学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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鳳凰星武祭5日目、比企谷八幡は目を付けられる(中編)

 

「あ、おかえり八幡君」

 

VIP席に帰るとシルヴィが手を振りながら迎えてくれた。

 

「おう。サンドイッチはこれで良かったか?」

 

そう言いながらローストビーフとポテトサラダの2種類のサンドイッチを渡す。

 

「うん。ありがとう」

 

「なら良かった。ところでオーフェリアは手洗いか?」

 

「うん。そろそろ……あ、戻ってきたね」

 

シルヴィに言われて後ろを見るとオーフェリアが入ってきてこちらに歩いてくる。

 

「ほいよ。昼飯は海鮮丼で良いか?」

 

「……ええ。ありがとう」

 

オーフェリアは頷きながら差し出す海鮮丼を口にする。さて、今やってる試合が終わればいよいよ小町達の出番か。

 

内心ワクワクしながら海鮮丼を食べているとステージ上のアルルカントのペアがガラードワースのペアを撃破して試合終了のアナウンスが流れる。よし、次か……

 

 

「勝てよ……小町、戸塚」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ?あの2人に勝てるとしたら冒頭の十二人ペアクラスの実力者ペアぐらいかな」

 

それはわかっている。わかっているが不安なんだよシルヴィ。

 

対戦相手は界龍のペア。序列入りはしてないが界龍の生徒は序列入りしてなくても強い奴がゴロゴロいる。

 

俺が見守る中、遂に次の試合が始まる。

 

『さぁーて、続いて第八試合、まずご紹介しますのは一回戦を1分以内に勝利した星導館の比企谷小町、戸塚彩加ペア!』

 

『一回戦は2人の巧みなコンビネーションだったッスけど二回戦はどうなりッスかねー』

 

解説の声が響く中ステージを見ると既にステージには4人揃っている。界龍のペアは両方とも女子で片方は槍型煌式武装を、もう片方は素手だ。

 

界龍は徒手における高度な戦闘技術が有名で、星辰力を直接攻撃力に転換する事が出来る唯一の方法であり、体術と組み合わせると近接戦闘では有利になる。

 

4人の中で緊張感が走る中……

 

 

『鳳凰星武祭Aブロック二回戦八組、試合開始!』

 

試合開始の宣言がされる。

 

それと同時に界龍のペアは2人して戸塚を攻める。どうやら援護に特化した戸塚を潰す算段のようだ。

 

『群がってーーー盾の軍勢』

 

戸塚の前方に盾が現れて100個以上に分割されて対戦相手に向かって飛んでいく。

 

 

対して対戦相手の2人は煌式武装と槍の先端に星辰力を込めて盾を弾きながら前進する。戸塚の技は初見ならビビるかもしれないが見た事があるならビビらないだろう。2人とも特に盾とぶつかる事なく前進している。

 

当然、現在フリーになっている小町は何もしない訳がない。小町は腰のホルスターから二挺のハンドガン型煌式武装を取り出して発砲する。狙いは槍型煌式武装を持っている方の女子だ。

 

槍持ちの女子は槍を回転して小町が放った光弾を弾く。しかし小町は特に戸惑う事なく撃ちまくる。

 

『戸塚さん!そっちは任せます!』

 

『うん!』

 

小町が槍持ちを狙い、戸塚が素手の方の足止めをするようだ。

 

槍という小回りが利きにくい武器を使っているためか、槍持ちの女子は小町の攻撃を凌ぐ事が精一杯で反撃に転ずる事が出来ていない。これなら時間が経てば小町が勝つだろう。

 

だから戸塚の仕事は1秒でも長く素手の方を足止めする事だ。

 

戸塚の方を見ると、戸塚は手を振って盾をガンガン飛ばし、女子はそれを弾いたり砕きながらガンガン前進する。

 

状況から見て戸塚が不利だ。戸塚は1つ1つの盾に毎回指示を出しているから精神的にも負担が大きい。

 

