学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡は試合に出ないが疲れ果てる(前編)

 

 

天霧を見捨てた俺はシリウスドームを出る。現在の時間は11時50分で集合時間まで40分ある。昼飯はオーフェリアとシルヴィと相談して食うとして……時間もあるし試合観戦中に食べるお菓子でも買っておくか。

 

そう思っている時だった。

 

「お兄ちゃん!」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り向く。

 

するとそこには最愛の妹とそのパートナーだけでなく見知った顔がいた。

 

 

「……雪ノ下と由比ヶ浜か?」

 

そこには中学に時に同じ部活にいた雪ノ下と由比ヶ浜もいた。

 

俺が4人に気づくと全員で近寄ってくる。

 

「ヒッキーやっはろー!」

 

由比ヶ浜は笑顔で手を振りながらそう言ってくるが、よそでその挨拶をするのやめろ。マジで注目を浴びるからな。

 

実際に周りからは「あれって『影の魔術師』の比企谷八幡じゃん!」とか「ヒッキーって呼ばれてるのか?」って聞こえていてめちゃくちゃ恥ずかしい。

 

「久しぶりだな。100歩譲ってヒッキーは我慢するからやっはろーはやめろ。アホっぽいし」

 

「アホ言うなし!」

 

いややっほーとハローを合わせたと思える言葉を作ってる時点でアホだろ?

 

内心突っ込んでいると雪ノ下が近付いてくる。

 

「あら?相変わらず目が腐っているわね失踪谷君」

 

「お前の毒舌は久しぶりに聞いたな。てか失踪谷ってなんだよ?」

 

「何も言わないで転校したかと思ったら去年の王竜星武祭で大暴れした人の事よ」

 

あー、それは確かに俺ですね。家族以外にはアスタリスクに行く事を言わないで、その翌年に王竜星武祭で大暴れしましたよ俺。

 

「そうだよ!一言くらい言ってくれても良かったじゃん!」

 

「僕も八幡がいなくて寂しかったよ」

 

「あー、それについては済まなかったな」

 

まあこいつらには一言くらい言っても良かっただろう。それについては俺の落ち度だな。

 

「まあまあお兄ちゃんも反省してるみたいだしこの辺で許してあげましょうよ」

 

小町がそう言うと空気が元に戻る。ナイスだ小町。

 

小町を褒めていると由比ヶ浜その流れに乗る。

 

「そういえばヒッキーってレヴォルフで2番目に強いんだね!驚いちゃったよ!」

 

「あ?まあな。ってもオーフェリアの奴には勝てる気がしないけどな」

 

「やっぱりヒッキーでも無理なの?」

 

「無理だな。今の所全敗だし」

 

しかも互角の勝負でなく殆ど一方的にやられている。オーフェリアに勝ちたかったら俺が10人必要だろう。それでその内の9人は負けると思う。

「……『孤毒の魔女』姉さんが勝ちたがっている人」

 

自分の姉と一悶着ある雪ノ下はオーフェリアに思う所があるようだ。でもあの女じゃ勝てないだろう。あの女はせいぜい俺やシルヴィと互角ぐらいだし。

 

「てか何で雪ノ下はクインヴェールにいるんだ?俺はてっきりガラードワースか界龍に行くと思ったぜ」

 

「……私も初めは界龍にしようかと悩んだわ。でも由比ヶ浜さんがクインヴェールに行くって言ってきて……」

 

誘われたって訳か。まあ姉と一緒の学校になったら間違いなく界龍の生徒は頭を痛めそうだな。

 

そんな事をのんびりと考えている時だった。

 

 

 

「……あれ?比企谷じゃん」

 

後ろから話しかけられたので振り向くと青みがかった黒髪の少女がいた。確かこいつも同じ中学だった。

 

名前は、えーっと、確か……川、川……川越だったか?

 

界龍の制服を着た川越がこちらに歩いてくる。すると後ろから川越の弟らしき男もやって来て俺に会釈をしてくる。

 

「お久しぶりっす。お兄さん」

 

瞬間、俺は怒りの余り星辰力を抑えきれず溢れ出させてしまう。

 

「お前にお兄さんって言われる筋合いはない。小町に手を出したら影の中に閉じ込めて餓死させるぞコラ」

 

小町の恋人は俺より強く誠実な男だけだ。アスタリスクで言うならアーネスト・フェアクロフや武暁彗クラス以下の男は絶対に認めん。

 

「あんた何大志に喧嘩売ってんの?」

 

川越弟に殺気を向けていると姉が怒りの表情で俺を見てくるので星辰力を抑える。怖い、怖いですからね。

 

「悪かったよ。で、何でお前がここにいんの?」

 

「そりゃ鳳凰星武祭に出るからに決まってんじゃん」

 

……え?

