学戦都市でぼっちは動く   作:ユンケ

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比企谷八幡はオーフェリア・ランドルーフェンと……(前編)

表からは騒ぎ声が聞こえる。

 

内容は聞き取れないがルサールカが未だ俺を探しているのだろう。オーフェリアにはマジで感謝だ。匿ってくれた上に飯まで用意してくれるとは。

 

俺は今、オーフェリアの寮のリビングの椅子に座って、今日シリウスドーム以外の場所で行われた試合を見ている。

 

特に見入ったのは星導館の刀藤と沙々宮ペアと界龍の双子が出ている2試合が良かった。前者は流れるような攻撃と圧倒的な破壊力をもつ銃型煌式武装、後者は星仙術と双子特有の巧みな攻めが面白かった。

 

明後日から予選最後の三回戦、どうなる事やら……

 

 

のんびりと三回戦の有力ペア同士の試合の賭けのオッズを見ていると……

 

 

「……お待たせ」

 

エプロンをつけているオーフェリアが俺の前に料理を置いてくる。見ると米に味噌汁、鮭の切り身に卵焼きと純和食が並ぶ。オーフェリアの奴、和食も出来るのかよ。正直予想できなかった。つーか、前に飯食いに行った時にも思ったがエプロン姿のオーフェリア可愛いな。

 

そんな事を考えていると……

 

「ん?」

 

オーフェリアは俺の料理の横に同じように料理を置く。え?何でそこに置いてんの?

 

疑問に思ったが直ぐに解消した。……ある意味したくなかったが。

 

 

「……んっ」

 

オーフェリアは全ての料理を運び終えると俺の隣に座ってきた。そして身長に差があるので俺の肩にオーフェリアの髪が触れる。

 

「……お、オーフェリア?」

 

いきなりの行動に変な声を出してしまう。以前飯をご馳走になった時は俺の隣ではなくて向かい側に座っていた筈だ。

 

しかし今回はメチャクチャ近い。試合を見に行った時と同じくらい近い。しかも今回はオーフェリアの寮って場所なので試合会場より遥かに緊張するんだが。

 

「……何?」

 

オーフェリアは自分は変な事をしていないと言うような不思議そうな表情をしている。

 

「……いや、そのだな……近いって」

 

女の子の部屋でくっつくなんて刺激が強過ぎるからな。マジで勘弁してくれ。

 

「……嫌だった?」

 

「……は?」

 

オーフェリアを見るとシュンとした表情を見せてくる。俺自身特に悪い事をしていないのに凄く罪悪感を感じてしまう。何だか申し訳ない。

 

「私は八幡の隣にいたかったけど……八幡が嫌なら離れるわ」

 

……こいつは本当にズルい奴だな。狙ってやっているとは思えないが、そんな言い方をされたら嫌とは言えない。

 

オーフェリアの過去を知っている俺からすれば、こいつの望みは出来るだけ叶えてやりたい。

 

そしてこいつの望みは俺が恥じらいを捨てれば簡単に叶う願いばかりだ。

 

だったら恥じらいを捨てるしかない。

 

「……お前の好きにしろ」

 

「いいの?本当に嫌ならいいのよ?」

 

「嫌じゃねぇよ。だから気にするな」

 

「……ありがとう」

 

オーフェリアはそう言って横にすり寄ってくる。嫌じゃないが……やっぱり恥ずかしいな。

 

まあ……いいか。

 

「んじゃ……いただきます」

 

俺が手を合わせるとオーフェリアも俺の行動を真似て手を合わせて挨拶をする。

 

「……いただきます」

 

そう言って味噌汁を一口飲む。

 

「……美味いな」

 

温かくて飲むと良い気分になる。俺も自炊はするが味噌汁みたいな家庭的な物は余り作らないから、中学時代に家で小町がつくった味噌汁を思い出してしまう。

 

「……そう?八幡にそう言って貰えると嬉しいわ」

 

オーフェリアは頬を染めながら目を逸らす。会った頃に比べて大分感情豊かになっていてこっちも顔が熱くなってくる。

 

「あ、ああ……」

 

俺も照れくさくなりオーフェリアから視線を逸らし自分の頬の熱さから逃げるように飯にがっつく。

 

「……ねえ。八幡は家に帰ったらどうするの?」

 

暫くの間飯をがっついているとオーフェリアが話しかけてくる。顔を見る限りいつもの表情になっていた。

 

俺も俺自身を確認してみるとさっきまであった顔の熱も大分冷めたのを理解したので口を開ける。

 

「まあ多分、鳳凰星武祭の試合を見るか夏休みの宿題をやるかのどっちかだな。多分後者を優先するけど」

 

予選の有力試合は本戦が始まる前日に1日休養日があるのでその時に見ればいいしな。それより宿題だ。何せ数学だけは全く手をつけてないし。

 

「……もし数学をするなら期末試験の時みたいに教える?」

 

オーフェリアがそう言ってくる。

 

「え?いいのか?」

 