対する女子は大分見切ったのか顔や足、校章に当たりそうな盾だけ弾いて、多少のダメージを無視して突っ込んでいる。

 

戸塚はそれを確認すると再び前方に巨大な盾を出す。どうやら再び分割させて撃ち込むのだろう。

 

すると女子の手に大量の星辰力が見える。どうやら盾が分割される前に破壊する算段だろう。

 

『はぁっ!』

 

掛け声と同時に女子の拳が戸塚の盾とぶつかる。

 

その後軋むような音がすると思ったら巨大な盾がひび割れて崩壊する。流石界龍の体術はレベルが高いな。

 

しかし……戸塚の方が一枚上だ。

 

戸塚は女子の拳が盾に当たる直前に懐から待機状態の煌式武装を出して手に持つ。

 

するとマナダイトに記憶させてある元素パターンが再構築されて戸塚の手に銃が持たれる。

 

それと同時に戸塚は稼働状態となった銃を構え敵に向ける。稼働状態になってからの狙いの定め方は割と早い。どうやら俺との訓練以外でしっかりと練習していたのだろう。

 

俺が感心している中、素手の女子は目を見開いて下がろうとするがもう遅い。戸塚は引金を引く。

 

すると銃口から50近くの光弾が広範囲に放たれて女子の体を蹂躙する。

 

『ぐはぁっ!』

 

女子らしからぬ呻き声をあげながら吹っ飛ぶ。体を見ると胸に付いてある校章は砕け散った。

 

『おおっと!戸塚選手の散弾が炸裂!これで2対1だぁ!!』

 

『散弾型煌式武装ってチョイスが良いッスね。散弾は威力は高いが射程が短いのが欠点。しかし戸塚選手の能力と組み合わせれば散弾の利点を最大限に発揮できるッス』

 

そう。散弾型煌式武装は射程が短いのが欠点だ。しかし戸塚の盾の能力があれば別だ。

 

戸塚の盾が相手を足止めできたらそれで良し、盾で足止めが無理なら近寄ってきた相手を散弾で迎撃すればいい。2つの戦法が対になっているのが戸塚の強みだ。

 

戸塚は撃破を確認すると散弾型煌式武装を構えたまま槍型煌式武装を持っている女子に近寄る。

 

それを確認した女子は引き攣った表情を見せてくる。まあ今小町の銃撃に押されていて戸塚に対処出来ない状態だしな。

 

小町はそれを理解したのか対戦相手の校章と頭を狙いガンガン発砲する。防御しなくてはいけない場所を徹底的に攻められてはたまったものではないからな。

 

女子は慌ててそれを弾く。しかし無理に防御したので体勢が崩れる。それでは小町の銃撃を凌ぐ事が出来ても戸塚の散弾は凌げない。

 

戸塚は好機を逃さず散弾の引金を引く。

 

銃口から放たれた大量の光弾が再度対戦相手を蹂躙する。当たりどころが悪かったのか吹っ飛んだ女子はそのまま地面に倒れこんで起き上がる気配を見せない。どうやら意識消失したようだ。

 

 

「試合終了!勝者、比企谷小町&戸塚彩加!」

 

機械音声が会場に響くと観客席からは歓声が鳴り響く。

 

『な、なんとぉ!一回戦同様一方的な展開です!今回は戸塚選手が果敢に攻めていました!』

 

『両選手も攻め方が激しいッスね。場合によっては格上も食えるかもしれない勢いには期待ッス』

 

そんな実況の話を聞いている中、2人は退場して行った。良かった良かった。

 

「八幡君。ガッツポーズするなんてよっぽど嬉しいんだね」

 

横からシルヴィにそう指摘されたので見てみると確かにガッツポーズをしていた。無意識って恐ろしいな。

 

「まあ嬉しいな」

 

「これなら3回戦も大丈夫だね」

 