 

「ちょっと待った。お前参加してたの?」

 

トーナメント表を見た時川越って名前あったか?

 

「あるわよ。Eブロックに」

 

そう言って空間ウィンドウを開いて指差してくる。そこには川崎沙希、川崎大志と表示されていた。

 

「あ、そっか。川越じゃなくて川崎だったのか」

 

道理で見つからない訳だ。

 

「……あんた殴るよ」

 

川崎が再び怒りの表情を見せてくる。恐怖を感じた俺は即座に頭を下げる。

 

「すみませんでした。痛いの嫌なんで勘弁してください」

 

プライド?そんな物知るか。

 

「次間違えたら殴るから」

 

「……貴方、人の名字を間違えるなんて最低よ」

 

雪ノ下が冷たい目で見てくる。それについては返す言葉がないが、中学時代材木座の名前を間違えまくっていたお前には言われたくないからな?

 

 

 

 

内心雪ノ下に突っ込んでいる時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱぽん!久しぶりだな八幡よ!」

 

聞き覚えのある、それでありながら聞きたくない声が聞こえてきた。振り向くとアルルカントの制服を着たデブがいた。

 

「うわ……」

 

由比ヶ浜は嫌そうな顔をする。しかし俺はそれを攻めるつもりはない。何故なら俺も同じ顔をしているからだ。

 

しかし材木座はそれを無視して近寄って俺に話しかけてくる。毎回思うが俺だけに話しかけんなよ。

 

「まさかこんなところで会うとはな……やはり我と貴様には切っても切れない……」

 

「黙れ。俺とお前に絆なんてない。それより単刀直入に聞くぞ。お前やっぱり今回の自律機械に関わってるのか?」

 

俺がそう言うとこの場にいる全員が真剣な表情になって材木座を見る。まあ今回の鳳凰星武祭で注目されている事だからな。

 

「無論だ。我もその計画に参加したからな」

 

 

今までにも自己判断できるレベルの人工知能は実用化されているが星脈世代と同レベルで戦える物は存在していない。それでも尚星武祭に出すって事は余程自信があるのだろう。

 

アルルカントの試作品に興味を持っていると正面から『獅子派』の筆頭、つまり材木座の上司であるカミラ・パレートが歩いてきた。

 

「ここにいたのか。そろそろ時間だから……ん?」

 

向こうも俺に気付いたようだ。

 

「こんな所で会うとはな。『影の魔術師』」

 

「レヴォルフであって以来だな」

 

「そうだな。君は鳳凰星武祭に参加しないようで安心したよ。君と『孤毒の魔女』が組んで出場したら優勝は無理だろうからね」

 

「……ほう。つまり俺とオーフェリアが参加していないなら優勝出来ると?」

 

大した自信だ。序列1位の天霧や旧序列1位である刀藤もいるのに負けるつもりはないようだ。

 

「少なくとも私とエルネスタは優勝出来ると思っているな」

 

カミラからは確かな自信を感じる。優勝する事を一切疑っていない表情だ。

 

てか雪ノ下さん?貴女カミラの事睨み過ぎだからね?どんだけ負けず嫌いなの?

 

カミラはそれに気付いていないのか、はたまた無視しているのかわからないが材木座と向き合う。

 

「それより材木座。そろそろ煌式武装の最終チェックがあるから行くぞ」

 

「うむ。承知した!ではさらばだ八幡よ!そして宣言しておこう。優勝するのはアルディとリムシィである!」

 

2人はそう言って試合会場に向けて歩き出した。……アルルカントの試合もチェックしておくか。アルディとリムシィってのは自律機械の名前か?

 

そう思っていると裾を引っ張られるので振り向くと由比ヶ浜だった。

 

「ねぇヒッキー。今の女の人って誰?」

 

あん?つーか何でジト目で見てんだよ?よくわからん奴だ。

 

「アルルカント・アカデミーの『獅子派』会長のカミラ・パレートだよ」

 

「『獅子派』?何それ?」

 

見ると全員が同じく知らない表情をしている。まあこいつらは高等部から進学したから知らないのも仕方ないな。

 

「アルルカントでは研究する内容によって色々な派閥に分けられてんだよ」

 

「派閥?ねぇヒッキー、派閥って何?」

 

……そこからかよ。アホ過ぎる。苦笑いしている戸塚以外呆れてるし。

 

「……要するに研究内容によってグループ分けしてるって事だよ」

 

「あっ!そういう事なんだ!初めからそう言ってよ〜」

 

