで出るわけじゃねえよ。ディルクからの仕事が入っちまってよ。あいつが勝手に出場登録をしてたんだよ』

 

やっぱりあのデブか動いているのか。でも何でだ。あいつは裏でコソコソするのが主だ。星武祭みたいな表舞台で仕事をするとは考えにくい。

 

「ふーん。ちなみに依頼内容は?」

 

そう尋ねるとイレーネは予想外の回答をしてきた。

 

 

 

 

 

 

『ん?あたしがディルクに頼まれた依頼は星導館の1位を潰せって内容だけど』

 

……天霧を?何でだ?てか天霧は転校して半年も経っていないのにどんだけ狙われているんだ?不幸過ぎだろ。右手が幸運を打ち消しているの?

 

とりあえず詳しく聞いてみるか。

 

「何であのデブは天霧を?」

 

『ディルクが言うにはそいつの使う純星煌式武装が厄介だから今の内に潰したいらしい』

 

それだけでか?確かに『黒炉の魔剣』は強力だがそれだけでわざわざ潰すとは考えにくい。ディルクの性格はクズそのものだが有能な人間だ。おそらく他にも理由があるに違いない。

 

「そうか………悪いな時間を取らせて」

 

『別に構わねーよ。話が終わりなら切るぞ。今飯食ってる途中なんだよ』

 

「ああ。時間を取らせて済まない。じゃあな」

 

そう言って空間ウィンドウを閉じる。さてさて……一応あいつに報告しておくか。

 

俺は息を吐いて自分の寮に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

寮に帰って夏休みの宿題をある程度やった俺はある番号に連絡をする。

 

『もしもし。どうかいたしましたか?』

 

空間ウィンドウに映るのは星導館の生徒会長のクローディア・エンフィールド。この前連絡先を交換して以来初めて連絡を取る。

 

「ああ、ディルクが星導館にちょっかいをかけようとしてるからその報告をな」

 

『……詳しく聞きましょう』

 

エンフィールドはにこやかな笑顔を消して真剣な表情を浮かべてくる。それを確認した俺はディルクが天霧を潰そうとしている事、その理由は『黒炉の魔剣』が危険だからである事を話した。

 

『……そうですか。情報提供には感謝します。ですが厄介ですね』

 

「まあな。何せ闇討ちじゃなくて試合で潰すつもりみたいだし」

 

闇討ちなら護衛をつけたりすればどうにかなるが試合だと邪魔が入らないからな。対処の仕様もないだろう。

 

「……ところでエンフィールド。『黒炉の魔剣』は何かいわくつきなのか?」

 

でないとディルクがわざわざ狙うとは思えないし。

 

『……そうですね。実は『黒炉の魔剣』は5年前に貸与記録には貸し出されていないと記録されているにも拘らず実戦データだけがあるのですよ』

 

「マジで?」

 

純星煌式武装は厳密に管理されていて貸与記録と実戦データが集積されるようになっている。どちらか片方だけないのは誰かが無断で持ち出したか貸与記録を弄ったかだな。

 

「はい。そして『黒炉の魔剣』は……綾斗のお姉さんが使っていたかもしれない純星煌式武装なのです」

 

それこそマジか?純星煌式武装を使える魔女とかチート過ぎだろ。

 

「天霧の姉ちゃんは失踪したと聞いたが?」

 

『ええ。彼女は5年前に入学して、その半年後に本人都合による退学となっています。ですが我が学園の生徒や教員は彼女を知らないようでお手上げですね』

 

つまり学籍は持っていたが学校には通っていなかったって事か?それでありながら『黒炉の魔剣』を持っていたかもしれない。

 

(……ディルクが天霧を狙っているのは天霧の姉ちゃんが関係あるかもしれん)

 

まあそれは今どうでもいい。理由はどうであれ、天霧が狙われている事の方が重要だ。

 

「……随分キナ臭い事はわかった。とりあえず今はイレーネと天霧が当たるまでは動かなくていいだろ?」

 

『そうですね。ディルク・エーベルヴァインが裏で動くとしたらイレーネ・ウルサイスが負けてからでしょうね』

 

「わかった。イレーネが負けたら連絡する」

 

『あら?自分の学校の生徒は応援しないのですか?』

 

エンフィールドはからかうように笑ってくる。いや、応援はしてるぞ?イレーネにしろプリシラにしろ仲良いし。ただ……

 

「応援はしてる。ただそれでも天霧達が勝つと思ってる」

 

言っちゃ悪いがイレーネが天霧を止められるとは思えん。今大会で天霧をタイマンで倒せるとしたら刀藤くらいだろう。

 

『まあ私の綾斗は強いですから』

 

うわ、本当に天霧モテ過ぎだろ?私の綾斗とか言ってる時点でゾッコン過ぎだろ。

 

「まあライバルは多い上、お前は生徒会長で多忙だけど遅れをとるなよ」

 

『そうですね。まあ綾斗は奥手で鈍感ですからそこまで焦っていませんよ』

 

鈍感って……あいつ本当にギャルゲーの主人公かよ?

 

「まあ頑張れ。じゃあまたな」

 

『ええ。また』

 

挨拶を返して空間ウィンドウを閉じる。

 

……にしても天霧の野郎、女子と仲が良いなんてリア充じゃねぇか。大爆発とかしないかな?

 

そんな事を考えながら今夜の夕食の準備をしようとした時だった。

 

携帯端末が鳴り出した。このタイミングって事はエンフィールドか?

 

そう思いながら着信相手を確認しないで空間ウィンドウを開く。

 

「どうしたエンフィールド、何か伝え忘れたのか?」

 

そう言って空間ウィンドウを見ると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………八幡?」

 

そこに映っていたのはクローディア・エンフィールドではなく、オーフェリア・ランドルーフェンだった。

 

………マジか?

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