シルヴィの言う通り、3回戦に当たる相手はそこまで強くないから余程の事がない限り勝つな。まあ冒頭の十二人が予選で負けるなんて……

 

(いや、モーリッツの奴はアルルカントの擬形体の当て馬になってボコボコにされてたな)

 

哀れモーリッツ。まああの擬形体を倒せるペアは殆どいないだろう。アルディの防護障壁はクソ硬いし、リムシィに至っては殆ど手の内を見せていない。

 

何せアルディに防護障壁があるんだ。リムシィもそれなりに凄い武器を持っているだろう。それ次第では優勝する事も可能だろう。

 

閑話休題………

 

まあとりあえず小町が予選敗退はないだろうから良しとしよう。そんな事を考えているとシルヴィが欠伸をしているのが見えた。

 

「シルヴィ……お前昨日もお忍びで動いたのか?」

 

「ん?いや昨日あんまり眠れなくてね」

 

何だ。てっきり深夜遅くまで再開発エリアでウルスラを探してるかと思ったが、単に眠れなかっただけなら良かった。

 

「眠いなら無理しないで寝ろ。試合が終わったら起こすぞ」

 

「大丈夫。折角試合を見に来たんだし勿体無いよ」

 

「そうか。ならいいが」

 

「ありがとう。でも、もし眠くなったら八幡君の膝を借りていいかな?」

 

は?膝を借りていいかなだと?

 

「ばっ!し、シルヴィ……」

 

「……絶対ダメ」

 

俺がテンパっているとオーフェリアがどす黒いオーラを出してきて怖いんですけど?

 

「あははっ。ごめんごめん。それより次の試合始まるよ」

 

当のシルヴィは笑いながらステージを指し示してくる。……うん、やっぱりシルヴィには勝てる気がしないな。

 

俺は苦笑しながらシルヴィと同じようにステージを見ると、ステージには既に4人が出揃っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2時間後……

 

「あー、楽しかった」

 

シルヴィは満足そうな表情で伸びをする。

 

今日やる二回戦の試合は全て終わった。特に注目されていたのはイレーネのペアとマクフェイルのペアの試合だろう。何せ予選で唯一冒頭の十二人がいるペア同士の試合だったし。

 

試合は中盤まではある程度互角だったが、イレーネがプリシラから血を貰ってからはイレーネ達が有利に試合を運び勝利した。やっぱりプリシラの力はあの純星煌式武装と相性が良いな。

 

そんな事を考えながら俺達は帰る為シリウスドームを出てのんびりと歩いている。

 

「まあ楽しめたな。三回戦は明後日か……」

 

「あ、それなんだけど、私三回戦と本戦の一回戦は仕事あるから2人で見て」

 

「……わかったわ」

 

「はいよ。仕事頑張れよ」

 

「うんありがとう。私はここで、またね」

 

そう言ってシルヴィはクインヴェールの方へ向かう電車がある駅に向かって去って行った。

 

「俺達も帰ろうぜ」

 

「……ええ」

 

オーフェリアも頷いたので俺達もレヴォルフの方へ向かう電車がある駅に向かって歩こうとした時だった。

 

「……オーフェリア」

 

「ええ。尾行されてるわね」

 

少し後ろから複数の人の気配がする。それは明らかに俺達を見ている。

 

「……八幡に心当たりは?」

 

「心当たりはないが、昼に同じような気配を感じた」

 

「それって昼食を買いに行った時?」

 

「ああ。まあ仕掛けてくる気配はないし放っておいても大丈夫だろ」

 

仮に仕掛けてきても万有天羅とかじゃないなら返り討ちに出来る自信があるし。

 

「……そう。まあ実害がないなら放っておいてもいいと思うわ」

 

つまり実害があるなら容赦なく叩き潰すって事ですか?オーフェリアさん、それは勘弁してください。以前葉山にブチ切れた時みたいになったら俺の胃が崩壊しますからね?