いやいや、派閥の意味を知らないなんて誰が予想出来るか。今更だがこいつよく総武中に受かったな。

 

「それで比企谷君。その『獅子派』という派閥はどんな研究をしているの?」

 

「『獅子派』は煌式武装の開発が専門だな。彼女の研究チームが開発した煌式武装を使用したタッグが前シーズンの鳳凰星武祭で優勝したんだよ」

 

以前レヴォルフで会ってからエルネスタとカミラについて調べたが、カミラの実績には本当に驚いた。前シーズン、アルルカントの順位は総合2位だったが間違いなくカミラのおかげだろう。

 

「嘘っ?!」

 

「本当だ。他の星武祭でも彼女の作った煌式武装を使った学生が本戦に出て大量のポイントを稼いだからな。今回参加するアルルカントペアには充分気をつけておきな」

 

おそらく今回のアルルカントの選手はカミラの煌式武装を持っているだろう。前シーズンの実績を考えると油断は出来ないな。

 

「……というよりお前らはそろそろ会場入りしないのか?」

 

「あ、うん。それなんだけど私達今からご飯食べに行くんだけどヒッキーも来ない?」

 

飯だと?今は暇だが……オーフェリアとシルヴィと先に約束しているからな。……どうしよう。

 

まあ断るにしろ、2人も一緒にするかはさておき2人に連絡するのが第一だろう。

 

 

 

 

 

 

とりあえず電話する許可を貰おうとすると

 

 

 

 

 

 

 

「結衣せんば〜い」

何か後ろから聞いていて甘ったるい声が聞こえてくる。振り向くとガラードワースの制服を着た亜麻色の髪をした女子が由比ヶ浜に向かって手を振っている。

 

「あ、いろはちゃん。やっはろー」

 

由比ヶ浜はそう言って手を振ってくるが知り合いか?

 

「雪ノ下、知り合いか?」

 

「ええ。彼女は一色いろはさん。総武中にいた人で私達より一学年下の人よ」

 

一色いろは……確か葉山と組んでいた奴だったか?

 

「結衣先輩と雪ノ下先輩も出るんですね。当たったらよろしくお願いします」

 

「うん!負けないよ」

 

「いえ。勝つのは私と葉山先輩ですよ」

 

あ、やっぱり葉山と組んだ奴か。葉山がこのタイプの女と組むとは予想外だ。

 

「でも意外。てっきり隼人君は優美子と組むと思ったよ」

 

「あ〜。三浦先輩なら勝って譲って貰いました」

 

マジか。決闘で勝って譲って貰いましたって怖いな。まあアスタリスクでは力が全てだし一色は悪くない。悪いのは負けた三浦だ。

 

しかし……

 

「つーかガラードワースが決闘していいのかよ……」

 

俺の記憶が正しければガラードワースは決闘禁止だったと思うが……

 

俺の呟きが聞こえたのか一色って奴が俺を見てきて目を見開いている。

 

「え?結衣先輩、何でアスタリスク最強の魔術師がいるんですか?」

 

「ヒッキー?ヒッキーは総武中にいたからだよ」

待て由比ヶ浜。お前初対面の人にヒッキーって言うな。マジで止めてくれ。

 

内心突っ込んでいるが、一色は特に気にしてないようだ。

 

「あ、そうなんですか。 一色いろはって言います。よろしくお願いしますね?せんぱい♪」

 

そう言って笑顔を浮かべてくる。その時に俺は思った。

 

 

あざとい。あざと過ぎる。三浦が嫌いなタイプだろ。こいつに負けた三浦は絶対キレていてガラードワースの生徒は怯えているだろう。

 

無関係なガラードワースの生徒に合掌。強く生きろ。

 

「あ、いろは。ここにいたのか」

 

馬鹿な事を祈っていると一色のパートナーである葉山隼人がやって来た。どうやら本物のようで雪ノ下が嫌な表情をしている。葉山嫌いは相変わらずか。まあぼっちと葉山じゃ相性は悪いからな。

 

すると一色は笑顔で葉山に近寄り葉山の腕に抱きついた。……ここに三浦がいなくて良かったぜ。

 

「ごめんなさ〜い。結衣先輩に会ったので」

 

一色がそう言うと葉山はこちらを見て一瞬だけ目を細めてから笑顔を向けてくる。

 

「やあ雪ノ下さんに結衣。ヒキタニ君も久しぶり」

 

……会って早々ヒキタニ呼びかよ。つーかてめえ文化祭の時に比企谷って言ってただろうが。何でわざわざヒキタニ呼びしてんだよ?