期末試験の時、俺は数学がヤバイのでオーフェリアに教えを請うた。そしたら予想以上に分かり易く期末試験では5割を超えた。これはレヴォルフに来て以降最高の点数だった。あの時俺はオーフェリアを神と勘違いして崇めかけたくらいだったし。

 

「……いいわよ。私も八幡と過ごせるから」

 

「そうか。じゃあ頼む」

 

オーフェリアの後半の発言についてはスルーする。オーフェリアは結構恥じらいなく色々な事を言うから真に受け過ぎると精神が保たない。

 

「……ええ。わかったわ」

 

オーフェリアは1つ頷いて食事を再開するので俺もそれに続く。それにしてもオーフェリアに宿題を手伝って貰えるなんてありがたいな。これを機に沢山やって夏休み後半は遊び倒してやる。

 

そんな事を考えながら俺もオーフェリアに続いて食事を再開する。食事中に話す事は殆どなかったがこの時間は安らぎを感じて気分が良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあ始めましょう」

 

食事をしてから30分……

 

食後のコーヒーを飲んで一休みをしたので宿題の時間だ。

 

俺は空間ウィンドウを開いて数学のファイルを開く。そしてそれを視認すると同時に頭痛が走る。

 

「……頭痛くなってきた。もう帰りたい」

 

「……だめ。わからない所は教えるから頑張って」

 

現実逃避気味に空間ウィンドウから目を逸らすとオーフェリアが両手で俺の頬を掴んで元の位置に戻す。

 

「……でもなぁ……いや、頑張ります」

 

せっかくオーフェリアがわざわざ時間を割いて教えてくれるんだ。こちらもしっかりやらないとオーフェリアに悪いしやるか。

 

「……そう。じゃあ1問目から……」

 

オーフェリアがそう言って空間ウィンドウを指差してくるので俺は問題を解き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして……

 

「……これでどうだ?」

 

俺はオーフェリアにやれと言われた10問を解いてオーフェリアに見せる。現在の俺は疲労困憊となっている。

 

只でさえ数学は苦手な上、オーフェリアが容赦ない。教え方はメチャクチャ上手いがかなり厳しい。何せ間違えまくると冷たい視線で見てくるし。あの視線浴びまくると一時的に変な扉が開いて一瞬、踏んで欲しいと思ってしまうくらいだし。

 

オーフェリアはそれを受け取り暫くガン見してから顔を上げる。そして俺にほんの少しの、それでありながら優しい笑顔を見せてくる。

 

「……10問中8問正解。良く頑張ったわね」

 

そう言ってギュッと抱きしめてくる。いつもと違って俺に確認を取らず抱きついてくる。

 

しかし俺はそれを拒絶しないでオーフェリアからの抱擁を受ける。疲れ切っている俺は凄く安らぎを感じて離れる事が出来ない。

 

「……少し休みましょう。3時間続けたのは私が悪かったわ」

 

オーフェリアにそう言われたので時計を見ると夜11時前だった。マジか。予想以上に頑張ったな俺。

 

そう思うと途端に睡魔がやって来た。

 

今日会ったイベントは鳳凰星武祭の観戦、ルサールカによる尋問、嫌いな数学を3時間勉強の3つだ。

 

それら3つの要素によって俺の精神は限界にきたようだ。

 

 

 

 

「………八幡?」

 

オーフェリアの不思議そうな声を最後に俺は意識を手放した。最後に感じたオーフェリアの抱擁に対して安らぎを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………んっ、んんっ」

 

身体に衝撃が走ったような気がしたので目を開ける。

 

するとそこは真っ暗だった。外を見ると夜の帳が下りていて真っ暗だった。

 

(……あれ?俺は確か……)

 

寝る前の記憶が全くない。マジで何があったんだっけ?

 

思い出そうとすると新しい事に気付く。

 

「つーかここどこだ?知らない天井だし」

 

暗くてよく見えないが今、俺が寝ている部屋は俺の借りている寮の寝室じゃない。家具の配置が違うし窓の場所も違う。うちの寮の窓はベッドの横にあるがこの部屋には本棚の横にあるし。

 

とりあえず今いる場所を調べる為起き上がろうとするが身体に重みがかかり動けない。それを感じたからか俺の眠気は完全に覚めた。

 

何だ?何かが俺の身体にひっついているみたいだが……

 

疑問に思いながら俺はかけられている布団を引き剥がすと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………八幡」

 

何とそこにはオーフェリアが眠っていて俺の身体に抱きついていた。

 

 

……え?何でオーフェリアがここにいるの?

 

そう思うと俺は漸く思い出した。そうだ、俺は数学をやっていたら精神的に限界が来てダウンしたんだ。

 

それで俺は寝落ちしたのか?でも何で同じベッドで寝てんだ?

 

疑問に思っていると俺は新しい事実に気が付いた。否、気が付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の身体にはバスタオルが巻いてあるが、その下は上半身裸でパンツ一枚しか身に纏っていなかった。

 

 

それを認識した俺はある考えに至ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしかして俺、オーフェリアと大人の階段を上ったの?」

 

 


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