 

内心オーフェリアに突っ込みながら駅に入って電車に乗った。

 

電車に乗っても尾行されているようで不吉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりまだ気配を感じるわ」

 

オーフェリアはそう言う。それについては俺も知っている。

 

あれから20分、レヴォルフの近くの駅に着いてオーフェリアを寮まで送っているが未だに尾行されている。初めは潰そうか考えたが街中で暴れると面倒なので止めた。

 

結果、実害がないので放置する事にした。ただし実害があったらオーフェリアが叩き潰す事になった。

 

 

そんなこんなで尾行に気付かない振りをしながら歩いているとオーフェリアの寮に着いた。

 

「じゃあオーフェリア、またな」

 

そう言って俺は背を向けて自分の寮に帰ろうとする。

 

すると制服の裾を掴まれたので振り向くとオーフェリアが俯きながら制服の裾を摘んでいた。

 

(……あー、いつものアレな)

 

この瞬間、俺は次にオーフェリアが言ってくる事を即座に理解した。

 

「……いつものアレだな?」

 

俺が尋ねるとオーフェリアはコクンと頷く。はいはいやりますよ。幸いオーフェリアの寮は人が少ない場所にあるから問題ないし。

 

俺は息を吐いてオーフェリアを優しく抱き寄せてオーフェリアの背中に手を回す。

 

「……んっ」

 

するとオーフェリアも俺の背中に手を回して胸に顔を埋めてくる。

 

(……っ。いくらオーフェリアに温もりを与える為とはいえ……恥ずかしいな)

 

オーフェリアは世間からは恐怖の対象として扱われているが、いつも一緒にいる俺からしたら戦闘以外では怖くない。寧ろかなり可愛い。

 

そんな女子を抱きしめるって……これは慣れる気がしないな。

 

そんな事をオーフェリアが胸元でしてくる頭スリスリに悶えながら考えている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわわっ!」

 

横から叫び声と物音がした。

 

俺は咄嗟にオーフェリアとの抱擁をといて横を見ると右側に見えるコンビニの裏から人影が2つ現れた。

 

「ちょっとトゥーリア!押さないでよ!」

 

「わ、悪ぃ!……って、ヤバ!気付かれたぞ!」

 

「嘘ぉ?!」

 

そう言って叫んでいるのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ルサールカのトゥーリアとモニカ?」

 

クインヴェールが誇るガールズロックバンド、ルサールカのトゥーリアとモニカが倒れこんでいた。

 

何でこいつらがここに?てかさっきから尾行してたのはこいつらか?

 

疑問に思っているとトゥーリアが叫ぶ。

 

「バレちまったもんは仕方ねぇ!お前らも出て来い!」

 

すると左側のマンションから残りのメンバーであるミルシェとパイヴィとマフレナも出てきた。何で世界が誇るガールズロックバンドのメンバーが全員こんな所にいるんだよ?こいつら暇人なのか?

 

「何でお前らがここにいるかは後で聞くが……用があるのは俺とオーフェリア、どっちだ?」

 

まあ多分俺だけど。以前シルヴィと遊びに行った時にスキャンダルを狙ってたし。その事からシルヴィに関する事だろう。

 

 

内心ため息を吐いているとルサールカのリーダーであるミルシェが俺の前に立ち口を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「用があるのはあんたよ、比企谷八幡!あんたが六股をかけている事について説明してちょーだい!!」

 

 

…………は?

 

え、ちょっと待って。六股?いきなりどうした?六股どころか彼女1人すらいないからな?

 

何でルサールカは俺に向けて鋭い視線を向けてくるんだ?訳がわからん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………八幡。六股ってどういう事?」

 

そして何でオーフェリアは俺にどす黒いオーラを向けてくるんだ?訳がわからん。

 

 

 

これぞまさに前門のルサールカ、後門のオーフェリアだ。

 

 

 

 

………あれ?前門はともかく、後門はヤバくね?

 

てか俺生きて帰れるの?

 

 

 

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