 

 

 

 

つーか俺ヒキタニじゃないし、リア充嫌いだからシカトでいいだろ。

 

 

俺はそう判断して昼飯についての話に戻そうとしていると不意に周囲の空気が一変した。

 

学生、観客含めて全員の間に騒めきが生じ、緊張感が張り詰める。

 

「え?な、何?」

 

「は、葉山先輩。怖いですぅ」

 

その空気は驚愕や畏怖、嫌悪など様々な悪感情の混じった空気だ。

 

由比ヶ浜と一色は声に出しながら怯えている。他のメンバーも差はあれどビビっているが俺はこの正体を瞬時に理解した。

 

騒めきがする方向を見ると1人の少女が人混みを割るように現れた。

 

 

 

 

 

 

 

「オーフェリア・ランドルーフェン……!」

 

雪ノ下が戦慄したような口調で呟いたその名はレヴォルフ、いやアスタリスクで最強と評価されている少女の名前だ。

 

俺は基本的にオーフェリアと一緒にいるからあの空気を感じた瞬間、直ぐにオーフェリアが近くにいると理解した。

 

周りでは由比ヶ浜も川崎姉弟も葉山も一色も信じられない表情でオーフェリアを見ている。まあまさかアスタリスク最強のオーフェリアがこんな所にいるなんて予想外だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!お久しぶりですオーフェリアさん!」

 

そんな中、我が妹はそんな空気を一切読まないでオーフェリアに話しかける。その表情は如何にも楽しそうだ。他の連中は驚きの表情で小町を見ている。

 

「………久しぶりね小町に戸塚彩加」

 

オーフェリアはいつもの悲しげな表情のまま小町に返事をする。基本的に恐れられているオーフェリアにとって小町の反応は意外なのか小町の前だと割と素直だ。

 

「うん。オーフェリアさんは八幡と試合を見に来たの?」

 

戸塚も笑顔でオーフェリアと話す。オーフェリアには2人の様に分け隔てなく優しい人が必要だから俺としても2人が話しているのを見ると気分がいい。

 

「ええ。八幡は2人の試合を見に行きたがっていたから。……それより八幡」

 

オーフェリアはそう言って制服を引っ張ってくる。

 

「……ここにいるのは八幡の知り合い?」

 

「ん?中学の時の知り合いだけど」

 

「……意外ね。八幡いつもぼっちって言ってるから知り合いが1人もいないと思ったわ」

 

「やかましいわ」

 

若干イラッとしたのでオーフェリアの頭にチョップをする。すると周りが騒めきだす。それを確認すると俺はアスタリスク最強のオーフェリアにチョップをするなどというぶっ飛んだ行為をしたと自覚した。

 

「……痛いわ八幡」

 

オーフェリアは頭を抑えながらジト目で見てくる。嘘つけ。序列戦で何度かお前にダメージを与えた事あるがあっちの方が痛いだろ?

 

「悪かったよ。とりあえず知り合いはいる」

 

そんなやり取りをしていると葉山は爽やかな笑みを浮かべながらオーフェリアに近寄ってくる。

 

 

「中学の時、ヒキタニ君と同級生だった葉山隼人です。よろしくね、オーフェリアさん」

 

流石リア充、ナチュラルに相手を名前で呼びやがる。つーかさっきも思ったが名前間違えるとかいい度胸してるな。

 

内心葉山に毒づいている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり総毛立つのを感じた。

 

横を見るとオーフェリアの周囲から圧倒的、それでありながら禍々しい星辰力が膨れ上がる。

 

俺の遥か数倍以上の量の万応素が荒れ狂う。それによって空気が震え、全てを捩じ伏せ、押し潰すかのように凶暴な威圧感が放たれる。

 

周囲にいる小町達が圧倒的な威圧感に戦慄している中、万応素の中心にいるオーフェリアは悲しげな表情を、しかし目には殺気を込めながら葉山を見ている。

 

……ヤバいな。オーフェリアの奴キレてやがる。理由は知らないが葉山がオーフェリアの地雷を踏んだのだろう。

 

とりあえず俺が何とかしないとヤバい。先ずはオーフェリアがキレた原因を見つけないといけない。

 

若干慌てながらオーフェリアに話しかけようとすると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ。貴方はわざと八幡の名前を間違えているのかしら?」

 

オーフェリアは葉山にそう言ってくる。

 

それを聞いて俺は『キレてる理由そんな事かよ!!』としか思えなかった。

 

 

……え?てかオーフェリアを大人しくさせるの出来るのか?




後編はオーフェリアブチ切れ&オーフェリアとシルヴィアのプチ修羅場をお送りします
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